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川端龍子展 at 山種美術館

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Twitterで本日迄だと知り、前から行きたかった【特別展】没後50年記念 川端龍子 ―超ド級の日本画― - 山種美術館へ赴きました。

まずいの一番に目に飛び込んでくる「鶴鼎図」がいい。川端龍子は洋画の技法も習熟している日本画家で、ちょっと普通の日本画とは異なるテクスチャーとフォルムな感覚が面白かったです。

そして小千谷で開催されている祭りを描いた「角突之巻(越後二十村行事)」も迫力ある筆致。龍子は20代で新聞や雑誌の挿絵画家だったこともあり、絵画のモチーフにジャーナリスティックさというか取材力を感じます。

また「華曲」に描かれた灰緑の鬣の獅子の可愛らしいこと。『少女の友』第10巻1号付録の「花鳥双六」も大変Kawaii出来で好きでした。

さて、展示はここからダイナミックな作品へ。
当時、繊細巧緻な画風が主流であった院展において、大胆な発想と筆致で構成された大画面の龍子の作品は「会場芸術」と批判されたことや院展内の軋轢もあり、脱退にいたります。そして、1929(昭和4)年、自ら主宰する「青龍社」を創立、戦時中も展覧会を開催するなど精力的な活動のなか、一貫して大衆のための作品を発表し続けた龍子、上に載せた「鳴門」等の海の迫力が描かれた作品が見事で。特にトビウオが描かれた「黒潮」が好きでした。

また平安時代の装飾経、紺紙金泥経に着想を得た「草の実」や飛行する胴体が透明な戦闘機が描かれた「香炉峰」も独自の作風で。戦争関連だと庭に落ちた爆風で吹き飛ばされてる野菜を描いた「爆弾散華」なんていう作品も。

象がやってきたことに喜ぶ子供たちが可愛い「百子図」や南洋・ヤップ島の娘を描いた「羽衣」なんてCuteな作品もあったり、桜の下で黄桜宜しくカッパが酒を呑む「花下独酌」や鯉に月が重なる「月鱗」なんて作品もあったり。

そう想えば棺に眠るミイラとそこから飛び立つ蛾達が描かれた「夢」なんて作品もあったり、黄金の草叢が描かれた「土」も美しかったし、PCで画かれたデジタル描線のような「月光」なんて作品もあったり色々な引き出しがありました。

大きな作品だとちょっと大味さも感じられる龍子ですが、小品は密度がぎゅっとしていて良くて。カッコいい「千里虎」や干支が描かれた「年賀状(十二支)」、また数々の俳句が描かれた短冊達もみごとでした。最後の部屋にあった「松竹梅のうち「竹(物語)」」も良かった。ダイナミックなラージ絵画も凝縮サイズだと更に魅力を増す気がしましたが、巨大作品の持つ抜け感は逆に2017年モードな日本画な気もしました。
by wavesll | 2017-08-20 22:03 | 展覧会 | Trackback | Comments(0)

田名網敬一 「貘の札」@NANZUKA

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田名網敬一 「貘の札」を渋谷NANZUKAにてみてきました。
田名網さんはSUPERCAR『ANSWER』のジャケを描いた方。若冲meetsアメコミなサイケデリックな曼荼羅画。表面に一部光るプラ素材?の欠片を撒いていてキラキラ輝くのが絵に動画性を帯びさせていると感じたところ、映像作品もあって。普段映像作品って全部みないのだけれど、これは一周魅入られてしまいました。今週土曜迄。是非生でみて欲しい。御薦めです。

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by wavesll | 2017-08-01 20:49 | 展覧会 | Trackback | Comments(0)

書だ!石川九楊展@上野の森美術館

書だ!石川九楊展@上野の森美術館に行ってきました。
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≪歎異抄(全文)No.18≫
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藝大へ行った帰りにみかけたこの展覧会。がっつり書の展覧会へ来たのは初めてだったのですが、こーれは大変に格好良い展覧会でした。

