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アダム・スミス著 村井章子+北川知子訳『道徳感情論』ー"もしアダ"が書きたくなる稀代の"いいね論"

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アダム・スミス 著, 山岡 洋一 訳 『国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究』を読んでから、"次は『道徳感情論』だな"と考えていて。訳の読み易さから日経BP アダム・スミス (著), 村井 章子 , 北川 知子(翻訳) 『道徳感情論』を手に取りました。

「人間というものをどれほど利己的とみなすとしても、なおその生まれ持った性質の中には他の人のことを心に懸けずにはいられない何らかの働きがあり、他人の幸福を目にする快さ以外に何も得るものがなくとも、その人たちの幸福を自分にとってなくてはならないと感じさせる」

"人間は自己利益を追究する生物だ"という『国富論』に対して、"ヒトは共感によって行動する"という『道徳感情論』、実際に読んでみると現代においては極めて優れた"いいね論"であり、『もしもいいねが欲しくてたまらないSNSユーザーがアダム・スミスの『道徳感情論』を読んだら』という二匹目のどじょうを狙いたくなるネタ満載のクラシックでした。

アダム・スミス教授は、確かに"ヒトは共感するもの"と書いているのですが、"何を良しとするか"について極めてシビアな共感の条件を挙げています。

例えば"怒りや悲しみ、憎しみに人は共感するどころか怒っている人に不快感を覚える"だとか、"喜びには比較的共感しやすいがそれは嫉妬心がない場合に限り、大きく儲かったとかよりも些細な喜びが共感を集めやすい"だとか。

中でも心に残ったパンチラインは”隣人が愛せる以上に自分を愛してはならない”。「汝のごとく汝の隣人を愛せよ」から更に進んだ、客観性の極致がこの思想にはありました。

"いいね"をもらうだけでなく、"自分が他者にいいねする"事についてもスミス教授は示唆を与えています。"いいね"を大盤振る舞いしても有難がられず、根拠がきっちり相手も理解できる時に恩賞を与えるのが効果的だと。

ここら辺は私自身は異論もあって。常にポジ出してくれる人は嬉しいし、幸せの閾値を下げると当人もよりHAPPYになるのではと実感から想いました。

アダム・スミスはかなりエスタブリッシュメント寄りな論客で。権力と財力がある人をヒトビトは尊敬するし、そうした貴族が素晴らしい流行を生み出したりする、寧ろ革新勢力は世の中の秩序を乱すことも往々にしてあるし、という論を述べています。

貧乏人が資産家・権力者を目指すのは犠牲にするものが大きすぎる、なんて話は現代社会では馴染まない考えにも感じました。ちょっとスミス教授は保守的にすぎる感もありました。

そして『道徳感情論』の思想の大きな特徴は"『自然』を受け容れる"ということ。
共感の心の行き届く範囲も、遠い地の大災害よりも自分の些細な傷の方が大きく感じるのは自然だと。

陰鬱な哲学者は"全世界で悲惨な暮らしをしている人がいるのに幸福を享受するのは罪だ"というけれど、それは"自然"から求められるところではない、というアダム・スミスの論。

スミスは本書で"自然"を神だとか本能と言った意味で使っていると感じました。神の見えざる手ならぬ"自然の見えざる手"が人間心理を情操していくと。アダムスミスの保守思想は、"神が創ったこの"自然"世界を肯定する"という宗教心から生まれているように想います。

"自然"からすれば、何かの"いいね"を言うことは善だけれども義務ではなく、されなくても文句は言えない。
胸中の第三者の視線に応えることが素晴らしい姿勢で、そこに応えている限り、自分自身を誇れるというスミスの思想は強靭な人間工学だと感じました。

人間工学という意味では、スミスは"美の感性"についても語っています。
人の感性はみなれた慣習や流行に影響を受けるし、一番美を感じるのは、平均値・中庸の美だと。

確かに石原さとみなんか見ていると色んな女性の表情が宿っているというか、イデア的なものに美を感じる仕組みが心にはあるのかも、なんて思いました。

アダム・スミスが"いいね"という人間は思慮深い人間、適切さのある人間、他者には寛容で慈悲深く心動かされ、自分のことには微塵も動揺しない人。

また、自尊心や虚栄心は不快さを他者に感じさせることもあるけれど、多くの人はその人の自己評価以上に敬意は払わないから、卑屈な態度よりかは自尊心や虚栄心のある方が好ましいと述べています。

徳への愛、真の栄誉を得ることは偉大なる目標だとスミスは言います。

最大に"いいね"がされる生き方は称賛や褒められることを欲するのでなく、称賛、褒め、"いいね"に値する人間になることを欲するべきだと。これもまた真理ですね。

この読書では数奇なセレンディピティも感じて。訳者後書きを読むとこの本は『国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究』を訳した山岡 洋一さんの葬儀時に村井さんが名乗り出で、その遺志を継いで行われたプロジェクトだったとのこと。

日経BPの『国富論』もそうだったのですが、本書も非常に読み易く、こうした志のある翻訳書は日本の宝だなと想いました。

経済学とは価値観の学問だという想いをより強くする、社会哲学の書、堪能しました。
by wavesll | 2017-07-13 19:01 | 書評 | Trackback | Comments(0)

今出せる最適解へ駆け続けろ:細谷 功『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』

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細谷功『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』を読みました。

個人的に「フェルミ推定」、名前は聞いたことはあったのですがどういうものかを知りたかったというのと、ここ一ヶ月で外山滋比古『思考の整理学』梅棹忠夫『知的生産の技術』、そしてショウペンハウエル『読書について』『思索』『著作と文体』を読んで、"書籍哲学者"でなく"自分で考え抜く力"が自分には足りていないと想い、その為にフェルミ推定という思考のフレームワークをインストールするのは有効かもしれないと考え読了した次第です。

さて、いきなりですが、<「日本全国に電柱は何本あるか?」を制限時間3分で、電卓・PCを使わずに求めよ>と言われたら、どんな答えを出せますか?

これがフェルミ推定、その典型的なクエスチョンなのです。すぐに求められない解を手持ちの少ないデータから求めること。ノーベル物理学者エンリコ・フェルミが良く課題に出したことから名を冠しました。

さて、私自身はこの問いを見て、「そもそも電柱が一般的に何メートルおきに立っているかのデータが欲しいな、それがあればそれで日本の面積で割って出せるのに」とか考えてるうちにタイム・アップ。これは"知識編重型"な思考法だそうです。

この解法の一例としては
1. 単位面積当たりの本数を市街地と郊外に場合分けして総本数を算出する
2. 市街地の代表的な電柱配置を「50m四方に1本(1平方km辺り400本)」、郊外を「200m四方に一本(25本)」とモデル化する
3. 日本の総面積は38万平方mだが、これも東京-博多間が1200kmなのを知っていたら大体1500kmX200kmと計算して30万平方kmと推定できる。
4. 市街地と郊外の面積比は「日本の国土の3/4が山間部」なので、2割ほどが市街地と推定
5. (38万平方km*1/5*400)+(38万平方km*4/5*25)=3000万本
6. 最後に現実性検証を行う。電力会社とNTTの出している数字から、日本の電柱の数は3300万本とのこと。

さて、シャーロック・ホームズばりに鮮やかに解が示されたのですが、著者はこのフェルミ推定により"地頭力"が測れる。といいます。

地頭力とは
1. 仮説思考力
①いまある情報だけで最も可能性の高い結論(仮説)を想定し、②常にそれを最終目的地として強く意識して③情報の精度を上げながら検証を繰り返して仮説を修正しつつ最終結論に至る思考パターン

2. フレームワーク思考力
①対象とする課題の全体像を高所から俯瞰し、相対座標ではなく絶対座標としてズームインで説明できる全体俯瞰力
②とらえた全体像を最適の切り口で切断し、全体をもれなくダブりなく(MECE)適切なセグメントに断面をさらに分解する分解力

3. 抽象化思考力
①対象の最大の特徴を抽出して「単純化」「モデル化」した後に②枝葉を切り捨て抽象レベルで本質的な一般解を導き出して、③アナロジーからそれを再び具体化して個別解を導く思考パターン

だと言います。
社会人の能力の方向性は<知識・記憶力のZ軸>、<対人感性力のY軸>、<地頭力のX軸>があり、今の時代は知識はすぐに陳腐化するのに加え、インターネットによりコモディティ化したことから、地頭力と対人感性力が肝要だと。

この本を読んで最も想ったのは、ここでいう地頭力というのは「仕事を70点でこなし続ける身体性」に感じました。完璧に仕上げることに執着せず、決められた時間内に70点のざっくりした結果を出し続け、その時点時点でベターな軌道修正を加えていく仕事術。

その精神的なタフ度に感嘆すると共に、ついつい"大切なモノゴトが零れ落ちやしないか"とか"自分が満足する水準まで仕上げたい、そして結局『本当に正しいか』まで仕上げたい"と想ってしまいました。

しかし確かに「検索エンジン中毒」「情報コレクター」「完璧主義」「猪突猛進」「セクショナリズム」「経験至上主義」な思考回路は仕事の処理には障害になることも多々あるなと。

知識型(What型)でなく問題解決型(Why型)の知的好奇心を持った人間が重宝されるのも理解できるし、文中に紹介された「三分間事業シミュレーション」で街中で自らフェルミ推定の問題を作成して、店で商品を観たときに「これを何人の人が買っていくら儲かるだろう」とか、ラーメン屋で「どれだけ売り上げがありそうか/どれだけ経費が掛かってそうか」を考えるトレーニングをすると脳力が鍛えられそうだなと得心する点が多々ある読書でした。

また合理的に考え一般化していく地頭力(X軸)と、感情に訴え相手の特殊性によりそう対人感性力(Y軸)は真逆のベクトルを持ち、「Think Rationally, Act Emotionally」が大切だというのも本当にクリティカルな指摘だと感じました。

フェルミ推定の問題集として現役東大生が書いた 地頭を鍛えるフェルミ推定ノート――「6パターン・5ステップ」でどんな難問もスラスラ解ける!も軽く読んでみたのですが、フェルミ推定をするにも、世の中の様々な事象の"数字"に強くなることが結果的に地頭にも繋がっていて、それには「三分間事業シミュレーション」などを行い、日々出逢う事柄を意識的な目でみることが基礎体力を上げるのだと。

