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幻魔大戦・タルカス 本邦からの私信

【CM】映画「幻魔大戦」TVCM(1983年)

Keith Emerson - Challenge Of The Psionic Fighters


Keith Emerson氏の訃報に触れ、安らかな眠りを願います。手が上手く動かないことからの自らの銃弾での死という事ですが、生きてほしいというのは残された凡人のエゴかもしれませんが、しかし。

TLで、多くの人が『幻魔大戦』に触れているのを観て、Youtubeで検索すると、私が生まれる前にこんなニューエイジなドラッグ・ムーヴィーがあったのかと想い、早速近所で借りてきたのでした。

みた感想としては、映画自体は、画は当時としては弩級なのはわかるけれど、長大な原作を2hで纏めるとこうせざるを得ないでしょうが、演説に次ぐ演説と言うか、文学的余韻と言うよりダイジェスト。その意味で神話的映画で、新興宗教映画ぽいw。ただ、新宿や吉祥寺の風景から幻想へ入るのはとても面白い当時の記録に想えました。

日本の風景に現れるサイボーグ戦士とサイキックと幻魔という超現実。ハリウッドがアメリカを舞台にするように、日本も仮想を自国風景に組み込む風土。それを活かせば高度文明都市国家になりそうもあり、反面オウム的なものを産む風土にもなる。 実際、この映画ではハルマゲドンという言葉がフィーチャーされ、この終末思想感はその後のバブルを経て、現代における無差別テロ宗団の始まりに繋がったところもあるでしょう。

また石ノ森章太郎が原作と製作に関わっていて、角川春樹が出資、そしてキャラクターデザインで関った大友克洋は5年後『AKIRA』を造る。サイキックというテーマもそうだし、幻魔大戦で音楽で取り上げられた鼓童が、AKIRAでは山城組になるというのも何か流れが見えます。そして「逃げてはいけない」というのがテーマの一つになっているのは、後のエヴァンゲリオンに繋がるラインも見えるような気がします。

アニメ映画文化は、とりわけその"文脈"を読むことが面白く、ある物語のイデア(それは神話と言うのかもしれません)の変奏曲を時代ごと流派ごとに奏で続けている、オタクと言うのはその知識を競う、という潮流が、一時期まではありましたね。その衒学的・社会学的なヲタ文化へのアプローチは『動物化するポストモダン』あたりで打ち止めと言うか、ブームと進化が終わった気がしますが。

さて、幻魔大戦。ラストバトルでキース・エマーソンの地球を護る者が流れるのは凄い光景でした。ラストの幻魔が飛影の黒龍波みたいだなーとか、またしても文脈を見出そうとする悪い癖を発揮しながら、EDまで楽しめました。作品としては『ホーリー・マウンテン』に通ずるものを感じたり、『シャーマンキング』もここからインスパイアを受けたのでは、なんかも想いましたね。やはり少年漫画的な一つの物語のイデアに関わる主題だったのでしょう。超能力・仲間・善悪の戦いは。フィフス・エレメントもそうだし、ゾロアスターの神話を挙げるまでもなく神話の一つの型でもあります。そんな連綿と続く物語の一つの中で、とりわけ大きな役割を果たしたのがキース・エマーソン氏の音楽でした。

それにしても、残念です。体がそういう状態では厳しかったかもしれませんが、ビルボードでの来日公演を行くか行くまいか迷い続けていたもので、最近、ELPを聴いていたのです。
そして何故か幻魔大戦も気になっていました。虫の知らせと言うにはあまりにか細い注目だったかもしれませんが気にかけておりました。

日本とゆかりのあったエマーソン氏、私が聴く最初の取っ掛りとなったのは、吉松隆さんによる『Tarkus』のオーケストラカヴァーヴァージョンでした。日本からのレクイエムとして、またこの演目が奏でられる機会があれば、馳せ参じたいなと想います。

TARKUS タルカス.wmv

by wavesll | 2016-03-12 22:03 | 映画 | Comments(0)
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