今出せる最適解へ駆け続けろ:細谷 功『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』

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細谷功『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』を読みました。

個人的に「フェルミ推定」、名前は聞いたことはあったのですがどういうものかを知りたかったというのと、ここ一ヶ月で外山滋比古『思考の整理学』梅棹忠夫『知的生産の技術』、そしてショウペンハウエル『読書について』『思索』『著作と文体』を読んで、"書籍哲学者"でなく"自分で考え抜く力"が自分には足りていないと想い、その為にフェルミ推定という思考のフレームワークをインストールするのは有効かもしれないと考え読了した次第です。

さて、いきなりですが、<「日本全国に電柱は何本あるか?」を制限時間3分で、電卓・PCを使わずに求めよ>と言われたら、どんな答えを出せますか?

これがフェルミ推定、その典型的なクエスチョンなのです。すぐに求められない解を手持ちの少ないデータから求めること。ノーベル物理学者エンリコ・フェルミが良く課題に出したことから名を冠しました。

さて、私自身はこの問いを見て、「そもそも電柱が一般的に何メートルおきに立っているかのデータが欲しいな、それがあればそれで日本の面積で割って出せるのに」とか考えてるうちにタイム・アップ。これは"知識編重型"な思考法だそうです。

この解法の一例としては
1. 単位面積当たりの本数を市街地と郊外に場合分けして総本数を算出する
2. 市街地の代表的な電柱配置を「50m四方に1本(1平方km辺り400本)」、郊外を「200m四方に一本(25本)」とモデル化する
3. 日本の総面積は38万平方mだが、これも東京-博多間が1200kmなのを知っていたら大体1500kmX200kmと計算して30万平方kmと推定できる。
4. 市街地と郊外の面積比は「日本の国土の3/4が山間部」なので、2割ほどが市街地と推定
5. (38万平方km*1/5*400)+(38万平方km*4/5*25)=3000万本
6. 最後に現実性検証を行う。電力会社とNTTの出している数字から、日本の電柱の数は3300万本とのこと。

さて、シャーロック・ホームズばりに鮮やかに解が示されたのですが、著者はこのフェルミ推定により"地頭力"が測れる。といいます。

地頭力とは
1. 仮説思考力
①いまある情報だけで最も可能性の高い結論(仮説)を想定し、②常にそれを最終目的地として強く意識して③情報の精度を上げながら検証を繰り返して仮説を修正しつつ最終結論に至る思考パターン

2. フレームワーク思考力
①対象とする課題の全体像を高所から俯瞰し、相対座標ではなく絶対座標としてズームインで説明できる全体俯瞰力
②とらえた全体像を最適の切り口で切断し、全体をもれなくダブりなく(MECE)適切なセグメントに断面をさらに分解する分解力

3. 抽象化思考力
①対象の最大の特徴を抽出して「単純化」「モデル化」した後に②枝葉を切り捨て抽象レベルで本質的な一般解を導き出して、③アナロジーからそれを再び具体化して個別解を導く思考パターン

だと言います。
社会人の能力の方向性は<知識・記憶力のZ軸>、<対人感性力のY軸>、<地頭力のX軸>があり、今の時代は知識はすぐに陳腐化するのに加え、インターネットによりコモディティ化したことから、地頭力と対人感性力が肝要だと。

この本を読んで最も想ったのは、ここでいう地頭力というのは「仕事を70点でこなし続ける身体性」に感じました。完璧に仕上げることに執着せず、決められた時間内に70点のざっくりした結果を出し続け、その時点時点でベターな軌道修正を加えていく仕事術。

その精神的なタフ度に感嘆すると共に、ついつい"大切なモノゴトが零れ落ちやしないか"とか"自分が満足する水準まで仕上げたい、そして結局『本当に正しいか』まで仕上げたい"と想ってしまいました。

しかし確かに「検索エンジン中毒」「情報コレクター」「完璧主義」「猪突猛進」「セクショナリズム」「経験至上主義」な思考回路は仕事の処理には障害になることも多々あるなと。

知識型(What型)でなく問題解決型(Why型)の知的好奇心を持った人間が重宝されるのも理解できるし、文中に紹介された「三分間事業シミュレーション」で街中で自らフェルミ推定の問題を作成して、店で商品を観たときに「これを何人の人が買っていくら儲かるだろう」とか、ラーメン屋で「どれだけ売り上げがありそうか/どれだけ経費が掛かってそうか」を考えるトレーニングをすると脳力が鍛えられそうだなと得心する点が多々ある読書でした。

また合理的に考え一般化していく地頭力(X軸)と、感情に訴え相手の特殊性によりそう対人感性力(Y軸)は真逆のベクトルを持ち、「Think Rationally, Act Emotionally」が大切だというのも本当にクリティカルな指摘だと感じました。

フェルミ推定の問題集として現役東大生が書いた 地頭を鍛えるフェルミ推定ノート――「6パターン・5ステップ」でどんな難問もスラスラ解ける!も軽く読んでみたのですが、フェルミ推定をするにも、世の中の様々な事象の"数字"に強くなることが結果的に地頭にも繋がっていて、それには「三分間事業シミュレーション」などを行い、日々出逢う事柄を意識的な目でみることが基礎体力を上げるのだと。

フェルミ推定は納期の期日が決まっている仕事を営続してく為には本当に有用なアティチュードに感じて。"今出せる結果を出す"ためにポジティヴな書と読めました。
by wavesll | 2017-06-16 07:15 | 書評 | Trackback | Comments(0)
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