フェルミ推定は納期の期日が決まっている仕事を営続してく為には本当に有用なアティチュードに感じて。"今出せる結果を出す"ためにポジティヴな書と読めました。
by wavesll | 2017-06-16 07:15 | 書評 | Trackback | Comments(0)

欲望の民主主義 世界の景色が変わる時をみて

BS1スペシャル「欲望の民主主義~世界の景色が変わる時~」前編 (dailymotion)
BS1スペシャル「欲望の民主主義~世界の景色が変わる時~」後編 (dailymotion)

NHKBS1で放送された欲望の民主主義 世界の景色が変わる時をみました。

欲望の民主主義 世界の景色が変わる時 第1・2章 第3・4章 第5章 第6章 第7・最終章

今、民主主義が危機に瀕し、排外主義や"新たなる王"を求めるように見える近年。

番組の中で政治学者のリチャード・J・サミュエルズによって『民主主義』はこう定義されています。
「礼節のある対話と受け入れられた規範のもとで行われる「政治的競争」…それが民主主義です。

国民一人一人がリーダーを選び、リーダーに公共政策に対する責任を問える仕組みです。一人または特定のグループに権力が集中しすぎないようにするためのプロセスです。

そのために必要なのは法律です。法による支配と権利の保障が必要です。特に集会、言論、信仰、報道の自由…少数意見の保護は不可欠です。

これらが揃い、なおかつ大衆の信頼があれば民主主義がうまく機能していると言えます」
また都市地理学者のクリストフ・ギリュイはこう言います。
「民主主義とはまず権力を持たない人に権力を与えることです。投票とは経済的にも文化的にも顧みられない人が…投票において富裕層や重宝されている人たちと平等になることです」
今の安倍政権の腐敗を思わざるを得ませんが、同時に先進国で格差が広がり「フリーライド」に寧ろ下層の人々の間で大きな拒否感が生じていることを感じます。

民主主義が今までの政治制度で一番ましなのは、共同体内での意思決定における一票の重要性が誰しも平等であること。機会平等であること。そして、それで選ばれたリーダーは法を守り、公に貢献すること。

この「機会平等」に加えて、「最低限文化的な生活」が保証される為に再分配が為されないと、民主主義は機能しないのではないか、そう想いました。

エリート層は自らが稼げるのは自らの研鑽によると想っている、というのも思い込みかもしれませんが、安定した社会と消費者/労働者がないとエリートもエリートでいられない。社会の構成員はみな社会のステークホルダーであるという真実が民主主義の土台だと想います。

そしてグローバルな生存競争に負けた人々がルサンチマンを破壊衝動へ転嫁させていることを思うと、寧ろエリート層の安全の為にこそ再分配は重要であると思います。

フランスでは移民2世や3世が、差別を感じたり貧困だったり、社会の理不尽を受けてテロへ走ると聴きます。それは日本も裏表の関係で、毎年2万人超が自殺している現在、自殺的な発散が他殺的な発散になれば"安全圏にいる競争に勝利しているマジョリティ層"もその危機に問題意識が向くのかもしれません。

また一般意志の示し方として、デモをどう捉えるかについても考えさせられました。

日本は全体主義的な国で、何故か支配層の権力を高めることこそが国際競争で生き残る術だと考える人もいて、"うだうだ言ってないで手を動かせ"という潰し合いが大きな国に感じます。

しかしデモとは何も国家に反逆する事ではなくて。厳しいサポーターや物言う株主の様に"より良い公共"を創るための合法的な行為であり、選手/選良は厳しい声に応えるから貴いのだと思います。

それを共謀罪などで自粛させるという行為は公共の利益を大きく損なうことになります。

中間層の没落が、社会から余裕と誇りを失わせ、弱いものがさらに弱いものを叩く今。本当の強者・権力者に対抗する力・方策を民主主義者が提示しなければ、民主主義を次のステップへ進めることは出来ず、自由も平等も博愛もない自然状態の社会があらわれるのではないか、"自然な競争の結果の階級化"にどう対応するかが現代の問題、そう感じました。

cf.
『欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき』をみて


欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき 第1章~第3章 第4章~第5章 第6章~第8章 第9章~最終章
by wavesll | 2017-06-08 04:58 | 書評 | Trackback | Comments(0)

ショウペンハウエル『読書について』『思索』『著作と文体』ーWeb時代にも通ずるWriting/Readingリテラシー

Dummy Mix 311 // Sharp Veins ('Then Falls Apart' Mix)
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ショウペンハウエル『思索』『著作と文体』『読書について』を読みました。

<読書とは他人にものを考えてもらうことである。一日を多読に費やす勤勉な人間は次第に自分でものを考える力を失っていく>で有名な本書ですが全編に貫かれるのは悪文への怒り。「言葉はヴァーチャルなお遊び」なんて思考に鉄槌を食らわせる。Web時代の議論を先取りしているように感じました。

『思索』における"読書は他人の思考で自らの思考ではない"という"書籍哲学者"への批判は私も実感があって。2chTV実況を読み耽った時分<感想すら人任せって危なくね?>と思ったものでした。

私は自由時間はWebTV本メディア漬けな人間なのですが、だからこそ旅の夜、静寂の中で思索が湧出するのはメディアの濁流から脱してるからだと想います。

「他人の言うことを鵜呑みにせず吟味し得心行かなければ乗っかってはいけない」というRT拡散への戒めのような言葉。

<「世間から思想家であると思われること」を目的に、名声の中に幸福を求めるのは偽物で、自分自身のために思索するのが本物の思想家>という承認欲求モンスターへの指摘。

こんな感じでWeb時代にもあらわれる情報へのリテラシーが描かれてるのを読むと"人類って変わらないモノだなぁ"としみじみと。ショウペンハウエルは「不朽の名作だけ読め」といい、その不朽振りは数百年単位というのもさもありなん。

では「時代精神をあらわしたFRESHさ」をどう扱うか。新鮮さが風化した後に残るものも、フレッシュな質感のある作品も私は好きです。ただトレンドは追いかけるものではなく、その時代に生きることで自然と馨りづけられるものなのではないか、最近はそう思います。

ともすれば狭量、偏屈をこじらせているとも読めるショウペンハウエルの箴言は『著作と文体』でさらに華々しく筆がスパークしています。その指弾は「新刊本以外は読もうとしない民衆の愚かさ」にも。ハウエル師匠キビしいw

「作品を評するときに作品自体を語るのではなく作者の私的環境や作品の元となった実際の出来事を探ることの滑稽さ」。作品論と作家論の混同、私もついついやってしまうなこれは。「"文脈論"論争」もそうだけどメタ視点を語るのは心理主義、か。

ただ「作品における着想の元の出来事や人を知りたい」って欲望は"複製でない生の1次情報に当たりたい"って欲望ではないかなと思います。音楽にはライヴがあって、劇には舞台があって。美術には展覧会がある。では文学・詩は情報の世界だけのものなのか?

「書籍のモノ性・コト化」は現代的課題でもある気がしますが、ショウペンハウエル師匠はそもそも金銭のために書くことを批判しているのでこの発想も歯牙にもかからなそうw

Web時代においても燦然と輝くショウペンハウエル師匠の論説ですが、コピペ剽窃や素人雑記が夥しく生み出される現代に放り出されたら発狂しそう。「価値ある天才にこそ時間と金が遣われるべきだ、大衆は低級なものばかり読む」は正しいけれど、みなさん誇り高き阿呆だからその正論じゃ動かないでしょうね。

と想っていたら「匿名、偽名は卑劣漢」となw!匿名の批評家は「不肖この私めは」、「臆病狡猾なこの私は」、「卑しき素浪人の私は」と名乗るべきとなwやっぱりこの人の論はWeb時代にこそ輝きを放ち、そして当人が現代に生きていたら憤死すること間違いなしだw

また文章の価値を論ずるとき、書かれた対象が珍しい買ったり価値ある材料だから評価されるのか、それとも凡庸な材料を非凡な調理で逸品としてるのか、との指摘も大きく響きました。

私自身はモチーフが珍しい絵なんかも好きなのですが「筆力・調理力」と「取材力・選球眼」の違いは峻別されるべき、か。そう考えると「編集力」って両方の領域にも想えます。そして確かに素材をそのまま持ってくることは筆力としての評価とはまた違ったものだなと思いました。

さらに師匠は「修辞でデコレーションこねくり回すのは朦朧とし凡庸」と断じ、「考え抜かれた、主張すべきものを所有し、それを素直に書くのが美点」と説きます。

思索を重ね理論が醸造されていることはレトリックに頼らずともすらりと書け、内容がない時ほどレトリックで誤魔化しがちなのは確かですね。

明瞭なれど含蓄が深いというのは時がいかに醸され凝縮されているか、理論があるかで。玲瓏な言葉で飾り立てるのはインスタントな行為とショウペンハウエル。ここら辺はシンプルな機材でグリッチノイズを創るミュージシャンに似ている気がしました。

確かに理論があると脳が熱を帯びますが煩悩に囚われている私は表現にも淫したいなとも思いました。

そして『読書について』。
外山滋比古『思考の整理学』の「グライダー人間」の記述にも繋がるこの指摘。

確かに、受動的なインプットに依存しては血肉とはならないし、何かを生み出すというのはインスタントな行為ではなくリアルで一種平坦な生の環境から葡萄酒を醸造するようなところがあり、楽しい楽しいだけではつるりとしたものしか生めないとも思います。

さらにこの一編は世の中の書籍のほとんどは畸形児のような悪書で、良書を読むための条件は悪書を読まぬことだと記します。

これは「知るだけで素材として価値がある」のか「それを道具として使うことに価値がある」のかとも繋がる話だと感じました。と、同時に「文筆」が必要とされる"仕事"なのか?とも想いました。

やりたいことをやった結果善きコトを成す、では足りなくて、必要とされた時に必要とされることを為すのがプロだとしたら、現在の活字飽食の時代、個人の無作為の、金も承認すらも求めない文がビッグデータで解析されジャストに集配されればそれでいいのでは、と。

