日本のマスコミ報道の貧弱さ ―BSドキュメンタリー パナマ文書 〜”史上最大のリーク”追跡の記録〜をみて

メディアスクラムによる舛添協奏曲がクライマックスに達した6/15の深夜、NHKBS1にてBSドキュメンタリー パナマ文書 〜”史上最大のリーク”追跡の記録〜が放映されました。

詳しくはhohon77’s diaryさんのこちらの記事で内容が文字起こしされているので読んでいただけたら幸いなのですが、ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)のメンバーでもある番組スタッフが、彼らのパナマ文書に載った不正を行っている人間たちへの取材が、まるでミステリー映画のような展開で描かれています。

こちらがパナマ文書を入手した南ドイツ新聞の南ドイツ新聞のバスチアン・オーバーマイヤー記者。海外の記者は署名記事を書いているだけでなく顔出しまでしているとは!覚悟の決まり方が、日本のジャーナリスト/報道企業とは一線を画している気がしました。
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取材はパナマにあるプラティニのオフショア企業、次にWebで検索したら出てきた(!?)オフショア企業設立指南の金融業者への囮取材。そしてタックスヘイヴンを使ってアブダビ首長国の高官であるカデム・アル・クバイシが不正な資金操作を行うのを援けているとみられるエドモンドドゥロスチャイルド銀行の男爵夫人への突撃取材の様子が流れました。

ロスチャイルドなんていうと陰謀論めいたものでしかみたことがなかったもので、関係者の顔をみたのは初めてでした。写真の右側のロスチャイルド男爵夫人に攻め入る番組記者。自分も反撃されるリスクを負ってのインタビューをする勇気といい意味で"強きを挫く"姿勢は、舛添氏を寄ってたかって潰した日本のメディア達の醜悪な姿勢とは異なり、胸がすく気がしました。
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本当に、ただの地方行政の首長の不正問題にこんなに日本全体に放映するニュース番組や新聞の枠が咲かれ続けたのって異常というか、水に落ちた犬を叩くようでみていられませんでした。本来なら、このICIJが行っているようにパナマ文書に切り込んだり、パナマよりもっと日本人が利用しているケイマン諸島に切り込んだりすべきなのに、全然調査報道を行わない。菅官房長官が「パナマ文書は調査しない」と言いましたが、安倍政権と懇ろの報道各社は完全にアンダーコントロールにあると苦言を呈したくなります。

舛添おろしに味を占めて、基本的人権が制限されるなどの自民党改憲草案の問題点を連日連夜報道してもらいたいものです。後は東京五輪などで暗躍する電通も報じてほしいのですが、報じられそうにもありません。

この「報じられない」という問題、私は安倍政権や電通が圧力をかけているのかと想っていたのですが、この間興味深い記事を読みました。

なぜ大手マスコミは「電通の疑惑」を報じないのか 東京五輪の裏金問題 (ITmedia)
マスコミの記者たちは「当局が動くまで静観」というスタンスだというのです。これを"はじける"といい、「はじける」というのは事件記者の用語で、「事件化」を意味する。つまり、「疑惑」に対して捜査当局や文科省などがオフィシャルに動きをみせた段階で、一斉に報道解禁をする準備を進めているとのこと。

捜査当局、公人が言及しない「疑惑」を報じない、ということは裏を返せば、日本のマスコミの報道スタンスというのは、実は国会、役所、警察などの公的機関がイニシアティブを握っているということになる。つまり、今回の「電通カット」報道というのは、日本のテレビ・新聞が、英・ガーディアンやFACTAという調査報道に力を注ぐジャーナリストの見解よりも、公的機関の見方にお伺いをたてているという「情けない現実」をものの見事に浮き上がらせてしまったというのは、裏取りを完全に当局に頼り、自力で調査報道できない日本の報道各社の貧弱さが浮き彫りになってしまった感があります。これでは権力の悪を暴くなど夢のまた夢。

ジャーナリズムで飯を食うのは大変な職業だし、政府批判だけに偏ってしまう左派ジャーナリズムにも反動が来た日本の情報空間ですが、自主独立し、権威を恐れず、覚悟の決まった報道をしてこそ社会の公器、現状は惨憺たるものですが、Web時代におけるジャーナリズム空間を上手いことできないものかという観点で考えれば"Webにモノを描いている"人間としても、何かできないことはないか、模索していきたいです。

それにしても日本の"ニュース番組"ってなんであんなに芸能ニュースが多いんでしょうね。スポーツも入れたら相当な時間を芸スポに割き、タブロイドみたいな質。政治・経済・社会をしっかり報じてもらいたい。視聴率がとれるのかもしれませんが、舛添氏の件でもそうですが、同じニュースを繰り返す必要、ないでしょう。それで数字がよくなってしまうのが絶望的なのかもしれませんが。後固定のコメンテーターもいらないと思います。それぞれ専門家をブッキングすればいい。そうした意味では文化欄と報道欄が分かれ、専門家に話を聞くTBSラジオのSession22は、形式としては好きですね。後は打ち切られちゃったけどニュースJAPANとすぽると!の感じとか。

もっとコアな話を言うと、BS1で朝4時から放送している世界各国の放送の同時通訳ニュース番組、あれを3h位にまとめて夜も流すようにするといいと思います。同じニュースでも米・英・仏・独・露・中で報じ方が全然違い、それぞれの国の報道のスタンスがみれるのが面白いので。もっと言えば、日本だとアフリカ・南米のニュースが足りてない気がします。ビジネスチャンス発見という点でも、ここらを補強するというのはいかがでしょうか?
by wavesll | 2016-06-16 16:05 | 小ネタ | Comments(0)
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