TLだったか、2chのスレだったかで、フィッシュマンズのリユニオンツアーが9年前だという書き込みを見て、感慨深い思いになりました。 9年前、私は大学2年で、在学中に挫折して休学して復帰した辺りの頃だったように思います。 そんな、日影の心境のある大学生活に、ふっと良い音を差し込んでくれたのがフィッシュマンズの音でした。 その頃、ちょうど『宇宙』『空中』というベストアルバムが発売され、ゲストヴォーカルを入れたリユニオンツアーが行われ、フィッシュマンズとしてRSRに出演等、フィッシュマンズに再び風が吹いた時期でした。 私がフィッシュマンズを知ったのは、高校時代にMXをやっていた時、濃い音楽フリークのライブラリには必ず『空中キャンプ』や『ロングシーズン』などが入っていて、なにやら日本にはフィッシュマンズという音楽フリークが好むバンドがいるのだなと思ったあたりでしょうか。その頃の自分はブランキーや椎名林檎が好きで、激しさを音楽に求めていたのと、MXではブートレグのみを漁っていたのでDLはせず、聴くことはありませんでした。 そして前述の時期に、自分自身の心境の変化とフィッシュマンズの活動がリンクする形で私は彼らに出会い、そしてずぶずぶに嵌りました。中学時代の音楽がブルーハーツ、高校時代が椎名林檎とブランキーならば、大学時代の自分が最も嵌ったのはフィッシュマンズでした。 聞く音楽が広がり、ROVO等のインストモノや、ガムランやブルガリアンヴォイスのようなワールドミュージック、クラブジャズ、そして音楽フェスで出会った邦楽バンド達を経過して耳が出来上がるにつれて、サウンドの面でもフィッシュマンズにはやられましたし、何よりさびしがりやで口は悪いがいい奴で、どこまでもナイーヴなのに強さもある佐藤さんの詩にやられました。 あの詩があの音に乗ると、こんなにも沁み込んで、癒されるというか、どこか辛さが緩和される、端的に言って音楽に救われました。 結局生でフィッシュマンズを観ることは無かった(これは後でも述べますが)けれど、リユニオンツアーの映画の上映は東京verと大阪verで2回観ましたし、あるつてでRSRでの清志郎の『メロディ』を手に入れたりして、当時は本当に熱量をもってフィッシュマンズと共に生きていたような気がします。 さて、それから時がたち、2012年あたり、そうpiece of the futureが配信される辺りの頃は、どこかフィッシュマンズに、「好きなんだけれども、好きだからこそかっこよくいて欲しい」という期待が外れてしまっているような思いを感じていました。 05年に嵌ってからすぐにオリジナルの音源を聴き、音源や映像の中で佐藤さんに心酔していったことで、ゲストヴォーカルにどこかカラオケの様な微妙な気持ちを持ったり最初のリユニオンツアーの頃にあったような緊張感がなくなってピースフルでジャムも凄いんだけれども、どこか気の抜けた感じを再活動フィッシュマンズに想い、それもあって結局未だにフィッシュマンズは生ではみていません。 piece of the futureは買ったし、逆に凄腕ジャムバンドとして音を高めて、佐藤さんの歌から別の次元へ行ったらそれは凄くライヴを体験したいと思うのですが。もしくは生で観たら結局今のもやっとした気持ちも霧散するかもしれませんが。(その意味で山本精一の『Crown Of Fazzy Groove』はあり得る方向性の一つの解かなとも思います) それでも、今でもフィッシュマンズのCDは良く聴きます。特に『ロングシーズン』は、この夏にも部屋で何度も流しました。 そして、このエントリを書く気になったのは日本の(自分からしたら)若手バンド2組にポジティヴな意味でフィッシュマンズらしさを感じられたからでした。 一時期、数年前まではフィッシュマンズっぽいバンドに"それならフィッシュマンズを聴くよ"と思ってしまっていたのですが、時の流れや自分自身の変化もまたあったのか、そしてそのバンド達の音楽が素晴らしかったことから、新しい領域に自分とフィッシュマンズの音楽が来たのだなぁと思い、一本この記事を書こうという気になったのです。 そのバンドはceroとあらかじめ決められた恋人たちへです。 知ったのはあら恋の方が早くて、twitterのフォロワーさんが呟かれていたので去年『DOCUMENT』発表時の渋谷タワレコでのライヴを観に行き、その抒情性と音の迫力に衝撃を受けたのでした。 そしてceroは、名前は良く見聞きしていたのだけれどもYoutubeではぱっとしないなぁとあまり聴いていなかったのですが、この夏のワーハピでみて、音の躍動感に圧倒されて一気に好きになったのでした。 で、この二組にはどこかフィッシュマンズを感じる共通点があるなぁと思い、渋谷TSUTAYAで一気に全アルバムを借りて、聴いてみたのでした。 そうすると、ceroは『My Lost City』で『100ミリちょっとの』を引用しているし、あら恋は『ナイトクルージング』や『すばらしくてNice Choice』を彷彿とさせる楽曲が『Document』にあったり何よりダブなところにフィッシュマンズとの共通点を感じたのかと、自分の中で腑に落ちた瞬間がすべての円盤を聴き終わった際にありました。 おそらく、フィッシュマンズ自体が今の20代30代の抒情音楽好きの中での共有アーカイヴとして存在し続けて後に残っているのだな、そしてその影響や奏でつがれる音楽精神は、今の欣ちゃんの活動によっても(俺はもうちょっと研ぎ澄まして欲しいけれど)もたらされているのだなと改めて思い、2014年の"もうすぐ秋だね"の時期に再びフィッシュマンズの音楽に思いを馳せ、この拙文を認めました。 追伸、大学時代はフィッシュマンズと書きましたが、その後はブラジルものに大いに嵌り(今も継続)、そしてここ2、3年でようやく洋楽に突入して聞きかじる毎日を送っております。日本のミュージシャンでは上の2組や、フェスで観るバンド、そして最近はshota hiramaの様なクラブ、ノイズにも手を出しつつある今日この頃、もう"伝説の"ではなくなってしまったけれど、"とてもいい"バンドとしてフィッシュマンズと向き合い距離を取れるようになったのは自分も年を重ねたのだなと、しみじみ思います。 そして、彼らの音楽の種が、また全く違う個性を持ったバンドに内包されるまで至ったこと。特にceroではCDでは歌詞と歌に、ライヴではそのアンサンブルに、あら恋はピアニカの独創性・抒情性とライヴでの音の鋭さに感服しました。と、いうか日本の若手音楽、しばらく見ぬ間にかなり層も厚く質も高くなっているのだなと、ちょっと最近わくわくさせられています。
by wavesll
| 2014-09-07 01:46
| 私信
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