真理は更新されていく試行錯誤の中に -『物質のすべては光』を読んで

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半隠遁生活も10日になると、何かしらやりたくなるもので、昨日野毛の図書館でノーベル物理学者フランク・ウィルチェック著『物質のすべては光』を借り、今読了したところでした。

学生時代ブライアン・グリーン著『エレガントな宇宙』に心躍らせ、"唯光論"なる妄想似非科学記事をぶち上げた人間としては、「マジで物質は光なのか!?」と要らぬ期待をしながら手に取ったのですが、物質の全ては光ではありませんでした。『存在の耐えられない軽さ(The Unbearable Lightness of Being)』をもじった『The Lightness of Being』という原題の方が気が利いてるかな。それでも、物質の中の一部は光子だったり、情報(ビット)から物質(イット)を作り出せたり、時空を昔でいう"エーテル"が満たす"グリッド"が存在する、といった論は非常に面白く感ぜられました。単行本が出て6年経ち、文中で触れていたヒッグス粒子が発見されたし、重力波も確認された今、また新たな本をウィルチェック博士には書いてもらいたい。

ただ理論的な処は正直おっつかないところもあり、できれば『エレガントな宇宙』並みに平易に描いてもらいたいですが。それでも、ウィットに富んだ語り口からは、一般向けに描こうと努めていることを非常に感じました。

博士の関心が手品から宗教、そして物理へいったのには、非常に共感します。
この世界についてのワクワクするような真実が知りたい、と考えた時に、今一番面白い噺を提供してくれるのは物理な気がするからです。
<32次元にも巻き上げられた"量子次元"がある>、<質量ゼロの物質から質量のある物質が生まれる>なんて想像を絶しませんか?それから比べるとちょっと啓典はダイナミズムに欠けるというか。
そして、私が書いた「精神次元」なるアイディアが一蹴に伏されてしまうように何より信憑性のある科学的言説は、"確からしさ"がある程度担保されている、というのも真理的でいいですよね。一方で、理論物理で予期された現象が、観測で実在が判明するという流れは、神々しさすら感じるようなwkwk感と言うか、GODが書いたプログラミング書物を解読する行為のようにも想えます。

本書の中で、”科学者は天然自然の物理現象をプログラミングで再現し未来を造る野望に対しては現在謙虚な態度を取っている"と書かれていました。何しろ変数を入れるのが膨大になり、真の宇宙を顕すには多次元をも組み込まなければならないからだそうです。物理現象、恐るべし。未来予測は社会科学の方がイレギュラーな因子が多く難しいのかもと想っていたのですが、真実は物理現象で森羅万象を知る方が困難かもしれませんね。

そんなゴールは彼方にある、というか中ボスを倒すと次のボスの城が見えてくる遠大な科学のロード。
此の本を読みながら、理論の過程をさっと見し、結論だけしか理解できないのは、サッカーをみててゴールしか理解できないのと同じ、理力の弱さを恥じ入るばかりだなと想いました。私が仕事ができないのも、派手なゴールにしか価値を見いだせない、技術に対する素人振りから来ているのだろう。手を動かすことの偉大さを感じました。

と同時に幾らドラッカーが"白亜の塔の内部の智慧はもはや通じなく、学識と技術が組み合わされた『テクネー』の時代が来る"と言っても、真理を追究する学問が学問たる領域の輝きこそ、人類が生み出す真に価値あるものだと私は感じ、「何の意味があるんだ?」と世間的に揶揄されたとしても、この分野こそが人間が生きている価値なのだと、半ば宗教的に想っています。でも宗教的盲信はいけません。何しろもっとも素晴らしい真実は、試行錯誤で更新されていくメカニズムを持った理力の至宝なのですから。今世界で宗教テロ、移民排斥など、バベルの塔に雷が落ちたかのようなバックラッシュが起きていますが、再び人類に統合の機運が生まれるとしたら、”全てに平等”な物理現象からかもしれないな、等と想いました。

モーニング娘。'14 『時空を超え 宇宙を超え』(Morning Musume。'14[Beyond the time and space]) (Promotion Ver.)

by wavesll | 2016-03-01 14:41 | 書評 | Trackback | Comments(0)
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