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欲望の資本主義2018 闇の力が目覚める時・ルールが変わる時 第3章・第4章・第5章 書き起こし

欲望の資本主義2018 闇の力が目覚める時・ルールが変わる時 第1章・第2章 書き起こし

第3章 ショウの幕があがる時

ドイツ、ボン大学、哲学インターナショナル・センター

トマス・セドラチェク(経済学者、チェコ)
「真面目な人がクレイジーになるとただのクレイジーな人より厄介だよね」

マルクス・ガブリエル(哲学者、ドイツ):ボン大学教授。「新実在論」を提唱。注目を集める気鋭の哲学者。近著『世界は何故存在するか』
「僕もまったくそう思うよ。

資本主義を定義するならば『商品活動に伴う活動全体』となるだろうね。そして今日の資本主義の世界はいわば『商品の生産そのもの』になった」

生産の体系=資本主義

マルクス
「そもそも生産する(produce)とは何か?語源は『前に(pro)持ってくる(duce)』だ。つまり商品の生産とはいわば見せるための『ショウ』なのだ。」

生産=新たに「見せる」こと

マルクス
「フェイスブックの『いいね!』やこの会話も商品の生産だ。その意味ではカメラやディレクターや私たちの今の気持ちもそこに含まれる。今では資本主義は全てがショウ化している経済システムだ。

偶然かもしれないがドナルド・トランプは資本主義の顔のようだ。彼はテレビショウを作っている。資本主義は代替案のないショウだと思うよ。

ドナルド・トランプの戦略は従来の戦略と全く異なると言える。重要なのは鉄鋼会社を守ることでも雇用を守ることでもなくショウを売ることだ。今のアメリカの政権が富を生み出す方法はまさしくショウ形式によるものだ。」

フェイクさえ商品(ショウ)になる

マルクス「そうなると最近のアメリカ製品で最強のモノの1つは」

トマス「見せ物だね」

マルクス
「そのとおり。フェイクニュースのような偽物があふれている理由の1つは大量生産がなされる状況において恐らく偽物が理想的な商品だからだ。ベストな商品は安く作れて浮ついたモノなんだ。」

ショウほど素敵な商売はない。新たな欲望の世界の幕が上がった。

「景気は上がってきているがトランプのふるまいはまずいね。彼はまともなことを言えなくなったようだね」
「人々は彼の能力と目指すところを信頼していると思う。だからこの国のことも信頼できるし私も安心して投資が出来るよ」
「資本主義は自然な形だと思う。ライオンや猿が住むジャングルに社会主義なんてないだろう。結局私たちも動物だ。資本主義はずっと続いていくだろう。お金も食べ物もなく路上で暮らして心の問題を抱えている人もいる。見るのは悲しいけど…『自由な社会』が払うべき代償だね」

資本主義=自由?

第4章フォースの覚醒

グローバル化 貿易 投資

国境を越えて資本を増やそうとする人々と、そこから取り残される人々。引き裂かれる欲望の世界

トランプ「壁をつくるぞ。議論の余地はない。」

右でも左でもない。上でも下でもない。資本主義はどこへ向かう?

トマス・セドラチェク(経済学者、チェコ)
「もともと私たちは『政治移民OK、経済移民にはNO』と言ってきた。『経済移民はいい暮らしがしたいだけ』『それはNoだ』。

だが実際は逆だった。数多くの移民がヨーロッパに来て私たちの代わりに働きさらに消費をしてきたことを私たちはOKだと思っていた。移民と犯罪の可能性を結びつけたりイスラムと関連づけたりすることもなかった。

なのに突然…状況が政治的になり移民が仕事ではなく助けを求めてきた瞬間私たちは『NO』と言ったのだ。実際は何千万もの経済移民を歓迎してきたのに。事態が政治的になった時『NO』と言ったのだ。

私たちは理屈に反する本能的な行動をしているね」

いつから政治の裏側に経済という本音が張り付いたのか。建前では仲間、でも実は、敵。矛盾は何故生まれた?

経済と政治の錯綜

マルクス・ガブリエル(哲学者、ドイツ)
「皆がポピュリズムと言うがそれは無意味で的外れな診断だ」

ポピュリズムはマジックワード?

マルクス
「今起きている現象には恐らくそれを表現するためにより適した言葉が見つかるのではないかと思う。これはグローバリゼーションに対する抵抗の一種じゃないかな。この分野で何かが起きているんだ。

グローバリゼーションは基本的に経済プロセスだから起きていることを経済的に説明しなくてはならない。政治的ではなくね。

ドイツの人口の12.6%が排外主義に目覚めて投票を決めたわけではない。そうではなくむしろ地球のあちこちで不公平をめにするようになったためと考えた方が良い」

グローバル化→格差の発見

マルクス
「まだ十分に話題にされていない国にブラジルがある。いまブラジルは崩壊しつつある。ブラジルは今の資本主義の過度な実験場と言えると思う。知る限り地球上で最も不平等な国だ。南アフリカよりもね。

経済学者のあなたの方はこの様子をどう感挙げるかな…。ポピュリズムや民衆扇動が…」

トマス
「ポピュリズムは正しい言葉ではないよね。ポーランドでも起きた…」

マルクス
「そうだ。EU内で起きてることだ」

トマス
「ヨーロッパの交渉の中心にいてEUの理念に賛成していた政権だった。なのに2週間で突然邪悪な勢力(フォース)が目覚めたのだ。僕はポピュリズムと呼びたくない…これは暗い悪のようなものだ。」

悪の力(フォース)

トマス
「あれは2015年の終わり頃『スター・ウォーズ』が公開されたね。『エピソード7』タイトルは『フォースの覚醒』だった。少し予言めいてるよね。2015年末に何かが起こり悪魔的な門が開いたのではと…私は陰謀論とかを調べたりさえもしたよ。

何か構造的な変化が生じたのかもしれない。この状況を表すうまい言葉が見つからないが、もう人々が『いい人』でいられなくなったのかもしれない。『なぜ私が助けなきゃいけない?』とね。『私のことは助けてくれないのに』ってね。

何というか…キリスト教徒の反応はイスラム教の国々の反応よりも極端に経済的なものだった。イスラム教の国々は実際はるかに多くの数の難民を受け入れている。」

マルクス「そうだね」

いい人 疲れ?

マルクス
「あなたの『悪』の分析に賛成だ。悪というものを今一度考えてみる必要がありそうだね。シェリングという哲学者がいて彼についてはたくさん研究したが、今のところ彼が悪についてベストな説を発表している。」

ドイツの哲学者 フリードリヒ・シェリング(1775~1854)

マルクス
「この本の中で彼は、悪は人間の心の中でだけでなく、実在するポジティブなフォースだと主張している。

どんな組織もどんなシステムも時間を経て自身を維持するためには他のシステムを排除しなければならない。外部がないシステムは内部に『異質なもの』を作り出さなければならない。これが悪のダイナミクスだ」

”外側”がないと、悪が生まれる by シェリング

マルクス
「システムが大きくなりすぎたら…たとえばローマ帝国だ。スター・ウォーズも『帝国』だったね。ローマ帝国は外部があるという感覚を失った瞬間に崩壊を始めた。確かにグローバリゼーションは新たな悪を生み出したのかもしれないね。

資本主義は国家というよりも経済的な帝国だが帝国は内部から悪を作り出すのだ。これが『ナショナリズム』などが復活している背景なのだろう。確かに悪に似た姿をしている。」

ただ一つの地球(ほし)に住むわたしたち
「悪」は個人に生まれるのか
「悪」は社会に生まれるのかー

第5章 イノベーションの呪縛

トマス・セドラチェク(経済学者、チェコ)
「資本主義はゾンビに例えることもできる。ゾンビが醜いからではなく非常に効率的だからだ。フロイトによれば人間の抱える問題は『増えること』と『食べること』に行き着く。心理学では有名な説だね。

でもゾンビはその上を行く。人を『食べる』と同時に『増える』からね。でも私たちはこんな効率化を望まない。ゾンビは愛する者の魂を奪い動物以下になってしまうからね。」

資本主義はゾンビ的?

トマス
「資本主義の問題点は道徳規範を失い中心が空洞化していくことだと考えていた。哲学者ラカンの読みすぎかな…。しかし空洞だと思っていたのは私の間違いだった。実際には中心に強力で支配的な観念が存在しているようだ。」

資本主義の強迫観念ー

トマス
「原則は『役に立つことだけをしろ』。『自分を愛してくれる者は愛し、自分のことを嫌う者は嫌え』。『よくしてくれる者にはよくし、意地悪をしてくる者にはやり返せ』だ。

この観念はあらゆるところに根付いていて生まれた時から親しんでいるから私たちは気がつかないのだ…」

なぜ気づかない

マルクス・ガブリエル(哲学者、ドイツ)「資本主義はどこまでも拡大し続ける性質だからね。」

トマス「そうだ。生産額をね」

マルクス
「そうしないといけない。資本主義は『成功』という概念の上に成り立っているシステムだ。『成功』は非常に重要だ。」

『成功ファースト』の資本主義

マルクス
「ひとたび成功するとさらに未知のものを見つけようとする。ある企業が何かを達成し成功を収めたとしよう。その後も成功者であり続けるためには同じことを続けていたらダメだ。iPhoneを発明しても、同じiPhoneを作り続けていたらダメだろう?