初っ端≪エロイ・エロイ・ラマサバクタニ≫から薄墨に太く書かれた文字群!あふるる心情がみてとれます。≪言葉は雨のように降り注いだー私訳イエス伝≫の強烈な文字の詰め方、書き込みに、自分自身が中高時代に執拗なまでに英単語を連打でぎちぎちに描き込んだノートを想いだして。

≪生きぬくんや≫もマンガの吹き出しのような勢いが炸裂、≪エロイエロイラマサバクタニ又は死篇≫は82mに及ぶ超大作で、作品の途中で轟風が吹くかのように巨大な文字が出てくるのが印象的。この時期は≪世界の月経はとまった≫のように灰色の地に書かれた作品が多いですが、そこから白の世界へ戻って≪はぐれ鳥とべ≫が書かれて。白に言葉が配置されると、文字がビートになる感覚がありました。

それは李賀詩シリーズにも顕著で。黒で塗りつぶされて奥にうっすら文字が書いてある≪李賀詩 將進酒 No.2≫をみると、昔"自分がMステに出るなら各国語が入り混じったわけわかめなライムをして、その言葉とは無関係に歌詞として日本国憲法がスクロールさせたい"と考えたのを想いだしたというかw

言葉のフォルムと意味が展開、転化しそれ自体がオリジナルな輝きになるというか。個人的には水カンをみたときに”やられたー”とか思ったものでした。あっちの方が実装能力が高すぎておみそれなんだけどw

さらに≪李賀詩 感諷五首(五連作)≫は何というか将来のHIPHOPを感じたというか、言葉をビートにした先に、ラップをPCで加工して引き延ばして拡大延長したテクノミュージックのような、巨魁な作品でした。

そして次の部屋に入ると更に石川氏の書は飛躍して。≪徒然草 No.22≫はもう電子的な草叢のような書画だし、≪徒然草 No.16≫はもはやポストロックな山海。

そして≪歎異抄(全文)No.18≫は図形楽譜化のような、音楽の理性と身体としての文字フォルムが止揚していました。

一方で≪無間地獄・一生造悪≫のような極太のフォントや≪逆説・十字架・陰影≫のような神代文字化した様な漢字フォントの作品もあって。そして本当に方形の、地図のようにもみえる≪方丈記 No.5≫も素晴らしかった。

2Fへ上がるとそこには何と源氏物語の各帖をモチーフにした書が。もう、どれも良くて。桐壺、帚木、夕顔、若紫、葵、花散里、明石、蓬生、松風、少女、玉鬘、常夏、篝火、野分、真木柱、梅枝、若菜 上、若菜 下、柏木、匂宮、竹河、橋姫、椎本、総角、早蕨、宿木、東屋、浮舟、蜻蛉、手習、夢浮橋…好いの上げようとしたら上げすぎてしまったw

これを視ながら感じていたのは、ともすればこういう"現代的なセンス"は”西洋的”と捉えられがちだけれども、こういった感性は日本人、日本文化の中の内在していたのだなと。梅棹忠夫『文明の生態史観』を読んだのもそうだし、数年前京都旅行でみた角屋のモダン・デザイン性にもその想いの萌芽がありました。

そこから中2階へ降りると、≪カラマーゾフの兄弟 III≫などの作品が。文学を題材にするときに、言語での味わいと訳文の解釈の問題をどうするかとかの意見が出ました。興味深い。

≪生涯は夢の中径≫も良かったし吉本隆明に捧げた≪もしもおれが死んだら世界は和解してくれと書いた詩人が逝ったー追悼吉本隆明≫も素晴らしかった。

そこから、社会的な問題意識を持った作品群が続いて。≪二OOO一年九月十一日晴ー垂直線と水平線の物語I (上)≫や≪9/11事件以後II≫、≪戦争という古代遺制≫、≪領土問題≫、≪敗戦古希 其一≫、≪敗戦古希 其二≫。敗戦期に誕生した石川氏ならではの筆致でした。

