欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき 第9章~最終章 書き起こし

欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき 第1章~第3章 第4章~第5章 第6章~第8章

後編「欲望の資本主義2017 ルールが変わる時」(Dailymotion)

第9章 数 リスク 不確実性

ルチル・シャルマ(モルガンスタンレーインベストメントマネジメント投資ストラテジスト 25年にわたり各国を調査 情報を分析『The Rise and Fall of Nations(国家の盛衰)』はアメリカでベストセラー)
「ケインズ主義は金融危機の後喧伝されたよね。でも私が見る限り状況はやや『ねじれて』いるね。ケインズが過去に言ったことが誇張されているように感じるよ。たとえばもう危機から7~8年経って経済は回復しているのに財政赤字を続けていいとはケインズは言わなかったはずだ。」

トマス・セドラチェク(チェコ総合銀行チーフエコノミスト 経済学者 24歳のとき初代大統領の経済アドバイザーに抜擢 チェコでベストセラーとなった著書『善と悪の経済学』は世界15か国語に翻訳)
「ニセのケインズ主義だね。ケインズの半分だけを見てもう半分を忘れている」

シャルマ
「たしかに予算を黒字にするのはいつだって難しいものだが、ケインズを引き合いに出して赤字を正当化している。もう危機から7~8年も経った。たしかに近年では弱い経済回復だが長い歴史の中で考えれば今は決して弱い経済ではない。

君の言うように人々はケインズを都合よく解釈しているよね。どの国も成長するためにケインズの理論を『悪用』している。いくつかの国はケインズを悪用して経済を崖から突き落とそうとしている。ケインズの名前を出せば負債額はOKだと都合よく解釈してね」

セドラチェク
「もし『危機はいつ終わるか?』と聞かれたら『負債を返し切った時だ』と答えるよ。車の事故を起こしたとして死ななければ最初の危機は終わるが壊れた車のローンを払うまではたらしい車を買えないよね。それとGDPの成長率を測ることにどんな意味があるんだ?ほとんどナンセンスだ…」

シャルマ
「中国で起こっていることにみんな気付いていない。中国は6%かそこらの成長率をいまだに続けていると皆思っている。でもその成長率を維持するためにどれだけのお金を注入しているか…本当に君の言う通りだよ。

2007年のアメリカの住宅バブルのピークにはアメリカは1ドルの成長を得るため3ドル負債を増やしていた。今中国は1ドルの成長を得るために4ドルも負債を増やしている」

セドラチェク
「クレイジーだね」

シャルマ
「まったくだ。『中国は6%も成長している!すごいじゃないか』って?『他の国は2%くらいなのに6%はすごい』と。だが中国が莫大な借金をしていると知ったら大問題に突入しようとしているのが分かるよね。だから私の最大の関心ごとはアメリカじゃない、中国だ」

上海の市民1
「資本主義はいいと思います。経済市場が活発になるから」

上海市民2
「月収は10年前から3500元のままで上がっていません。でも不動産価格は4~5倍に跳ね上がりましたよ」

上海市民3
「中国は国の政策が行きづまるといつのまにか方針が変わるので先が読めなくて不安があります」

この星は欲望で繋がっている 市場の網の目に覆われた 私たちの住む資本主義の世界

シャルマ
「ウォールストリート的思考はあまりに短期すぎる。四半期ごとにホットな流行を追いかけ人々は熱狂している。まるで他に大事なことはないみたいにね。今だったら皆が皆トランプに取りつかれている。トランプはどんな政治をするか?それはどんな影響があるか?とね」

恐れるな リスクを取ってお金を増やせ 数字が踊る 人々が踊る “未来というものは絶対に予測できない。神でさえ未来を知らない”

第10章 不確実な世界へ

資本主義社会のリスクを見事にコントロールしたはずのあの男 だが意外なことにこんなことも言っていた

わたしたちの未来についての知識は実に曖昧で不確実なものだ -ケインズ

セドラチェク
「世界は本質的に不確実なのに『来年は2.4%成長するだろう』と皆が信じて投資したりするのは未来は不可知なものだという自然な感覚を失っている。

たとえばサイコロをふる時『1』が出るのはおよそ6回に1回だと知っているよね。起こることの確率を分かっているのがリスクだ。でもサイコロの面の大きさがバラバラでその割合も知らなかったらどうだい?

