クラーナハ展 & 国立西洋美術館常設展

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上野・国立西洋美術館へクラーナハ展―500年後の誘惑を観に行ってきました。

非常にいい展覧会。ドイツ・ルネサンスというのも初めて知る俄振だったのですが、クラーナハの画には時代を越えた感性を感じました。ルカス・クラーナハ(父)による『聖カタリナの殉教』のSFみたいな天変地異とデヴィッド・ボウイの様な銀金のスーツ。これが1508/09年頃の画とは思えない!

クラーナハ(父)による『正義の寓意(ユスティティア)』。一緒に行った子の“背景の黒のフォルムがとびきり”という言葉を聞きその通りだと想。この早筆で工房を率い絵画の大量生産を行った画家を素材にレイラ・バズーキが中国の複製画家達に6時間で描かせた複製現代アート『ルカス・クラーナハ(父)≪正義の寓意≫ 1537年による絵画コンペティション』も“ジャンプ漫画家達が描いた両さん”みたいで面白かったのですが、オリジナルは構図が頭抜けていて、その幼児体型もあいまってどぎまぎするような蠱惑で"正義"が描かれる非・バランスにやられました。

クラーナハの現代性は人物画の背景に顕著だと想います。父ナハの『ザクセン公女マリア』の水色、『フィリップ・フォン・ゾルムス=リッヒ伯の肖像習作』の黄色に浮かぶ首はSWANSのジャケの様。『ブラデンブルク=クルムバッハ辺境伯カジミール』の青緑もモダン、ゴッホの時代みたいな超越性。

父ナハ『ザクセン選帝侯フリードリヒ賢明公』の確かな筆致。この頃の貴族が着てる毛皮のジャケットが典雅でいい。父ナハ『夫婦の肖像(シュライニッツの夫婦?)』のしっかりした人間性を感じる描写力。父ナハ『神聖ローマ皇帝カール5世』、こんな顔だったのか!顎シャクレとるがな。

父ナハとゲオルグ・ペンツの『ザクセン選帝侯ヨハン・フリードリヒ寛大公』の二枚の顔がそっくりで本当にこの顔なんだなと。父ナハ『女性の肖像』の髪飾りと刺繍の美しさは子ラーナハ『ザクセン選帝侯アウグスト』『アンナ・フォン・デーネマルク』に通じ、この子ラーナハの二枚は序盤のピークの一つ。服飾の質感の美事さ。金糸刺繍や服の厚みの表現、素晴らしすぎました。

版画がとっても良くて。父ナハ『マグダラのマリアの法悦』、同じ題材をカラバッジョ展でみましたがより聖的で。マルティン・ショーガウアー『聖アントニウスの誘惑』の化物の良さ。父ナハの同題も化犬が可愛かった。あいつ五百羅漢図展にいたなwアルブレヒト・デューラー『龍と闘う大天使ミカエル』も見事。

父ナハ『聖ゲオルギウスと龍』なカッコ良さ。『聖ヨハネス・クリュソストモスの悔悛』の鹿の神々しさと植物の魔境感には舌を巻きました。父ナハ『ヴィーナスとキューピッド』『キューピッド』『ヴィーナス』の小悪魔な小娘の裸体の目の不健康な色気にやられました。父ナハ『パリスの審判』も魅力的な線で。『アダムとイヴ(堕罪)』の版画では輝かしいエデンが。絵画版『アダムとイヴ(堕罪)』では若い男女の悪い表情がロックな魅惑を放っていました。

父ナハの『ルクレティア』の狂った美人の美。透明なヴェールが艶めかしい。イスラエル・ファン・メッケネム『ルクレティアの自害』も伝統的で良かったのですが、デューラーといい、ちょっと正統派で押されすぎてクラーナハの革新性の引き立て役感がちょっとありました。

