特別展 茶の湯@東博 シンプルの内に複雑な玄妙さを見出す感性の列史

c0002171_775646.jpg


東博で開かれている特別展 茶の湯へ行ってきました。

中国・龍泉窯『青磁輪花茶碗 銘 馬蝗絆』が目当てだったのですが、吸い込まれるような青磁の白青、覗き込んだ時に見える割れの罅が現代的にも想えて、そして鉄の鎹がまたいい遊びになっていて。とても良かった。

青磁だと国宝の南宋の『青磁下蕪花入』の罅がないすっとした艶のある水色。取っ手が美しい龍泉窯『青磁鳳凰耳花入』も良かった。龍泉窯だとすっくと伸びる筒形の『青磁筒花入』も良かったです。

そして今回の展示で印象的だったのが『白』。
中国・定窯『白磁金彩雲鶴唐草文碗』の綺麗な白の中に金が揺蕩う様の美しさ。瀬戸・美濃『白天目』の黄色みがあった白の美。朝鮮の『三島茶碗 二徳三島』、『御所丸茶碗 古田高麗』の驚くような鮮やかな白。数々の白の銘品に目を見張りました。

またその他の茶碗も名品目白押しで。
序盤では中国・定窯『柿釉金彩蝶牡丹文碗』の紅茶色の深い色。"禾天目"、中国では”兎毫盞”と呼ばれるウサギの毛並みのような線が入った中国建窯『建盞』、鸞が描かれた中国・吉州窯『玳玻盞 鸞天目』が好きな人は東洋館にも展示してあって写真も撮れるのでお薦め。金色の木の葉が美しい吉州窯『木葉天目』も、豊臣秀次所持の建窯『油滴天目』も素晴らしかった。

入ってすぐの伝牧谿筆『布袋図』に淡く柔らかく癒されて。国宝の梁楷筆『出山釈迦図』伝梁楷筆『雪景山水図』 梁楷筆『雪景山水図』の黒靄に心惹かれました。

朱漆、黒漆を塗り重ねた『犀皮水注』の朱の凸凹の美、『花鳥堆朱重香合』も凹凸が美しかった。『物かは蒔絵伽羅箱』は黄金の銀河で。『釜石 銘 末の松山』は盆の上で山水を顕わすために置く石という逸品で。インドの『南蛮毛織水指』も綺麗でした。

茶の湯というとどうしても利休・織部がクローズアップされますが、この展覧会では総体的な歴史の流れが描かれていて。侘茶の始祖、珠光や利休の師、武野紹鷗ゆかりの一品も揃っていました。

元~明の『灰被天目 銘 夕陽』の渋い夕空、『灰被天目 銘 虹』は月虹のよう。南宋~元の『唐物肩衝茶入 北野肩衝』のマーブルなブラウン。『唐物茄子茶入 銘 富士』のなんとぷっくりと可愛らしいことか。元~明の『黄天目 珠光天目』の灰から黄へのグラデーション。

武野紹鴎筆『書状 十月二十日』のエメラルドブルーで流麗な筆遣い。室町時代の『烏図真形釜 銘 濡烏』の角いフォルム。『備前水指 銘 青梅』はずっくりとした味わい。秀次作『黒塗大棗 紹鷗棗』の漆のツヤ、シンプルなカタチはイデアを感じさせます。

この展覧会では様々な茶道具が展示されていましたが、今回新規開拓できたのが釜。『芦屋無地真形釜』のナマズ肌、『芦屋浜松地歌入真形釜』の表面に彫られた浜松図。『天明筋釜』はバリ島な感じで、与次郎作『湯の釜』はじっくりとした時間を与えてくれました。

重文『雨漏茶碗』の朱白に黒、『蕎麦茶碗 銘 花曇』のゆがみ薄さはフォークトロニカでした。

そして千利休の時代へ。
利休筆『書状 飄庵宛(法語 璋禅人宛 添状)』は丸っこい字。古渓宗陳筆『落慶偈』の美筆。朝鮮の『井戸香炉 銘 此世』の塩筒形。南宋~元の『唐物尻膨茶入 利休尻膨』の水信玄餅みらいなぷくらみ。美濃『黄瀬戸立鼓花入 銘 旅枕』の緑がかった白の砂時計形のカタチが最高で。

『瀬戸雁口花入』の白緑のしゃらりとユーモラスな形。光の残像のような『黄天目 沼田天目』と千利休筆『書状 七月十六日 松新宛(黄天目 沼田天目 添状)』。『書状 六月二十日 古織宛(武蔵鎧の文)』にも流麗さを感じました。

