『人文地理学 -その主題と課題-』備忘録

c0002171_19275650.jpg杉浦章介 松原彰子 武山政直 高木勇夫 著 『人文地理学―その主題と課題』を読みました。

この本は序章から始まり、全部で14章に分かれており、それぞれ
序章 人文地理学のものの見方と「ヴィダルの学統」
第1章 自然・環境・人間
第2章 地球環境と人間 -気候変化と海岸線変化を中心に-
第3章 災害と人間 -河川を中心に-
第4章 科学的探究と空間の世界
第5章 立地と空間システム
第6章 空間行動と相互作用
第7章 「トポス」と「人間のいる風景」
第8章 都市化する世界と地域
第9章 「世界の中の地域」・「地域の中の世界」(1) 分業と集積
第10章 「世界の中の地域」・「地域の中の世界」(2) グローバルとローカル
第11章 情報技術と地理的世界の拡大
第12章 グローバル化の世界における「国民国家」
第13章 政策科学としての人文地理学
となっています。

このエントリは各章を省みながら心に残った文章を書きとめておくという目的で書きます。

序章 
人文地理学史

「いつまでも変わらぬこと」を研究する古い地理学者
「そのうち消えてなくなる美しいもの」を研究する人文地理学者

空からのパノラマ 地表を見る眼
垂直的な眺め 水平的な眺め
地図 フィールドワーク

地図は地理学的想像力の産物

第1章
ダーウィンの進化論により、地理学は人間社会のあり方を決定付ける本質的要因は自然環境そのものの中に存在するのではないかということを再発見し、統一性を回復した

「自然・人工物・人間」系

地理的環境
利用可能な環境
知覚される環境
行動環境

『沈黙の春』と環境の揺らぎ

第2章
気圏
水圏
岩石圏
生物圏

海進
海退

地球温暖化

第3章
水害
ハザードマップ

第4章
1950年代後半から1960年代に起こった科学的方法論に依拠する「空間のものの見方」がそれまでの人文地理学研究のあり方を一変させた「計量革命」

「形態の中に見いだされる諸要因の総合化」ではなく、「個別的な対象の形態を生み出すメカニズム、すなわち形を作り出すプロセスの究明」
formsでなくpatternsという視点

「地域」・「場所」に変わる科学的で中立的且つ普遍的な「空間」という概念

形式科学 経験科学
論理的に可能なもの 経験的知識の体系化

地理学の厳密科学化

都市化や高度大衆消費社会の登場
コンピューターの進化
貧困や分配の問題 人種差別や人種問題 国際分業制 地球環境問題

形態学的な眼 幾何学的な眼

第5章
地表にはなんらかの立地上の秩序が観察されるという認識

農業的土地利用モデル
中心地から同心円的に利用され方が変わってくる

工業立地の原理
立地の三角形 最小費用モデル
力学モデルのアナロジー

ハイテク産業の立地傾向
大学や研究施設のプールへの近接性
イノベーションや労働の柔軟性を阻害するような強い組合活動の盛んな地域を避けること
ベンチャーキャピタルと起業化風土の存在
高い生活の質が得られる
高品質な通信と交通手段

中心地システム

フラクタル分布の自己組織的成長

第6章
パーソナルスペース アクティビティスペース

時空プリズム 時空パス バンドル 時間収支

人口移動
プッシュ要因 プル要因

人口移動の法則
ほとんどの移住者は短い距離を移動する
長距離移住者は大都市を移住先として選ぶ
多くの移住は段階的に起こる
地方から都市への移住が多く見られる
移住の流れはその主流を補うような逆流を生み出す
移住者の多くは大人であり、家族単位での国際的な移住は少ない
国際的移住者には若い男性が多い


第7章
地理学とは地球という対象物、社会の中の自発的な行為の主体、棲家としての場所をまとめあげるものだ

Topophilia

場所固有の精神やパーソナリティ ゲニウス・ロキ

a sense of placeは個人的であると同時に集団や民族中心的である

日常景観 John Brinckerhoff Jackson

空間と場所は両立できる

ランドスケープ

常景(vernacular landscape)

数多くの景観について探求を重ねれば重ねるほど、それらの景観には、すべてに共通する特徴が存在すること、それぞれの警官の持っている本質は、それぞれの独自性ではなく、むしろ他の景観との類似性であるとますます思われるようになったことである
景観には原型となる景観が存在する
根源的理念(primordial idea)としての景観

