『日本教の社会学』読書ノート5 軽く総括

読書ノート1 日本は民主主義でも自由でもない
読書ノート2 言論の自由は日本にはない?
読書ノート3 「空気」メカニズム
読書ノート4 日本人の根本視座、自然・人間・本心・実情・純粋

と、つらつらとメモを纏めてきました。これ以降も『日本教の社会学』では<日本的序列>であったりとか、労働観をはじめとした日本的資本主義の倫理であったりだとか、自殺と許しであったりだとか、明治維新を達成するために作られた浅見絅斎の学問など、なかなか興味深い話が続くのですが、ひとまず前回までで私にとって最も印象的な部分は書き残したので、このエントリでは本全体の感想を述べたいと思います。

前回のエントリでも書いたのですが、この本に描かれる日本教徒の姿、非常に自分自身の考え方の背後にある思考法だなと思いました。

特に読書ノート1に書いた『民主主義』・『自由』の概念、読書ノート3の『空気』、読書ノート4の『自然』観などはハタと膝を打つ場面もありました。

一方でこれらの事柄が果たして日本独自のモノなのかというというとちょっと疑義が挟まれます。
想いだすのは大学時代、研究発表の場である発表者の子が日本庭園と西欧庭園の違いについて語っていた際にある白人女性の教授が「日本人はすぐ日本は特殊だというが、"日本庭園の独自の特徴・思想"は西欧にも同じものがあったりする、日本は独自だという主張は安易な主張なのではないか」とコメントしていたことです。

文章によって理論的に描かれる事柄は、どうしても現実抽出するものですし、そうでないと理論になりませんから、どうしても細かい話は捨象されてしまいますが、実際には案外、この本で語られる『日本教徒』の思考法って他の国でも応用効くのでは?と思いました。その意味で読書ノート4でも書きましたが、海外の人に表してもらいたいなぁと思いました。

また海外の話で言うと、主に出てくる"海外"として欧米、中国が挙げられていますが、今の時代で考えるならば東南アジアや中東、あるいはアフリカなんかの事例も合わせて分析をかいたら面白いのでは?などとも思いました。宗教で言うとヒンドゥー教やイスラーム教の視座もあったらいいな、と。

またこの本が書かれた81年から比べると、2014年現在の日本は、終身雇用も崩壊していれば、インターネットによって海外が近くなったりだとか、『日本的社会・日本的共同体』も様変わりしている状況にあります。なにしろ移民を入れようだとか、多国籍の人と共に働く職場もあったり、逆に日本の文化が世界に広がった食文化やアニメなどの事例もある時代なので、今の時代の『日本教』論が書かれることが待たれます。

小室さんほどの様々な分野に精通した博覧強記の方はなかなかいらっしゃらないと思われるので、多分野の研究者の共著・あるいはパネルディスカッションの編集によって書かれると良いかもしれません。

あと、これ言ったら顰蹙かもしれませんが『日本教の社会学』に感じた一番の懸念は『博覧強記の二人の対談だけれど、なんか勉強で知った知識だけで、実際の人間の機微に疎くない?』でした。偏見ですが研究者は理が勝ちすぎて情の力学に弱い感があります。今こういった日本人論を書くなら、研究者数人とマツコデラックスやらおぎやはぎやら絡ませて世慣れた人間の意見も入れるといいかもしれません。

私自身は、日本に生きづらさを感じる身でもあったりするのですが、本書に描かれる事柄を<日本教徒の社会で生きる上のマニュアル>的な本として、興味深く読むことが出来ました。日本人の思考フレームというか、『日本教徒の取り扱いかた』みたいなマニュアル本を、海外の日本で働きたい人や日本研究者向けに、簡略化と現在にブラッシュアップしたものを著するのは、結構需要あるのでは?この本の様な大きな理論は読んでて面白かったです。

一連のエントリで本書に興味を持たれた方は、アマゾンでは高額で取引されていますが、図書館などにも置いてあるので、是非手に取られることをお勧めします。時代は変わって日本社会も変わりつつありますが、現在でも大いに通じる論点が数多く示されている良著だと感じました。
by wavesll | 2014-04-08 10:27 | 書評 | Trackback | Comments(0)
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