現実世界ではサイコロの形さえ分からないような状況がよくある。しかも過去にふられたことがなかったりね。初めてで一回限りの出来事だとしたら…これこそがケインズのメッセージだった」

ケインズは警告していた 不確実性はリスクとは根本的に違う、と たとえばルーレットの確率や人の寿命 明日の天気予報はさして不確実とはいえない

不確実なものとはヨーロッパで戦争が起きるかどうか 20年後の銅価格や利子率 ある発明がいつ陳腐化するかなど

こうした事柄を予測するための科学的根拠はない 私たちは単に知りようがないのだ


セドラチェク
「過去に起こったことがない状況をどう考えるか?たとえばトランプ大統領のようにね。これはリスクではなくまさしく不確実性だ。物理学にたとえるならケインズが現れる前は経済は『機械』のように考えられていた。ケインズは”No”と言った。『経済は機械ではない』『不確実性がある』『限られた世界しか見ていない』とね。

現実は機械のようじゃないと。ズレやゆらぎがあって時計の様にはいかないんだ。つまりリスクは計算が可能だ。だが不確実性は計算することはできない。リスクと不確実性を混同したら危険な世界が待っている」

シャルマ
「悪銭(イージーマネー)が問題だ。金融危機の後 収入や資産の格差が増大した。それは悪銭(イージーマネー)と関係があると思う。いま世界に悪銭(イージーマネー)が漂っていてそういうものが不確実性とリスクの区別をわからなくさせてしまう」

カネがカネを生む それはあの時始まったのか 時がカネを生む魔術 利子 欲望の資本主義の果て

シャルマ
「私はあまり信心深くないんだが、いま私が強く惹かれているのは禅の思想だ。どういう意味かというと…投資においても人生においてもいい精神状態でいることがとても大事だ。

私は新著の第一章の題名を『儚さ』とした。永遠のものなど何もない。すべては過ぎ去っていく。私がいつも心に留めているルールだよ」

セドラチェク
「確かにそういうものが経済で求められているのかもね。私たちが作り上げてきた世界では経済でも政治でも既存の理論や支配層が崩壊しつつある。私たちは待ち望んでいるのかもしれない。天動説から地動説へのパラダイムシフトのようなものをね。あるいは物理学を変えたアインシュタインみたいに…

禅的思想はもしかするとこの世界を統合できるかもしれない。資本主義が根ざしている他の宗教ほど攻撃的じゃないからね。そのような未来もありえるかもしれない」

最終章 未来へ

安永竜夫(三井物産代表取締役社長 2015年「32人抜きの社長就任」として話題に 発展途上国のインフラ開発への投資など新事業を開拓)
「資本主義を日本が受け止めてる過程というよりは僕は寧ろ欲望の資本主義の先を行ってる資本主義じゃないかと思うんですね。それは要するに持続性があり人に優しい資本主義って何かっていうことを我々は考えている」

原丈人(デフタパートナーズグループ会長 アライアンス・フォーラム財団代表/内閣府参与 ベンチャー企業育成のための政策提言や新技術をもちいた支援など国内外で活動)
「21世紀、2000年以降はあるべき資本主義、本当に人類社会がこれからも反映していくための資本主義は会社は株主の物だっていう考え方から会社っていうのは株主も重要な要素だけれども会社を成り立たせている社員、仕入れ先、地域社会、顧客、地球も含めた、こういうのを社中というのですね。

この社中全体のおかげで会社が反映しているわけだから、上げた利益は社中に対して還元していく。こういう資本主義の事を『公益資本主義』という風にいいます」

安永
「私は『お前らはジャングルガイドだ』って言ってますけども。新しいマーケットを切り開いてマーケットチャンネルをつくりあげてくってのいうのは商社ならではの仕事の醍醐味でありますし、これから経済成長に向かっていく国っていうところにどういう風に我々が貢献していくのか仕事をつくっていけるのか。これはもう、まだまだ世界中にそういう国はあります。

日本の中に閉じこもっていても日本的な資本主義は決して進化していかないと思うんですよ。」


「お金で何とかしようと、お金を回して経済を復活させようというのは雰囲気は変わることが出来てもこりゃ絶対無理なんですよ。だから日本の場合には科学技術を使ってイノベーションを起こして。人類社会に対して一番必要なものをつくりあげていくと。そしてこれは大変な富を生むと私は考えています。