景観は人間の生活に根ざしている。それは眺める対象ではなく、人間一人ではなく、多数の人々によって棲まわれるものに根ざしている

景観はひとつの統合体、あるいは全体として理解される。そこでは、人間の共同体とその環境は一体化されており、人間は自然の変わることのない一部である。そして、それは、都市も田舎も含まれる

それゆえに、景観を理解するためには、生き、生活するということや、そこに棲むものの立場から理解しなければならない。そして、景観を評価、判断するには、まず、それが人々の生活や働く場所として、理解され、さらに、生物的にも社会的にも、また肉体的にも精神的にも、人々の欲求に答えているのかということに思いを致さなければならない

景観の原初的で且つ意味のある単位は、ここの人間の居住する棲み家である。住居こそ、人間にとって最も根源的な自己アイデンティティーを与えるものであり、人間が棲み家をどのように秩序付けるのかということが、その他のもの、共同体や地域、そして都市を作り出していく、そのやり方の原点である

生活という意味で景観を理解しようとするならば、人間の日常生活とその環境にまず着目する必要がある。ありふれた日常のものこそ、人々の生活を知る手懸りである

すべての景観は象徴的である。それは社会そのもののあり方を反映であると同時に、理想の実現を目指す営みの地表上における表現である

それ故に、景観は常に変化にさらされ、変化を繰り広げるものといえる。それは社会そのものの反映であるためであり、より望ましい景観を求めて景観を改変しようとするならば、そうした景観を創り出している社会そのものを変えてゆかねばならない

風土は自然的であると同時に文化的であり、また風土は主観的であると同時に客観的でもあり、さらに風土は集団的であると同時に個人的でもある

「人間のいる風景」とは何か

第8章
居住地域 非居住地域
エクメネー アネクメネー

近代以降、世界の各地においてエクメネーが拡大を続けてきたばかりか、それを上回るペースで人口が増大し続けてきたこと
このように増大する人口にとってのエクメネーは都市的なものになってきたこと
その結果、都市的なエクメネーは、絶対的にも相対的にも、エクメネーを代表するものとなったこと

人間・人工物系

郊外化 田園都市

輝く都市への批判

ノスタルジックな「本物性」を逆に利用した商業主義的都市開発が、1980年代以降、世界中の大都市の景観を大きく変貌させてきた

荒廃した都市中心部を再開発し、活気を取り戻すような開発をgentrificationと呼び、本物性が喧伝された

都市部のルネッサンスとマンハッタン化

時間による空間の圧殺

過剰蓄積になりそうな剰余価値は、空間の圧殺のために、建造物として交通インフラや通信インフラ、エネルギーインフラとなって、将来における更なる資本蓄積を可能とするように使われることもある。

ケインズ派の都市 公共事業

第9章
空間的分業

社会的なものと空間的なものは互いに密接に関連しているばかりでなく、相互の規定しあうものである

分業は新たな社会的関係、すなわち階層的管理や下請け制度に見られるような社会的関係を生み出した

「生産の空間的構造」は「生産の社会的構造」でもある

自己完結型企業・地域モデル
複数同形工場型モデル クローン型
部分特化工程型モデル

全体の中での場所・地域の意味

規模の経済性 規模に関する収穫逓増
外部経済性 集積の利益

大量生産方式から伸縮的専業化と呼ばれる多品種少量生産方式への移行が必要

新産業空間
テクノポール
伸縮的蓄積過程

企業の経営上の現実
供給者
顧客
競合他社
関連業界団体

産業クラスターモデル

マーシャル型
ハブとスポーク型
衛星基盤型
国家下支え型

第10章
グローバル・リンケージ

多国籍企業=多国内企業=複数同形工場型
資源抽出産業
市場へのアクセス
最終消費財の生産

対外直接投資の増加
貿易構造の変化

トランスナショナル企業(TNC)
国際的な空間的分業を推し進めている企業

企業内物流

比較優位だけではなく、競争優位によって戦略的に構築

国境を越えた生産・物流ネットワーク

グローバルな可能性の中で生産のシステムを構築すること
フラグメンテーション
生産工程を細分化し、その細分化された工程ごとに最適立地点を選択し、空間的に分散した各工程を全体として、サービス・リンクスによって結合し、統合すること