そして、器に四文字熟語をかいて沢山つくった≪盃千字文≫も愉しいし、最後に展示してあった≪五十年を語るー妻へ I≫、≪五十年を語るー妻へ II≫も理知的な中に温かい愛情を感じる素敵な作品でした。

この日は石川氏による≪歎異抄≫解説がありました。
石川氏は計20作の歎異抄を書いたのですが、No.18でようやく全文ヴァージョンまで完成して。
隷書を横に延ばしていく中で、縦の画を横の画が突っ切るスタイルが生まれたことがブレイクスルーだったとのこと。

質疑応答コーナーでは、"無心で書いているのか?"との質問に”徹底的に有心”と答えていて。評論家もやっていたから、相当に綿密な計算のもとでかかれていると想ったのですが、やはり。

手癖で書かないようにどんどんスタイルを変えて行ったり、時に左手で書いてみたり。歎異抄では文字の滲みすら起きないようにインクと紙を選んだとのこと。

また”読めない文字も書なのか”との質問には”書を視る上でいけないのは『上手い・下手』とか『読めるかどうか』を考えること。書は『書くこと』であり、書く姿があればそれは書。絵画との違いは一点一画を書いていくリズム、自分はあくまでも文章を書いている”とのことでした。

梅棹さんもそうだし、吉田博展@東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館 日本人にしか描けない洋画、その探究でも"凄腕の旅人だ"と想ったものですが、文学の海へダイヴし自らとケミストリーを興して作品として発火する石川さんも、本当に素晴らしい旅人だと想いました。

本当の未知は、有心の先の、完璧なコントロールの先にある偶然天地に。刺激的な展覧会でした。なんと今日まで。是非是非お薦めです。

cf.
石川九楊の「書」だ。(ほぼ日刊イトイ新聞)

by wavesll | 2017-07-30 09:47 | 展覧会 | Trackback | Comments(0)

吉田博展@東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館 日本人にしか描けない洋画、その探究

東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館にて生誕140年 吉田博展をみてきました。

《日本アルプス十二題 劔山の朝》
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《穂高山》
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《瀬戸内海集 帆船 朝》
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いかがでしょうか?1枚目と3枚目、実は版画なのです。こんなに透明感のある光の描写が版画で出来るとは…!

吉田博は水彩画、油彩画、そして新版画と、「日本人にしか描けない洋画」を探究した人。その人気は海外の方が高く、かのダイアナ妃やフロイトも吉田博の絵を持っていたそうです。

私自身、こんな版画ははじめて視て。海外の猿真似でない、しかし洋画の手法を内に取り込んだハイ・クオリティに、すっかり魅了されました。

展覧会の始まりは福岡・久留米生まれの吉田が不同会という絵の塾に入るところから始まります。
その頃の≪無題(習画帖)≫の上手いこと。水彩の≪驢馬≫も、単純に上手くてデッサン力を感じます。≪京極≫、≪上野、東照宮≫の鉛筆風景画も素晴らしいし、鉛筆画では≪小丹波≫という風景画も線の細さが魅力的。

その他≪石橋≫、≪花のある風景≫、≪浅間山≫といった陽光の光景に加え、≪冬木立≫の冬、≪中禅寺 日光≫の秋の風景も見事。この人の水彩画、ほんと好きだなぁ。構図が好いし、透明感が群を抜いている。この時期の油彩も≪雲叡深秋≫など心に残りました。この展覧会、ほぼほぼすべての絵が好い!またこの時期の写生帖もあって、飛騨や富士山が見事に描かれていました。

1900年頃の画壇は、フランス帰りの黒田清輝達白馬会によって牛耳られていました。そこで吉田博、僅かな金と書き溜めた絵画を背負って海外へ渡航。それもフランスでなくアメリカ。デトロイトやボストンで絵画展は大成功。そこから欧州など世界中を回ります。なんたる行動力!