ただ現在のCGMは商業メディアを基にしたものが多いので、一旦供給を絶ったら飢餓感が生まれるのか、それとも古典を掘り下げる方向へゆくのか。とは言え、現状プレイヤーよりもプラットフォームの胴元でないと"金を産める仕事"ではないようにも想います。

その意味で、匿名記者を抱える出版社・編集部を痛烈に批判したショウペンハウエルのように、今の時代の"文責"はプラットフォームに向けられてしかるべきなのだな、と。

昨今のキュレーションメディア騒動もそうだと想うと、またしても"人類100年前も1000年前も基本、心や騒動は変わらない"し、その点でクラシックな名著を読めというショウペンハウエルの論は色褪せていないと改めて思います。

そしてショウペンハウエル、怒りすぎてて"師匠w"って言いたくなるけど、この熱さを読むと決してペシミストではないなと想うし、今の冷笑的なWeb世界を打破する気概はそこにあるのではとも想いました。
by wavesll | 2017-06-07 07:15 | 書評 | Trackback | Comments(0)

欲望の民主主義 世界の景色が変わる時をみて 第7・最終章

欲望の民主主義 世界の景色が変わる時 第1・2章 第3・4章 第5章 第6章
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第7章 今 民主主義とは?恐怖を越えて

マルクス・ガブリエル:哲学者
「私たちは再考し始めねばなりません。なぜ民主主義と呼ばれる形態を選んだのか?

そもそも民主主義は情報の特定の形なのです。」

民主主義は情報処理?

ガブリエル
「民主主義とは人間の行為を組織化する方法です。”真実を得る方法”、”うそつきの政府を暴く方法”そう思う人々が混乱を招いています。

真実を中立的に判断することです。今私たちが直面しているさまざまな問題が感情的な判断から引き起こされています」

”感情的でない”民主主義?

ガブリエル
「民主主義の機関はあらゆる形態の政府と同じ巨大な情報処理システムです。

7000万人の人口を有し、さらに増える可能性もある…フランスほど大きい社会システムはそれ自体どう動いているのか?誰一人として理解していないのです。

では政府は何をするのでしょう?その仕組みを理解している者がどこかにいるという錯覚を生み出し維持するのです」

全てを理解している者がいるというのは”錯覚”?

ガブリエル
「私が思うにテロリズムとは自分たちや国民に”恐怖”を造り出すことで統治するものです。それが”テロリズム”の意味です。

かつてない恐怖心が増している…極端な恐怖と不安には当然ながら大抵根拠はありません。恐怖を感じるべき者を探してしまう…根拠のないその視線が恐怖を作り出すのです」

「根拠のない視線」が恐怖を作り出す

つくりだされる恐怖、その強大なる力に動かされていた一人があの「万人の万人に対する闘争」を唱えたホッブズだ。

著書『リヴァイアサン』は今から350年以上前、宗教戦争や度重なる内戦のさなかで書かれたものだ。

いつ終わるとも分からない戦乱。暗く、陰惨な時代。迫りくる生死を分ける恐怖を背景に生まれた人間観がそこにある。


シンシア・フルーリー:精神分析学者
「ホッブズの”社会契約”の考え方はよくご存じでしょう?
”決して恐怖無しで済まない”、”恐怖は社会契約の基礎だ”と言っています。」

恐怖は”社会契約”の基礎

フルーリー
「≪人間は人間にとって狼である≫のですから、この恐怖を”水平”でなく”垂直”のラインに利用することをホッブズは提案したのです。

”互い”をでなく”リヴァイアサン”を恐れることで平等だというのです」

万人の、万人に対する闘争の世界をホッブズはこう綴る
持続的な恐怖と暴力による死の危険…人間の生活は、孤独で貧しく、つらく残忍で短い

抑圧への恐怖は、先手を打つか、助けを求めるかにいつも人を駆り立てる。
なぜなら人間が生命と自由を確保する道は他にないのだ… 『リヴァイアサン』ホッブズ著

恐怖の上に成り立つ国家、民主主義とは生き延びる欲望の集合に過ぎないのか?だが

ガブリエル
「『リヴァイアサン』は政治理論ではなく大虐殺を正当化するものです。」

リヴァイアサン=大量虐殺の正当化?

ガブリエル
「ホッブズはアメリカ先住民も西洋文明のルールの中にあると思いたかったのです。”文明はもろいものだ 彼らを見よ”それがホッブズの主張です。

相手を”彼ら”、”未開人”と思った瞬間、人は”彼ら”を全滅させる一歩手前の衝動にある。自分たちの文明に同化させるか、抵抗されたら殺すか…このどちらかだと言っているのです」

選択肢は二つ 同化させるか 殺すか

ガブリエル
「しかしその後 人々は本を読むようになり残虐な人間性を自覚し…それは政府に管理されるべきだという考えが当たり前になりました。

ですが それも間違いです。政府は人間の残虐性を管理すると同時にそれらを増しているのです。政府は≪自然状態≫を克服などしてはいません。

元々そんなものはないのです…私たちは≪自然状態≫では善人でも悪人でもないのです。」

自然状態とは、正義も、悪もない、世の中とは。

≪自然状態≫では善人も悪人もいない


ガブリエル
「多くの人々が現在シリアをあたかも自然状態に戻ったように思っています。生きるためにもがいているとメディアで報道されるからです。

ですがあれは明らかなる”戦争”です。戦争とは自然状態ではありません」

戦争≠自然状態

戦争は自然に起きるものではない。起こされるものなのだ。

奇しくも、人々を革命へと導くこととなったあのルソーも戦争についてこんな言葉を残している

戦争は人と人との関係ではなく、国家と国家の関係なのであり、そこで個人は人間としてでなく、市民としてでさえなく、ただ兵士として偶然にも敵となるのだ 『社会契約論』ルソー著

「人々を守るための大いなる力も、誤った社会契約においては、争いの渦へと導いてしまう」ルソーはそう警告していたのか。この時代の激流の中、今、再び問う 民主主義とは


最終章 世界の景色が変わる時

ガブリエル
「民主主義は 手続きや制度の中で普遍的価値観を実現する試みです。その意味は私たちがまだ民主主義を実現していないということです。

民主主義は未だに 常にこれから実現されるものなのです。今の民主主義を正しい規範と思ってはいけません。」

マルセル・ゴーシェ:政治哲学者 / 編集者
「自由…この言葉の本来の意味は自らの運命を決定する力です」

自由とは「自らの運命を決定する力」

ゴーシェ
「我々はそれぞれに結びついています。真の自由はそこにあるのです。個人それぞれの領域で提供できる以上により高度な目的を決定するため互いの自由を結集することができるのです。

私にとって民主主義とは…これは知識人として発言しているんですが、それは理想の世界であり…同意できないことについて議論することこそ面白いのです」

民主主義は「議論」

ゴーシェ
「民主主義は人類による文明の最高の形態です。人類とはいろいろな種の人々から成り立っています。民主主義とはそれを克服する手段なのです。

違い 対立 矛盾 根本的な多様性から創造的なものが生まれるのです。それが人生の魅力です。その結果 文明は発展し、私たちを集結させてくれるのです」

フルーリー
「度を超えた個人主義は最終的に民主主義を危険な状況に陥れます。課題はむしろ≪個性化≫を確立することです。≪個人主義≫に非常に似ているようで少々意味が異なります」

「個人主義」ではなく「個性化」

フルーリー
「自己を確立するのを断言するのではなく、私は他の人とは違うけれども公共的なことにも参加するということです。

自分自身の特異性や才能を明確にしつつ他人と共に”集団的物語”を築くということです」

他者と築く「集団的物語」

吉田徹:北海道大学教授
「我々は恐怖心に駆られて いつも何かを失うかもしれない、もしかしたら隣の人は狼になっちゃうかもしれない。常にマイナスの感情に動かされる。あまりこれは望ましくないこと。

それをどういう風にプラスの情念に変えて安定とか平和を確立するかを問われなければならない」

”感情の民主主義”を越えて

吉田
「一つは相手を尊重するということ。何を言うか、何を言ってるかで正しい間違っているを判断するのではなくて、その人がその人であることを尊重することから議論を組み立てていく。

人間は理不尽な思いをするのが一番つらい。他人を傷つけたい、誰より自分を傷つけたいと思う時はこの世の中や自分の人生は理不尽だと思うことに端を発するのだと思う。

その理不尽さを和らげるような、或いは理不尽さがなくなるような社会をつくってくということが人々が幸せに暮らしうる最大の条件の一つだと思う」

理不尽を和らげるための議論

ガブリエル
「民主主義とは”反対派の共同体”です。異なる意見を意見として認められればあなたは民主主義者です。

民主主義が機能するのは普遍的価値を受け入れた時だけだと認識すべきです。他人や他の種の動物の苦しみを理解する人間の度量にかかっているのです」

民主主義は「人間の度量」

ガブリエル
「自分があの人だったかもしれないと認識すること。地中海で溺れている女性や飢えている子どもは自分だったかもしれない…それが全ての倫理観の原点です。

決して忘れないでください。科学 技術 信教の自由の時代に私たちは生きています。もし民主主義の価値観が世界で崩壊したら、かつてない規模の戦争を目撃することになります。

民主主義を守る価値は確実にあるのです。今のところ 人間がみんなで生き残るための唯一の選択肢なのですから…」

外からも内からも忍び寄る恐怖 しかしその正体は紛れもない私たち自身なのだ。

ジャン=ピエール・ルゴフ:社会学者 / 作家
「私は預言者ではありません…私たちが置かれている状況を明確に理解する事が何よりも大事だと考えます。

政治家も知識人もありのままの世界について考える責任…そして≪可能な選択肢≫を提示する責任があります。≪可能な選択肢≫を明確にし≪無理のある選択肢≫を拒否することです」

ヤシャ・モンク:政治学者
「解決策は民主主義からの撤退ではなく、グローバリゼーションの撤退でもありません。自由民主主義を再活性化しグローバリゼーションによる衝撃を緩和する…そうした新しい政策を採択する事です。