利休好みの『唐銅皆具 釜・風炉』の魔人ブウな感じ。瓢箪のくびれをそのまま口にした『瓢花入 銘 顔回』の自然な形の面白さ。魚籠にみたてた『耳付き籠花入』も面白味がありました。そして『黒塗手桶水指』の漆の美しさとフォルム・大きさの丁度いい感じが本当に丁度いい、ディレクションが光りました。

樂家の始祖、長次郎の作品群にも茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術展振りに出逢って。長次郎唯一の香炉である『黒楽口寄香炉』や『黒楽茶碗 銘 ムキ栗』に無の宇宙を感じました。

この展覧会ですっかり棗が好きになってしまったのですが、盛阿弥作『黒塗尻張棗』のPinoな台形球フォルムもまた素晴らしく好みで。

利休が死を覚悟して書いた『書状 二月十四日 松佐宛』には勇壮さも感じて。『山上宗二記』も素晴らしかった。

ここから古田織部の時代へ移っていくのですが、茶の湯の美の流れの中でも織部はひょうげてるというか異彩を放っていて。狙っているというかwでもこの織部好みのへうげた美のダイナミズムは太古には縄文文化、後世には もの派として隔世遺伝していく日本のマッシヴな美意識を感じました。

『伊賀花入 銘 生爪』のモノとしての存在感、家康所持の『天明釜 銘 梶』も良かった。そして大きな割れ目が入った『伊賀耳付水指 銘 破袋』の現代的な味。ヴェトナムの『南蛮締切水指』も狙ってんなぁとw『備前肩衝茶入 銘 さび助』のクシャっとした凹みの良さ。

信長の弟、織田有楽斎の『大井戸茶碗 有楽井戸』や武将好みのソリッドなフォルムの『古瀬戸肩衝茶入 出雲肩衝』もほんとぴしっとしていて好きで。『備前筒花入 銘 八重葎』や『備前三角花入』、『備前耳付水指 銘 巌松』、『信楽一重口水指 銘 柴庵』、『伊賀耳付花入 銘 岩かど』も現代的なくしゃっとしたフォルムを堪能できました。

美濃の『瀬戸黒茶碗 銘 小原女』や『瀬戸黒茶碗 銘 小原木』も良かったし、『志野矢筈口水指 銘 古岸』もズドンとくる感じで良かった。『志野矢筈口水指』の夕景も見事で。『志野茶碗 銘 羽衣』もまた良し。『鼠志野茶碗 銘 山の端』も古代のモノクロ山林で良かったし、国宝の『志野茶碗 銘 卯花墻』もヌエバ・スタンダードの感覚。

黒というと利休ですが、織部も黒い茶碗をつくらせていて。『黒織部百合文沓茶碗』なんかよかったなぁ。そして『黄瀬戸根太香合』『志野重香合』『織部さげ髪香合』もマカロンのようなちょこんとした可愛らしさに個性が詰まっていてとても好きでした。

樂家関連では本阿弥光悦の『赤楽茶碗 銘 毘沙門堂』・『黒楽茶碗 銘 時雨』もツヤツヤで薄くて綺麗で。道入の『黒楽茶碗 銘 残雪』ものっぺりして美しかったです。

そしてここから織部の弟子、小堀遠州と松江藩主・松平不昧の茶の湯の章。
無準師範筆『山門疏』の文字のソリッドさはかなり好みで、無準師範筆『尺牘 円爾宛(板渡しの墨跡)』も端正な美学に貫かれていました。明の『古銅象耳花入 銘 キネナリ』は竹のような節があって。『青磁中蕪花入』も形が最高でグラスのようでした。『高取面取茶碗』も黒の垂れ具合がよくて。

『瀬戸茶入 銘 廣澤 本歌』も端正で細身の武家好み。どうも自分、武家好みや武将好みが好みでした。また『丹波耳付茶入 銘 生野』の四角い楕円や『紅葉呉茶碗 銘 菊月』の白朱も好きでした。『御本立鶴茶碗 銘 千歳』も優美で。

中国・景徳鎮の『古染付高砂花入』は取っ手が魚で面白く、同じく景徳鎮の『祥瑞蜜柑水指』はコバルトブルーが美しかった。ヴェトナムの『安南染付龍文花入』もリンガな感じで生命力ざわついてました。

