Thundercat - Drunk (2017) Full Album
さて、年の瀬。Webの音楽好き界隈だと「年間ベスト」が発表される季節。
「今年の音」を一番顕わすアルバムは、私はサンダーキャットのこのアルバムだと感じました。
AOR、まさしく2017年にドロップされたBrainfeeder的感性を経過したAOR. 「ついに機が満ちたか」。一聴した時そう感じたのです。
「ついに来たか」と想ったのは、このアルバム的事象は私にとっては予言されていたことの現実化だったからです。
勿論音楽は複数のラインが同時並行、あるいは時に交わりながら進んで行くものですが、ゼロ年代初頭に
『DISCOVERY』でダンス・シーンをロック的なダイナミズムで具現化したDaft PunkがEDMの流れまっただ中に出した『RAM』は音楽シーンに巨大な衝撃を与え、その底流が今年『DRUNK』という作品に繋がったように思います。
今年は
『蒸気波要点ガイド』というZINEが熱を以てSold Outしたのも記憶に新しく、このVaporwaveというバブル日本を愛と冷笑の“あえて”で今に刻んだ嗜好が80sを90s-10sの感性で再構成した音楽が、また2017年という年に80sが蘇る流れを生み出したと想います。
そしてその消費の仕方は”あえて”の視点が入るというか。原色そのものというよりもちょっとした汚れというか、或いは逆にパステルに褪せ輝く様があるようにも思えます。
軍艦島、或いは
マチュピチュのような、朽ち生い茂る神殿としての象徴性があるようにも感じて。それは消費社会の業でもある、と。
そして、「現代におけるバブル日本的状況が起きている中国にまなざしを向けること」による知見が蒸気波の次の流れとしてあるのでないかと提案したいのです。
現代中国の狂騒は、どぎつさとパステルさが同居するVaperwave、Future Funk的な様相が起きていると感じて。
それは例えば今年フェスティバル・トーキョーで上演された
Tianzhuo Chenの舞台もそうですし、
渋谷DIESEL ART GALLERYでみた池磊の写真展にもその感覚はありました。今まさに光と影を帯びたバブル文化の”元ネタ”が生まれつつあると想うのです。
その上で、北米人がTOKYOの音に感じたような近代的エキゾチズムへの日本人的な地政学的位置からのSuggestionとして谭维维という伝統的な歌唱法を駆使するシンガーをここで挙げたくて。
このセピアな感覚も含め彼女の歌には”今まさに80s感”が溢れている気がして。ChinaにVaporwave / Future Funkの新たなる蒸気があるかもしれないと予言を以ってこの予言から始まった述懐を終えたいと想います。