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音楽だけを追い求めていると刺激だけを求め、人として大事なものを失ってしまうのではないか

先日人と話していて、"音楽は快楽を与えるもので、音楽だけを追い求めていると刺激だけを求める人として大事なものを失った人間になってしまうのではないか"という話をしました。

これは自分からすると非常に納得・体感できる話でもありました。
邦ロックから離れて洋楽やインストに傾倒して以降は音楽から言語的意味性は消え、その音の感情と情景のノンバーバルな刺激のみを追い求めていたし、音として良ければ汚い言葉も思想もOK.むしろその汚濁から美しい音が生まれるなら汚濁こそ貴いという価値の逆転も起きていました。

が、その上でよくよく考えると邦ロックに傾倒していた頃、歌詞にのめり込んでいた時も同等に危ういのだなと。
音楽の歌詞は、特にバンドのモノはフロントマンの独創であり、作詞家の思想が、つまり他者を介さない濃い言葉が音楽の快楽を持って脳に浸み込む。これは確かに社会性を失いそうだし(というか社会性のあるロケンローって失笑でしかないし)、破滅、あるいは感情の増幅などの脳内化学物質操作という側面が音楽にはあるのは否めません。思想発信ツールであるし演者の力はロゴスでなくパトスへ直接かけられるから、本当に強靭な振動を精神に与えるものだなと思います。

閑話休題、この間光が丘IMAで『カムイレラ』という舞台を観ました。
国後アイヌの反乱の史実?から着想を膨らました武士とアイヌの娘の悲恋のミュージカルなのですが、これがとても良かった。歌に力があったし、役者の目力が凄かった。何度もぐっと来て最後は鳥肌がぶわっと立ちました。

ただ、惜しむらくは楽曲がアイヌっぽくないかなとは思いました。イヨマンテはとても良かったのですが、楽曲はほんとミュージカルの楽曲って感じでアイヌ音楽をどうミュージカルに落とし込むのか期待してしまっていた自分としてはそこが残念でもあり、でもきっと私が求めるようなアイヌっぽさを音楽に出してしまうと対象が非常に狭い、マニアックなものになってしまうだろうなとも思いました。

アイヌのムックリやトンコリとあの茫漠とした北海道の自然の生活の音を楽曲で顕せたら、それだけで魔法が働いてあの時代のあの場所へ精神が飛ばされるのではないかな、と思っていました。あ、幕が開いたときに冷気が出たのは北海道へのいざないとしてとても良かったです。

そんなこともあって、前半は何度も集中を切らしてしまっていたのですが、最後に鳥肌まで出たのは、音楽の魔法に頼らない、真っ直ぐな物語と演技の王道の力強さに(自称不感症人間の)自分も心動かされてしまったのかなと。

劇を見て、「あぁ自分は余りに音楽という魔法に魅了され過ぎてそれにリソースを割きすぎたせいでひとの心というものに関するまなざしが浅くなってしまっていたのではないか」「いきなり呪術レベルにいくのは無理だし、一つ一つ丁寧に積み重ねることが大事だ。自分でやるなら全力で革命をやるために全力で基礎をやらねばいかん」と思いました。正直最近は小説映画どころか漫画すら読まない物語の乏しさでしたから。自分の語彙や感受性が人として鈍っていたのだろうと、色々と最近気づかされています。

さて、その上で、音楽の魔術と人としての物語の力を両立する。人としての血が通っていつつ音楽的にも面白く違った世界へいざなってくれる音はあるかなと思い、中目黒TSUTAYAでZAZの『Recto Verson』を借りてきました。

ZAZはBSプレミアムの番組『Amazing Voice』で知った現代シャンソンの歌姫。この2ndはYoutubeで聴いて、1stよりよりポップになって広く希求するものになったなぁと、一度きちんと聞いてみたかった一枚でした。

音楽の魔法で自由にされながら、自分の精神との"他者"としての関係を築けるような年齢になった今だからこそ、心に鳴らせる曲だなと思います。自我の確立の上での音楽体験はアーティストへの尊敬も含めてこれからやっていきたいところ。そしてそれを超える音楽体験をさせてくれる演者こそDopeで天上な星でしょう。

一曲紹介しましょう。一曲目の、この星に生きるすべての旅仲間へ捧ぐ曲です。これを聴いて、また人生の起伏を楽しめる気になりました。



こちらのサイトさんで日本語訳詩が読めます。英訳しているサイトのあるので、お好きな方でどうぞ。フランス語が出来る方はオリジナルで。

はははw最後はやっぱり音楽に行きついてしまったwまぁ映画や小説漫画も読んで物語を摂取していきたいです。あ!今季はドラマ観てました。『ペテロの葬列』が非常に面白かった。以前のシリーズもみてみたいなぁ。『昼顔』も面白いらしいですね。
by wavesll | 2014-09-16 22:22 | 私信 | Comments(0)
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