『東京兄妹』 清らかな蒼い時間

初DVD化!!市川準&緒形直人『東京兄妹』ベルリン国際映画祭受賞の名作


映画『東京兄妹』をみました。
今も都電が走る、東京の小さな街で暮らす一組の兄妹の日常生活の風景をスケッチ風に描いたヒューマンドラマ。古本屋に勤める兄の日暮健一と写真屋で働く妹の日暮洋子は両親を亡くして以降二人で暮らしていた。健一には桂子という名の恋人がいたが、妹の将来を案じた健一は洋子が成人するまで結婚を待ってほしいと桂子に懇願する。呆れかえった桂子は健一との別れを決意。数日経ったある日、健一は友人で写真家の真を自宅に連れて来た。洋子は真が自分の写真屋にしばしば来店する客であると気づいて驚き、兄妹の環境が変わり始める…
という筋。

作中の清らかな品の貴さにまず心惹かれました。
日本映画の本流の美意識というか。現在私が見ていたTVやビッグバジェット映画がコミカルな大味だったり品に欠けるものが多かった印象のある中、本作の何気なくさりげない東京の情景の描写が今とても新鮮に感じて。

私も大塚や都電荒川線の地域を歩いてみたくなりました。永青文庫に春画店に行った際に都電に乗ったのですが、時のエアポケットに埋もれたような光景がそこにまだ存在していて。TOKYO NORTH デートなんかやったらほっこりしてしまいそうな予感がしました。

豆腐や風呂といった日常的で生活感のあるものが物語の象徴となるつくりにハッとさせられたし、うつり行く季節の中で兄妹の心の機微が色味を変えていくのがとても沁みました。

今も昔も清らかなものと下世話なものがあって、90年代というと邦楽のバブルの時期でしたが、劇中に出てくるのはクラシカルなインストゥルメンタルとチャイナ歌謡という音に、選別の眼を感じました。日常光景の音もとても綺麗に録られていて、とても美しかった。

音だけでなく所作も綺麗で。膝をついて襖を閉じる仕草に"ああ、この娘は兄にきちんと育てられてきたのだな"と感じさせられ、だからこそ恋人のフリーキーさやアプローチに惹かれたのだなと想いました。と同時に昔の知古に『ISに殺されそうな奴だ』と3人別々の機会に言われた身としては、生活を成り立たせる強靭さや"まともであること"の硬度に向かい合わないといけないなと、三村真をみて想いました。

芝居の美しさ、貴い気持ちにさせてくれる映画、大変愉しめました。この市川監督、08年にお亡くなりになられていたのは無念だったのですが、『ざわざわ下北沢』『BU・SU』、そしていとうせいこうの『ノーライフキング』なんかも撮っているんですね!これから観ていきたいなぁ。またこの映画を発掘しDVD化したDIG LABELの作品群も『もどり川』『ゴッド・スピード・ユー!BLACK EMPEROR.』など、生気あふれる映画が取り揃えられていて、凄い宝玉が隠されているダンジョンの入り口に立っているような気がしています◎

cf.
Godspeed You! Black Emperor's live at Shibuya DUO MUSIC EXCHANGE

by wavesll | 2016-11-15 20:16 | 映画 | Trackback | Comments(0)
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