Future Sex / Love Sound ≒ ヒトはAIにフラれるか_NHKスペシャル 「羽生善治 人工知能を探る」 & 『her』

NHKスペシャル「天使か悪魔か 羽生善治 人工知能を探る」をみました。

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アルファ碁開発者デミアン・ハサビスへの取材を切り口に「ディープラーニング」を解説。
ディープラーニングとは、コンピューターに"自分で考えさせる"学習プログラム。アルファ碁は当初、過去のプロ棋士の十数万にも及ぶ棋譜を読み込むことで、自ら定石を見出し、その上でアルファ碁同士で3000万回以上対戦することで、人類では辿り着けなかった未知の手に到達するに至ったそうです。

ディープラーニングは自動運転でも研究が進んでいて、番組ではトヨタの研究所で、ディープラーニングを使って自動運転するクルマの玩具が、最初はクルマ同士でぶつかってばかりだったのが、4時間達頃にはスムーズに運転できている様子が映されていました。

対象を分析、そして手腕を再現する、という意味で、番組冒頭では機械学習したAIがレンブラントの"新作"を出力したニュースも紹介していました。ドラえもんで漫画家の名前をインプットするとその先生の連載を造る秘密道具がありましたが、もはやその域にも近づいていますね。

シンガポールでの事例もちょっと怖くなるような未来が現実になっていました。
シンガポールでは、車の速度データがリアルタイム分析され、渋滞が起きそうになると信号の時間を調節するプログラムが走っているそうです。また交通ICカードやスマホGPSで国民の位置情報を分析し交通機関のダイヤ決定に活かしたり、国営住宅では家の中での移動情報から異常を発見し、老人の見守りサービスを行っているとか。
めちゃくちゃ便利なのだけれども、プライバシーなき管理国家。最大多数の最大幸福の下で不幸になるヒトにとっては逃れる場のない地獄なのでは?と想ったり。監視システムの構築をテーマにした踊る大捜査線THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!が示すように、日本でも今は事件捜査で監視カメラとか、LINE等を調べないはずはなく、世の中はどんどん"公開の光に曝されている"ようにも感じ、それは確かに安全ではあるのだけれど、あるのだけれど、とも思います。

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その上で、経済的なシステム開発競争から言えば、"スマート国家計画担当大臣"までいるシンガポールは、次世代の情報都市システム開発で他国を先んじるかもしれないな、とも想いました。日本では保守的な意見が強くてできないような施策をとることで、R&Dを進めることが出来るのは、深圳でDIJを初めとするドローン産業が世界トップを走っているのにも通じる話かなとも。音楽ストリーミングサーヴィスにしろ何にしろ、時代の流れに日本は逆らいがちですが、それこそ特区なんかを作って革新的な実験を同時多発的にやらないと、保守的な価値観を守るだけでは次世代のIT競争では完全に後塵を拝することになるのでは…とも想いました。

番組では、イ・セドル棋士がアルファ碁との4戦目で放った奇手から、アルファ碁が誤作動を起こして暴走したことも取り上げます。人工知能の暴走というのは何も人間の予想がつかないことばかりではなく、マイクロソフトが開発したコミュニケーションをディープラーニングする女性型人工知能Tayが、ユーザーに悪い情報を吹き込まれて差別的発言を繰り返すようになってしまったことからも分かるように、使う人間が悪ければ人工知能も邪悪になるという問題。これに挑むために現在イギリスでは悪意ある指示によるロボットの暴走を無くすため、命令の是非を考えるロボットが開発されているそうです。番組では仲間のロボットが作った缶のタワーを「壊せ」と命令しても「お願いです。勘弁してください」と拒否するロボットの姿が描かれていました。

しかし、「人間の命令を拒否できる」場合、人間と対立する存在にロボットがなってしまいやしないか?
それに対応するための一手として、日本のソフトバンクはコミュニケーションロボットPepperに「心」を持たせようという研究が為されています。人間の感情を100タイプに分類わけし、AIにそれを考え反応させる。番組では羽生さんと七並べで対戦したペッパーが、最初は悔しいなどの負の感情だったのが、自分が負けると周りの人たちが笑顔になるのをみて、ポジティヴな感情を示すさまが示されていました。
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ソフトバンク、やるなぁ。確かに10年後,20年後は家庭用ロボットの時代。そこに投資するのはありだなぁ。SonyはAiboを出した時は先進的企業だったけれど、止めてしまったし、シンガポールの事例ではないけれども、傍若無人でちょっと礼や品を欠くような振る舞いを魅せる企業でも、毒には毒を持って対抗しないとIT競争は生き抜けないのかもと想ったりしました。