グローバリゼーションが国内にもたらす影響に対応するのです。それが今やるべきことなのです」

広がり続けた 欲望の資本主義の前に 立ちふさがろうとする、国という壁。
だが、壁の中でも欲望は渦巻く。見えない敵に怯えて


ガブリエル
「民主主義は欲望の経済と明らかに関係しています。私たちはこの恐怖の経済を乗り越えなければなりません。どうすれば乗り越えられるのか…≪民主主義の最大の価値≫を思い起こせば乗り越えられるはずです」

そして今、フランスは選択の時を迎えている。世界の景色は変わるのか。民主主義が今、試される。欲望の民主主義。

欲望の民主主義 世界の景色が変わる時をみて

cf.
欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき 第1章~第3章
 第4章~第5章 第6章~第8章 第9章~最終章

『欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき』をみて
by wavesll | 2017-05-31 22:41 | 書評 | Trackback | Comments(0)

欲望の民主主義 世界の景色が変わる時 第6章

欲望の民主主義 世界の景色が変わる時 第1・2章 第3・4章 第5章
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第6章 二つの「革命」

建国よりフランスが掲げてきた「自由」「平等」「博愛」

マルクス・ガブリエル:哲学者

民主主義の倫理 他者への想像力とは

ガブリエル
「民主主義と呼ばれるものの基本的価値観はここパリで18世紀の終わりに定義されました。言わばルネサンスの成果です。もっと具体的に言うならもちろん平等 自由 連帯です。

これらは基本的価値観で民主主義が人間社会で推し進めるはずのものです。問題はそれが真に意味するものです。この問いに答える唯一の方法は哲学にしかありません。

古代ギリシャでの創造と破壊においても哲学は基本的なものだったのです。18世紀にはヨーロッパでも同様のことが起きました」

民主主義の創造と破壊

ジャン=ピエール・ルゴフ:社会学者 / 作家

ポピュリズム隆盛の仕組みは…混沌から秩序へ?

ルゴフ
「私にとって政治とは一種の文明です。私にとって政治とは一種の文明です。さまざまな流れがあります。保守主義的な見方もあれば人間への悲観的な見方もあります。

さらにそもそも人間には永遠に破壊的欲動があるとも言えるでしょう」

破壊的な欲望

ルゴフ
「特に政治における大きな危険の一つは純粋主義です。この”人権”の概念には純粋主義の面がありました。しかし人権とは民主主義的な価値からのみ成立しているものではありません

それにも関わらず…この人権の概念が広く共有されていると考える”大きな幻想”があったのです」

幻想…?

ルゴフ
「その幻想とは”誰もが善人で思いやりがあり悪は人間の中には無く外にあるのだ”、”悪が生まれるのは悪い社会と悪い制度があるからだ”という考え方です。

善人を作るためには自分が認めた国家から指導されれば良い…この思考は既にフランス革命の時に含まれていたのです」

世界の民主化に大きな影響を与えたフランス革命はある男の残した言葉が礎となっている

ジャン=ジャック・ルソー ルソーは社会契約の重さについて言う

単なる欲望の衝動に従うことは奴隷状態だ。自然状態から社会状態への移行。その時、本能と正義が、欲望と権利が入れ替わり、自分のことだけ考えていた人間は、初めて理性の声を聞く -ルソー

理性の声を聞いた人間は一般意志の存在に目覚める。個人の欲望を抑えて、常に公共の利益を目指すのだ。

「主権とは、一般意志の行使に他ならない」

一般意志を求めて、絶対王政下の市民たちは反旗を翻した。アンシャンレジーム、すなわち、当時古いと思われていた王の支配の体制を変革。近代国家を誕生させたのだ


ダニエル・コーエン:経済学者

経済格差への抗議?庶民にとって民主主義とは

コーエン
「”一般意志”という考えは18世紀の観点で考えるととても興味深い。ルソーはどうすれば王の権力に対抗できるか考えていたのです。

まず王の権力がある。この権力に対して”一般意志”という概念をぶつけたのです。

まだ民主主義ではないけれど 途上にある中で一国における最高権力とは何か?根本的な疑問を発したのがルソーです」

王の権力に対抗できる最高の権力

コーエン
「しかし 今日この考えを使えば不幸なことに悪い結果を導くでしょう。”国民”、”人民”という概念を用いるとその多くポピュリズムに行き着きます。

”国民 人民の名において”と語るのです。しかし"人民"は既に存在せず。もし仮に存在するとしても王に対抗する観念としてだけだと思います。

また一人の人間が民衆の言葉を代弁する事にも不安を覚えます」

人民が燃え上がったフランス革命。だが、その有り様は当時痛烈に批判した男もいた。エドマンド・バークだ。

アイルランド出身の哲学者にして、政治家。彼が捉えていたのは人間の性だ。いたずらに現状からの変化ばかりを求めてしまう、人間という生き物。

実際、急進的な革命後のフランスは恐怖政治が巻き起こり、あざなえる縄の様に逆行する動きが生まれる。

我々の本性の抱える大きな過ち…それは、次から次へと飽くことなき欲望の追求の果てに手に入れた全てのものを失うしかないことである -バーク

時に、純粋な夢は 破壊的欲望へと形を変えてしまうのか?そして歴史は繰り返すのか?

マルセル・ゴーシェ:政治哲学者 / 編集者
「思考や感情、欲望…実はどれも一緒です。何かを欲望するのは思い描くことができるから…人は情緒的な理由で思考を維持します。理性的な理由ではないのは明らかです」

思考=感情=欲望?

ゴーシェ
「フランスはとても矛盾した国です。無政府主義かつ権威主義の国ですから。時期によってその"針"は大きく振れます。

絶対自由主義の大きな動きがはっきり表れ広がっていったのは68年からです。これはフランス社会を大きく変えてしまいました」

ルゴフ
「一つ目の革命はもちろん民主主義を誕生させた革命です。しかし私にとってもう一つの革命 68年の「5月革命」は1789年のフランス革命と同じくらい重要な意義を持っています。

どちらも民主主義全体に関係した重要な問題をはらんでいます」

フランスにとって忘れられない、もう一つの革命。それは戦後最大の危機とも言われた1968年の5月革命だ。

教育制度の改革を求め、パリの学生たちが起こした暴動。それがきっかけで、政府に不満を抱く労働者や市民たちも加わり、町中が破壊される事態となった。

この動きは日本をはじめ、豊かさを享受し始めた世界の国々にも広がっていった。だが、その急進性から人々の支持を徐々に失っていく


ルゴフ
「第二次大戦後 特に60年代、世界は急速に変化し大きな変貌を遂げました。そしてフランスはある時期に何もかもが停止するのです。

この革命は経済と科学技術の発展の時代…言わば”栄光の時代”に起きました。新しい歴史的状況で育ち戦争を知らない若者世代が消費社会に反発したのです」

消費社会への反発

ルゴフ
「誰もがこの革命について語りました。”我々がいる社会は何なんだ?”と…マルクス主義をベースとする多くの分析 批判が沸き起こりました。

そしてもう一つ68年の革命について問われたことがあります

”近代国家はなぜ必要なのか?”、”どこを目指すべきなのか?”」

近代国家はなぜ必要なのか?どこを目指して?

ゴーシェ
「1968年 街はとても荒れていました。私は21歳でした。政治運動にのめり込んでいったのは15歳の頃です。"左翼"の”反スターリン派”で…

68年は私が15歳からの活動の意義を確認するための年でもあったのです。しかし想像したようにはうまくはいかず その後政治哲学を学び始めました。

まさに民主主義についてです。私を大きく成長させました」

ルゴフ
「68年の5月革命の≪不可能な遺産≫はさまざまな概念を根本的に変えました。教育の概念など今までの歴史が完全に断絶され、重要な慣習、文化などが捨てられ…

個人の自立性ばかりが強調されたのです。その一方で”支配と圧力”の同義語のような権力や国家制度のヴィジョンが表れたのです。

国家体制と個人の間に生まれた新しい関係が民主主義国家の中心で発展することになりました。」

個人と国家の間に生まれた新しい関係

ルゴフ
「同時にこの影響は分断も生み出しました。社会的階層における分断、新しい層と大衆層の分断です。

近代化への変化からグローバル化から完全に取り残されてしまった階層と”すばらしい!あそこに向かって進もう”と現代へ向かって先端を行く社会階層と2つの対極にある階層が生まれたのです」

学生たちの反乱が鎮圧され、革命の火が消えると共に、消費社会の論理が雪崩れ込む

この時から既にグローバル資本主義への助走は始まっていたのか

加速化する欲望の資本主義

もはや経済の論理ばかりが社会の争点となる

富める人、貧しい人 人々の両極への分断を深めていく…

急速に変わりゆく世界情勢もまたフランスを自由主義経済へとのめり込ませていく

欲望の資本主義が世界を覆った末に、見えてきた 風景

歴史は終わらなかった。人々の分断と共にテロや難民と言った新たな問題を招き寄せていくこととなる。嵐をしのいだ後に、本当の嵐がやって来るとは、人々はこの時まだ気づかなかった


欲望の民主主義 世界の景色が変わる時 第7・最終章

欲望の民主主義 世界の景色が変わる時をみて

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欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき 第1章~第3章
 第4章~第5章 第6章~第8章 第9章~最終章

『欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき』をみて
by wavesll | 2017-05-31 21:43 | 書評 | Trackback | Comments(0)

欲望の民主主義 世界の景色が変わる時 第5章

欲望の民主主義 世界の景色が変わる時 第1・2章 第3・4章
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フランスが抱える、民主主義の苦悩とは?

