2017年 06月 21日 ( 3 )

最悪な最高を生きていると

椎名林檎 - 長く短い祭 from百鬼夜行


AKBの総選挙である女の子が結婚宣言をして、阿鼻叫喚の総スカンを食らったのをみて。その後ケンドリックラマーのTシャツを着るとかも含めて、「面白いなーこの子、ここまで爆弾仕掛けて、グループ自体も破壊しようとするのは秋元筋金入ってんなw」と嗤ったのですが、「仕事ならば何でもいいのか/面白ければなんでもいいのか」のモラル破壊問題ってやっぱりあるなぁと想った處。

"恋愛禁止"を一番の恋盛りの女の子たちに求めるのは、人間性の破壊にならないか。「いや、せめて建前は守れよ」といいたくなる気持ちは分かりますが、寧ろ彼女は純情だからこそ嘘をつくのに耐えきれなかったのではないかと。

プロフェッショナルというのは総じてどこか役割を演じることが必要となるし、建前を守る安心があるから社会が成り立つのですが、「建前」が形骸化して、最初から「嘘」になってしまうと不味い。嘘を吐きすぎると無法な心理が生まれるのではないか。

グループでも会社でも、創業メンバーは「理想=建前」を内発的に得心して、そしてサービスや心意気を徐々に発展・習得していきます。しかし、後発の新米の心身にとっては「既にあるスーパー・パワー」は半ばフリーキーに振り切れて限界を超えた負荷になっているのではないかと。

さらに顧客は"更なる進化がないと面白くない"と言い出し、無理を越えて「最悪」を「最高」と嘯いて尽くしていると、無視できない歪に蝕まれるのではないか。体育会の部活をさらに激しく厳しくしたような、若いうちにしかできず時間が限られているアイドルという仕事は濡れ手に粟の水商売でもあり、構造としてモラルハザードが起きて当然にも想えます。

逆に上の立場からみたら、石原莞爾などもそうですが、自分はきちんと論理だてて大勝負に臨んでいたのに、"蛮勇な大博打でもOKなんだ"とみられ自らを模倣してるつもりの若手の暴走に頭を抱える事態が起きているのだと想います。"人倫は守れよ"と。

さらに、10代も、20代も中身はガキそのもので。ましてや芸能産業なんてのは"大人"も餓鬼なのではと。みな虚勢を張って、真実ベースの対話ができていなかったのでは?ただでさえ弱音を吐くことが良しとされない、"命がけでみんなやってんだから"となりがちなのは心身のダンピングがそこかしこで起きる現代日本の労働環境の縮図にも感じます。その反動ともいえるサービス強化へのスパイラルも。

モラルハザードはファンの側にも起きていて。小舅というか、10代20代の女の子に極めて厳しい指摘を続けるミソジニーが起きているのは、"自分はこんなにも相手のことを女として好きなのに、相手は俺なんか歯牙にもかけない、でも惹かれてしまう"という状況構造が引き起こしているのではないかと想います。

アイドルも、運営も、ファンも、みな餓鬼ばかりで須藤凜々花ならずとも「DAMN(畜生)」と言いたくなります。"ぬるい頑張りじゃ競争に生き残れないんだよ!"と言うのもわかります。私自身も一時期アイドルに嵌ってIdol Musiqueを聴かない理由があるとすればという記事を描いたりし、その魅力がわからないわけではありません。

ただ、群集心理の波濤に押し流されず自分を大事にして仕事をしてくれたほうがきらきらした夢を与えられると想うのです。少なくとも「最悪」を「最高」と自分に嘘を吐かないで欲しい。やりがい搾取で成される虚勢の繁栄よりも、真心の本音2.0が、今欲され、伸びしろがあるのではないかと。「嘘」ではなく、信じられる「建前」を時に喧々諤々異論を交わしながら成してほしい。自分を大事にしないと他者も大事に出来ない。そう20代を終えて想うようになりました。

余談
ちなみに、怒り心頭に達している方々に朗報なのですが、100年も経てばムカつく奴も全員死ぬそうですよ。世界丸ごと憎んでいる方にも朗報なのですが数十億年後には太陽が地球を飲み込むので嫌な連中の子々孫々丸ごと死滅するそうです。"それでもこのムカつきが止まらねえんだよ!"という方には北方先生の「ソープへ行け!」を進呈したします。
by wavesll | 2017-06-21 21:09 | 小噺 | Trackback | Comments(0)