成功者でいるためには何かを達成するだけではなく絶えず成功し続け自らを維持する必要がある。これまで見えていなかったものに目を向けるのだ。新たに「存在」を見つけ、値段をつける。」

トマス「二酸化炭素とかね」

マルクス「いい例だね。それが資本主義の特性だ。」

トマス「経済学者として納得できるよ。」

すべてを商品化せよ

成功、名声、価値、お金。もうヒトは後戻り出来ない。飽くなき創造と破壊こそが、エンジン。
新しさを追いかけて何が悪い?

ダニエル・コーエン(経済学者、フランス)
「資本主義の歴史をシュンペーターは『創造的破壊』の連続だとした。あくまで『破壊』を指摘したところに注目すべきだ。創るために『破壊』すること。資本主義の世界で人々はずっとこれを繰り返し、それは強迫観念のように私たちを駆り立ててきた。

シュンペーターの表現は現実をよく捉えているからこそ人々の心をつかんで何度もよみがえってくる」

私たちの住む世界はシュンペーターが思い描いた道を進んできたのか。でも…

「資本主義はその成功ゆえに自壊する」ーヨーゼフ・シュンペーター

奇しくもカール・マルクス(ドイツ生まれ、1818-1883)がこの世を去った年に生まれたヨーゼフ・シュンペーター(オーストリア生まれ、1883-1950)。資本主義を批判した男へこんな賛辞を送っている。

マルクスの体系は批判されても反証を突きつけられても致命傷を負うことはなく、かえって構造の力が際立つ。偉大なものには闇の力がある -ヨーゼフ・シュンペーター著『資本主義・社会主義・民主主義』

時代を越えてよみがえる闇の力とは?

お金と欲望をめぐる物語、舞台は後半へ続く

『欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき』をみて
『欲望の民主主義 世界の景色が変わる時』をみて

by wavesll | 2018-01-23 22:35 | 書評 | Trackback | Comments(0)

欲望の資本主義2018 闇の力が目覚める時・ルールが変わる時 第1章・第2章 書き起こし

私たちは、働く。生きるため、お金のため、社会の為。雨の日も風の日も。それが、資本主義のルール。

でも

「資本主義は その成功ゆえに 自壊する」ヨーゼフ・シュンペーター

ヒト・モノ・情報 世界が回る お金が回る

ウルリケ・ヘルマン(経済ジャーナリスト、ドイツ)「資本主義は弱肉強食の世界」

止められない、止まらない。欲望が欲望を産む、欲望の資本主義。

ダニエル・コーエン(経済学者、フランス)「創造的であれ。さもなくば 死だ」

「創造的破壊」
資本主義のエンジンを突き止めた男

トマス・セドラチェク(経済学者、チェコ)「マルクスは資本主義は『最強の怪獣』だと言った」

「革命を起こせ」
資本主義の矛盾を突いた男

Anti Capitalista

マルクス・ガブリエル(哲学者、ドイツ)「資本主義は『見世物(ショウ)』だ。トランプはその象徴だ」

作って、使って。作って、壊して。私たちは何を求めて働いているのか。

「欲望」は満たされることを望まない。「欲望」は増殖することを望む。

「闇の力」が目覚めるー

世界経済のフロントランナーたちが紡ぐ、お金と、欲望を、めぐる物語

欲望の資本主義2018 闇の力が目覚める時 前編

第1章 分断する世界

アメリカ、ニューヨーク。
STARTUP SPECTACULAR 2017 (起業家と投資家のイベント)
ここは資本主義の最前線。資本と、アイディアが出会う場所。

「大企業での経験を経て起業するならどんなことが生かせるでしょうか」
「僕たち投資家は資金面や経営面でサポートできる」

資本を求めて、列をなす者たち。ここからまた、新たな富が作り出されるのか。

「すごく人気のツールです。ちょっとみてくれませんか。公開から1ヶ月でユーザーは1000人ぐらいになりました。」
ジョナサン・ストラル(ベンチャー投資家、アメリカ)「いいね」「君は資金を調達したいのかそれとも新たな仲間が欲しいのかな…」

ジョナサン・ストラル:ニューヨークを拠点に活動 およそ30のベンチャー企業に投資している
広い人脈を活かしてお金とアイディアを結ぶ男。

ジョナサン
「僕らはスタートアップ企業が集うNYのエコシステムの中にいる。若い起業家たちは皆すごいアイディアを持っていて資本を探している。

投資した会社が買収されれば大金を得られる。アップルやグーグルやマイクロソフト、あとアリババはそこら中の会社を買いあさっている。そうやって僕ら投資家と起業家は稼ぎをあげるんだ。

そして大きいアイデアと事業は生き続ける」

資本の増殖をめぐるリアルゲーム

カフェにて
「何にしますか?」
ジョナサン「オリジナルブレンドにしようかな、スモールで頼む」
「ミルクもね?」
ジョナサン「ああ、ハーフ&ハーフで」

ジョナサン
「はちみつをコーヒーに入れる。これが僕の魔法…秘密兵器だよ。僕が疲れるって?コーヒーがあるからね。珈琲があれば疲れていても問題ないさ毎日5~6杯は飲んでるよ。一日中起業家たちと会っているけどそれもカフェでやるんだ。カジュアルにやりたいからね。

フリーダムタワーだ。NYで一番きれいなあたりさ。ワールドトレードセンターがあったところだね。」

新たなアイデアを持つ起業家とのミーティング。彼が投資するのは人工知能によって自動化された会話で企業の採用の効率化を図るビジネスモデル

起業家「応募者がこう書くとする『チームでの仕事が得意です』
人工知能がこう答える『夢の仕事はチームワークから生まれますよね(^^)』
会話が楽しいと応募者は時間を割いて自分のことを話してくれることが分かった。」

ジョナサン
「このアイデアはパーフェクトな例だ。求職者は仕事を効率的に探せるし企業側も的確な判断をしやすい。人工知能は仕事を奪うことが多いよね。これは正反対だ。人工知能が仕事のマッチングに活用されるんだ。」

起業家「テクノロジーは人間と共存できる。人間が人間らしい生活をするためにテクノロジーを役立てるんだ」

つくられるのはモノではない、つくられるのはシステム

ジョナサン
「僕らの投資哲学は『デジタル技術による効率化』だ。世界をどうもっと効率的にするか、部分的にではなく一気に。仕事の流れはどう改善するか?お客の生活をどう改善するか?時間とコストの削減に基づいて計測するんだ。そこには絶対的な価値がある。」

至上命題は「効率化」

ジョナサン
「こんなふうにテクノロジーは世界を変えられる。でもそれができるのは基本的なテクノロジーであって写真シェアのアプリとかではないよ。

インターネットを利用すればコストも低いし拡張性も高い。それでトップ1%だけでなく99%の人々が恩恵を受けられる。世界の富のバランスをよくすることが投資家としての使命だと思っている」

資本主義とは破壊の連続、日々、新たな技術、新たなビジネスモデルをめぐって競争が続く。成長の原動力は、イノベーション。起業家のイノベーションが生む、創造と破壊。そこに資本主義の生命力を見出したのがシュンペーター。あのケインズと並び称される20世紀の巨人だ。

ヨーゼフ・シュンペーター:オーストリア生まれ(1883-1950)
J・M・ケインズ:イギリス生まれ(1883-1946)

資本主義のダイナミズムの放出を生涯追究し続けた彼が辿り着いた資本主義のエンジン、「創造的破壊」
創造の為には破壊し続けねばならない。それこそが資本主義の掟。

安田洋祐(経済学者、日本):大阪大学教授。専門はゲーム理論、マーケットデザインなど。海外のトップジャーナルに論文が多数掲載

エコール・ノルマル=パリ経済学院にて

ダニエル・コーエン(経済学者、フランス):パリ高等師範学校教授。政策運営にも関わってきたフランスを代表する知性。近著『経済成長という呪い』

安田「いま世界経済は多くの問題に直面していますね。特に先進国の低い成長率、不平等の広がり、反グローバリズムなど…いま最大の問題は何だと思いますか?」

ダニエル「1つのパラドックスがあることを認めないといけない。」

世界経済の逆説?

ダニエル
「まず一方には新しいテクノロジーの広がりがある。デジタルの世界はとても活気がありそのブームは経済を席巻しつつある。

だがその一方で先進国の経済成長はずっと停滞している。一方にはテクノロジー分野の発展そして一方には低成長…両社はこの10年間分断されていることが分かる。この逆説はミステリーだ。」

テクノロジーの発展が製剤成長をもたらさない?