この展覧会ではクラーナハをテーマとした他の画家も展示してあって。マルセル・デュシャン『花嫁』も機械/器械での比喩表現は良。ジョン・カリン『スノ・ボ』はクラーナハ式の異様なS字身体で名カヴァーといった感じでかなり面白。

そしてこの展覧会の裏番がパブロ・ピカソが描いたクラーナハを基にした画で。『ヴィーナスとキューピッド(クラーナハにならって)II』のセンスの良さといったら!第1ステートと第2ステートがあるが白い方が好み。『ダヴィデとバテシバ(クラーナハにならって)』のサン・ラ感。ピカソの驚異的なディレクション感覚がクラーナハを媒介して伝わりました。

父ナハ『泉のニンフ』、これは凄い。男なぞ眼中にない野生の妖精の目、射ぬかれる。対する子ラーナハの『ディアナとアクタイオン』のアイドルとみまがう様なお色気もヤバかった。この2枚に『正義の寓意(ユスティティア)』の三枚が私的クラーナハ美人画三選でした。

“誘惑する絵-「女のちから」というテーマ系”コーナーの凄味。
父ナハ『不釣り合いなカップル』の若い娘の色香なやられる老人のみっともなさと金目当ての女。『ヘラクレスとオンファレ』のヘラクレスのだらしない顔wそしてオンファレがみつめるのは"こちら"。また『ロトとその娘たち』のビロードの描写とバックのソドムの滅亡描写をみれたのは嬉しいサプライズでした。

『洗礼者ヨハネの首を持つサロメ』の邪で得意気な笑み。『ホロフェルネスの首を持つユディト』、ポスターではクールネスを強く感じたが、実際にみると冷酷さというより正義を執行した“やってやったぞ”という紅潮が感じられとても印象的で、これは生でみれて僥倖でした。

クラーナハの描く赤ん坊は僧侶のような悟った目付きというか不気味さを感じて。父ナハ『聖母子と幼き洗礼者ヨハネ』・『幼児キリストを礼拝する幼き洗礼者ヨハネ』、『聖母の教育』、しまいにはダンシングベイビーのよな『メランコリー』、野性動物のような意志疎通の難しい生物としての子どもを感じたのは私自身が子供との付き合いが下手なのがあるからかもしれません。

ラストの部屋のテーマはルター。
クラーナハはルターの肖像画を目にした人も多いのでは。ルターの友人である父ナハによる『マルティン・ルター』の黄緑の背景に若々しいルター。聖職者でありながら妻を娶ったルター。父ナハ『マルティン・ルターとカタリナ・フォン・ボラ』これこれ!これみたことある!父ナハの挿し絵によるルター翻訳『新訳聖書(9月聖書)』は宗教改革の記念碑的書物、宇宙と芸術展でみた『種の起源』などの名著の初版を想起しました。