景徳鎮の『祥瑞蜜柑香合』も青い空間が凝縮した美で、中国・漳州窯の『交趾台牛香合』のエメラルド、同じく漳州窯の『白呉州台牛香合』の白美もみごとでした。

仁清『色絵若松図茶壷』の黒に鮮やかな若松、同じく仁清『色絵鱗波文茶碗』の朱桃色に碧波の美しさ。仁清の『色絵玄猪香合』はエメラルドグリーンの銀杏の葉が紐で結ばれている面白き一品で、乾山の『錆絵染付鎗梅文香合』はエレクトロニカでした。

建窯『油滴天目』は銀の粒子に宇宙のオールーが透けていました。『瀬戸茶入 銘 潮路庵』もピシッとした円柱形で。原羊遊斎作『大菊蒔絵棗』もすっきりとした出来。

まだ茶杓はどれも違いがそこまでわからなかったのですが、松平不昧『竹茶杓 銘 柳緑花紅』はなんかいいなって想いました。

伝藤原の行成筆『古今和歌集 巻一断簡(関戸本)』はグレーブルーの紙にしたためられた逸品。『伊賀耳付花入 銘 業平』は"東五人男"に選ばれたという現代的な魅力ある花入でした。

最後の章は近代数寄者の眼。第八期は三渓園の原三渓の品々が展示してありました。慶滋保胤筆のたおやかな『書状 六月十四日』や尾形光琳筆のソリッドな『波上飛燕図』、『唐津茶碗 銘 入相』や伝本阿弥光悦の金蒔絵に青貝の螺鈿をつかって銀鹿が描かれた『沃懸地青貝金具蒔絵群鹿文笛筒』なんかが良かったです。

12世紀に中国から伝わった抹茶の文化が、珠光、紹鷗、利休、織部、遠州、不昧、そして近代の数寄者たちへ連なっていった歴史の道が展覧されていたこの茶の湯展。

その根底にあるのは、自然を究め、シンプルの内に複雑な玄妙さを見出す感性にあるのではないかと想いました。そしてミニマムとダイナミズムを抱く懐の広さも日本の美意識にはあるのだなと。見応えのある展示でした。