≪街道風景≫は海外でも好まれた、なんてことない道路の風景画なのだけれどスナップショットのような美しさのある作品。≪村の橋≫はアピチャッポン監督のような空気感。≪菖蒲園≫の靄描写、≪宮島≫、≪湖の眺め≫の光の描写、≪晩秋風景≫の翳りの描写、≪朝≫の曇の描写、≪霧の夕陽≫、≪霧の農家≫のトワイライトの朱と緑。この人は朝焼け・夕暮れの赤光が最上。

≪田舎の夕暮れ≫の丸っこい家や≪冬の閑景≫の静かな風景、≪帆船≫の灰青い水色、西洋美人を描いた≪昼寝ーハンモック≫なんて作品も。ボストンを描いた≪グロスター≫、マサチューセッツを描いた≪チューリンガムの黄昏≫、フロリダを描いた≪ポンシデレオン旅館の中庭≫、イギリスの≪ウィンザー橋≫、『三四郎』でも言及された≪ヴェニスの運河≫、マドリードでの≪ヴェラスケス作≪メニッポス≫模写≫や≪レンブラント≪自画像≫模写≫なんてのも。

白馬会に太平洋画会で対抗していた吉田博、ついに文展の審査員になり、画壇の頂へ登ります。

この時期は優美な≪松≫、しとやかで可愛らしい≪月見草と浴衣の女≫、色彩が綺麗な≪つつじの咲く高原≫、肌寒さが伝わる≪越後の春≫、≪芥屋大門≫や≪琉球≫といった建築風景等水彩画も描かれましたが、主に油彩画が展示してありました。

≪池の鯉≫、≪堀切寺≫海外の人が日本の風景を描いたかのような筆致の≪瀧≫、≪高原の池≫の秋、山の尖りのフォルムが美しい≪穂高の春≫や≪穂高山≫の巨魁な山姿は高山を愛した吉田博ならでは。

≪富岳≫のMassiveさも素晴らしいし、≪槍ヶ岳と東鎌尾根≫はまるでヨーロッパの山の様。三枚の縦長の絵による≪野営≫はデジタルサイネージっぽかった。

日本的な≪烏帽子岳の旭≫にSF的な風景画の≪鷲羽岳の池≫と変幻自在。

≪バラ≫シリーズでは鉢植えや支え棒のあるありのままなバラの絵が描かれて。≪青銅器とバラ≫なんて面白いモチーフも。

≪ステンドグラスの窓≫はルオーみたいな筆致。

≪荷馬川岬≫は江戸の味わい、≪登山図≫、≪雪景≫の山景も素晴らしかった。

ここまででも見逃せない絵画ばかりだったのですが、ここから更に吉田博の藝術は跳躍します。渡邊庄三郎と組んで新版画を始めるのです。

≪牧場の午後 渡邊版≫や≪穂高山 渡邊版≫のようにまるで水彩画のような細やかなグラデーションとフォルム。≪帆船 朝日 渡邊版≫、≪帆船 日中 渡邊版≫、≪帆船 夕日 渡邊版≫の水の揺らぎ、グラフィカルな色彩、瀬戸内海に浮かぶ舟の輝き、素晴らしい。≪馬返し 渡邊版≫のような江戸を思わせる作品も。

この時期は油彩もあって。≪庄吉≫という武骨な人物画や色っぽい≪裸婦≫も良かった。

そして海外の風景画が素晴らしくて!≪グランドキャニオン≫、≪ヨセミテ公園≫、≪モレーン湖≫という北米の大自然の光景、≪モンブラン≫、≪アルプスの山小屋≫という欧州の山岳風景、ヴェネツィア≪サンマルコ広場≫はなんともお洒落な一枚でした。