情報都市(Informational City)

グローバル都市(Global City)
東京、ロンドン、ニューヨーク
TNC等の戦略的意思決定機能
金融サービス機能
プロフェッショナル・サービス機能 国際会計・監査サービス 国際的法務サービス
産業横断的 指令と統括機能をサポートするもの
社会的統合
非専門的労働力も同時に集まってくる

企業活動における価値連鎖全体の革新
企業が、いかにしてイノヴェーションを継続的に生み出すように技術と組織を再編してゆかなければならないかという現実

クラスター
特定分野における関連産業、専門性の高い供給業者、サービス提供者、関連業界に属する企業、関連機関(大学、規格団体、業界団体等)が地理的に集中し、競争しつつ同時に協力している状態
地理的基盤(プラットフォーム)
フラグメンテーションの進展は、ローカルな場における経済活動の結合を再編すること

スピルオーヴァー(波及)効果 シナジー(相乗)効果

経路依存性
場所や地域の歴史的経緯によって革新の方向付けが行われること

ロカール
人々によって日常的に体験され意味づけられている時空間の一部
ローカルでもあり、非ローカルでもある

人間の自由な意思の元における行動(social agency)と社会構造(social structure)は相互に規定しあいながら、それぞれの場所や地域によって相違する姿で立ち現れ、展開していく

地域とは、ある特定の場所や狭域を指すばかりでなく、地域外の様々な影響力にさらされ、地域がいと深く結ばれ、相互に依存しあう存在である

地域は「世界の中の地域」としてと同時に「地域の中の世界」としても理解されなければならない

第11章
地理情報システム(GIS)

情報社会の地理学 サイバースペースの地理学
インフラの分布

距離の死

エッジシティ

情報コンテンツ産業
それ自体が独立したひとつの産業であるというよりも、様々な情報サービス産業と密接に結びつくことによって価値を生み出す経済クラスターとしての性格を持つ

知識集約産業の立地
能力を持った人間が、どのような土地で働きたいと考えているかが重要

サイバースペース
サイバープレイス
スマートプレイス
ハイパープレイス

第12章
「国家」を基本ユニットとする世界の構成は1648年のウェストファリア体制から

ナショナリズム
国家 国民 民族

民族自決の法則

地政学

核心地域 外縁・島嶼三日月地域
軸域 縁域

政教分離 法の支配

三権分立

領域性
国家主権
対内主権 司法管轄権とその強制力の及ぶ地理的範囲の両者を同時にあらわすこと
対外主権

ゲリマンダリング

夜警国家 大きな政府

国家は国民に貴族と自己同一性を与えるもの
「トポス」の創造者、管理者

国家から市場へと権力・権威が移行してきたことが、恐らく、国際政治経済の分野における、20世紀広範に起こった最も大きな変化であった

生産様式
資本主義 国家主義

発展様式
工業化主義 情報化主義

TNCやNGO等による「下からの」国家機能への影響力の増大
超国家機関に加盟することで「上からの」主権の制限にも直面

国家はグローバル化する世界の中に新たな役割を見出すことができるようになる

トランスナショナル化がもたらす国家の変容や文化のハイブリット化

「今」、「ここにある」世界と未来を考える

第13章
地 神霊の降下するところ 地勢の起伏の状
理 すべて条理のあること
地理 土地の利用を図るに際して、土地の起伏の条理にかなっていること

風水

水害地形分布図
ハザード・マップ

地域(Region) 周囲の地理異なるものとして判別できる、自然的あるいは人工的な特徴を持った地表の任意の地域
自然地域(Natural Region) 砂漠 熱帯雨林
人文地域(Human Region) 都市 商業地域
内生的地域(Endogenous Region) 地域編成原理に従って自立的に形成
外生的地域(Exogenous Region) 社会の目的に合致した指標によって人為的に区画

地域の構成要素
自然・環境
生活・社会
産業・経済
歴史・文化

地域政策 都市政策

政策形成過程
基本構想 
基本コンセプト 政策課題
基本計画
ゾーニング 整備の方向性
実施計画
具体案

夢(Dream) 
構想(Vision)
計画(Plan)
事業実施(Project)

『人文地理学 -その主題と課題-』感想
by wavesll | 2006-04-25 19:30 | 書評 | Trackback(2) | Comments(0)
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