2017年 09月 11日 ( 1 )

アルチンボルド展@国立西洋美術館 "寄せ絵"のアイディアだけでない、極上の画の技量

c0002171_6444154.jpg

アルチンボルド展に行ってきました!素晴らしかった◎

ジュゼッペ・アルチンボルド。ミラノ出身で神聖ローマ皇帝のハプスブルグ家3代に仕えた宮廷画家である彼の"寄せ絵"のヴィジュアルはあまりにも有名で、私はアイディアの人かと思っていたのですが、直にみる絵からびんびんとアウラを感じて。デッサン力、そして質感の描写の卓越さに驚きました。

先ず展示室に入るとすぐにある≪四季≫が素晴らしくて。木のこげ茶の土台に、赤い林檎、黄緑のマスカット、緑の葉、黄色い麦…鮮やかな色彩がインテグレートされ、美しいフォルムとなっていて。魅了されました。

≪自画像≫の端正な壮年の表情、そして≪紙の自画像(紙の男)≫というユーモラスな表現も楽しくて。ベルナルディーノ・ルイーニ ≪ビアージョ・アルチンボルド≫の親父さんとジュゼッペは似てました。

アルチンボルドはレオナルド・ダ・ヴィンチとほぼ同時代、入れ替わりくらいの時代の人で。アルチンボルドもかなり人体の構造やデッサンの技術を鍛えたそうです。展覧会ではダ・ヴィンチの≪植物の習作(表:ミクリ 裏:ホソバヒメガマ)≫や≪鼻のつぶれた禿頭の太った男の横顔≫なんかも展示してありました。

アルチンボルドが仕えたマクシミリアン2世などのハプスブルグ家の人々の肖像画の後にはオッターヴィオ・ミゼローニ、ディオニシオ・ミゼローニ ≪玉髄製の蓋付きの鉢≫やオッターヴィオ・ミゼローニ、HCのマイスター ≪大きな貝形の鉢≫・≪ネプトゥヌスをともなう巻貝形の鉢≫・≪碧玉製の貝形の鉢≫、そして作り手不肖の≪水晶製の平皿≫が展示されていて宮廷の栄華を想わせました。ちょっとインペリアル・エッグを想ったり。

また宮廷でのアルチンボルドのアート・ディレクションも展示してありました。ルドルフ2世に献じられた馬上試合の装飾デザイン集は、まるでRPGの設定本を眺めるような面白味がありました。

さて、そして次の空間がこの展覧会のクライマックス、≪春≫≪夏≫≪秋≫≪冬≫≪大気≫≪火≫≪大地≫≪水≫の部屋。この絵画達のクオリティが凄まじく群を抜いていて!

アイディア、デザインが優れているのは勿論、質感描写が本当に卓越していて!≪水≫の水生生物のぬめるような質感、≪春≫の花弁の質感、≪大地≫の動物の毛並みの質感、≪冬≫の木の幹の質感、≪夏≫の野菜の溌溂さ…マグニフィコ!!!!!

また面白いのが制作年が春夏秋冬の通りでなく、≪春≫と≪冬≫が1563年、≪夏≫と≪秋≫が1572年に描かれたこと。そして≪大地≫と≪水≫は1566年の作品で、その制作の流れも興味深かったです。

この展示室の後に大きく拡大複写された8枚が並んで展示されていたのですが、もう全然質感が違って。この絵画たちは生でみた価値を大変に感じました。この技量に裏打ちされて寄せ絵という発想が飛翔したのだなと。

他の画家の寄せ絵のコーナーもあったのですが、それをみることで如何にアルチンボルドの筆が見事か、質感描写・デッサン力が凄いかが照らし出されていました。

この時期は博物学的な画が流行りだったそうです。作者不詳 ≪アンコウ≫の化け物感やヤーコボ・リゴッツィ ≪タイ科の魚≫の色味、作者不詳 ≪椰子の実形のゴブレット≫、参考作品のヴェンセスラウス・ホラー ≪蝶々とさまざまな昆虫≫の連作なんかいいなと想いました。

さて、博物学的美意識と、人権を考えさせられたのが多毛症で見世物にされた一族が描かれた絵画のコーナー。アゴスティーノ・カラッチ ≪多毛のアッリーゴ、狂ったピエトロと小さなアモン≫南ドイツの画家 ≪エンリコ・ゴンザレス、多毛のペドロ・ゴンザレスの息子≫には胸の痛みも感じた一方で、サヴァイヴしたことに強さも感じました。

またこの時期は職業絵とカリカチュアの誕生があり、単に端正な人物画でなく、その人間の本質を描き出すムーヴメントが起きました。人物の本質を寧ろ寄せ絵の比喩で顕わしたという点でジュゼッペ・アルチンボルドの≪ソムリエ(ウェイター)≫≪司書≫≪法律家≫は興味深かった。

またアルチンボルドの寄せ絵は人物画と静物画のフュージョンとも捉えられます。上下さかさまに見ると捉えられる意味が変わる≪庭師/野菜≫≪コック/肉≫は展示の最後に彩を与えていました。

そしてこの展覧会のお楽しみが展示室に入る前にあるフォトコーナー。顔認識で、ヴィジョンの前に立った人を野菜の寄せ絵で顔をつくってくれるというシステムw私もやってみましたw
c0002171_6453629.jpg

さて、私的にお薦めの観方は一周観た後に半券で再入場し、野菜顔フォトをとって、最後に展示の初っ端の≪四季≫をみること。実は≪四季≫は1590頃という最晩年の作品。アルチンボルドが辿り着いた瑞々しさに心打たれて、展覧会を後にしました。
by wavesll | 2017-09-11 06:51 | 展覧会 | Trackback | Comments(0)