ダニエル
「楽観的な人はこう言う。『テクノロジー革命はまだ始まったばかり。10年経てば景気促進効果が明らかになる』。しかし別の見方もある。アメリカをはじめ世界で広がる格差と関連があるという見方だ。

新しいテクノロジーがもたらす果実は賃金体系のトップにいる一握りの人たちが圧倒的な恩恵を受けている。なぜなら彼らはiPhone1台で世界中に指示を出したりクリック1つで金融資産を動かしたりする。こうしたトップ層は以前よりもはるかに力を増している。いわば世界を見渡せるようになった。」

強者をさらに強者にする

安田「新しいテクノロジーが新たな雇用を生むこともあります。全体的な評価はどうですか?」

ダニエル
「人口の中核をなす中産階級の人々、つまりサービス業、銀行、保険会社、役所に勤める人々…これらは50~60年代に生まれた仕事だが彼ら中流層は新たなテクノロジーの恩恵を受けていない。それどころかテクノロジーは彼らの仕事を時代遅れにし職を奪っている。

かろうじて生き残れるのは飲食業など比較的賃金の低い仕事だけだ。ロボットやソフトウェアで簡単に置き換えられないからね。

これらを考え合わせると至る所で新しいテクノロジーが盛況だからといって経済成長に結びつくわけではないと分かるだろう。新しいテクノロジーは大多数の人の生産性を向上するどころか職を奪う。つまり人々の生産性が失われていくのだ。」

1パーセントの生産性↑
99パーセントの生産性↓

世界の人口約74.3億人 8人の総資産(約4,268億ドル)≒36億人の総資産

加速するテクノロジー発達。それは持つ者と持たざる者。その差を広げる一方なのか。

ダニエル
「『恐れ』は常にあった。絶好の例がある。農業を見てみよう。新しいテクノロジーにより世界中の農民が職を奪われたのは明らかだ。先進国の農民は激減した。フランスでは1~2%ぐらいだろうか。日本でもフランスと同程度だろう。

生産性の向上により労働力が必要なくなったのだ。農民は仕事にあぶれてしまい彼らは農村を離れ都市部に移っていった。それでどうなったか。都市では産業革命が起きていたのだ。」

(産業革命の)あの時は上手くいった。欲望の経済史のターニングポイント。産業革命。蒸気、紡績、次々と誕生した産業機械。工場が農民の受け皿となった。

ダニエル
「人々の地方から都市への移動が経済成長に拍車をかけた。もしも都市で産業革命が起きていなかったとしたら相当の社会的緊張が生まれていただろう。働き口がなかったらどうなっていたことか…」

失業は社会に緊張をもたらす

ダニエル
「これこそ今の私たちが直面している状況かもしれない。第三次産業 サービス業の人々は新しいテクノロジーによって職を奪われ、その後生産性が高い仕事にも就けていない。そこに大きな格差が生まれる。なぜなら自分の能力が発揮できる仕事が見つからないからだ。」

第2章 革命の夢のあとさき

2016年アメリカ大統領選挙時
デモ隊「誰を求める!?バーニー!!」

バーニー・サンダース「多くの人々は低賃金で長時間働いているのに高い賃金と富の大部分はトップ1%の人たちが握っている。間違っている。」

いま資本主義に異を唱える声が高まっている

ニューヨーク ブルックリン アメリカ社会民主主義者の会(Democratic Socialists of America)

自由だけでなく平等を新しい世代のムーヴメント

「バーニー・サンダースが当選しなくて本当に残念だったわ。私たちには変革へのポジティブで希望にあふれたビジョンがある」

「サンダースはアメリカで新しい対話のきっかけを作ったのよアメリカは正直言って冷戦から続く問題を抱えているわ。ほんの2~3年前でさえ社会主義という言葉はまだ禁句という感じで…

もちろんアメリカにも常に社会主義者はいたのよ。しかしこれが主流のアイデアになったのはサンダースの選挙活動が本当に大きかったと思うわ。

そして彼は大学の授業料を無料にしたり国民皆保険制度、皆のための医療などの具体的な提案をしたの。彼はこれらは…こうしたアイデアは新しくもなく恐ろしく急進的なものではないと人々に自覚させた。

これは社会主義の発想が多くのアメリカの人々が支持するアイデアになったのよ」

「自由の国」に社会主義のうねり?

「労働者が団結して労働組合を作ったり…変化を起こすには人々を組織する必要があると理解しないといけない。労働者が団結すれば計り知れない力を発揮できるわ。私たちの炉王道が富を生み出しているんだから。」「トラック運転手たちが全員でストライキを起こしたら物流が止まり経済は崩壊するだろう」「それかアマゾンの倉庫で働く人たち…これは本当に解決策をあまりに単純化したものだけどみんなの力を結集しないといけない」

「私たちが民主主義の原則を維持することができれば破滅がやって来ることなんて心配することはない。それが本当の社会主義なんだと思う。」

「Uno(1) Dos(2) Tres(3) An Anti...Anti Capitalista(資本主義反対) Anti Vapitalista!!! 資本主義 反対!!!」

自由の国に響く社会主義を求める声 あの男はどんな想いで聴くのだろう

カール・マルクス:ドイツ生まれ(1818-1883)

ドイツ
ウルリケ・ヘルマン(経済ジャーナリスト、ドイツ):銀行員から日刊紙の経済記者に。現在の資本主義の欠陥を追究。近著『資本の世界史』

ウルリケ「資本主義はカール・マルクスが定めた定義なのよ。マルクスの理論には誤りが多かったけど正しい発言もした。彼はこう主張した。資本主義とは人がお金を商品に投資してより多くのお金を獲得することを目的としたシステムだ、とね。」

(産業革命の)あの時代、彼は分析した。(『資本論』1867年)。お金とモノ、交換されるだけではお金は増えない。でもお金が投じられ、モノがつくられ、より大きなお金をもたらせば…

買手が貨幣を手放すのはふたたび貨幣を手に入れようという「狡猾なもくろみ」のためである。だから貨幣は「支払われた」というよりも単に「前貸しされた」に過ぎない。

増やすことが目的の、お金、それが、資本。資本主義の始まり

ウルリケ
「産業革命がなぜ『イギリスで』なぜ『1760年に』起こったのかそのテーマには多く経済史の学者が取り組んでいるのよ。例えば9世紀の中六や古代ローマは非常に高度な発展を遂げており当時資本主義を導入していても不思議ではなかった。

なのになぜイギリスだったのか。それには20に及ぶ学説があるんだけど私が一番だ思う説は世界的な研究プロジェクトが発表した説で18世紀のイギリスがさmざまな偶然によって『世界一賃金が高い国であった』ことが原因だったとするものよ。

当時のイギリスは他のヨーロッパの2倍の賃金だったので良く知られているように繊維工業が競争力を失ったのよ。農業国だったイギリスでは繊維工業は唯一の輸出産業だった。

人件費が高騰していたからこそ機械化には大きな意味があったのよ。資本主義は高賃金によって活性化されるものでこれは現代でも当てはまるわ。」

高賃金が資本主義を駆動する

ウルリケ
「技術革新は常に大きな需要があって実現される。でも労働者が低賃金で購買力がなければ技術革新は機能しない。アメリカでは実質賃金の中央値が1975年以降伸び悩んでいる。インフレを考慮して計算すれば現在のアメリカ人の賃金は1975年と同程度なのよ。」

ずっと上がり続けた、人々の賃金。でも(アメリカの家計収入の推移は)ある時から止まった。

ウルリケ
「日本の状況も決して良くないわ。バブル崩壊以後実質賃金はほとんど上昇していない。ドイツでも2000年以降停滞している。いま過剰生産と売り上げの落ち込みが至る所で起きていてせっかく向上した生産性を活かしきれない状態が続いている。

そのため企業は投資に目をむけなくなったわ。これ以上の投資など必要なのか?というわけよね。その代わりに金融市場での投機が盛んになっている。

世界中で賃金が頭打ちになっている現状は資本主義にとってとても危険な状態よ。」

賃金↓ → 売上↓ → 企業の投資↓ → 賃金↓ →…

投機↑

それはなぜ?

ウルリケ
「1975年以降の世界各国の状況を見てみると労働組合が弱体化して政治的にも立場が弱まり、同時に人々の失業に対する恐怖が高まったことで仕事の確保を優先し賃金には目をつむる文化が形成されてしまった。これは社会全体にとって恐ろしく危険なことなのよ。

だから利益をすべて億万長者が独占するのではなく労働者も継続的に利益を受けて生産性と連動して賃金の上昇を実現しなければダメよ。」

持つ者だけが富を得る。産業革命の時代資本主義を批判したマルクス。マルクスはこう予言した。

「資本主義はその矛盾ゆえに滅びる」ーカール・マルクス

トマス・セドラチェク(経済学者、チェコ):CSOB銀行 チーフストラテジスト 大学在学中の24歳の時 初代大統領の経済アドバイザーに。近著『善と悪の経済学』

トマス
「マルクスの理論によればお金は労働者のところに行くべきだ。すごく単純化するならそういうことだ」

…しかし

トマス
「彼は労働者にはお金が行きようがないことに気がついた。なぜってもし僕が優しい資本家で労働者に高賃金を与えたら利益は減るよね。いずれ悪い資本家との競争に負けて僕は破産することになる。

僕が労働者に優しくすることで天国では報われるかもしれないけど結局は僕は良いビジネスマンではいられないということだ。

だからマルクスは主張した。人々が自発的に労働者により多くの賃金を与えるようになったら破産することになる、と。つまりこれは自発的に起こるはずがない。だから『革命を起こすしかない』。」

みんなに 冨を! みんなに 利潤を!