常設展もぱしゃりしてきました。

みみずく土偶
c0002171_10362693.jpg


香炉形土器
c0002171_10371270.jpg


c0002171_1037293.jpg


石人
c0002171_10374893.jpg


銀象嵌銘大刀
c0002171_10395661.jpg


金銅製冠
c0002171_104338.jpg


木製 蓋
c0002171_10444233.jpg


c0002171_10445246.jpg


c0002171_1045740.jpg


埴輪 子持家
c0002171_10523481.jpg


五塔
c0002171_10525969.jpg


経筒
c0002171_10532963.jpg


板碑(阿弥陀種子)
c0002171_10542824.jpg


線刻蔵王権現鏡像
c0002171_10585545.jpg


c0002171_1059719.jpg


c0002171_10592739.jpg


葵形禁制品
c0002171_110512.jpg


c0002171_1131488.jpg


赤藍地孔雀花束文様印金パティック
c0002171_1134272.jpg


田中利七 / 刺繍孔雀図屏風
c0002171_1141086.jpg


ヴィンチェンツォ・ラグーザ / 日本の婦人像
c0002171_1031899.jpg


七代錦光山宗兵衛 / 色絵金襴手双鳳文飾壺
c0002171_1355503.jpg


加納夏雄 / 群鷺図額
c0002171_1405975.jpg


竹内忠兵衛 / 七宝竹雀文大瓶
c0002171_1414879.jpg


c0002171_142185.jpg


c0002171_1422474.jpg


c0002171_1424521.jpg


c0002171_1431644.jpg


c0002171_1434028.jpg


c0002171_1413896.jpg


c0002171_14134885.jpg


c0002171_1414656.jpg


歌川豊国(国定)/ 御誂織薩摩雛形 勝間源五兵衛
c0002171_14151742.jpg


勝川春章 / 東扇・初代中村仲蔵
c0002171_14214832.jpg


諸尊集会図
c0002171_14221626.jpg

c0002171_14222998.jpg


c0002171_14224257.jpg

c0002171_14225726.jpg


埴輪 猿
c0002171_14335252.jpg


須恵器 子持高坏
c0002171_14341945.jpg


注口土器
c0002171_14345357.jpg


阿字曼荼羅図
c0002171_1435305.jpg


伝後京極良経 / 仮名観無量寿経切
c0002171_14554421.jpg


伝藤原公任 / 石山切 伊勢集「おほそらに」
c0002171_1456193.jpg


日蓮 / 消息
c0002171_14564384.jpg


豇豆蒔絵矢筒
c0002171_14571570.jpg


尾形光琳筆 / 風神雷神図屏風
c0002171_156745.jpg


新井白石 / 詠詩三首
c0002171_15161970.jpg


小島宗真 / 高松賦
c0002171_15164792.jpg


振袖 萌黄縮緬地松紅葉牡丹流水孔雀模様
c0002171_15174166.jpg


山本梅逸 / 倣董源山水図
c0002171_1518535.jpg


灌頂幡
c0002171_1013247.jpg


c0002171_1013269.jpg


光背
c0002171_10133868.jpg


観音菩薩立像
c0002171_1017197.jpg


観音菩薩立像
c0002171_10171526.jpg


観音菩薩立像・勢至菩薩立像
c0002171_10173835.jpg


観音菩薩立像
c0002171_1017538.jpg


摩耶夫人および天人像
c0002171_10213724.jpg


菩薩半跏像
c0002171_1022455.jpg


菩薩半跏像
c0002171_10222188.jpg


菩薩半跏像・菩薩半跏像
c0002171_10224118.jpg


銀釵
c0002171_10235689.jpg


竜首水瓶
c0002171_10375117.jpg


鵤寺倉印・法隆寺印
c0002171_10382219.jpg


銀釵
c0002171_1039333.jpg


三鈷杵
c0002171_10393632.jpg


五大明王鈴
c0002171_10424964.jpg



c0002171_10431177.jpg


細字法華経
c0002171_10433895.jpg
c0002171_10434772.jpg
c0002171_10435581.jpg


梵網経
c0002171_1045773.jpg
c0002171_10451531.jpg


経帙
c0002171_10512630.jpg


鵲尾形柄香炉
c0002171_10515162.jpg


紅牙撥鏤針筒・緑牙撥鏤針筒・緑牙撥鏤針筒・紺牙撥鏤針筒蓋
c0002171_10521285.jpg


勢至菩薩立像
c0002171_1647145.jpg


如来倚像
c0002171_16472663.jpg


観音菩薩立像
c0002171_16474874.jpg


菩薩交脚像
c0002171_16481414.jpg


如来坐像
c0002171_16484424.jpg


菩薩交脚像
c0002171_1649770.jpg


c0002171_16492068.jpg


c0002171_16493327.jpg


c0002171_1650742.jpg


c0002171_16502063.jpg


彩文土器 水差
c0002171_16504427.jpg


c0002171_16505869.jpg


彩陶双口壺
c0002171_16513393.jpg



c0002171_165157100.jpg


c0002171_1652103.jpg


c0002171_16522492.jpg


三彩鎮墓獣
c0002171_1653773.jpg


黒釉兎毫斑碗
c0002171_16533197.jpg


玳玻釉碗
c0002171_1654650.jpg


c0002171_16542426.jpg


c0002171_1655896.jpg


c0002171_1655252.jpg


寒梅鶴図軸
c0002171_1656851.jpg


皇甫誕碑
c0002171_16564210.jpg


雁塔聖教序
c0002171_16572111.jpg


山水人物堆朱桃形合子
c0002171_16574824.jpg


瑪瑙石榴
c0002171_16581366.jpg


緑釉博山炉
c0002171_16583825.jpg


細環式耳飾
c0002171_16591375.jpg


鳥翼形冠飾
c0002171_16593968.jpg


透彫冠帽
c0002171_170394.jpg


c0002171_1703265.jpg


毘盧遮那仏立像
c0002171_171931.jpg


獅子
c0002171_1713872.jpg



c0002171_1722356.jpg
c0002171_1723313.jpg



c0002171_173171.jpg


宝冠如来及び両脇侍坐像
c0002171_1735027.jpg


ナーガ形飾り金具, 飾り金具
c0002171_1745335.jpg


c0002171_175714.jpg


ヴィシュヌとガルダ像
c0002171_1754949.jpg


藍地花格子結び文様更紗
c0002171_1762166.jpg


アウラングゼーブ立像
c0002171_1765293.jpg


ジャハーンギール立像
c0002171_1772413.jpg


タオ族の甲冑
c0002171_1775919.jpg


c0002171_1781172.jpg


c0002171_1782750.jpg


c0002171_1784228.jpg

by wavesll | 2017-06-03 10:51 | 展覧会 | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://kamomelog.exblog.jp/tb/26710314
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
<< 錦糸町の指輪 モノの情報密度 柳本浩市展「ア... >>