『糸巻きの聖母(バクルーの聖母)』が圧倒的でした。綿飴のような質感(スフマートというらしい)。レオナルド派の絵も多数あったのですが、不気味というか、ダヴィンチの画力レベルの高さが際立っていました。ダ・ヴィンチは今まで“ちょっと理知的過ぎるかな”という印象で、実際レオナルド派は実際今回見てそう感じたのですが、糸巻の聖母のやわらかさ、たおやかさは本当に心に安寧をもたらしてくれました。 ダ・ヴィンチ以外の作品では彼の師匠、ヴェロッキオの『戦士の肖像(アレクサンダー大王?)』のレリーフとレオナルドの弟子サライによる『12歳のキリスト(若き救世主)』のオレンジの衣は良かったです。また冒頭に現在のヴィンチ村の写真があったり、飛行機の設計案の手記がみれたり。個人的には最後の展示室にあったダヴィンチの都市計画案もみれたのが嬉しかったですね。 平日二も関わらず結構混んでいて、チケット購入に10分、展示に入るのには並びませんでしたが『糸巻の聖母』を間近で観る為に20分ほど列に並びました。中規模な展示でしたが、悪くはない展覧会でした。 これほんと好きな展覧会でした!人間の欲、狡さ、悦楽…ヒトの生気が肉感的に描かれる。カラヴァッジョ本人も凄まじい筆でしたが、カラヴァジェスキと呼ばれるフォロワー達も本当に良い絵。空いてる中で観れる愉楽。薦!です。 いいと想ったのを連ねていくと、 シモン・ヴーエ『女占い師』老婆の顔、男の顔!バルトロメオ・マンフレーディの追随者『ブドウを食べるファウヌス』鬼感。《羊飼いへのお告げ》の画家『バラの花を持つ少女』中性的なイマっぽさ。アクアヴェッラの静物の画家『桃の入った籠と少年』大胆な構図と少年の顔!ジョバンニ・バリオーネ『自画像』の目!バルトロメオ・マンフレーディ『キリストの捕縛』金属の重厚な質感。 そしてミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ『果物籠を持つ少年』弾ける生命感『バッカス』の美少年には男なのにうっとりしてしまう。『ナルキッソス』や『エック・ホモ』等男の身体を美しく描く。『エック・ホモ』はチゴリのも良かった。ピラトの目が澄んでいて。 カラヴァッジョ『法悦のマグダラのマリア』冥界の色気。ジョバンニ・フランチェスコ・グエリエーリ『悔悛のマグダラのマリア』ドクロに恥部を刺激されてるようなエロさ、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール『煙草を吸う男』火の表現。 ジョバンニ・ランフランコ『牢獄で聖アガタを癒す聖ぺテロ』のような牢獄シリーズやカラヴァッジョが盾に描いた蛇のヌメリが鮮やかな『メドゥーサ』等の斬首コーナーがあった。オラツィオ・ポルジャンニ『ダヴィデとゴリアテ』の首斬り場面は弩迫力。 ヘンドリク・ブリュッヘン『合奏(聴覚の寓意)』ふくよかな悦楽やオラツィオ・ジェンティレスキ『スピネットを弾く聖カエキリア』天使による楽器演奏の快楽シリーズも素晴らしかったです。 秀吉の命で殺された宣教師達を描いたタンツィオ・ダ・ヴァラッロ『長崎におけるフランシスコ会福者たちの殉教』なんてのもありました。カラヴァッジョ自身38歳でこの世を去り、生涯の間に何度も裁判沙汰になるアウトローだったそう。その裁判文書記録?も展示。芸術で法をも乗り越える、凄い時代だし、凄い才能。『バッカス』の髪が灯りできらきら輝き、こそこそ天上を奏でる画だなと恍惚を感じました。 理知的なレオナルド派に対して本能的なカラヴァッジェスキという好対照の展示を楽しむことができました。東京の東側に纏まっているし、一緒に観るのもお薦めです。 そして国立西洋美に来た時のお楽しみ。常設展の撮影をまたしてきてしまいました。去年あたりで初めて常設展に行き始めたのですが、これが本当に楽しい。