起こるべくして、革命が起こる。彼が想定したのは最も資本主義が進んだ国(イギリス)でのこと。でも実現したのは当時まだ貧しかった北の大地(ロシア)でのことだった。

社会主義国家の誕生

革命のリーダーたちが目指したのは人々の平等、でも…

トマス
「マルクスは『自分はマルクス主義者ではない』と言ったのはすごく有名だ。はたしてイエスが生きていたらキリスト教徒になっているか…僕はそう思わないね。ブッダは仏教徒になっているか、僕はそう思わないよ」

革命の現実はマルクスの理想と違った?

トマス
「まあとにかく僕は旧チェコスロバキア出身だ。マルクスの思想が実現されたところだ。そしてそれは忘れられない大失敗だった。これはまず言っておく必要があると思う」

人々が願った平等な社会は築かれなかった。革命からおよそ70年、社会主義の壮大な実験は終わった。それは束の間の悪い夢だったのか。それとも早すぎたユートピアだったのか。


『欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき』をみて
by wavesll | 2018-01-22 21:25 | 書評 | Trackback | Comments(0)

東浩紀『観光客の哲学』感想:壊さないでネットワークを育むまなざしにふわふわした真摯さをみる

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漸く2度目の読了を終えました。

『観光客の哲学』という題名ですが、具体的な個別の観光の話をするのではなく、特定の共同体にのみ属する「村人」でもなく、どの共同体にも属さない「旅人」でもない「観光客」という像を以て「他者論」を行うという本書。

そしてその奥にあるテーマとしては「人として成熟したと認められるにはどう成ればいいのか」というもの。

ヘーゲルに於ける「国民となること」、そして国際社会の市民となることという個人→家族→国民→世界市民という流れではなく、観光客というふわっとした存在の「誤配」性を以て世界平和に寄与するという論旨。

『人間は人間が好きではない。人間は社会をつくりたくない。にもかかわらず人間は現実に社会をつくる。なぜか。』というルソーの解釈。或いは『現代社会における政治(ナショナリズム)=上半身と経済(グローバリズム)=下半身の二元統治の上でリベラリズムをリバタリアンやコミュニタリアンが越え、〈帝国〉にマルチチュードが反旗を翻す』といった現在までの思想史の論じ方は非常に面白く読めました。

特に面白かったのは第一部の終盤に論じられたネットワーク理論。「スモールワールド」と「スケールフリー」という「べき乗分布」の枠組みによってウェブページの被リンク数や年収の分布、都市の規模と数の関係、論文の引用頻度と点数の関係、戦争の規模と発生数の関係、書籍の部数と出版点数の関係、金融危機の規模と発生数の関係、地震の大きさと頻度の関係、大量絶滅に於ける絶滅種類と頻度の関係が説明可能だというくだり。

ネットワーク理論により、人間社会の構造をあたかも自然現象であるかのように説明する言説の可能性が久々に現れた知的興奮がそこにありました。

その一方で第二部で提示される”成熟のカタチ”として「不能の父親として嬰児に触れるように他者と交わる」というアティチュードは、結局のところ問題の先送りというか主体的なプレイヤーであることの放棄な気がしたのも事実でした。

ただ、それも含めて東氏のありのままの思想表明となっていたというのはひしひしと感じて。

多くの先行研究である思想史の解説、繋ぎ合わせが大半を占める構成は批評家がかける”編むことによる先端の更新”であると感じたし、その二次創作的な姿勢から”創造至上主義者”から大なり小なりの批判を受けた結果であろうエクスキューズの多さにしても、そして「親子」という解も借り物でない実体験から生まれてきていることも含めて、東氏の今出せる棚卸的な本音の著作と感じました。

本書に於ける不満は「結局”観光客”という存在は何の意義をもたらすのか」が具体的に語られないところだと思います。

観光客というのは結局のところその行動としては「傍観者」。けれど例えば私自身先日のネパール旅行で生のカトマンズにて思った以上に文化財が残存していることを体感してそれをTweet等で拡散したことから「ネットワークに”近道”を創る」ことを実践したかもしれないと思って。

観光客は直接的に旅先の政治状況を動かすことはなく、或いは郷里の状況を決定的に動かすこともないかもしれないけれども、ふわふわした眼差しのRootを繋げることで、蝶の羽搏きを惑星にもたらすことはあるかもしれないと想いました。

それは”壊さないで、育む”親としての眼差しかもしれない。さらに言えば去勢された父親を肯定するとは戦後の米国に雌伏するこの国の姿を認めることでもある。いのちを繋げていけば未来が営まれる。そう想ったときに、第二部の意図するところにわずかばかりの共感を持てた気がしました。

by wavesll | 2018-01-19 21:00 | 書評 | Trackback | Comments(0)

今井孝『起業1年目の教科書』:動き出しは軽やかに。間口はライトに。そして関係構築には最大限に力を注ぐ起業指南書

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今井孝『起業1年目の教科書』を読みました。
起業というテーマですが、生活全般の”生産性”をあげるような指南書だなという印象を持ちました。

以下、”おっ!”っと想った所を取り上げてみます。

・ありきたりのアイディアで勝負する
・なんでもいいから「最初の一歩」を踏み出す

「画期的なビジネスしか成功しない」ことはない。ありきたりのアイディアでビジネスは十分成功する。最初はパクリでもなんでも小さいところから始めてみよう。

最初から成功するやりかたを知っていて何かを成し遂げた人はいない。「必ず成功する一歩」を探し始めたら踏み出せなくなるので結果を求めず色々やってみる

・夢はなくてもいい
・リスクを取らずにスタートする
・最初は目移りしてもいい
・考えが堂々巡りしてもいい
・健全な下心を持つ

最初から大上段に夢を語ったり、「大きな損害」を引き受けたりしないで「失敗してもギリギリ受け入れられる範囲での最大の挑戦」をする。

『起業家になる』ことを今の状態から徐々に徐々にシームレスに移行していけばいいし、行うビジネスも目移りしながらちょっと手を出して試行錯誤すればいい。

頭がもやもやしているのは脳が情報処理しようとしている証。そういう時は一旦考えなければならないことを書き出してみると客観的に自分を見れる。

社会への奉仕は素敵だが起業家は「リターンを得よう」位が丁度いい。

・世の中に求められているかは気にしない
・ビジネスモデルは後から考える
・身近な人は応援してくれないものと考える

売れるかどうかは売ってみないと分からない。周りのネガ意見に惑わされない。自分の熱意が一番の成功要因。やることを決めたら最初はお金になるかを気にせず価値を磨くことに集中する。

・まず時間を確保する
・今の仕事を8割の時間で終わらせる
・今の会社でテストする
・いつでも復活できる条件をつくる
・退職するまでに伝説を作る

「朝30分だけ起業時間に当てる」とか短時間に集中して時間を取ってみる。その為に「早く終わらせよう」と「仕事を終える時間」を意識するだけで業務はかなり時短できる。効率化のコツは相手の立場で考えて求められるアウトプットを明確化すること。

また「会社で働くこと」を全否定しないで今の会社で色々練習したり事業に失敗しても人生は続けられると想うと色々楽。大失敗でも大成功でも会社にいるうちに大きな挑戦をするのは素晴らしいこと

・お金の不安を最小化する
・テスト用の予算を用意する
・失敗の回数を決めてスタートする

家賃の低いところに引っ越したり生活の固定費をまず計算し、なるだけ圧縮する。逆にビジネス投資は損をある程度見込んで行ってみる。

すぐに結果が出なくても失敗せずに初回で成功させようとするより2,3回テストして失敗する方が成功への近道。失敗に対するメンタルを強くするには「失敗の数」を数えること。100回失敗して改善すれば成功しないことはない。

・5分で目標を仮決めする
・わがままな目標を立てる
・愛のある売り上げ目標を立てる

どうせ目標は変わる。実際に目標に向けて行動しないとわからないので仮に決めてやっていて違っていたら変える。

その際に「起業の成功=家庭がボロボロ」とか無意識に浮かぶデメリットに対して「デメリットが起こならない、両獲りな目標」を立てる。

『年商300億円へ大きくしなければ』とか『~しなければならない』となった時点で経営者は負け。事業にとって納得感のある売り上げ目標を立てる。

そのために「それだけの見込み客がいるのか?」「それだけ営業する時間がるのか?」等の制約を洗い出し適正な単価と数量を測る。

・おおらかにお金の流れをみる
・数字に弱くていい
・お金以外で安心を手に入れる

起業すると金の流れが速くなり焦るが、収支をみる期間を1年や3年など長くとるとかなり落ち着ける。そして経営に必要なのは「正確な数字」でなく「判断できる数字」。大局観が大切。

ゆったりとした時間を過ごしたり家族のだんらんにはそんなにお金はかからない。必要なものを見極めればお金はそれほど必要でない。

・お金をかけずに試作してみる
・オリジナル商品にこだわらない
・絞り込めなくてもよい
・商品開発に他人を巻き込む
・スキル不足を回数で補う
・売れている人をバカにしない