そして、ついに吉田博は自らの手で新版画制作に乗り出します。

ユーモラスな≪ホノルル美術館 米国シリーズ≫、カッコ良くスルっと伸びた≪エル キャピタン 米国シリーズ≫、赤紫に輝く≪グランドキャニオン 米国シリーズ≫、こちらも勇壮な≪モレーン湖 米国シリーズ≫、質感が心地よい≪ブライトホルン山 欧州シリーズ≫、もう”うーわー!すげぇ…!”となってしまう≪マタホルン山 欧州シリーズ≫≪スフィンクス 欧州シリーズ≫も色彩豊かで◎

日本を題材にした新版画も。≪烏帽子岳の旭 日本アルプス十二題≫の赤光の射す青闇。≪劔山の朝 日本アルプス十二題≫のグラデーションの輝きと言ったら!≪白馬山頂より 日本アルプス十二題≫の桃色の山。≪穂高岳 日本アルプス十二題≫は木の描写が浮世絵っぽく感じました。物凄い好い絵。≪黒部川 日本アルプス十二題≫の活き活きした河川の描写。≪鷲羽岳の野営 日本アルプス十二題≫の薪の爆ぜり、≪針木雪渓 日本アルプス十二題≫も良かった。

瀬戸内海の光景を描いた作品群も素晴らしい。ダイアナ妃も執務室に飾ったという≪光る海 瀬戸内海集≫はやっぱり素晴らしいし≪雨後の夕 瀬戸内海集≫も綺麗。≪鞘の浦 瀬戸内海集≫も良かった。

≪帆船 朝 瀬戸内海集≫≪帆船 午前 瀬戸内海集≫≪帆船 午後 瀬戸内海集≫、≪帆船 霧 瀬戸内海集≫、≪帆船 夕 瀬戸内海集≫、≪帆船 夜 瀬戸内海集≫は、同じ版木で色を変えて様々な光景を顕わしたもの。これが本当にどれも素晴らしい!この空気感、その場の映像を見ているような、本当にきれいな画でした。

≪朝日 富士拾景≫は富士山のくっきりした山肌が美しい。≪植物園の睡蓮 東京拾二題≫は現代的、≪亀戸 東京拾二題≫の藤の花と太鼓橋。≪金魚すくい 東京拾二題≫は女性がかわいらしい表情。≪不忍池 東京拾二題≫、≪旧本丸 東京拾二題≫は観光スナップのよう。

空刷りの線がプレスされているオウムが面白い≪於ほぼたん あうむ 動物園≫も良かったし、廣い宵の光景が展開される≪雲井櫻≫は弩級の作品だし、色っぽいリアルなヌードの≪鏡之前≫、聡明な域を感じる≪こども≫も良かった。≪上高地の春≫、≪白馬槍≫、≪糸魚川にて≫の油彩三枚も良かったし、≪駒ヶ岳山頂より 日本アルプス集≫の雲と光の描写は新海誠みたい。≪駒ヶ岳岩小屋 日本アルプス集≫はタイムレスな魅力のある木版。

≪雲海 鳳凰山≫の大きな眺望。そして≪渓流≫のグラフィカルな素晴らしい流水の描写はこの展覧会でも白眉でした。

吉田博は新たな画風を求めて、地球を回ります。インドの≪フワテプールの舞踊場≫の華厳さ、≪プワテプールシクリ(王宮)≫、≪ラクノーのモスク≫のイスラムの美には、”イスファハーンやサマルカンドにも行ってほしかったなー!”と。≪イト、マト、ウッドウラーの墓≫、≪ウダイプール≫もエキゾでした。

≪シンガポール 印度と東南アジア≫には在りし日のシンガポールをみて。≪ラングーンの金塔 印度と東南アジア≫の赤光。≪カンチェンジャガ 朝 印度と東南アジア≫と≪カンチェンジャガ 印度と東南アジア≫にはヒマラヤが。