全世界の人を幸せにしながら、尚且つ日本自身も社中への分配と中長期の投資で中産階級層が豊かになっていく国づくりが私の頭の中では出来るという風に考えています。」

安田洋祐(大阪大学准教授)
「それだけの底力があると」


「十分ありますね。もう日本のまだまだ個人金融資産も1700兆円以上あるんだし」

蓄えた富 使えば新たな富を生むことが出来る でも事はそう簡単ではない ケインズは人々の底に潜む欲望を見抜いていた

セドラチェク
「ケインズ以前はマネーは単に交換のための『道具』とみなされていた。だがケインズはマネーの交換以上の機能に気が付いた。つまりそれ自体が欲望の対象物なんだ。マネー自体が価値を持ち貯めること自体が価値を持つということだ。

人々はお金を貯めたがる。何かが起こった時のため、用心のためにね。そのうちに貯金することが目的かしていく。お金はあらゆるものと交換可能だからこそ人はお金を貯める。それゆえにお金が効率的に回らず経済に大問題が生じることがあるのだ。

アインシュタインはそれまでの物理学をひっくり返し世界の見え方を変えた。経済学ではまさにそのようなことが求められていると思う。新たなケインズがね。」

安田
「ケインズの話と後はケインズ以前の経済学者が言っていたことを非常に数学的に精緻な形でまとめた一般理論というか市場の理論ってのがあるんですよね。それの次のステップというのが来るかどうかも分からないですし、少なくとも今、見つかってはいないという状況だと思うんですよね。

色んな方と対談させていただいて、自分は経済学の専門家なわけですけれども、結構普段自分がやっている研究の話っていうのが実はそういった経済学の外にいる人も含めて新しく経済をある意味見通している人たちと、フィットするような部分があるなって感触がありましたね。

なんかまだ少し『グランドセオリー』じゃないですけれどもね。大きい理論をみつけることができるんじゃないかなって期待が若干芽生えたりもしましたね」

小林喜光(三菱ケミカルホールディングス取締役会長)
「かつてリーマンショックもあったようにまた同じようなことを繰り返す危険がある。長期的にサステナビリティ(持続性)が極めて危険な状況にある。やっぱり最後の頼りはイノベーションとか社会システム全体の変革するとか。今までの延長線上の人類の歴史と全く違う生き方、全く違うことを思い描く経済学がいるんじゃないか」

セドラチェク
「たしかに未来には労働や雇用において大きな問題が起こり多くの人が影響を受けるでしょう。懸念しているのは経済というものが非常に抽象化しつつあること。人間の欲望も物質世界から中小世界へ移っていく。インターネット時代、新しいフロンティアをどう考えるかというのは大きな課題だと思います」

小林
「2045年シンギュラリティ(AIが人の知能を超える時)が来るかもしれない。そうなればもうほとんどAIであり頭脳もロボットであり人間っていったい何なんだっていう、ほとんど人間以上の人間が出来ちゃうっていう。何をもって人間というのか何をもって幸せというのか?」

スコット・スタンフォード(シェルパ・キャピタルCEO 元ゴールドマン・サックス社員 2013年ベンチャー投資企業を設立)
「情熱の源はお金ではない。それはテクノロジーへの愛だ。」

ジョセフ・スティグリッツ(コロンビア大学教授 2001年ノーベル経済学賞受賞 アメリカ大統領経済諮問委員会委員長 世界銀行チーフエコノミストなどの要職を歴任)
「究極の皮肉は資本主義はお金の追求によって支えられているのにそれだけでは前進しないということだ」

セドラチェク
「我々は『神』を生み出した。自己調節機能があり富を分配してくれ市場をコントロールしてくれる『神の見えざる手』。だが言いたい。『神は死んだ』。

私たちが生きているのは今まで信じていたものがもはや信じられなくなった世界だ。だが社会の『舵』は私たちの手の中にある」

神なき時代 ルールは変わり続ける これからも 欲望の資本主義

欲望は満たされることを望まない 欲望は無限だ



『欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき』をみて

cf,
アダム・スミス 著, 山岡 洋一 訳 『国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究』 読書メモ

『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を読む

欲望の民主主義 世界の景色が変わる時 第1・2章 第3・4章 第5章 第6章 第7・最終章
by wavesll | 2017-04-05 21:52 | 書評 | Trackback | Comments(0)
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