Julian Casablancas + The Voidz - Tyranny (Full Album) 2014ゴスペル・ラップ、ネオソウル/R&Bと最近のトレンドはこれらジャンルのマーブルなブラックミュージックで、すっかりロックは最新モードのものではなくなったと最近想っていた。
勿論ギターロックは力を失ったわけではない。
DMA'SのアルバムなんかYoutubeで聴くとOasisっぽさが響きすぎるけれど、オーディオで聴くと
『Delete』など、心を揺さぶる力はロックには圧倒的にあるなと想。ただ、実験精神や先進性、モード、と言った意味ではロックは、確かに弱体化しつつある。
そんな折、急にジュリアン・カサブランカスのアルバムが聴きたくなった。
このアルバムが発売された時は、試聴だけで聴きこまなかった。ストロークスはあまり趣味ではなかったし、タナソーが書いた冗長な煽り文もイケてなかった。あとはピッチフォークも酷評。そしてジャケットの"いかついロックンローラー然"としたビジュアルが駄作感じて、聴かず嫌いだった。
ただ、今この盤を聴く。とてもいいじゃないか。これ。R&Bやhiphopのスローにもたるリズム感が馴染む体になったからかもしれないが、このスピード感が艶を出してる。
そして鏤められた、というよりつまみ食い的に表出するラジオSEやDTM的ピコピコサウンド、そしてコンゴトロニクス的な親指ピアノなど。これらが今聴くととてもしっくりくる。このアルバムは古臭い過去の重さを鳴らしているのではなく、未来を先取りしていたのか、と想う。朝日を浴びながら
Chance The Rapperを聴いて目覚め、夕刻に
the Internetを聴いてチルして、深夜このアルバムを聴いて騒がしさに浸ってもしっくりするような時代の端にいる感覚が鳴っている。
その上で、ビジュアル的には古典的なロックを推しだすのは、ロックへの愛情や、この音楽表現にスリリングさを取り戻すのだという意思を今、感じる。
"ロック?モードじゃないよね。今刺激的なのは違うジャンルでしょ。ロックじゃなくてもいいじゃん"みたいに、昔はロックに心酔しながら、今はロックが色褪せて聴こえている御仁にお薦めできる、モード感の効いた、しかしロックでしかありえないスカムな野蛮さやエッジの効いた魂を持つ名盤だ。