見どころの多い好い展覧会。来年1月15日迄。

常設展もみてきました。

スケッジャ / スザンナ伝
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聖ヴェロニカ
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聖ミカエルと龍
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アンドレアス・リッツォス / イコン:神の御座を伴うキリスト昇天
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シモン・ヴーエ / アレクサンドリアの聖カタリナ
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ジュゼペ・デ・リベーラ / 哲学者クラテース
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ペーテル・パウル・ルーベンス / 豊穣
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エドワールド・コリール / ヴァニタス-書物と髑髏のある静物
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エヴァリスト・バスケニス / 楽器のある静物
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ジョルジュ・ド・ラ・トゥール / 聖トマス
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アレッサンドロ・マニャスコ / 羊飼いのいる風景
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ニコラ・ランクレ / 眠る羊飼女
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カルロ・ドルチ / 悲しみの聖母
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アリ・シェフェール / 戦いの中、聖母の加護を願うギリシャの乙女たち
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ジャン=バティスト・カミーユ・コロー / ナポリの浜の思い出
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ジャン=フランソワ・ミレー / 春(ダフニスとクロエ)
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ギュスターヴ・ドレ / ラ・シエスタ、スペインの思い出
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オノレ・ドーミエ / マグダラのマリア
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ギュスターヴ・クールベ / 波
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エドゥアール・マネ / 花の中の子供(ジャック・オシュデ)
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カミーユ・ピサロ / 立ち話
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クロード・モネ / 舟遊び
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クロード・モネ / しゃくやくの花園
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クロード・モネ / ウォータールー橋、ロンドン
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モーリス・ドニ / 雌鶏と少女
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モーリス・ドニ / ≪雌鶏と少女≫のためのスケッチ
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モーリス・ドニ / 「フィレンツェの宵」より《カンタータ》のための習作(?)
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モーリス・ドニ / 「黄金時代」より《浜辺》のための習作
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モーリス・ドニ / 久我夫妻の肖像
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モーリス・ドニ / 久我太郎の肖像
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モーリス・ドニ / ジャンヌ・ロネー
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モーリス・ドニ / レマン湖畔、トノン
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モーリス・ドニ / 池のある屋敷
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モーリス・ドニ / 《フィエーゾレの受胎告知》のための習作
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モーリス・ドニ / サン・ポール聖堂ステンドグラス《聖ジャンヌ・ド・シャンタル》のための習作
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モーリス・ドニ / 『エロア』のための習作
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ポール・ゴーガン / 海辺に立つブルターニュの少女たち
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ポール・ゴーガン / 水浴の女たち
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アドルフ=ジョセフ=トマ・モンティセリ / カシスの港
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ジョン・エヴァリット・ミレイ / あひるの子
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ポール・セリュジェ / 森の中の四人のブルターニュの少女
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エミール・ベルナール / 吟遊詩人に扮した自画像
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ポール・ランソン / ジギタリス
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ピエール・ボナール / 座る娘と兎
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エドゥアール・ヴュイヤール / 縫いものをするヴュイヤール夫人
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モーリス・ドニ / シエナの聖カテリーナ
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ジョルジュ・デヴァリエール / 聖母の訪問
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ピエール・ボナール / 働く人々
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フランク・ブラングィン / しけの日
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レオン・オーギュスタン・レルミット / 落穂拾い
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ヴィルヘルム・ハンマースカイ / ピアノを弾く妻イーダのいる室内
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アンリ=ギヨーム・マルタン / 縫い物をする女
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ピエール=オーギュスト・ルノアール / 帽子の女
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アンドレ・ドラン / ジャン・ルノアール夫人(カトリーヌ・へスリング)
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ヨーハン・ハインリヒ・フュースリ / グイド・カヴァルカンティの亡霊に出会うテオドーレ
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ロヒール・ファン・デル・ウェイデン(派) / ある男の肖像
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ジョヴァンニ・ドメニコ・ティエポロ / 聖母子と三聖人
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ジョヴァンニ・セガンティーニ / 風笛を吹くブリアンツァの男たち
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アンリ・ルバスク / ハンモック
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ロジェ・ビシエール / 花を持つ婦人
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アンドレ・ボージャン / アルクマール運河、オランダ
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フェルナン・レジェ / 赤い鶏と青い空
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サム・フランシス / ホワイト・ペインティング
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ジャン・デュビュッツェ / 美しい尾の牝牛
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ジョルジュ・ブラック / 静物
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モーリス・ド・ヴラマンク / 町役場
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シャイム・スーティン / 心を病む女
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ジョルジュ・ルオー / 道化師
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ジョルジュ・ルオー / リュリュ(道化の顔)
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ピエール・ボナール / 花
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レオナルド・ビストルフィ / 死の花嫁たち
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cf.
レオナルド・ダ・ヴィンチ展*カラヴァッジョ展*国立西洋美常設展

黄金伝説展 古代地中海世界の秘宝&国立西洋美術館常設展foto shots
by wavesll | 2016-12-04 17:47 | 展覧会 | Comments(0)
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