吉田徹:北海道大学教授
「例えばフランス人というのは4人に1人が遡れば移民系の国だとされています。そういった多様な国を1つフランスという大きなパッケージに纏め、色んな人がパリという非常に小さい街の中で肩を押し合いへし合い生きていく。

その中に色んな摩擦が生まれ、その摩擦をどういう風に解消していくのか。その象徴的な空間が地下鉄でもあるかもしれません」

どこまで多様性を受け容れられるのか?今、あのフランスが揺れている

ルペン
「移民の受け入れは市民を危険にさらす。テロリストが隠れているのだから…」

度重なるテロへの恐怖 アフリカや中東からやって来る難民たち 歴史的な混迷の時代を迎えたフランスに、今押し寄せる新たな波とは…

ルゴフ
「我々の歴史の中にはどの文明にもあるように闇のページと栄光のページがある…」

ギリュイ
「欧米の民主主義の大きな問題は人々と真剣に向き合わなかったことにあるのです…」

生きるため、切実な欲望を抱えやってくる人々に、フランス建国の理念はどこまで耐えることが出来るのか…?揺れるフランスで、世界の知性たちと考え、民主主義の今をみる。

第5章 内なる敵 外なる敵

吉田
「かつては向こうの左岸とこちらの右岸、革新と保守ですね。或いは労働者とブルジョアっていうのが対立でその間をセーヌ川が隔てた。ところが今、時代が推移してパリの郊外とパリの内部で新しい分断性に移り変わってきている」

パリ市街を分かつように流れるセーヌ川。北側が右岸、南側が左岸だ。一本の川を挟んでそれぞれの文化を育んできた。ブランドショップが立ち並び、買い物客で賑わう右岸。学生たちが集い、カフェで語らう左岸。

右岸はお金を使い、左岸は頭を使う、という言葉もあったほど。異なる思想がせめぎ合うことでバランスが生まれていた。古き良きフランスは、いづこへ。


マルセル・ゴーシェ:政治哲学者 / 編集者

瀕死の民主主義?国境なき経済圏の病とは…

ゴーシェ
「グローバリゼーションは貿易だけでなく”人間の行き来”にも関係するのです」

人間の行き来

ゴーシェ
「英EU離脱の余波は大きく、移民問題は極めて慎重な問題となり抗議の声が高まっています。欧州連合のおかげで人々は国家権力は大したことはできないと感じています。しかし同時に欧州連合も何もできないとも思っているのです」

吉田
「なぜ機能しなくなったのでしょう?」

ゴーシェ
「それが今ヨーロッパの一人一人に問われる最大の問題だと思います。とても難しい問題です」

欧州最大の問題

クリストフ・ギリュイ:都市地理学者

国民の分裂?グローバル都市と地域の二極化

ギリュイ
「今日のフランスでは移民問題はとてもデリケートな問題です。私たちフランスは多文化共存モデルを穏やかに築けるだろう、世界で一番賢いのだから…

アメリカやイギリスとは異なるタイプの多文化共存モデルの確立を想像していました。しかし現実は違いました」

多文化共存のワナ?

ギリュイ
「残念ながら≪共和国同化主義モデル≫と呼ばれるモデルは消え去ったのです。なぜか?多文化共存社会では他人と交わろうとしないからです。つまり同化しないのです。

他人は敵のままである…とまで言いませんが、距離を置くのです。これはフランスの至る所で見られます。これがフランスや欧州で見られる現実…アイデンティティの緊張関係の根本です」

フランスの苦悩は、都市の周縁部から噴き出している

吉田
「パリの郊外よりバンリューと呼ばれているところなのですけれども、基本的にパリで働いている人たちでもパリ市内に住むだけの余裕とか所得がない人が住んでいる場所になる。

いわゆる移民系と呼ばれている人たちが多い。ここが市役所なんですけれども自由・平等・博愛って言葉が掲げられているけれども空虚になんとなく文字が見えるのが哀しいですね」

パリの少年「ニーハオ!」

吉田「僕たちは日本人だよ」

パリの少年「あー日本のテレビだ フランス!」

吉田「君はフランスが好きなんだね?」

パリの少年「好きだよ」

吉田「フランスを誇りに思っているんだね。大人になったら何になりたい?」

パリの少年「営業マン」

吉田「なんで?」

パリの少年「大好きな職業だからだよ」

吉田「君は?」

パリの少年B「スポーツ関係で働きたい」
パリの少年C「僕はケバブ屋で働きたい…冗談だよ、ほんとはパン屋だよw」

経済や文化の違いから生み出される、移民たちをめぐる問題。溝を深めていく分断の現実の中、その流れにあらがう人の証言だ

ナディア・レマドナ:コミュニティー支援活動家
「私はパリ郊外で暮らしています。2005年 郊外で最初の暴動が起こってから私は個人的に救済をするようになりました。暴力はひどくなり 緊張が高まっています。

改善の兆候はまったく見られません。年を追って郊外にいる若者たちは誰のことも信用しなくなっています」

今から12年前の秋、パリ郊外で起きた移民たちによる暴動事件。北アフリカ出身の若者たちが警官に追われ、変電所に逃げ込み、死傷したことがきっかけだった。

人々は警察に反発。失業・差別・将来への不安など積もり積もった不満が爆発。暴動はフランス全土へと拡大していった。


レマドナ
「フランスはとても変わりました。実際、何が変わったかというとこの過激化です。若者たちはかつてのフランス…私や私の両親たちが愛していたフランスを知らないのです。

多くの移民労働者を受け入れたこと。多くの人々が外国から来ていること…それはフランス人自らが受け入れたことを忘れてはいけません」

私たちが愛したフランス

吉田
「我々は郊外に住んでいる貧しい移民系のフランス人だから、むしろ差別されているんだ、という風に彼らは感じてしまう可能性はあるわけです。

そうすると移民とか郊外は怖いんだという目線がつくられていくことになって結局分断がひどいものになっていく」

社会から受け入れられない、その怒りが争いを生み、居場所がない、その不安が悲しみを生む。愛されたい欲望が空回りし、生まれる、捩じれ。

ドミニク・レニエ:政治学者
パリ政治学院で教職、政治改革基金ゼネラル・ディレクター

忘れられた理念 自由を奪いあう 自己と他者

吉田
「「自由 平等 博愛」のスローガンがフランスの街のどこに行っても見えました。この精神はどう変わっていくのでしょう?まだ残る場所はあるのでしょうか?」

レニエ
「重要な問題ですね。「自由 平等 博愛」の精神は存続し続ける可能性はあるでしょう。フランス革命からとても大切にされてきたものですから。

しかし20年前からこの3つの理念への信念の衰退 精神の薄弱化が見られます。

今日 目にすることが多くなったのは国内のコミュニティーでの分断の感情、分裂…同じフランスの中でも外国人のように感じる分断さえあるのです。

実際、それを目の当たりにしたのがシャルリー・エブドで起きた悲劇です。フランスでフランス人がジャーナリストを殺害した…それも彼らの気にくわない内容を出版したから。

メディアが出版すべきだと信じたことを出版する自由を認めなかったのです。ある種の”基本的価値観”が分断されたことを感じました」

基本的価値観

シンシア・フルーリー:精神分析学者
社会の深層にある心理を分析 パリ・アメリカ大学でも教鞭をとる

社会の危機を回避する道は?他者を排除する人々…

フルーリー
「ルネ・ジラールの重要な研究論文においてはっきり説明していますが政治共同体とは通常”二つの動き”によって成立していると言います

一つ目の動きは”外部の敵”と呼ばれるものでもう一つは戦うべき”内部の要素”が必要となるのです」

「外なる敵」と「内なる敵」

フルーリー
「多くの場合、外部の敵としての恐怖の対象はテロリストに集中します。そして内部の敵としての対象は公然と非難されている人たち…失業者、難民、移民なのです。

社会はこのように成り立っているのです。惨憺たる状況です。」

他者への不信が、本来 敵になるはずのない敵を次々と生み出していく。フランス人が失いつつある、基本的価値観とは…?


欲望の民主主義 世界の景色が変わる時 第6章 第7・最終章

欲望の民主主義 世界の景色が変わる時をみて

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欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき 第1章~第3章
 第4章~第5章 第6章~第8章 第9章~最終章

『欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき』をみて
by wavesll | 2017-05-31 21:15 | 書評 | Trackback | Comments(0)

欲望の民主主義 世界の景色が変わる時 第3・4章

欲望の資本主義 世界の景色が変わる時 第1・2章
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第3章 パクス・アメリカーナの終焉…?

元大手銀行重役ピーター・ラールが語るアメリカの今、トランプに託した思惑

ラール
「彼は頭がよく かなりのやり手です。トランプの着眼点は良かった。何が本当の原因なのか言及したのは彼だけでした。それが彼の特長です。

アメリカ国民は世界のために負担を担ってきました。しかし今や世界は変わったのです。帝国は衰退するものです。≪パクス・アメリカーナの時代≫は終わりました。

他の国々は自分たちの足で立つのか、他国と協力するのか考えねばなりません。いずれにせよアメリカだけが世界の安全に責任を負いその費用をアメリカ国民の税金で賄う発想はもう終わりです」

"パクス・アメリカーナ"の終焉

ヤシャ・モンク:政治学者
「リベラルな国際秩序はアメリカがリーダーシップを発揮し世界に大きく関与することで成立します。しかしその恩恵は複雑で分かり難いものです。

なぜ国連に大金を拠出しなければならないのか国内にも問題があるのに。その金を国内の問題解決のために回すべきだという方が簡単です。

長期的に見ればそれはアメリカにとって損失となります。政治的な面だけでなくアメリカ国民全体にとっての損失です」

二度の世界大戦を経て世界経済の中心となり、世界の警察官となったアメリカ。しかし常に不安定な要素を抱えていた

外への介入と孤立主義の分裂


ジョナサン・ハイト:社会心理学者
「アメリカはこれまでもしばしば内向きになってきました。

私の曽祖父母4人全員がアメリカにきた1907年当時は移民の大きな波がありました。それが大きな反発を生みアメリカは1920年代に門戸を閉じたのです

人々は人種でなく文化を気にしているのです。急激に文化が変わってしまうのが嫌なのです。

もう一つ見るべきは国民の目的意識です。ソ連と戦っていた時 私たちはアメリカを≪自由世界のリーダー≫と呼んでいました。

ですがいったん冷戦が終わるとそてまでのように≪自由でオープンな国≫であることを必要としなくなりました。我々のアイデンティティでなくなったのです。

そして9.11の後 突然新たな敵かもしれない存在が現れました。”もっと閉じた国にしたほうがいい”多くの人々がそう思うきっかけとなったのです」

新たなる敵の前に再び門戸を閉じようとするアメリカの姿は既にあの時から

ジャッキー・クルバック:Gautier Steel社 CEO
「国防のことを考えても この国で私たちに危害を加えようとする人々から私たちは国民を守らなければなりません。国民を守るだけでなく国を守らなければなりません」