1ヶ月で1回テストするより1ヶ月で3回テストした方がいい。その為に最初はしっかりとした商品を創ることよりキモの部分だけ詰めて何度もフィードバックを受けるといい。

成功している人ほど人の力を借りるのが上手い。周りからのアドバイスを完全に理解できなくても取り入れてみるといい。

最初は他人の商品を扱ったり下請けをしてビジネス基盤をつくったりスキルを磨くのもあり。

絞り込むものを探すことに絞り込むようにし、やりたいことは色々試して納得して絞り込む。

ベテランが1回で上手くいくなら、ビギナーは10回やればいい。

多くの場合、本物志向の人が作る商品は初心者には難しい。裾野を広げるためのマーケティングはとても大切。

・最初は「将来の自分」を売る
・ウリがなくても始める
・安い値段でも最高の仕事をする
・まず仲間を増やす
・最初の1件を大事にする
・応援をしっかり受け取る
・有力者にかわいがってもらう

お客様はそこまで完璧を求めていないことも多い。ビジネスの当初はお客様が育ててくれる。スキル不足が怖いと思う人はお客様との関係を短く観すぎているのかも。

起業当初はウリに拘らず目の前の仕事を一歩ずつ進める。最初のお試しの時に期待を越えてビックリさせればその人は広めてくれるかもしれない。

営業力とはグイグイ説得する力というより「応援される力」。セミナーや交流会でゆるい人間関係をつくると仕事につながるかも。

リピートと口コミのためにも起業してはじめて仕事が取れたらその1件に集中しお客様が満足できるまでやりきるとニーズをつかめたり仕事の流れを一通り経験できる。

仕事や人脈はチャンスにも繋がるがそこから先は自分の実力。成長する機会を頂いていると考える。

・自分の都合で価格を決める
・商品を提供するのではなく、価値を感じてもらう
・価格を上げる理由をコツコツ作る
・値引きはいつでもできると知っている

ビジネスが上手くいかないのは価格が安すぎる場合が多い。安いお客様ほど文句を言う。価格をしっかり設定して商品を磨き価値を伝える工夫をすれば最後にはビジネスは上手くいく。

その為には伝え方や演出に力を注ぐのは大事。洗練ではなく野暮でも”こんな価値・工夫・労力があるという情報”を伝えるといい。そうした価格を上げる理由を一つ一つつくり自信をつけて提供する。小さな改善たちが品質を高めていく。

値下げは最後の手段。理由のない値下げはしない。

・接近戦に持っていく
・商品がなくても情報発信する
・最初は効率を度外視して集客する

起業初心者はスキル、知名度、実績などが足りないからそれらで比較されるような場所(WEBや雑誌広告)でマーケティングや営業を行うのは効率が良くない。

直接会っての営業、お礼の手紙や電話、ちょっとしたプレゼントを持っていったり、距離感を測りながら熱意や人柄で人間関係を築く。

その一方でSNS等を使って世界観に共感してくれるお客様と繋がるといい。とにかく本気で成功させたいのであれば、効率なんて関係なく手当たり次第にできることを試してみる。

・反応を正しく把握する
・100点が無理なら部分点を稼ぐ

しっかり売れている人は「対面営業だったら10人に1人は買ってくれる」「紹介なら3人に1人が話を聴いてくれる」「メルマガやダイレクトメールの反応率は1000人に1人」と反応率を把握しそれに応じた計画を立てて行動を消化している。

契約が取れない時でも紹介だけでもお願いしたり詳しく話を聴いて改善点を見つけようとしたり何とか40点、50点へ持ってこうとする。なんとかすることを楽しんでいるうちに大成功に出逢える。

・最初はあえて厳戒まで忙しくしてみる
・1日を記録する
・地味な作業から価値を生み出す
・エネルギッシュに働ける時間を増やす

起業した最初の3年は何でも試して限界に挑戦。「このスピードは無理だ」と決めているのは自分の常識でやってみると出来ることが多い。そして限界を超えてただ効率化するだけでは無理だという時期には働き方を考えるタイミングかも。

起業するとあっという間に時間がたつのでやったことを「マーケティング」「商品づくり」「業務改善」など目的別に書き出すといい。そして1人で考えている時は最も価値を生み出している時。

また自分の身体の弱点を認識して日頃からケアする。疲れる前に休み、最もパフォーマンスの良い状態で仕事に臨む。

・やる気のない前提で1日の計画を立てる
・今日一日の仕事に集中する
・準備の時間を減らす

人の気力・体力は有限。詰め込みすぎてもスケジュールは破綻するので「自分の精神力に頼らないスケジュール」を立てると計画の進み具合が劇的に捗る。

「本を1ページ読む」とか一番近くの手の届きそうなゴールだけ見るように大きなゴールに到達する為に逆算して「日々やること」を見つけることが大切。

そして作業量が多すぎる時は相手の視点になって自己保身のための準備万端ではなく、「お客様がいかに満足してくださるか」を大事に必要な準備を明確化する。

・チャンスにはまず乗ってみる
・お金を使う基準を持つ
・1割の成功を活かす
・「必ず元を取る」と決める

他の人が躊躇して上手く行くか分からない時こそチャンス。早いタイミングならば何度もやり直しできる。

お金を使う基準は根本的には「見込まれるリターン」で判断。機会損失まで含め、「10の投資に対し10以上のリターン」と10の内9駄目でも残り一つで取り返せるならOKと、歯科が出ない事より何もしなかったことを無駄と想う。

そして投資が回収できるかを他人に委ねず自分で積極的に回収する。特に人間関係の価値は計り知れない。

・「助けてくれる人リスト」を作る
・ITに弱くてもいい
・情報をスピード処理する「箱」を持つ
・売れてない時から人に任せる
・こだわらずにチームを作る
・人に頭を下げる

起業家とは1人ですべてを行う人ではなく、足りないリソースを周りから集めて社会に役立つビジネスをやり遂げる人。例えば日々の仕事に難しいITスキルは必要なく、恐怖心さえなければいい。

インプットする際、例えば「ビジネスモデル」ならば「集客方法」「提供価値」「課金方法」の3つをみるなど「箱」を持ち処理高速化。

経営者の仕事の本質は「売る仕事」。それに注力し思い切って人に仕事を委託するとビジネスのスピードが上がる。

自分と同じレベルを探すと一章見つからない。委託費用を計算する際は仕事単体でなくトータルでの売り上げがどう増えるかを観る。「できること・できないこと」をきちんと連絡したり1人で抱え込まず早め早めに相談する。

チームで作業するには自分自身の価値観を洗い出すことから始めるといい。

そして本気でやりたいビジネスなのであれば頭を下げることくらい平気なはず。誰かに認められるより自分が自分を認める方が先。


本書に通底するテーマが”とてつもなく素晴らしかったり、どこにも恥ずかしくない品質でなくてもビジネスは成功することが十分ある”というもの。最初から完璧を求めすぎず。動き出すハードルを下げることが肝要と説く。

動き出しを軽くして、間口はライトに。しかし関係構築にはマキシマムに精力を注ぎこむ。ここら辺は見城徹 藤田晋『憂鬱でなければ、仕事じゃない』に通じますね。自分が価値を感じたものをフィードバックを受けながら、頭を下げながら、社会に具現化する。

私なんか自分が心血注ぐモノほど他人に任せづらいとか関係構築の重要性への注力とか理解は出来ても血肉とならない部分はまだまだありますが、「適正な価格で売る」みたいなところは腑に落ちました。起業本だけどブロガー本としても読めるかも。

自分の硬直した思考をほぐす、いいマインドセッティングになりました。

by wavesll | 2017-11-16 19:37 | 書評 | Trackback | Comments(0)

見城徹 藤田晋『憂鬱でなければ、仕事じゃない』 極端なまでに仁義を通す仕事心得本

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友に薦められた一冊。

幻冬舎の見城氏とサイバーエージェントの藤田氏がタイトルとなった『憂鬱でなければ、仕事じゃない』や『小さいことにくよくよしろよ』等、ハイヴォルテージな仕事論を語る一冊。

サクサク読める分具体的な掘り下げはそこまでないけれど、ホリエモンの『多動力』に比べれば内容は大分あったなと。こういう読書はエナジードリンクみたいなものですね。

見城氏はかなり体育会系的にがっつり語るのに対し、藤田氏がソフトに補助線を引く構成は読み易かったです。

要約すれば「小さなことにも手を抜かず人の機微にきめ細かく対応し、極端なまでに圧倒的な努力をして争いに勝つ結果を出せ」ということ。仁義を通すことの重要さが語られ、何か裏技を駆使して旨い汁を啜るというより、正面突破をガンガンガンガンガンガンやるという感じ。

『パーティーは無駄』という章には「パーティーではコミュニケーションの閾値を越えない」と思うので共感し、カラダを鍛えることの重要性を説く章なんかは私自身「精神力の8割は体力」とも想うなど共感しつつ、仕事で何度か鬱になった人間としては付いていけないと感じるところも多々ありました。

しかし結局は真っ当な努力を動き続けることの大事さが語られているのには感銘を受けて。

タカタといい神戸製鋼といい日産といい、日本のものづくりへの信頼が大きく崩れる今は『真面目、真っ当』が馬鹿にされ過ぎたか、ズルが『ハック』と持て囃されすぎたかとも想います。