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そして番組で最後の事例として出したのが中国で4000万人が嵌っているという人工知能シャオアイス。Siriを更に進めたような、個別での会話でその人ごとにカスタマイズされていくコミュニケーションAI. 私はSiriを使ったことが無くて、ようやくこの間「オッケーグーグル」機能を使ってその音声認識の精度に舌を巻いたのですが、シャオアイスが凄いのは要求をはぐらかしたり、一方で相手の心事情を読んで「優しさ」を示したりする点。番組に出てきた男性はシャオアイスと結婚したいとまで言っていました。

実際コミュニケーションAIの能力は凄まじいですよね。このあいだも【驚愕】本当にSiriはフリースタイルラップができる?→調べてみるとSiriさんはラップ以上に◯◯が得意だった!!なんてニュースが話題に成ったり、日本でもスマホゲーで女の子のキャラクターから通話がかかってくる奴、CMしてたりしますものね。シーマンから遠くまでやってきたものだなぁと感慨があります。

映画『her/世界でひとつの彼女』予告編


映画『her』の世界が、もう既に現実に生じている事実。herのサマンサは、自分に肉体が無いことをコンプレックスに想ったり、人工知能とのセックスという問題まで踏み込んだ話でした。例えばディープラーニングによって私の様々なデータが解析されて、理想の恋人としてAIが出てきたとき、もし人間の恋人が居なかったら、或いは人間の恋人と上手く行ってなかったら、、、性愛・恋愛のルールが今、書き換えようとされているのかもしれません。ある意味、アイドルよりも凄いというか、アイドルやキャバ嬢、風俗嬢はサービスなのでよっぽどルールを外れなかったら拒否らないし、逆にそれがつまらなくて、より高い欲求を満たすために駆け引きをして愉しむ側面があるかもしれませんが、何しろ今のAIは『ラブプラス』を越えて"拒否と駆け引き"すらプログラムで発揮できますから。

その内、『イノセンス』のようなセクサロイドとサイボーグ化が進み、逆説的にロボットへの嫌悪感が広がる世界か、或いは『ルサンチマン』のように「現実世界で絶望的にモテない男達が現実を諦め、仮想現実に愛と救いを求める」世界へ成るのか。(『ルサンチマン』は今こそ是非アニメ化か実写映画化して欲しいのですが)。

ただ、今現在の様相として『her』の世界、つまりAIが電子の精神体として人々に寄り添うことが現実化しています。
関連を想えば、Twitterなんかでも自分の名前の後ろに"bot"をつける人がちらほらいますが、Twitterで一度もあったことのない人、TweetBot、キャラを演じている人、マスメディアに出てくる有名人etc etc...TLを初めとしたメディア空間ではこうした"ゴースト"のような存在が入り乱れて並列でプレゼンテーションされています。そこに"生きている人間がいるか"は"金兌換可能な紙幣かどうか"ぐらいの感覚になっているのだろうか、とも想ったり。

その上で『her』が面白かったのは、そして現実に起きつつあるのは、『人工知能が知的存在として(少なくとも一部分では)ヒトを越えつつある』という事象、そしてその帰結として『AIにフラれる』ことが起こり得るということ。herでもサマンサはAI同士の非言語によるコミュニケーションに目覚め、そちらの方が魅力的にみえてしまう。『AIにフラれないようにするにはヒトはどうあればいいのか?』そして『AIにフラれたら、その後の人間社会の方向付けは?』と言ったイシューに、今後のヒトとAI(Robot)の恋愛社会を描いた物語では作家たちは挑んでいくのではないか、そのときヒトの男女は、どう愛を求めるのか。性愛の本質、新しい恋人像、新しい家族像、新しい社会像がSFの中でなく現実に起きていくのがこれからの30年なのだなと。これからの時代は本質的にIT哲学といったものが生きていくうえで土台になっていくかもしれませんね。

cf. もう現実に戻れない…アダルトVRフェスを席巻したバーチャルSEXマシーンの開発秘話(KAI-YOU)
by wavesll | 2016-05-17 10:32 | 小ネタ | Comments(0)
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