これはヴァーチャルでない、人生の味がする選曲演奏ーECD IN THE PLACE TO BE:21世紀のECD on DOMMUNE

ECDの一夜。まさに私はDOMMUNEに釘付けになり、数時間に渡る"目撃"を体験しました。

私は熱心な日本語ラップのリスナーではないのですが、学生時代のある日下北のユニオンでECDとillicit tsuboiさんのライヴ盤『session impossible』を一聴惚れして買って。”なんかもうこのRealな感じ最高に渋くてがつんとくる”と衝撃を受けて。それからちょくちょくWebでECDさんのことを拝見して。近年は病魔との闘いをしていることも伝え聞いていました。

とはいえ正直なところこの夜に初めて「石田さんだからECD」なのを知る位の浅さなのですが、あの『session impossible』の「Buddha Brand以外にもこんなにも心身に響くラップがあるのか、なんてソリッドで直接日本語が鳴らされてるんだ」という衝撃に貫かれた音楽好きの一人だと勝手に想っています。

この日のライヴはスチャダラがECDにフックアップされたきっかけだという「スチャダラパーのテーマ PT.1 」からの「今夜はブギーバック」で開始して。

スチャのブギーバックは近年何度か見る機会があって、こういう決め曲は、勿論色んなステージそれぞれでプロとして本意気でやっているのだろうけれども、魂の込め方が群を抜く舞台が稀にあって。この夜のアニの歌唱からあふれるものにぐっと来て。

そして田我流。彼は今まで「やべ〜勢いですげー盛り上がる」くらいしか知らなかったのだけど、トチリも含めて己の舌で口腔でライム紡いでるのが伝わって、その身体性にRealを感じて。「言うこと聞かせる番だ俺たちが」

K-DUBの「ロンリーガール」も良かったし、YOU THE ROCKの「証言」からの迫力、音塊の圧は初めて高校生ラップ選手権でMCニガリをみたときのようなマッシヴな魅力がありました。DJ YASさんの無修正ブッダ等のレア・ヴァイナル回しも最高で。

そしてECD自身のRAP LIVEが。繰り出される硬質でPUNXなリリック。あの初めて聴いたライヴ盤と双肩を為す、全然衰えてないパワフルさ。なんと新譜に収録の新曲だそう。最高。リベラルなアティチュードが、楽曲だけでなく実際に官邸前デモで叫んでいたことからも覚悟が座っていて。

想うにDOMMUNEという場をWebで体験することは、生の現場の劣化版ではなくて、TLに流れるオーディエンスの呟き群や、本当はかなり狭いけれど全然それを感じさせないカメラ割りで、DOMMUNEという場が創造されていて。

創造と想像、或いは仮想はそれぞれ共通するところを持ちながら別個に物理現象の上に現実としてレイヤーを成していて。古代なんかは演劇がヴァーチャル・リアリティー芸術であったように、芸術家は社会の固定化されたシステムから遊離した存在として、その流動性がポリティカルな先端で機能するのだと想います。

しかしそれ故に「口先のレイヤーでしかない、所詮情報に過ぎないじゃないか」、そんな揶揄に、ECDはまさにリアルな身体の運動性を持って、社会性・経済性の赤裸々なボムを持ってリアリズムを貫いた。だからこそ彼の言葉は上滑りせずに芯を食うのだと思います。

最近の北朝鮮からの脅威も、どこかTVショーのような非現実感があって。

そこで想起するのがロングランし続けている『この世界の片隅に』。すずさんも破壊に合うまで半ばヴァーチャルな戦争体験な日常生活だったのではということ。だから先日のミサイルの黒塗り警告画面は“気付け”に良かったと個人的には想いました。現実に起きている事だから。

そしてだからこそあの映画ですずさんが身をもって示したように、国家につき合って、付き合って、大きな犠牲を払ってまで付き合った上に、梯子を外されて裏切られてから怒っても、遅い。

言うことをきかせられるのではなく、言うことを言う姿勢こそがヴァーチャルでないリアルな態度だと思ったのでした。

さらに、実はこれらのライヴの前に演ったECDのDJ PLAYこそがこの夜の音楽的なピークで。あんなにも心を打つDJはなかった。

誰しも知っている邦楽のオールディーズの、豊饒な音楽の山野から採りだされたとっておきのカヴァー。そしてエスプリの聴いた洋楽。みそ汁のように馴染むソウルフードな名曲群でありながら、それでいて気っ風の良さというか、ユーモアはあるんだけど全然臭くなくて。

良質で驚きの隠された日常の中の宝玉達のような楽曲群に、人生という最大のリアルの中で出逢う様々な味を感ぜさせる、そんなDJ演奏でした。ECDさん、いいものをありがとうございました。

この素晴らしい一夜は1000円で販売されていてその全てが石田さんの為に寄付されるそうです。あの伝説の夜を見逃した方は、是非とも。私はあの一夜の思い出を記憶の中で鮮やかに焼き付けるかどうするか今は逡巡しているのですが、何よりドネーションだし、観てない人に見せるために購入するのありだなと想っています。販売期間は10日間程とのことです。
by wavesll | 2017-09-05 23:13 | Sound Gem | Trackback | Comments(0)
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