≪ベナレスのガット 印度と東南アジア≫は"これぞ!"という構図。≪タジマハルの庭 印度と東南アジア≫の明るい白が美しくて。吉田博は光景版画で夜のヴァージョンも刷ることが多いのですが、≪タジマハルの庭 夜 印度と東南アジア≫素敵な雰囲気でした。

≪フワテプールシクリ 印度と東南アジア≫≪ウダイプールの城≫も素晴らしい。なんというか、超上級のわたせせいぞうみたいな味。≪エロラ カイラサテンプル 印度と東南アジア≫も素敵だったし、≪ウダイプールの島御殿 印度と東南アジア≫は意識と景色が融けていくような美がありました。

海外を意識してか、桜の名画も吉田博には多くて。≪弘前城 櫻八題≫はこれぞ日本の美といったショット、≪三渓園 櫻八題≫、≪春雨 櫻八題≫もいいし、知恩院を描いた≪樓門 櫻八題≫≪嵐山 櫻八題≫という京の桜も良かった。

吉田博の新版画の精緻さ、綿密さは本当に頭抜けていて。80度摺りを入れた≪東照宮≫、96度摺りを入れた≪陽明門≫の美事なこと。素晴らしかった。

≪上海市政府≫のエキゾな建物や、≪大同門 北朝鮮・韓国・旧満州シリーズ≫、≪北陵 北朝鮮・韓国・旧満州シリーズ≫の落ち着いた雰囲気も好きでした。

戦中、吉田博は従軍したり、軍事産業をスケッチしています。≪港之夜≫のハーバーの落ち着き、従軍先の中国で画いた≪星子≫。

面白いのは半ば想像だと想いますが戦闘機の光景を描いた作品。≪急降下爆撃≫は会田誠の≪紐育空爆之図≫を想起。≪空中戦闘≫は大地のうねりが面白かった。≪軍需工場≫では労務が、≪精錬≫、≪溶鉱炉≫では融けた鉄の輝きが描かれていました。

吉田博の旅。世界をめぐるそのバイタリティと自らの作品に化学反応させる手腕は、本当に理想の旅人だと感じました。ちょっと梅棹忠夫の探検にも通ずるものを感じたり。

しかしそんな彼が最後に残した木版画は≪農家≫という、何でもない日本の農家の土間というか台所というか、屋内風景でした。旅の先に、彼は遂にルーエンハイムへたどり着いたのかもしれません。

そして本展覧会の最後の、最晩年の作品は田園風景を描いた≪初秋≫。ここにもファウスト博士の感慨のような、優しい心を感じました。

常設のゴッホ≪ひまわり≫もみました。この展覧会、本当にオリジナルな、日本人しか描けない洋画とは何かが表れていたし、今でもエキサイティングで先進的に感じました。前期は30日までで、後期は66点入れ替えだそうです。前期チケットがあれば800円でみれるそうだし、これはまた行かねば!素晴らしい展覧会でした。
by wavesll | 2017-07-29 07:30 | 展覧会 | Trackback | Comments(0)

藝「大」コレクション展と東京藝術大学ゲーム学科(仮)展

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Monaural mini-Plug live at 不忍池を観てタイの音楽快楽に浸った後、タイ展へは行かず東京藝大へいきました。

いざ藝「大」コレクション展へ!