「こんなにも尽くしているんだからこれくらいの汚点見逃してくれよ」という感情があったかもしれませんが、社会は良い点よりも悪い点が強く印象に残ります。積み上げた信頼のポイントも、不快さを撒き散らしては水の泡。最低限への社会的、公的仁義は通さねば評価が無碍になります。

「お客様は神様です」でのサービスのダンピングで囚人のジレンマのように日本社会はなっているように感じながらも、かといって削ってはならないところと削れるところの見極め、変革・進化へのシフトの選球眼が崩れては不味い。そうした今、本書の説教は響く気がしました。

無駄な因習からの解放と品質保持、そして創新の鼎立には人的資源が足りないのか。”価値を生むとは他者に真似できない水準で走り続ける事”と、ふむ。

私は仕事に走り続けるだけが人生でなく、心身を養いメンテナンスすることも営みを持続可能にするための労働者の仁義だと想いますが、それも含めて“正しい努力、正しい苦労の方向性”を示し、説明責任と結果責任を負う、そんな未来視の指導者が今この国には必要かとも想います。

『天使のようにしたたかに、悪魔のように繊細に』などには気持ちの良い応対をする人間の下には情報や人々が集まってくる実感があり、自分の中で再発見が多い読書となりました。『ヒットは地獄のはじまり』等は「それを結局力業で捻じ伏せるだけか」とも想ったりもしましたが、丁度いいカンフル剤になりました。

cf.
『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を読む

アダム・スミス著 村井章子+北川知子訳『道徳感情論』ー"もしアダ"が書きたくなる稀代の"いいね論"
by wavesll | 2017-10-12 21:37 | 書評 | Trackback | Comments(0)

梅棹忠夫『文明の生態史観』 國はその土地に住む人の欲するように成り立つ哉

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梅棹忠夫『文明の生態史観』を読みました。

梅棹さんは元々理系畑の人で。『ホモサピエンス全史』や『銃・病原菌・鉄』のように、科学的視座からスパッと一刀両断する論理が心地よかったです。

この本は非西欧の立場から世界の文明史を捉えた論文で、物な論点の一つは「日本は西洋とは平行して高度資本主義社会へ進化した」「ユーラシア大陸の両端は封建制からブルジョア革命を経て自立発展した高度文明社会である第一地域で、ユーラシア大陸の中央は帝国による専制が起こる第二地域」と"遷移"というモデルを使って解くというもの。

ユーラシアの真ん中には砂漠地帯があり、その傍らにあるオアシス・ステップ地帯で四大文明は生まれるが、ユーラシアの真ん中では暴力の嵐が吹き荒れ、文明の進歩がその時々破壊される。

それに対しユーラシアの両端は森林地帯で、開墾の必要性から最初期は文明はなかったが、第二地域の帝国をモデルとしたイミテーション国家が生まれ、その後地政学的に温室のように文明を発展させることが出来た。

というのが論旨。この本では東アジアで日本のみが第一地域であると語っていました。

しかしそこから60年の月日がたった今ではシンガポールや韓国を始めとしてAsiaが発展し、ちょっと梅棹さんの論は色褪せた部分はあるなと読みながら想いました。

しかし読み進めると東南アジアに関する論も語られ、ユーラシア世界を日本、西欧、アラブ・地中海、ロシア、インド、中国、そして東南アジアと東欧にわけてモデル化していて。

南北アメリカ、オーストラリア、アフリカが捨象されているのは残念ですが、西洋の視点に対抗する東洋からの視座だというのは意義深かった。

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今「東洋」と書きましたが、この本のもう一つの論点は「Asia・東洋とひとくくりにできない多様性がこれらの地域にはある」というもの。

そもそもこの本は梅棹さんのインド・パキスタン・アフガニスタン"探検"から生まれたものですが、インド地域までくると人種も違うし文化・文明も東アジアからは大きく変わるという気づきが根底にあったようです。それは西欧ともまた違った文明で。

そこでインド、アラブ・地中海地域を「中洋」と梅棹さんは名付けます。この視点は確かに大きなことで。無論西欧人から言わせれば、ヨーロッパもひとくくりにできないでしょうが、Asiaの多様性はその比ではない。

その上で「Asia」という共通意識を利用することは良くても、フラットな視点では事実を著わすべきだと梅棹さんは書いています。

彼の地政学的な論旨は、ともすると優生学にもつながる危険性があると僅かに感じたのですが、その土地の自然条件や文化地理的な位置から、そこに暮らす人たちが成していく社会には一定の法則がある、という観点は面白い。

その土地の人達が欲するように国は成していく、というのは、中国の共産党や、アラブの部族社会の中では専制的な政治体制でないと回らない、といったことは21世紀に於いても実行力のある論だと想いました。

本書では傍論ではありますが、文化的インテリについて語った章も面白かった。

なんでも日本の文化インテリは、政治家でもないのに政治家的な意識を持っている、政治家になれなかった人種が多い。

これは江戸時代の武士という文化的且つ政治的な実務家の流れが、近代に高等教育が普及し、文化インテリが増えて政治からあぶれたことに由来する。

今は政治と関わるのは文化インテリというより、実業インテリや技術インテリの比率が大きくて、寧ろ文化インテリは後進的、保守的な位置づけになっているが、科学技術や社会の暴走を抑えるブレーキとして機能はしている。

そもそもこういった政治志向を持った文化インテリは第一地域に広く存在し、例えばフランスなんかにもよく散見する。

といった具合が『文明の生態史観』の反応に対する講演で語られていて。さらっと云っちゃう辺りが理系学者っぽくて好きでした。

また"この時代は海外を旅するだけでも大きな価値があった頃なんだなぁ"という憧憬もありました。今はインターネット社会で、海外旅行も限られた人のみが出来るわけではないから、昔の方が"旅人"に価値があったのだな、と。

大航海時代というか、世界が既知で埋め尽くされ小さくなる前の、Asia旅記としても非常に面白く読めた本書。日本が如何に「平行進化」したかが語られる「近代日本文明の形成と発展」も収録。同じく梅棹さんの『知的生産の技術』と合わせてお薦めです。
by wavesll | 2017-07-27 20:34 | 書評 | Trackback | Comments(0)

アダム・スミス著 村井章子+北川知子訳『道徳感情論』ー"もしアダ"が書きたくなる稀代の"いいね論"

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アダム・スミス 著, 山岡 洋一 訳 『国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究』を読んでから、"次は『道徳感情論』だな"と考えていて。訳の読み易さから日経BP アダム・スミス (著), 村井 章子 , 北川 知子(翻訳) 『道徳感情論』を手に取りました。

「人間というものをどれほど利己的とみなすとしても、なおその生まれ持った性質の中には他の人のことを心に懸けずにはいられない何らかの働きがあり、他人の幸福を目にする快さ以外に何も得るものがなくとも、その人たちの幸福を自分にとってなくてはならないと感じさせる」

"人間は自己利益を追究する生物だ"という『国富論』に対して、"ヒトは共感によって行動する"という『道徳感情論』、実際に読んでみると現代においては極めて優れた"いいね論"であり、『もしもいいねが欲しくてたまらないSNSユーザーがアダム・スミスの『道徳感情論』を読んだら』という二匹目のどじょうを狙いたくなるネタ満載のクラシックでした。

アダム・スミス教授は、確かに"ヒトは共感するもの"と書いているのですが、"何を良しとするか"について極めてシビアな共感の条件を挙げています。

例えば"怒りや悲しみ、憎しみに人は共感するどころか怒っている人に不快感を覚える"だとか、"喜びには比較的共感しやすいがそれは嫉妬心がない場合に限り、大きく儲かったとかよりも些細な喜びが共感を集めやすい"だとか。

中でも心に残ったパンチラインは”隣人が愛せる以上に自分を愛してはならない”。「汝のごとく汝の隣人を愛せよ」から更に進んだ、客観性の極致がこの思想にはありました。

"いいね"をもらうだけでなく、"自分が他者にいいねする"事についてもスミス教授は示唆を与えています。"いいね"を大盤振る舞いしても有難がられず、根拠がきっちり相手も理解できる時に恩賞を与えるのが効果的だと。

ここら辺は私自身は異論もあって。常にポジ出してくれる人は嬉しいし、幸せの閾値を下げると当人もよりHAPPYになるのではと実感から想いました。

アダム・スミスはかなりエスタブリッシュメント寄りな論客で。権力と財力がある人をヒトビトは尊敬するし、そうした貴族が素晴らしい流行を生み出したりする、寧ろ革新勢力は世の中の秩序を乱すことも往々にしてあるし、という論を述べています。

貧乏人が資産家・権力者を目指すのは犠牲にするものが大きすぎる、なんて話は現代社会では馴染まない考えにも感じました。ちょっとスミス教授は保守的にすぎる感もありました。

そして『道徳感情論』の思想の大きな特徴は"『自然』を受け容れる"ということ。
共感の心の行き届く範囲も、遠い地の大災害よりも自分の些細な傷の方が大きく感じるのは自然だと。

陰鬱な哲学者は"全世界で悲惨な暮らしをしている人がいるのに幸福を享受するのは罪だ"というけれど、それは"自然"から求められるところではない、というアダム・スミスの論。