そんなアメリカの本質を見抜いていた人物がいる。それは今から200年ほど前に遡る

フランスの政治思想家、アレクシ・ド・トクヴィル。トクヴィルは19世紀のアメリカに渡り、民主主義における光と影を考察した


ハイト
「アメリカがイギリスから独立した時、トクヴィル以外にもヨーロッパから何人かやって来ました。その全員が独特のアメリカ人気質について語っています。

アメリカは広大な国で中央政府がなく自分たちで自分たちを統治していたのです。中央集権化されているフランスに比べアメリカ社会の強みの一つは我々は自発的な組織を作るのが得意だということです。

中間共同体、地元の市民組織などですが多くの人が見てきた通り50年ほどでこれらが消えつつあるのです」

アメリカ民主主義の「光」"中間共同体"の存在

ジャン=ピエール・ルゴフ:社会学者 / 作家
「民主主義は個人が所属するコミュニティーからの自由を可能にする要素があります。これは民主主義の良い面です。しかし民主主義には別の面もあります。

トクヴィルが自身の著書の中で説明しています。『アメリカのデモクラシー』では同時に個人が内に閉じこもる傾向も指摘しました。どこにもつながっていない、集団に同化もしていないと考える個人です」

アメリカ民主主義の「影」どこにもつながらない”個人”

ダニエル・コーエン:経済学者
「ハーバードで教鞭をとるアメリカの社会学者ロバート・パットナムのすばらしい著書『孤独なボウリング』の中で1960年のはじめから少しずつこのコミュニティーや中間共同体…それは親たちの中間共同体であったりブリッジやボウリングのクラブなのですが、これら全ての共同体という基盤が崩壊したという説明を思い出しました

アメリカの社会基盤が崩壊したからこそ今日彼らは”孤独”だと感じている。トランプの人気はその”孤独”の表現の一つだと思います」

豊かさの中で消費を楽しむことを自由と感じるうちに、いつのまにか大事な繋がりを失っていたのか?帰る場所を失ったことで、抱えることになった孤独と不安

アメリカが恐れるものは自分自身だ 民主主義の乱用、冒険と征服の精神…己の力への思い入れと過剰な誇り、そして若さゆえの性急さなのである -トクヴィル


マルセル・ゴーシェ:政治哲学者 / 編集者
「我々は「暴力的な軍隊」という意味ではもはや争いの中には生きていません。しかし我々は”競争状態”にあります。これこそグローバル世界や我々が生きている個人主義の世界の掟なのです」

吉田徹:北海道大学教授
「誰もが生き延びようとしていますよ」

ゴーシェ
「そういうことです…それでもやっぱり厳しいことですよ。実際、ホッブスの方程式は別の次元で今でも機能していることが分かります」

万人の万人に対する闘争。今から350年以上も前に残された言葉。トマス・ホッブズ

所詮は人間も動物と一緒なのか?教育、文化なき状態、自然状態にあるとき、ヒトは財産や資源をめぐって、争いを続けるという。欲望と欲望のぶつかり合い。

そこで考え出されたのが社会契約であり、それを司る統治者の存在。聖書に登場する海の怪物、リヴァイアサン。ホッブズは人々で出来た鱗を持つ怪物に、国家をなぞらえた。

右手には世俗的権力を顕わす剣を、左手には宗教的権威を顕わす杖を持つ、国家権力の象徴


第4章 アメリカ、未来へのシナリオ

一つの物語が終焉を迎え、強大な力を求めるアメリカは一体どこへ向かおうとしているのか?

モンク
「可能性は3つあると思います。1つはトランプ氏のような独裁的なポピュリストが独立機関を弱体化し裁判所を無視し報道の自由を抑圧することです。」

未来へのシナリオ1
独裁的なポピュリストによる独立機関の弱体化・報道の自由の抑圧


モンク
「2つ目に最も可能性が高いシナリオはトランプに対する抵抗が生まれ独立機関は破壊されずに済むということです。それでも政治システムの規範が崩れます。

トランプ氏が政権を去っても彼のようなポピュリストの人気は落ちません。30年、50年、70年と経つ間に民主主義体制は弱まり、毎回ではないにしろトランプ氏のような大統領が次々と現れるでしょう」

未来へのシナリオ2
独立機関は破壊されないがポピュリストの人気が高まる


モンク
「3つ目は最も希望がある可能性です。多くの若いアメリカ人が今 起きていることを見てこの状況を拒否し民主主義の大切さを再確認することです。

民主主義が脅かされたら何が起きるか?身をもって知り民主主義のために戦うことです。政治に積極的に関わり憲法の大切さを思い出すことです

これが最も希望のあるシナリオです」

未来へのシナリオ3
民主主義の大切さを再確認し民主主義のために戦う


マルクス・ガブリエル:哲学者
「”アメリカ・ファースト”には国民がトランプを弾劾しうるという意味も含まれます。もし彼らがトランプを弾劾したらそれは民主主義が独裁政治に勝つ貴重な瞬間だと言えるでしょう。

この特異な個性による危機を実際にアメリカ人が回避することができたならその時アメリカの優れた民主主義制度を証明したことになり みな感心するでしょう。

今 私たちが目撃しているのはどこに向かっているか不明な船です。ドナルド・トランプと現在のアメリカの行政機関との対立。そしてチェックアンドバランスのシステム。

これが私たちが今 現在目撃していることであり民主主義の制度に対する極端なストレステストです」

極端なストレステスト?

ホッブズはこうも言っている
財産、名声、支配への欲望が争いの元。そしてその先にあるのは戦争だ


ゴーシェ
「このようなグローバル世界においてはなおさら自分たちを守ってくれるプロテクターとなる集団の必要性を感じるのです

また全ての個人が頼れる集団がないことの大きな不安を感じているのです」

グローバル世界からの経済の波。それはそもそも民主主義の敵なのか?
世界に広がる欲望の資本主義と、国という壁が守る欲望の民主主義。この捻じれの先にあるのは…?

人々の生き残りをかけた争いはヨーロッパでも加速度を増し複雑化していた。開かれた国境、解放される人々の欲望と感情

フランスが抱える 民主主義のもう一つの闇 それは…


欲望の民主主義 世界の景色が変わる時 第5章 第6章 第7・最終章

欲望の民主主義 世界の景色が変わる時をみて

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欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき 第1章~第3章
 第4章~第5章 第6章~第8章 第9章~最終章
by wavesll | 2017-05-31 20:22 | 書評 | Trackback | Comments(0)

欲望の民主主義 世界の景色が変わる時 第1・2章

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かつて、ある人が言った。この世は「万人の万人に対する闘争」だと…

それは様々な欲望がせめぎ合う世界。


トランプ
「偉大なアメリカを再び!」

混乱するアメリカ、

ルペン
「フランス共和国 万歳!」

分断が深まるフランス、テロの恐怖が追い打ちをかける。

急速に変わりゆく世界で人々の理性が失われようとしているのか…?繰り広げられる、争い。


ハイト
「ただ全てを破壊したかっただけなのだ」

コーエン
「未来への強迫観念だ」

混沌と不安の中で今、何が起きている?

世界の様々な分野の知性たちに問いかける、民主主義の今。これから。

ゴーシェ
「民主主義は人類による文明の最高の形態です」

ガブリエル
「民主主義は真実を得る方法でもなければうそつきの政府を暴く方法でもないのです」

様々な想いが錯綜する、生き残りをかけた欲望の物語。

第1章 フランスの誤算…?

200年以上前、革命を経て共和国となったフランス。

ナビゲーター、吉田徹:北海道大学教授
比較政治・ヨーロッパ政治 著書『感情の政治学』

「この4月と5月にフランス大統領選ありますけどかつてないほど昏迷状態。フランスの政治、社会、民主主義そのものが大きく動揺していることの表れでもある」

フランス共和国のシンボル、共和国広場。
中央には自由、平等、博愛を顕わすマリアンヌ像が佇む。

テロの犠牲者への献花、祈り、集会など人々が集い、語らう場所。


吉田
「民主主義と広場というのは切っても切り離せない関係にある。ある広場では賛成の集会をしていてある広場では反対の集会をやっている。色んなポリフォニーなんて言ってもいいのですけれど色んな声が聴こえてくる、それがフランス民主主義の特徴。

二つの大きな力がいつもせめぎ合っているというのが大きな民主主義のダイナミズムになっている」

そのフランスのバランスが崩れようとしている。

マリーヌ・ルペン候補:極右政党 国民戦線
「イスラム原理主義者に怯えるのはもうごめんだ。
女性の権利を制限し女性の体をベールで覆う こんなことはフランスでは許されない」

エマニュエル・マクロン候補:無所属
「国民戦線は嫌悪や恐怖など人々の感情につけいっている。これは博愛のための戦いだ!」

ジャン=リュック・メランション候補:急進左派 左派党
「もし他の3人の候補を選んだら君たちは血を吐くことになるだろう。貧困との戦いなのだ」

かつてない、極右人気。対抗する、極左。
右に、左に、大きく揺れる。フランスは今、どこへ向かおうとしているのか?


マルセル・ゴーシェ:政治哲学者 / 編集者
フランス社会科学高等研究院教授 学術誌『Le Debat』の編集長

瀕死の民主主義?国境なき経済圏の病とは…

吉田
「最初の質問です。危機的状況にある民主主義の現在をどう考えますか?」

ゴーシェ
「生か死かの瀬戸際です。この民主主義の危機は…それはグローバリゼーションと密接な関係にあると思います」

民主主義の危機=グローバリゼーション?