お目当ては高橋由一 / 鮭でした。そこでちょっと意外だったのが結構描写が荒く感じて。黒田清輝展@東博 もう一つの坂の上の雲の時も感じましたが絵画技巧ってやっぱ進化を続けてるんだなと逆に感銘を受けました。

展示された品々はさすが銘品揃い。会場に入るとすぐ出てくる「月光菩薩坐像」の、胴体が崩壊して空になったその姿は一際印象的だったし、「弥勒来迎図」の青緑の配置の美しさ。

狩野永徳「唐子遊図」の子どもたちの戦争ごっこには微笑ましさも感じ、若杉五十八「鷹匠図」の江戸時代の油彩という面白さ。

柴田是真「千種之間天井綴織下図」のレトロボタニカル、狩野芳崖「悲母観音」の金緑青の美。

橋本関雪「玄猿」の瑞々しい墨絵も、前田青邨「白頭」の消えゆく肖像画、高野松山「静動文庫」のエジプトの壁画のような蒔絵も素晴らしかった。

この展覧会のサウブタイトルは「パンドラの箱が開いた!」なのですが、その匣と同じ種類だと言われる彩文幾何学文ピュクシスもあり、同じコーナーにあったマルセル・デュシャン「トランクの中の箱(シュバルツ版)」はこの展覧会でみれてよかったものの一つ。小型インスタレーションといった趣で素晴らしかった。

「平櫛田中コレクション」のコーナーでは田中太郎「ないしょう話」が内向きトライアングルで内緒話するフォルムが新味があって面白かった。平櫛田中「活人箭」のきびきびした風貌、「灰袋子」と「禾山笑」の泰然とした大笑いにも明るい気持ちにさせられました。また大内青圃「像柱」は仏師の洋像で興味深かった。

「卒業制作ー作家の原点」では特に立体作品が素晴らしくて。

松田権六「草花鳥獣小手箱」は近未来の奈良とでもいうような金黒の美は物凄く良かった。山脇洋二「置物(犬)」のデフォルメされた超古代感、松田禾堂「香炉」は地球だし、坂井直樹「考・炉」はメカニカル。窯の地層がみえるような前沢幸恵「憧憬」、柴田鑑三「山寄りの谷 谷寄りの山ー富士山ー」の逆転空洞富士に吉野貴将「~森~ (cosmos)」の仏具のシシ神のようなフォルムも良かった。そして地村洋平「Herald」のソフトコーラルのようなガラス立体も素晴らしかったです。

勿論絵画も逸品ぞろいで。和田英作「渡頭の夕暮」の夕虹の水面、レトロフューチャーな砂浜のセーラー服の高山辰雄「砂丘」、三味線娘が可愛い白滝幾之助「稽古」、白青灰が炸裂する吉田侑加「景しき遠く」も良かったです。

また変わったところでは町田美菜穂「首都っ娘~首都高速擬人化プロジェクト~」というミクストメディアもありました。

「現代作家の若き日の自画像」コーナーでは文庫本4冊は貼り付けた会田誠のが面白かったwその他キレイめな村上隆や頼朝風にかいた山口晃の他、ヴィジュアル的にかっこいい齋藤芽生や松井冬子、モノクロの綿密な書き込みで動植物に包まれた冨谷悦子、自撮りが表示されたガラケーの山のインスタレーションの渡辺篤も面白かったです。

「石膏原型一挙開陳」コーナーでは日蓮が彫られた高村光太郎「獅子吼」、力強い北村西望「男」、聖性すら感じる生命感の石川光明「猪」、能楽師のフォルムが迫力があった後藤良「能野口兼資師黄石公」も素晴らしかった。

「藝大コレクションの修復ー近年の取り組み」コーナーではラグビー服で安まる小磯良平「彼の休息」、原撫松「裸婦」も魅力的だったし、葛揆一郎「外科手術」は不思議な空気の絵画でした。そしてトランプの絵柄のような仏画の長谷川路可「二菩薩半身像」も面白かった。

この他藤田嗣治の資料とか、結構みるもの多くて面白かったです。一期は8/6までで、二期には尾形光琳や曾我蕭白、伊藤若冲などが出てくるのでこちらも気になるなぁ。あ、ちなみに高橋由一「鮭」は二期も展示されるそうです。800円。二回分見れるお得なチケットもあり。

そしてその後寄ったのが同時開催の東京藝術大学ゲーム学科(仮)展、VR等の色々なゲームが置いてあって、私は「鞍馬の火祭り」というのをやったのですが、VRの没入感が凄くて!前にやったVRゲームでは酔ってしまったのですが、映像がこちらの動きと同期し勝手に動かないタイプだと酔わないことが分かって良かった◎

その他「Z」という、実際のブロックを積み上げると、投射されるキャラがブロックに合わせてアクションする作品もやりました。面白かった!