スミスは本書で"自然"を神だとか本能と言った意味で使っていると感じました。神の見えざる手ならぬ"自然の見えざる手"が人間心理を情操していくと。アダムスミスの保守思想は、"神が創ったこの"自然"世界を肯定する"という宗教心から生まれているように想います。

"自然"からすれば、何かの"いいね"を言うことは善だけれども義務ではなく、されなくても文句は言えない。
胸中の第三者の視線に応えることが素晴らしい姿勢で、そこに応えている限り、自分自身を誇れるというスミスの思想は強靭な人間工学だと感じました。

人間工学という意味では、スミスは"美の感性"についても語っています。
人の感性はみなれた慣習や流行に影響を受けるし、一番美を感じるのは、平均値・中庸の美だと。

確かに石原さとみなんか見ていると色んな女性の表情が宿っているというか、イデア的なものに美を感じる仕組みが心にはあるのかも、なんて思いました。

アダム・スミスが"いいね"という人間は思慮深い人間、適切さのある人間、他者には寛容で慈悲深く心動かされ、自分のことには微塵も動揺しない人。

また、自尊心や虚栄心は不快さを他者に感じさせることもあるけれど、多くの人はその人の自己評価以上に敬意は払わないから、卑屈な態度よりかは自尊心や虚栄心のある方が好ましいと述べています。

徳への愛、真の栄誉を得ることは偉大なる目標だとスミスは言います。

最大に"いいね"がされる生き方は称賛や褒められることを欲するのでなく、称賛、褒め、"いいね"に値する人間になることを欲するべきだと。これもまた真理ですね。

この読書では数奇なセレンディピティも感じて。訳者後書きを読むとこの本は『国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究』を訳した山岡 洋一さんの葬儀時に村井さんが名乗り出で、その遺志を継いで行われたプロジェクトだったとのこと。

日経BPの『国富論』もそうだったのですが、本書も非常に読み易く、こうした志のある翻訳書は日本の宝だなと想いました。

経済学とは価値観の学問だという想いをより強くする、社会哲学の書、堪能しました。
by wavesll | 2017-07-13 19:01 | 書評 | Trackback | Comments(0)

今出せる最適解へ駆け続けろ:細谷 功『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』

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細谷功『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』を読みました。

個人的に「フェルミ推定」、名前は聞いたことはあったのですがどういうものかを知りたかったというのと、ここ一ヶ月で外山滋比古『思考の整理学』梅棹忠夫『知的生産の技術』、そしてショウペンハウエル『読書について』『思索』『著作と文体』を読んで、"書籍哲学者"でなく"自分で考え抜く力"が自分には足りていないと想い、その為にフェルミ推定という思考のフレームワークをインストールするのは有効かもしれないと考え読了した次第です。

さて、いきなりですが、<「日本全国に電柱は何本あるか?」を制限時間3分で、電卓・PCを使わずに求めよ>と言われたら、どんな答えを出せますか?

これがフェルミ推定、その典型的なクエスチョンなのです。すぐに求められない解を手持ちの少ないデータから求めること。ノーベル物理学者エンリコ・フェルミが良く課題に出したことから名を冠しました。

さて、私自身はこの問いを見て、「そもそも電柱が一般的に何メートルおきに立っているかのデータが欲しいな、それがあればそれで日本の面積で割って出せるのに」とか考えてるうちにタイム・アップ。これは"知識編重型"な思考法だそうです。

この解法の一例としては
1. 単位面積当たりの本数を市街地と郊外に場合分けして総本数を算出する
2. 市街地の代表的な電柱配置を「50m四方に1本(1平方km辺り400本)」、郊外を「200m四方に一本(25本)」とモデル化する
3. 日本の総面積は38万平方mだが、これも東京-博多間が1200kmなのを知っていたら大体1500kmX200kmと計算して30万平方kmと推定できる。
4. 市街地と郊外の面積比は「日本の国土の3/4が山間部」なので、2割ほどが市街地と推定
5. (38万平方km*1/5*400)+(38万平方km*4/5*25)=3000万本
6. 最後に現実性検証を行う。電力会社とNTTの出している数字から、日本の電柱の数は3300万本とのこと。

さて、シャーロック・ホームズばりに鮮やかに解が示されたのですが、著者はこのフェルミ推定により"地頭力"が測れる。といいます。

地頭力とは
1. 仮説思考力
①いまある情報だけで最も可能性の高い結論(仮説)を想定し、②常にそれを最終目的地として強く意識して③情報の精度を上げながら検証を繰り返して仮説を修正しつつ最終結論に至る思考パターン

2. フレームワーク思考力
①対象とする課題の全体像を高所から俯瞰し、相対座標ではなく絶対座標としてズームインで説明できる全体俯瞰力
②とらえた全体像を最適の切り口で切断し、全体をもれなくダブりなく(MECE)適切なセグメントに断面をさらに分解する分解力

3. 抽象化思考力
①対象の最大の特徴を抽出して「単純化」「モデル化」した後に②枝葉を切り捨て抽象レベルで本質的な一般解を導き出して、③アナロジーからそれを再び具体化して個別解を導く思考パターン

だと言います。
社会人の能力の方向性は<知識・記憶力のZ軸>、<対人感性力のY軸>、<地頭力のX軸>があり、今の時代は知識はすぐに陳腐化するのに加え、インターネットによりコモディティ化したことから、地頭力と対人感性力が肝要だと。

この本を読んで最も想ったのは、ここでいう地頭力というのは「仕事を70点でこなし続ける身体性」に感じました。完璧に仕上げることに執着せず、決められた時間内に70点のざっくりした結果を出し続け、その時点時点でベターな軌道修正を加えていく仕事術。

その精神的なタフ度に感嘆すると共に、ついつい"大切なモノゴトが零れ落ちやしないか"とか"自分が満足する水準まで仕上げたい、そして結局『本当に正しいか』まで仕上げたい"と想ってしまいました。

しかし確かに「検索エンジン中毒」「情報コレクター」「完璧主義」「猪突猛進」「セクショナリズム」「経験至上主義」な思考回路は仕事の処理には障害になることも多々あるなと。

知識型(What型)でなく問題解決型(Why型)の知的好奇心を持った人間が重宝されるのも理解できるし、文中に紹介された「三分間事業シミュレーション」で街中で自らフェルミ推定の問題を作成して、店で商品を観たときに「これを何人の人が買っていくら儲かるだろう」とか、ラーメン屋で「どれだけ売り上げがありそうか/どれだけ経費が掛かってそうか」を考えるトレーニングをすると脳力が鍛えられそうだなと得心する点が多々ある読書でした。

また合理的に考え一般化していく地頭力(X軸)と、感情に訴え相手の特殊性によりそう対人感性力(Y軸)は真逆のベクトルを持ち、「Think Rationally, Act Emotionally」が大切だというのも本当にクリティカルな指摘だと感じました。

フェルミ推定の問題集として現役東大生が書いた 地頭を鍛えるフェルミ推定ノート――「6パターン・5ステップ」でどんな難問もスラスラ解ける!も軽く読んでみたのですが、フェルミ推定をするにも、世の中の様々な事象の"数字"に強くなることが結果的に地頭にも繋がっていて、それには「三分間事業シミュレーション」などを行い、日々出逢う事柄を意識的な目でみることが基礎体力を上げるのだと。

フェルミ推定は納期の期日が決まっている仕事を営続してく為には本当に有用なアティチュードに感じて。"今出せる結果を出す"ためにポジティヴな書と読めました。
by wavesll | 2017-06-16 07:15 | 書評 | Trackback | Comments(0)

『欲望の民主主義 世界の景色が変わる時』をみて

BS1スペシャル「欲望の民主主義~世界の景色が変わる時~」前編 (dailymotion)
BS1スペシャル「欲望の民主主義~世界の景色が変わる時~」後編 (dailymotion)

NHKBS1で放送された欲望の民主主義 世界の景色が変わる時をみました。

欲望の民主主義 世界の景色が変わる時 第1・2章 第3・4章 第5章 第6章 第7・最終章

今、民主主義が危機に瀕し、排外主義や"新たなる王"を求めるように見える近年。

番組の中で政治学者のリチャード・J・サミュエルズによって『民主主義』はこう定義されています。
「礼節のある対話と受け入れられた規範のもとで行われる「政治的競争」…それが民主主義です。

国民一人一人がリーダーを選び、リーダーに公共政策に対する責任を問える仕組みです。一人または特定のグループに権力が集中しすぎないようにするためのプロセスです。

そのために必要なのは法律です。法による支配と権利の保障が必要です。特に集会、言論、信仰、報道の自由…少数意見の保護は不可欠です。

これらが揃い、なおかつ大衆の信頼があれば民主主義がうまく機能していると言えます」
また都市地理学者のクリストフ・ギリュイはこう言います。
「民主主義とはまず権力を持たない人に権力を与えることです。投票とは経済的にも文化的にも顧みられない人が…投票において富裕層や重宝されている人たちと平等になることです」
今の安倍政権の腐敗を思わざるを得ませんが、同時に先進国で格差が広がり「フリーライド」に寧ろ下層の人々の間で大きな拒否感が生じていることを感じます。