ゴーシェ
「民主主義についてフランス人に聞けば80%が"機能していない"と答えます。大きな数字です。
政治体制が重要な問題に対処できないと多くの人が感じている…我々が今直面している状況です。

フランスの欧州との関わり…これは非常にデリケートな問題です。フランスは欧州プロジェクトの提唱国でしたが今やコントロール不能となってしまいました。

グローバリゼーションはヨーロッパの世界における相対的権力を喪失させました。国民の中にも大きな不安を搔き立てました。

グローバリゼーションは社会の中にも分裂を引き起こしてしまったのです。グローバリゼーションは経済的な分裂をもたらしました。利益を得て順風満帆な勝者と気分の悪い思いをしている国民と…

繫栄する大都市のすぐ傍らに瀕死の想いの人々の地域があるのです。」

やはりここにも欲望の資本主義が関係しているのか…?

クリストフ・ギリュイ:都市地理学者
社会的階級の変遷をデータで解析 仏大統領選のアドバイスも行う

国民の分裂?グローバル都市と地域の二極化

ギリュイ
「フランス、ヨーロッパ、アメリカも今、特殊な時代に生きています。≪中産階級の消滅≫です。
現在、世界中の至る所に表れている現象です。」

≪中産階級の消滅≫…?

ギリュイ
「地理的なデータ解析でその傾向を読み取ることが出来ます…
フランスの地図です。大都市やグローバル化された都市が示されています。」

グローバル化された都市。ここには国民の40%に相当する高所得者たちが多く住んでいるという。その他の地域、フランスの周縁部ともいえる、中小の都市、農業地帯に国民の60%が住む

ギリュイ
「これらの地域で生活している層が今日の大衆層…下層階級なのです。
昨日までの経済モデルに同化し中産階級だった人が今や経済活動に重要ではない地域にいるのです。歴史上なかった現象です。」

フランスの周縁部、それはこの国の分断を象徴する場所。

パリ市内からクルマで2時間ほど、アミアン(Amiens)。近年、工場の閉鎖が相次ぎ、この家電メーカーも海外に移転することが決まった。

より安く、より効率的に。海外へと労働力を求めた結果だ


住民A
「この工場のために頑張って来たのにとても失望しています。父も母もここで働いていたんです。ですから、とても強い愛着があります。私が2歳の時にこの工場で撮った写真も大切にとってありますよ。

民主主義が正しく機能しているとはとても言えませんよ。みんな迷っているんです。右にも左にも失望していますからね。だから国民戦線が何かしてくれるのではと思うのではないでしょうか」

住民B
「全てが高い!でも給料は安い。給料が上がらないんだよ。いつも何かしら支払わなければならないんだ」

住民C
「ずっと前から大統領選には何も期待してないよ」

取材陣
「誰に投票しますか?」

住民C
「そういうことは言わないよ。僕が右か左か、どこに投票するかなんて。
でも言えるのは僕は労働者の息子だということ…つまり僕の両親が労働者だったという意味さ」

信ずるものはなんなのか?未来への地図を見失った、フランスの労働者たち

ギリュイ
「アミアンやピカルディ地方は≪フランスの周縁≫で工業地帯です。実際、文化的に随分前から国民戦線が支持されてきました。」

ルペン
「EUのせいで失業者や貧困の問題がかつてないほど深刻になっている」

ギリュイ
「国民戦線は≪中流階級の消滅≫の政党です。まず労働者、被雇用者、そして農業従事者…世界経済のグローバリゼーションと最も競い合うことになった人々が支持母体です。

自らの生活水準の低下を目の当たりにしてきた階層です。その始まりは30年前…人々の生活の変化に関係しているのです。偶然のなり行きではありません。

民主主義の問題はマリーヌ・ルペンの選挙以前からの問題です。今日、下層階級の人々が政治的に組み込まれていないことが問題なのです。

既に民主主義はありません。
民主主義の危機は明日でなく、今そこにあるのです」

ジャン=ピエール・ルゴフ:社会学者 / 作家
フランス国立科学研究センター研究員。人々の価値観の変遷を鋭く分析

ポピュリズム隆盛の仕組みは…混沌から秩序へ?

ルゴフ
「現在のフランスに何を見るべきか?統治する者と統治される者の間の溝…それは数年前から徐々に深まっていきました。

今、人々は自分たちがどんな世界にいるのか?分からなくなってしまったように思います。彼らの目にこの世界は広大なカオス状態に映っているのです」

広大なカオス状態

ルゴフ
「フランスを始め、現代の多くの国の社会と国民は数年前からある問題に直面しています。それは≪無理のある選択肢≫の問題です」

≪無理のある選択肢≫

ルゴフ
「どこに向かっているのか分からないがとにかく前へ進めというのがひとつの選択肢。現在のポピュリズムの隆盛もこの"前に進め"という主張の流れにあります。

もう一方は"やっぱり以前の方がよかった。後ろへ引き返すべきだ"という選択肢です。」

前へ進め
引き返したい


ルゴフ
「全ての問題はこの二択に集約されます。過去への「ノスタルジー的な回帰」と近代主義の「前方への脱出」と…。≪無理のある選択肢≫からどう抜け出すか?」

時代の勝者と、敗者との分断。この病は、あの大国でも起きていた。

第2章 アメリカの憂鬱

フランス革命より一足先に独立戦争を経て、合衆国となったアメリカ。歴史を切断するかのような、強硬な主張

ドナルド・トランプ
「戦争を避けるために必要ならば戦い勝利するために十分な装備が必要だ。」
「メキシコの壁は建築する。心配する必要はない!」

次々と繰り出される指令に、世界中が翻弄される
自由と平等を礎としたはずの国、民主主義の壮大な実験を試みた大国が、揺れている


ダニエル・コーエン:経済学者
文明批評でも活躍する経済学者 フランス政府経済諮問委員

経済格差への抗議?庶民にとって民主主義とは

コーエン
「フランスの大統領選やトランプの当選、イギリスのEU離脱など…ポピュリズムが台頭しています。
それは庶民が社会の中に自分たちの"居場所"を見つけられない表れなのです。」

自分の"居場所"がない

コーエン
「トランプの場合は白人で、マイノリティーでもない。白人でも大学に入っていない…つまり学歴のない人々がトランプ支持者の3分の2にあたります。

別の統計で"未来に希望はあるか"と聞かれ…"ノー"と答える人の3分の2がトランプに投票するとあります。

社会から置き去りにされた感情を持つ庶民…彼らの抗議投票がとても重大だということが分かります」

ペンシルバニア州 ジョンズタウン(Johnstown)
置き去りにされた、思いを抱え、産業の転換に苦しむ町。かつて鉄鋼や石炭によってアメリカの成長を支えた面影は、もうない。この土地の人々が投じた一票が、アメリカの未来を大きく変えた


ジャッキー・クルバック:Gautier Steel社 CEO
「はっきり分かっていることは仕事が何より大事だということです。だからこそトランプ大統領があんなに支持されたのです。それが彼の明確なメッセージだったのです。

大事なのは経済、仕事。アメリカをかつての姿に戻すことです。

私たちが目の当たりにしてきたのは失業の輸出です。中国はアメリカに失業を輸出しています。ヨーロッパの工場も南米も…世界中が失業を輸出しています。

貿易協定を守らせず、国境の監視を怠ったことでアメリカを苦しめるダンピングが起きています。トランプ政権になってやっとダンピングにブレーキがかけられました」

選挙期間中にトランプ氏はこの町を訪ね、直接市民たちの声を聴いて回ったという

クルバック
「彼は必要を感じたら直接国民と触れ合い手を差し伸べる人です。だからこそツイッターのアカウントを使い直接国民に話しかけているのです。

レーガン大統領は"偉大なコミュニケーター"と言われていました。時が過ぎればトランプ大統領は"偉大なモチベーター"と呼ばれるようになるでしょう。

彼にはポジティブなメッセージがあります。それはアメリカン・スピリットにパワーを与えるのです。

感情を抑えてほしいと思う時もありますが、私たちのような労働者と話している限りでは彼のメッセージは心に響くのです」

取材陣
「あなたはどの政党を支持しましたか?」

ジョンズタウンの住民A
「トランプよ、共和党。彼なら大統領が務まると思ったし、実際務まっているわ。自分の仕事がちゃんとできる人に大統領になってほしかったの。

もっと雇用が生まれて、経済がもっともっと良くなるといいわ。みんなが幸せになるようにね」

取材陣
「民主主義はキチンと機能していますか?」

ジョンズタウンの住民A
「さぁ…どう思う?」

ジョンズタウンの住民B
「…機能しているとは思うけれどもがいているかな」

ジョンズタウンの住民C
「私はトランプが約束を守るとは思えません。でも彼はさまざまな約束で人々を説得しました。人々はトランプを信じたがっています。それはこの地域をよくしたいからです。

ここは良い街だし以前の活気を取り戻せたらいいなとは思います。でも結局は空約束ばかりです。

アメリカは今、世界の笑い者になっていますか?」

一方、忘れられた工業地域の中に復活の手がかりを掴んだ街も。

オハイオ州 クリーブランド(Cleveland)
かつて自動車産業と鉄鋼業で栄えた街は、今、ヘルスケア産業を柱に変貌を遂げようとしている
学歴、人種を問わず、現地雇用を生み出し、国内での生産を続ける医療機器メーカーがある


藤田浩之:QED社 CEO
「平均を取ることに意味のない社会ですね。儲ける人間は何百億何千億と儲ける。で、本当にお金を儲けることが出来ない人は年間数十万、ですよね。

でもアメリカの良心というのは出来る者が援助を必要としている人たちに対して援助を差し伸べていく。そういう文化、がきちっとある。

少しでも余裕のある人たちが、やっぱり社会にどれだけ還元できるかというのを常に考えるというのしかないと思う」

取材陣
「今の政権に対してどう思いますか?」

藤田
「これはかなり沢山の方、アメリカの国民が想っていると思うのですけれど、内向きというか。アメリカというのは民主主義の国家であって、これは世界の国々がモデルとする国ですよね。そんなプライドをアメリカは持たないといけない。

アメリカがそれを失って、もう"規制をもっと増やして移民を減らせ"とそういう風ならそれはアメリカじゃないですね」

誇りを失おうとしているのか、国も、人も。しかし、誇りだけでも生きていくことはできない

ジョナサン・ハイト:社会心理学者
ニューヨーク大学教授 人々の政治行動の背後にある心理を分析

痛みから怒りへ…民主主義の破壊衝動とは?