マイブームになっていますw アンドレアス・リッツォス『イコン:神の御座を伴うキリスト昇天』 14世紀シエナ派『聖ミカエルと龍』 ヤコポ・デル・セライオ『奉納祭壇画:聖三位一体、聖母マリア、聖ヨハネと寄進者』 カルロ・クリヴェッリ『聖アウグスティヌス』 フランチェスコ・ボッティチーニ『聖ニコラウスと聖カタリナ、聖ルキア、聖マルゲリータ、聖アポローニア』 アンドレア・デル・サルト『聖母子』 ジョルジョ・ヴァザーリ『ゲッセマネの祈り』 パオロ・ヴェロネーゼ『聖カタリナの神秘の結婚』 ティツィアーノ・ヴェチェッリオと工房『洗礼者ヨハネの首を持つサロメ』 ディルク・バウツ派 『悲しみの聖母 / 荊冠のキリスト』 ブーケラール、ヨアヒム『十字架を運ぶキリスト』 ヤーコブ・ヨルダーンスに帰属『ソドムを去るロトとその家族(ルーベンスの構図に基づく)』 グイド・レーニ『ルクレティア』 コルネイユ・ヴァン・クレーヴ『プシュケとキューピッド』 ペーテル・パウル・ルーベンス『豊穣』 ペーテル・パウル・ルーベンス『眠る二人の子供』 バルトロメ・エステバン・ムリーリョ『聖フスタと聖ルフィーナ』 アントニオ・ベルッチ『キリストの降架』『羊飼いの礼拝』 ジョバンニ・バッティスタ・ティエポロ『ヴィーナスによって天上に導かれるヴェットール・ピサーニ提督』 ピエトロ・ロンギ『不謹慎な殿方』 ジャン・マルク・ラティエ『マリー=アンリエット・ベルトロ・ド・プレヌフ夫人の肖像』 ユベール・ロベール『マルクス・アウレリウス騎馬像、トラヤヌス記念柱、神殿の見える空想のローマ景観』 アリ・シェフェール『戦いの中、聖母の加護を願うギリシャの乙女たち』 ウジェーヌ・ドナクロワ『馬を連れたシリアのアラブ人』 ウジェーヌ・ドナクロワ『墓に運ばれるキリスト』 ジャン=バティスト・カミーユ・コロー『ナポリの浜の思い出』 ジャン=フランソワ・ミレー『春(ダフニスとクロエ)』 ギュスターヴ・ドレ『ラ・シエスタ、スペインの思い出』 エデュアール・マネ『花の中の子供(ジャック・オシュデ)』 クロード・モネ『舟遊び』 クロード・モネ『波立つプールヴィルの海』 クロード・モネ『ヴェトゥイユ』 クロード・モネ『陽を浴びるポプラ並木』 クロード・モネ『しゃくやくの花園』 ジョルジョ・ギージ『人生の寓意』 ウジェーヌ・ドナクロワ『ゲーテ『ファウスト』による連作:空を飛ぶメフィストフェレス』 ジャック・カロ『聖アントニウスの誘惑(第二版)』 エミール=アントワーヌ・ブールデル『ヴェールの踊り』 エドモン・アマン=ジャン『日本婦人の肖像(黒木夫人)』 ピエール・ボナール『働く人々』 ジョルジュ・デヴァリエール『聖母の訪問』 モーリス・ドニ『シエナの聖カテリーナ』 モーリス・ドニ『雌鶏と少女』 ピエール・ボナール『坐る娘と兎』 ポール・ランソン『ジギタリス』 エミール・ベルナール『吟遊詩人に扮した自画像』 ポール・ゴーガン『海辺に立つブルターニュの少女たち』 ポール・ゴーガン『水浴の女たち』 ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ『貧しき漁夫』 アンリ・ファンタン=ラトゥール『聖アントニウスの誘惑』 ギュスターヴ・モロー『牢獄のサロメ』 ダンテ・ガブリエル・ロセッティ『愛の杯』 ジョン・エヴァリット・ミレイ『あひるの子』 ジョバンニ・セガンティーニ『風笛を吹くブリアンツァの男たち』 ジョバンニ・セガンティーニ『羊の剪毛』 フランク・ブラングィン『しけの日』 ウジェーヌ・カリエール『クレマンソー』 ジョルジュ・ルオー『道化師』 ジョルジュ・ルオー『リュリュ(道化の顔)』 EL JARDÍN DE LOS PRESENTES (1976) L.A. SPINETTA
by wavesll
| 2016-03-24 22:34
| 展覧会
|
Comments(2)
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desire_san at 2016-04-01 21:34
こんにちは。
私もレオ「ナルド・ダ・ヴィンチ 天才の挑戦」展を見てきましたので、楽しくブログを拝見しました。 国立西洋美にの常設展も充実してきましたね。海外から来る美術展より魅力がある作品が多いくらいですね。 レオナルド・ダ・ヴィンチ円熟期の傑作『糸巻きの聖母』を初めて見られてさすが巣はらしいと思いました。 私は完成した作品が20点にも満たないダ・ヴィンチが、なぜ術史上最も有名で最も偉大画家と言われているかについて作品名の魅力も含めて考察してみました。読んでいただけると嬉しいです。ご意見・ご感想などコメントをいただけると感謝いたします。トラックバックも大歓迎です。
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wavesll at 2016-04-02 10:07
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