音楽歳時記 雨の夏至 Okada Takuro / Ur

Okada Takuro / Ur
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雨の朝。ここ10年の首都圏では夏至に晴れたのは1回のみ。最も太陽が伸長する日に、あまりお天道様は姿をみせないようです。

こんな朝は何を聴こうかと思ったときに最初に思いついたのは『東風』で。コンピューター・サウンドの優しい響きが雨曇りの朝にあうかなと。

WW2後、消費の主役として若年層が台頭しユース・カルチャーが伸長しました。ロックという概念をユース由来の社会風潮が後押しして、変幻自在に飲み込みながら版図を拡げていって。

その"ロック"が生まれてから60年、"ユース"の砂場は、楼閣が既にガンガンに建て尽くされてしまった様とも想います。逆にリマスターされた『サージェント・ペパーズ~』なんか近年のローファイ・サイケ・ロックのかなりいい新譜といってもいいくらいに感じて。

自分が学生だった頃の古き良きJ-POP、原田知世 / 空と糸なんかも、今調べてみると鈴木慶一さんが作曲していて。エヴァーグリーンなサウンドは、ロック仙人たちの掌の中なのか。

"ロックは俺たちの音楽"だと想っていたら、もうユースという年でもなくなって。そして色々聴けば先達が涅槃仏してる。HIPHOPやJTNC、Erectoronicsにシマを変えた方が新雪を滑れそうかもななんて思ったり。

それでも、クオリティを突き詰めていくことで今でもRockそしてMusicの地平に新領域を拓いていく若き音楽人の作品を聴くと、2017年のBreakthroughはこんな方法論もあるのかと想わされるのです。演説家でなくアルチザンな姿勢、その閑けさに周囲を惹きこむ美と気骨を感じて。

雨の日、はしゃぐも良し、ひたるも良し。「押し」にも「引き」にも意義はあって。そんな中でこの音に耳を澄ますのも、大変お薦めです。歩を進めつづければ、山越え得るやも。みなさま、良き夏至を。

cf.
(失っていたとみられた)ゼロ年代邦楽ベストと現在の都市インディー

平成27年 今年鳴った音楽
by wavesll | 2017-06-21 08:50 | Sound Gem | Trackback | Comments(0)

ラブリーサマーちゃん/あなたは煙草 私はシャボン(siroPd Remix)Xヱビス華みやび 第96回酒と小皿と音楽婚礼

ラブリーサマーちゃん - あなたは煙草 私はシャボン(siroPd Remix)
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ホントは画像だけでキメるとかっこいいかもと思ったけれど、一言だけ。

ラブサマちゃんは可愛い声や曲展開に相対性理論や90年代後半の日本のロックを感じさせて。それがインターネット・SSWとして華ひらいたのが21世紀だなと思って。そして10年代のアンセム、『水星』世代とでも言えるような、アオハルを強く感じるアーティスト。

だけれども、この『あなたは煙草 私はシャボン』がサウンドクラウドで数多カヴァー/Remixされているのが表しているのは、彼女が『新しい形』を示したということ。

絵の世界では、いかに『新しい形』をつくるかがその人のオリジナリティと直結していると想います。

私は琳派が好きで。彼の流派は俵屋宗達に始まる超隔世遺伝の日本美術。
宗達の『風神雷神図』は尾形光琳へと受け継がれ、酒井抱一へと続き、現代までつながるアート・ミーム。けれども光琳は風神雷神をカヴァーするだけでなく、それを咀嚼して『紅白梅図』を書いて。

そして尾形光琳が創った『燕子花図』、そして『風神雷神図』は抱一の弟子・鈴木其一によって『朝顔図』へとメタモルフォーゼしていく。

このカヴァーとオリジナルの連複が、ラブサマちゃんの表現には感じて。彼女自身の音楽体験の海から『あなたは煙草 私がシャボン』が生み出され、それ自身がインターネット・ミームへと改変連複していくのが、快い。

創作や閃きが、それまでのエクスペリエンスのゲシュタルトだとしたら。音楽も絵画も、連綿と繋がれる時の流れの結晶なのだと想います。その大河に浮かぶひとひらの花弁、彼女の歌にはそんな"キレイ"を感じる。
by wavesll | 2017-06-21 00:02 | La Musique Mariage | Trackback | Comments(0)