ハイト
「私が目にした最高の分析での指摘はこうです。『人々はすべてを焼き尽くしたかったのだ』…
彼らはトランプが欠点だらけでも構わなかったのです。ただ全てを破壊したかっただけなのです。

アメリカ中部には新しい呼び名があります。≪フライ・オーバー・カントリー(飛び越す地域)≫です。アメリカの迷惑な部分であり…NYやロサンゼルスの非常時間を長くしている部分でもあります。NYやロサンゼルスに住んでいる人が中部に行きたい理由は全くありません。

こんな状況ですから「エリート層が失敗した、自分勝手だ、庶民を軽視している…」そうした感覚が大きくなっています。それが怒りを生むのです。

フラストレーションや単純に全てを焼き払ってしまいたいという欲求を生むのです。アメリカのポピュリズムではこの点が重要です。」

全てを焼き尽くしたい、破壊したい

ヤシャ・モンク:政治学者
ハーバード大学講師 専門は政治理論 新アメリカ政治改革プログラム研究員

民主主義の倦怠期 独裁を待望する時代とは?

モンク
「問題は二つです。一つは人々がかつてのように民主主義に対して熱意を持っていないことです。

独裁的な民主主義を人々は以前より容認するようになっています。これには選挙や国会の制約を受けない指導者やさらには軍の支配など…過激な意見まで含まれています。

もう一つの問題は民主主義の基本的な規範を大切にしない大統領をえらんだということです。

これは非常に危険な事です。なぜなら民主主義に必要なのは憲法や法律だけはないからです。民主主義を大切にしそのルールを守る政治家と人々が必要なのです」

民主主義のルール…?
そもそも民主主義とはなんなのだろう?


モンク
「民主主義ってなんだか分かる?」

子どもたち
「道徳的な…」

若者
「みんなが協力し大多数の人々の合意で結論を出すシステムです。特定のグループの権利を侵害することなしにね。

現在はそうような状況にないと思います。トランプは一般投票では勝っていないし、女性や同性愛者や他のマイノリティーの権利を侵害しています」

女性たち
「民主主義というのは国民が力を持っていることで国民が納得し真実をメディアが伝えることです」

「フランス人は自分の意見を言うことを怖がりません。それぞれが思っていることを口に出して言うことができる国です。アイディアを提案したり選出されたり。私たちがもっている大きな幸運です。歴史ある、すばらしい国です」

お年寄り
「自由に考えられること、好きな宗教を信じることができること…これだけでも十分じゃないか」

民主主義、それは古代ギリシャに遡る。Democracyの語源はDemokratia。Demos(民衆)Kratia(支配)、まさに民衆による支配そのものだ。

一人の王が支配する王政。少数が支配する貴族政とは異なる政治体制。民衆がすべて主権者であるという理念。理念でも、制度でもあるデモクラシー。


リチャード・J・サミュエルズ:政治学者
アメリカMIT教授・国際研究センター所長 専門は政治経済・安全保障

必要悪としての民主主義 欲望の争い… 守るべきルールとは?

サミュエルズ
「民主主義は最悪の政治形態である…ただし これまで試されてきた全ての政治形態を除けば。これには一理あります。」

元イギリス首相、チャーチルの言葉だ。

サミュエルズ
「礼節のある対話と受け入れられた規範のもとで行われる「政治的競争」…それが民主主義です。

国民一人一人がリーダーを選び、リーダーに公共政策に対する責任を問える仕組みです。一人または特定のグループに権力が集中しすぎないようにするためのプロセスです。

そのために必要なのは法律です。法による支配と権利の保障が必要です。特に集会、言論、信仰、報道の自由…少数意見の保護は不可欠です。

これらが揃い、なおかつ大衆の信頼があれば民主主義がうまく機能していると言えます」

民主主義は法による支配と権利の保障

ギリュイ
「民主主義とはまず権力を持たない人に権力を与えることです。投票とは経済的にも文化的にも顧みられない人が…投票において富裕層や重宝されている人たちと平等になることです」

民主主義とは権利の平等

マルクス・ガブリエル:哲学者
ドイツ・ボン大学教授に29歳で就任。現代哲学の新たな地平を切り開く

民主主義の倫理、他者への想像力とは?

ガブリエル
「民主主義とは"共同体の倫理"の実践です」

民主主義とは倫理の実践

ガブリエル
「つまり民主主義とは"声なき声を尊重する"制度なのです。

もしあなたが多数派側で同時に権力があれば、あなたほど力を持っていない人間に対してあなたほは責任を持つということです。力がある者はそれほど力のない者を支配して戦争を始めようとしてはいけないのです。

力ある者は策の向こう側はどんな気分か?常に考えながら治めなくてはなりません。」

民主主義は少数派の気持ちを考えること

ハイト
「問題は1776年と87年の建国のために集まった建国の父たちが民主主義を実は好んでいなかったということです。"民主主義は2番目に悪い政府の形だ"と言うプラトンの言葉を彼らは読んでいたのです。民衆や大衆により決められる民主主義は必ず独裁政治になると思い込んでいたのです」

民主主義→独裁政治?

ハイト
「私の専門は倫理心理学です。我々の「論理的思考」が感情や激情によっていかに左右されるかを研究しています。人は怒っていたり熱くなっていたり嫌悪や恐れを感じている時…とても悪い判断をするでしょう。

今アメリカはとても熱くなっています。ヨーロッパもそうです。ですから人々は簡単に扇動政治家に惹かれてしまうのです。これがポピュリズムの台頭の根幹です」

欲望の民主主義 世界の景色が変わる時 第3・4章 第5章 第6章 第7・最終章

欲望の民主主義 世界の景色が変わる時をみて


cf.
欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき 第1章~第3章
 第4章~第5章 第6章~第8章 第9章~最終章

『欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき』をみて
by wavesll | 2017-05-31 19:50 | 書評 | Trackback | Comments(0)

梅棹忠夫『知的生産の技術』読書ノート

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梅棹忠夫『知的生産の技術』を読みました。

昨晩の外山滋比古『思考の整理学』読書ノートから間髪入れずに読んだため、その共通点(というか『思考の整理学』の種本がこれではないかw)と相違点が良く分かりました。

以下、心残点と感想を。

はじめに

学校は情報を教え過ぎる癖に知識の獲得の仕方は教えない。技術論が大事。もっといえば情報の時代の今日(1969年)コンピューターのプログラムの書き方が個人的な基礎技能になる日が早く来るかもしれない。

インターネット時代を予見したマクルーハン『メディア論』、シンギュラリティの時代にどう生きるかを示唆した『思考の整理学』に続き、ここにも未来視が。時の試練を越えるものには未来の価値観が含まれているのかもしれません。

本書はハウツー本ではないと書かれていますが、結構実際的なHow toが書かれていました。

野帖

メレジュコーフスキィ『神々の復活』ではレオナルド・ダ・ヴィンチは手帳に何でも書き込むとあった。わたしも手帳に「発見」を書いた。「発見の手帳」をつけると「二重発見」をチェックできるし、発見達の相互連関をみつけることができる。

野帖(フィールド・ノート)としてカードを開発して情報を整理した。カードはコンピューターに似ている。どちらも「忘却の装置」である。資料の整理は規格化が肝心で、体系的な管理システム構築により「時間」の捻出というより生活の「秩序と静けさ」がつくれる。


ここら辺のカード式情報管理法は「思考の整理学」にも書いてあったし、詳細なファイリング法も描いてありましたが、今はEvernote等で代用できる気がします。実際、BlogやTwitterを情報管理のツールとして有用で。

そこら辺のアプリ論は『知的生産の技術』の各章を、現代の視点から(シゴタノ!)に詳しいです。

とはいえ、電気を必要としないシステムってかなり強靭だとも思いました。

読書技術

i. 本ははじめからおわりまで読む。これが「よんだ」。一部だけ読んだものは「みた」。

ii. 読んだ日付や基本情報などの「読書の履歴書」をつくる

iii. 一気に読む

iv. 傍線を引く

v. 読書ノートをつくる。その際に一旦一気に読んだ後、つん読して、もう一度短時間で読む「読書二遍」が有効。

vi. 「その本の著者にとって大事な所」と「自分にとって面白い所」の二重の文脈で読む

vii. 読書にとって大事なのは著者の思想を正確に理解する事もあるが、それによって自分の思想を開発し、育成すること。それが創造的読書。

vii. 本は何かを「いうために読む」のでなく「いわないために読む」。引用するのが多いことは、それだけ他人の言説に頼っていて、自分の想像に関わる部分が少ないこと


読書技術についてかかれた部分が本書で一番有用でした。特に読書ノートを作る際に、自分と著者の間で化学反応した「自分の文脈」を大事にするというのはキュレーションサイトが色褪せたイマに非常に有効な提案だなと想いました。

文章の書き方

i. ローマ字で日本語を書くと日本語の分かち書きが身に付き、日本語理解が深まった

ii. 手紙の形式の周知の必要性

iii. 日記は、時間が立つと「他人」になる「自分」との文通で、魂の記録だけでなく宮廷貴族の昔から自分の為の業務報告もある。

iv. 原稿の書き方は、きちんとしたルールを訓練しないといけない。

v. 行動家は文章嫌いなきらいはあるが、文章は才能より訓練。文芸的な文章よりもビジネス的な文章の方が必要とされる場合は大きく、わかりやすさが大切。国語教育の設計しなおしが必要。


文学と異なる実際的な文章メソッドの話は山田ズーニーさんの『伝わる・揺さぶる!文章を書く』 に詳しいです。

この『知的生産の技術』は『思考の整理術』だけでなく、『伝わる・揺さぶる!文章を書く』や斎藤孝『三色ボールペンで読む日本語』の父となった大樹に感じて。その樹形図の流れを視ることで、これから私たちの世代がいかに古典を現代へ転置していくかについても興味深く読むことができました。
by wavesll | 2017-05-30 21:39 | 書評 | Trackback | Comments(0)