『人文地理学 -その主題と課題-』感想

杉浦章介 松原彰子 武山政直 高木勇夫 著 『人文地理学―その主題と課題』を読みました。

人文地理学とは、経済地理学や社会地理学など、事物と表象からなる地理的世界の中における人間を研究する学問で、この本はそのイントロダクション的な内容になっています。

なぜ地理学の本を読んだか、と問われたとき、読んでいて感じたことから理由を述べると、より現実に近い学問だからです。たとえば経済理論を考えたとき、需要や供給、生産物や投資といた変数に、時間と空間という変数のベクトルが加えられることにより、より立体的でリアルな理論を構築することができます。

また「環境」というものを学ぶ際には地理学は避けては通れないだろうなと思い、図書館でこの本を借りました。

この本では、序章の人文地理学史に始まり、自然科学、社会科学、政治学、哲学などとリンクした、人文地理のさまざまな側面を知ることが出来ます。

中でも僕が一番心引かれたのは、アメリカにおける柳田邦夫のような人物である、J.B.ジャクソンの景観論でした。

彼は「常景(venacular landscape)」という言葉で普通の人々にとっての日常的な実感や、生活を表したり、多様な景観の中に潜む「景観のイデア」を示唆したりしていました。

彼の著作『景観を読む(Reading the Landscape)』から伺える彼の景観に対する問題意識は、景観とは社会的な生活の場であり、象徴であるということです。
景観を知るにはそこに棲む人々の生活を知らなければならないし、社会も景観の一部であるので、景観を変えるには社会変革をせねばならない、と彼は述べています。

また、本書の中で示される地球のトランスナショナル化やグローバル都市という概念は、人口減少の時代に突入した日本が生き残る道も示唆しています。つまり、労働力と消費市場を海外に求め、「日本にかかわる人々」を増大していくという道です。
また、そのためには日本は世界に通じるプロフェッショナルな知的サービスが行える人材を集め、日本全体をグローバル都市にしていく必要があります。その土壌整備に人文地理学が貢献できる領域は広いと思います。

また、新たな地理領域であるサイバースペースを考えたとき、ウェブの世界の水先案内人の端くれである身としてはいつか、『教科書に載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』のような「歴史」の供述とともに、「空間」的にネットの世界を図示したいと思います。それは例えば、mixiGraphのような関係性から作られた地図になるかもしれません。

「人間のいる風景」を研究する学問である人文地理。これからますます面白くなっていくだろうな。この本を読んでそう思いました。
by wavesll | 2006-04-26 06:39 | 書評 | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://kamomelog.exblog.jp/tb/3833834
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
<< 経験価値とガチャT 『人文地理学 -その主題と課題... >>