民主主義が今までの政治制度で一番ましなのは、共同体内での意思決定における一票の重要性が誰しも平等であること。機会平等であること。そして、それで選ばれたリーダーは法を守り、公に貢献すること。

この「機会平等」に加えて、「最低限文化的な生活」が保証される為に再分配が為されないと、民主主義は機能しないのではないか、そう想いました。

エリート層は自らが稼げるのは自らの研鑽によると想っている、というのも思い込みかもしれませんが、安定した社会と消費者/労働者がないとエリートもエリートでいられない。社会の構成員はみな社会のステークホルダーであるという真実が民主主義の土台だと想います。

そしてグローバルな生存競争に負けた人々がルサンチマンを破壊衝動へ転嫁させていることを思うと、寧ろエリート層の安全の為にこそ再分配は重要であると思います。

フランスでは移民2世や3世が、差別を感じたり貧困だったり、社会の理不尽を受けてテロへ走ると聴きます。それは日本も裏表の関係で、毎年2万人超が自殺している現在、自殺的な発散が他殺的な発散になれば"安全圏にいる競争に勝利しているマジョリティ層"もその危機に問題意識が向くのかもしれません。

また一般意志の示し方として、デモをどう捉えるかについても考えさせられました。

日本は全体主義的な国で、何故か支配層の権力を高めることこそが国際競争で生き残る術だと考える人もいて、"うだうだ言ってないで手を動かせ"という潰し合いが大きな国に感じます。

しかしデモとは何も国家に反逆する事ではなくて。厳しいサポーターや物言う株主の様に"より良い公共"を創るための合法的な行為であり、選手/選良は厳しい声に応えるから貴いのだと思います。

それを共謀罪などで自粛させるという行為は公共の利益を大きく損なうことになります。

中間層の没落が、社会から余裕と誇りを失わせ、弱いものがさらに弱いものを叩く今。本当の強者・権力者に対抗する力・方策を民主主義者が提示しなければ、民主主義を次のステップへ進めることは出来ず、自由も平等も博愛もない自然状態の社会があらわれるのではないか、"自然な競争の結果の階級化"にどう対応するかが現代の問題、そう感じました。

cf.
『欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき』をみて


欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき 第1章~第3章 第4章~第5章 第6章~第8章 第9章~最終章
by wavesll | 2017-06-08 04:58 | 書評 | Trackback | Comments(0)

ショウペンハウエル『読書について』『思索』『著作と文体』ーWeb時代にも通ずるWriting/Readingリテラシー

Dummy Mix 311 // Sharp Veins ('Then Falls Apart' Mix)
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ショウペンハウエル『思索』『著作と文体』『読書について』を読みました。

<読書とは他人にものを考えてもらうことである。一日を多読に費やす勤勉な人間は次第に自分でものを考える力を失っていく>で有名な本書ですが全編に貫かれるのは悪文への怒り。「言葉はヴァーチャルなお遊び」なんて思考に鉄槌を食らわせる。Web時代の議論を先取りしているように感じました。

『思索』における"読書は他人の思考で自らの思考ではない"という"書籍哲学者"への批判は私も実感があって。2chTV実況を読み耽った時分<感想すら人任せって危なくね?>と思ったものでした。

私は自由時間はWebTV本メディア漬けな人間なのですが、だからこそ旅の夜、静寂の中で思索が湧出するのはメディアの濁流から脱してるからだと想います。

「他人の言うことを鵜呑みにせず吟味し得心行かなければ乗っかってはいけない」というRT拡散への戒めのような言葉。

<「世間から思想家であると思われること」を目的に、名声の中に幸福を求めるのは偽物で、自分自身のために思索するのが本物の思想家>という承認欲求モンスターへの指摘。

こんな感じでWeb時代にもあらわれる情報へのリテラシーが描かれてるのを読むと"人類って変わらないモノだなぁ"としみじみと。ショウペンハウエルは「不朽の名作だけ読め」といい、その不朽振りは数百年単位というのもさもありなん。

では「時代精神をあらわしたFRESHさ」をどう扱うか。新鮮さが風化した後に残るものも、フレッシュな質感のある作品も私は好きです。ただトレンドは追いかけるものではなく、その時代に生きることで自然と馨りづけられるものなのではないか、最近はそう思います。

ともすれば狭量、偏屈をこじらせているとも読めるショウペンハウエルの箴言は『著作と文体』でさらに華々しく筆がスパークしています。その指弾は「新刊本以外は読もうとしない民衆の愚かさ」にも。ハウエル師匠キビしいw

「作品を評するときに作品自体を語るのではなく作者の私的環境や作品の元となった実際の出来事を探ることの滑稽さ」。作品論と作家論の混同、私もついついやってしまうなこれは。「"文脈論"論争」もそうだけどメタ視点を語るのは心理主義、か。

ただ「作品における着想の元の出来事や人を知りたい」って欲望は"複製でない生の1次情報に当たりたい"って欲望ではないかなと思います。音楽にはライヴがあって、劇には舞台があって。美術には展覧会がある。では文学・詩は情報の世界だけのものなのか?

「書籍のモノ性・コト化」は現代的課題でもある気がしますが、ショウペンハウエル師匠はそもそも金銭のために書くことを批判しているのでこの発想も歯牙にもかからなそうw

Web時代においても燦然と輝くショウペンハウエル師匠の論説ですが、コピペ剽窃や素人雑記が夥しく生み出される現代に放り出されたら発狂しそう。「価値ある天才にこそ時間と金が遣われるべきだ、大衆は低級なものばかり読む」は正しいけれど、みなさん誇り高き阿呆だからその正論じゃ動かないでしょうね。

と想っていたら「匿名、偽名は卑劣漢」となw!匿名の批評家は「不肖この私めは」、「臆病狡猾なこの私は」、「卑しき素浪人の私は」と名乗るべきとなwやっぱりこの人の論はWeb時代にこそ輝きを放ち、そして当人が現代に生きていたら憤死すること間違いなしだw

また文章の価値を論ずるとき、書かれた対象が珍しい買ったり価値ある材料だから評価されるのか、それとも凡庸な材料を非凡な調理で逸品としてるのか、との指摘も大きく響きました。

私自身はモチーフが珍しい絵なんかも好きなのですが「筆力・調理力」と「取材力・選球眼」の違いは峻別されるべき、か。そう考えると「編集力」って両方の領域にも想えます。そして確かに素材をそのまま持ってくることは筆力としての評価とはまた違ったものだなと思いました。

さらに師匠は「修辞でデコレーションこねくり回すのは朦朧とし凡庸」と断じ、「考え抜かれた、主張すべきものを所有し、それを素直に書くのが美点」と説きます。

思索を重ね理論が醸造されていることはレトリックに頼らずともすらりと書け、内容がない時ほどレトリックで誤魔化しがちなのは確かですね。

明瞭なれど含蓄が深いというのは時がいかに醸され凝縮されているか、理論があるかで。玲瓏な言葉で飾り立てるのはインスタントな行為とショウペンハウエル。ここら辺はシンプルな機材でグリッチノイズを創るミュージシャンに似ている気がしました。

確かに理論があると脳が熱を帯びますが煩悩に囚われている私は表現にも淫したいなとも思いました。

そして『読書について』。
外山滋比古『思考の整理学』の「グライダー人間」の記述にも繋がるこの指摘。

確かに、受動的なインプットに依存しては血肉とはならないし、何かを生み出すというのはインスタントな行為ではなくリアルで一種平坦な生の環境から葡萄酒を醸造するようなところがあり、楽しい楽しいだけではつるりとしたものしか生めないとも思います。

さらにこの一編は世の中の書籍のほとんどは畸形児のような悪書で、良書を読むための条件は悪書を読まぬことだと記します。

これは「知るだけで素材として価値がある」のか「それを道具として使うことに価値がある」のかとも繋がる話だと感じました。と、同時に「文筆」が必要とされる"仕事"なのか?とも想いました。

やりたいことをやった結果善きコトを成す、では足りなくて、必要とされた時に必要とされることを為すのがプロだとしたら、現在の活字飽食の時代、個人の無作為の、金も承認すらも求めない文がビッグデータで解析されジャストに集配されればそれでいいのでは、と。

ただ現在のCGMは商業メディアを基にしたものが多いので、一旦供給を絶ったら飢餓感が生まれるのか、それとも古典を掘り下げる方向へゆくのか。とは言え、現状プレイヤーよりもプラットフォームの胴元でないと"金を産める仕事"ではないようにも想います。

その意味で、匿名記者を抱える出版社・編集部を痛烈に批判したショウペンハウエルのように、今の時代の"文責"はプラットフォームに向けられてしかるべきなのだな、と。

昨今のキュレーションメディア騒動もそうだと想うと、またしても"人類100年前も1000年前も基本、心や騒動は変わらない"し、その点でクラシックな名著を読めというショウペンハウエルの論は色褪せていないと改めて思います。

そしてショウペンハウエル、怒りすぎてて"師匠w"って言いたくなるけど、この熱さを読むと決してペシミストではないなと想うし、今の冷笑的なWeb世界を打破する気概はそこにあるのではとも想いました。
by wavesll | 2017-06-07 07:15 | 書評 | Trackback | Comments(0)