ピアノエラに訪れてきました。
先ず開場のめぐろパーシモンホール、目黒ではなくて都立大学にあったのかと一つサプライズw
会場でグアテマラの美味しい珈琲を飲みながら開演を待ちました。
今回のお目当てはDiego Schissi with 北村聡。
ディエゴ・スキッシは20代半ば、もう10年ほど前にワールドミュージックを漁っていた頃に知って。神保町のジャニスで円盤を借りて”いつか観たい、でも中々招聘は難しいかもしれない”と想っていた現代タンゴのアーティスト。
今年は菊地成孔の粋な夜電波で取り上げられたりして、こうして来日まで果たされるとは。感無量。
最初の一音からの流れがまるで珠玉の赤ワインを飲んでいるような味わい。南米音楽は自然を感じることが多いのですが、ディエゴの音には都市を強く感じます。そして2曲目は北村さんが登場しスリリングに展開。バンドネオンはボタンを押す音で打楽器でもあるのですね。
そしてここでMario Leginhaが登場。彼のことは今まで知らなかったのですが、現代ポルトガルを代表する巨匠だとか。ディエゴとグランドピアノを連弾で、ポジティヴな響きを鳴らしてくれました。位置を入れ替えてからディエゴが高音を弾いた一時はこの日のハイライトの一つでした。
再びソロ。ここで強く”これは…タンゴだ…!”と想いました。いつかブエノスアイレス・ボカ地区でみた石畳の路上で舞う男女の踊り子の姿を想い起こして。夜の街の煌めき、朝の街の営み。そんなヴィジョンが起ち上がるような演奏。
北村さんが再登場し、人生を切り拓くような様というか映画を見ているような抒情的な演奏。終わりの迫真の幕引きにはハッと息を飲みました。
凄く美しく、そして刺さって来る音でした。
次に舞台に上がったのはMario Leginha。
ディエゴ・スキッシはこちらも入れ込みすぎる位に聴いてしまったのですが、マリオはリラックスして聴けて。ブラジル的というか、木立の中で朝日を浴びながら歩くような森林浴的な快さ。ポルトガル語らしいヴォーカルもグーで。
そしてピアノで展開する魔術師のような演奏。彼のPLAYが本日のベスト・アクトでした。
一曲目はファド、中盤ではショパンの曲も。最後はブラジルに捧げた曲。Magic Time.
めくるめいた音の連なり、星空を織るような演奏。黒いピアノに中の弦の部分が映りこんで陽炎のように揺らめいて。心から寛げる最高の時間があらわされていました。
そして3組目はBobo Stenson Trio。
スウェーデン出身の北欧ジャズの巨匠。ピアノも理知的でいいし、Anders Jorminのコントラバスの爪弾きと弓で奏でる音のさざめきも好かったのですが、何と言っても一番目を引いたのはドラムの Jon Fält。
インディアンのように口に掌で”ポン”と音をたてたり、ドラムの上に木の鈴を置いて振動で鳴らしたり。ドラムを指で叩いたり、手でこすったり、繊細なニュアンスのドラム・タッチから電子音をドラムで操作したり最後はバチっと鳴らしたり、指の関節を音楽として鳴らしてしまうwその自由さ、雲のジュウザ並み。遊び心、華やかさに見惚れました。
アンコールがなかったのは時間が押していたからかも。とはいえ180分超のいいヴォリューム。撮影が入っていたのでその内映像作品かTV放映化があるかもしれません。大満足の夜でした。マリオ・ラジーニャという至宝を知れたのが一番の収穫。素晴らしい会でした。