俵屋宗達、尾形光琳、そして酒井抱一と継承された琳派。その抱一の弟子、鈴木其一の展覧会へ行ってきました。
素晴らしい展示でした。中でも
『朝顔図屏風』は
『燕子花図屏風』を踏まえながら、新たな図案を創る。これは光琳が宗達の
『風神雷神図屏風』から
『紅白梅図屏風』を産むにも匹敵。更に
朝顔の蔓は抱一の風神雷神の叢雲に通ずる。イノベーティヴな屏風絵画。
『朝顔図屏風』を実際に生でみると朝顔の花が浮遊しその生々しさが蓮コラの様な、パンナコッタ・フーゴのパープルヘイズの様な無気味さも揺蕩わせていました。自然の生命力が持つホラーさというか、一種の色気がありました。そしてもう一つの目玉、
『夏秋渓流図屏風』の青い水の流れと緑のベタ塗りの迫力。こちらも点苔が不気味にまぶされていて強力な美がありました。この2画はサイズも大きくて生で見れたのは僥倖でした。
朝顔図屏風と夏秋渓流図屏風以外で一番良かったのは『藤花図』、麗しい青い藤に銀が鏤められて。銀はもう黒くなっていましたがこれを見逃す手はない綺麗な絵。その他『源三位頼政図』の着物の緑橙白や、
『松島図小襖』の海波の表現、
『蔬菜群虫図』の茄子や胡瓜、蛇苺の可愛らしさも好かった。
能画
『猩々舞図』の
ワキの着物の鮮やかさ、『小督局・源仲国図摺物』の美、『十二ヶ月花鳥図扇面』のさりげなさにある現代的な感性、『笠子に河豚図扇面』のカサゴ、
『迦陵頻図絵馬』のガルーダというモチーフの面白さ、『鶏に菊図』のカーヴの構図の妙、
『雪中双狗図』の萌え。ハオ。
面白いと思ったのは描表装という本絵の周囲にも書き込んで絵にする手法、
『業平東下り図』が好かった。他にも『四季歌意図巻』等ミニチュア図巻の試みや、図太い線でインドな風合いの
『達磨図凧』なんてのもありました。
あと『羅陵王舞楽面図』や『鐘馗・神功皇后・武内宿禰図』、
『大江山酒呑童子図』が良い絵でした。また其一派の重要な題材だった
『雪中檜図』も雪が垂れ落ちるデザインが素晴らしかった。
鈴木其一関連作も良かった。息子の鈴木守一も黄が美しい『石橋・牡丹図』薄紅の撫子が射す『蛇籠に流水図扇』、『秋草に鶉水月図』の幾つも押された印章が印象的でした。酒井道一『蓬莱・桜・瓢箪図』の淡く滲んだ色、酒井抱一の弟子、鈴木蠣潭『大黒天図』はサンタみたい。其一の門下、酒井抱一『屠龍之枝』も良かった。其一、蠣潭、さらには抱一等々画家達が勢ぞろいして集まって描いた『文政三年諸家寄合描図』なんてのもありました。
さらに其一の人柄を伺わせる彼がパトロンへ書いた書状も展示されていました。琳派の伝統と革新を其一を通して点だけでなく線や面で捉えられる佳い展覧会、
鈴木其一 江戸琳派の旗手展は一般1300円で10月30日(日)迄です。
cf.
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