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第十回 酒と小皿と音楽婚礼 - セルゲイ・パラジャーノフ / アシク・ケリブ & 余市12年 WOODY & VANILLIC

Ашик-Кериб
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以前、『ざくろの色』で言及したアルメニア人映画監督、セルゲイ・パラジャーノフの遺作となった『アシク・ケリブ』を観ました。

正直いうと『ざくろの色』は私には高度すぎて、非常に透徹とした美しさは伝わるのだけれども、解説を聴いてようやく場面の意味がわかる有様だったのですが、この『アシク・ケリブ』は原作がロシアの文豪レールモントフがトルコの昔話をもとに書いたものだけあり非常にわかりやすく、面白かったです。

柘榴が非常に効果的に小道具として登場するのですが、ペルシャ料理では柘榴が多く使われるから、彼の地でのソウル・フード的な営みへの結びつきがあるからだろうなと想ったり、ヒロイン初め女性陣の眉が繋がっているのはウズベキスタンのように、繋がった眉が女性の貞節を顕すからなのかななんて思ったりとか思いました。吟遊詩人アシク・ケリブが恋する女性と結ばれるために放浪の旅へ出るシンプルな筋立てと、明るい演出が、パラジャーノフ入門にはぴったりだなと思いました。

そして何より音楽がいい!現地の民族音楽が全編にわたって展開されていると想うのですが、『リヴァイアサン』以来のその映画ディスクを音楽として流したくなる完璧なサウンドワークでした。

と、いうわけで、今回はこの企画始まって以来の、映画一本を音楽ととらえるという形でのご紹介でした。

昨年も一本、音楽が素晴らしいなという映画がありまして、それは高倉健さん追悼で午後ローで流れた『網走番外地 北海編』なんですよね。(今月20日に新文芸坐で上映があるみたいです。もし宜しければ是非!)

網走番外地シリーズは初めて見たのですが、濃ゆいキャラクター達の丁々発止と、荒唐無稽な位のアクション、そして特にこの『北海編』の昭和ジャズな趣は、ルパンの原型ってこれだったんじゃないのってくらいの痛快な面白さがありました。同日に新文芸坐で上映される『南国の対決』も午後ローでみたのですが、こちらもほろりとさせられる名作なので、ほんとお勧めです。

最近、映画を見る機会が多くこの間もエビスガーデンプレイスシネマのこけら落としでのウッディ・アレン『マッチポイント』を見たのですが、これも快作でした。何か表現をする時っていうのは、どうしても魅せたい一点を定めて、きらりとまとめるとシンプルに響く作品を作れるんだなぁと、この鮮やかな結末の映画を見てほれぼれしました。映画は人生の局面の生き方を教えてくれますね。エビスガーデンシネマも、椅子がほんとうに心地よくていい箱だったので、上手いこと言ってほしいです。

あぁ、すっかり話がそれてしまいました。そう、『アシク・ケリブ』。実はこのエントリの冒頭に載せたように、Youtubeで全編上がってるんですよね。字幕がないからあれですが、中東のいい音楽無いかなという時にBGMとして流すには最適かな、なんて思います。

また、『アシク・ケリブ』について検索するうちに、パラジャーノフに関する卒業論文のpdfを見つけました。DVDについている解説映像や、関連書籍の内容がよくまとめられているので、ご興味がある方にはお勧めです。

さてさて、今夜の酒を紹介しましょう。
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余市12年WOODY & VANILLIC、マッサンの御当地、余市蒸留所限定のシングルモルトです。
今年の雪まつりに両親が出かけ、その北海道土産で呉れたこのウィスキー、ちびちび飲んで、ついに今夜飲みきってしまいました。琥珀色が写せずすみません。

グラスに注ぐと甘やかな香りが部屋に広がり、この香りと滋味を味わいながら聴く『アシク・ケリブ』はまた格別となります。ペルシア地方も、イスラムが広まってからは禁酒でしたがその昔、『ルバイヤート』の時代なんかは美味い酒に喉を鳴らした事でしょう。ウズベキスタンはワインの生まれ故郷とも言われていますしね。遥かな中東に、乾杯。
by wavesll | 2015-04-08 21:40 | La Musique Mariage | Comments(0)
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