この他幾つもゲームが展示してあって。並べばそんなに待たずにやれそうなかんじでした。2Fではファイナルファンタジーの企画も。無料だし、お薦めです◎30日まで。
by wavesll | 2017-07-22 17:21 | 展覧会 | Trackback | Comments(0)

ジャコメッティ展 at 新美 ー魂を凝縮し削ぎ落された彫像群

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国立新美術館のジャコメッティ展をみてきました。

スイスに生まれ、パリにて才能を開花させた20世紀最大の彫刻家、ジャコメッティ。

見ているものを見えるようにつくると小さくなってしまった彼の彫像は、せめて1mの長さにしようと細長いフォルムになっています。

骨格と、肉と髪が、極限まで削ぎ落とした細長い人物彫像。卒塔婆のような、その人物の魂や人生が凝縮された静謐なる迫力。

彫刻は入れ換えなしだけど素描や絵画作品は前期後期があり、今日までの前期展示では画家だった父のコレクションらしき北斎の模写なんていう作品もありました。

彫像は人物がほぼ全てで、例外的に恐竜化石の生体展示のような『犬』と骨身になった魚のような『猫』がありました。

ただ、その他、エッチングや油絵なんかも展示してあって。その題材は人々のデッサンもありましたが、『真向かいの家』や『アレジア通り』などパリ街中や家の中、故郷スタンパの風景なんかも。ジャコメッティの流儀で街を造ったら、どうなるのだろう?

そのhintとして、群像シリーズがありました。思い思いに逍遥する『3人の歩く男のグループI』、異界の知的生命体のような『森、広場、7人の人物とひとつの頭部』、ヒトが金属植物のように伸びていく『林間の空地、広場、9人の人物』と。ジャコメッティの彫像は、空間を描くことは関係を描くことなのだなと。

ジャコメッティの初期はキュビズムやシュルレアリズムに傾倒していました。

オーソドックスな彫像ともいえる初期(1917年)の『シモン・ベラールの頭部』、キュビズムを立体でつくった『キュビズム的コンポジションー男』と『コンポジション』、『キューブ』

シンプルなフォルムの『見つめる頭部』『横たわる女』、アフリカに影響を受けたようなピカソ的な『カップル』、西アフリカから影響を受けた『女=スプーン』、ニューギニアに影響を受けた『鼻』は展覧会全体の中でも白眉でした。

そこから『小像(男)』、白い『裸婦小立像』といった小像の部へ。

さらに展覧会は女性立像の部へ進みます。髪が光輪のようで、まるで一本の剣のような『大きな像(女:レオーニ)』、髪や胸のコアが表現された『髪を高く束ねた女』、1952年頃の『女性立像』は青銅器時代のフォルムのよう。

そこから群像群を挟んで、モデルを前にした制作へ。『男の胸像』、弟を創った『ディエゴの胸像』『石碑I』の胸のゴリゴリした部分がまた魅力的で。

マーグ家との交流の部や『ヤナイハラの頭部』などの、阪大文学部の矢内原伊作との交流作のコーナーも素敵で。特に青のボールペンでフランス・オプセルヴァトゥール紙特別号に描いた『幾つかの頭部』、レ・レットル・フランセーズ紙に描いた『頭部、人物像など』、パリ=ジュール氏に描いた『4人の人物』などが非常に洒落ていて好きでした。

そしてとりわけ印象的だったのが9体の『ヴィネツィアの女』

キャプションに記憶に基づく制作とあったのですが、あまりにそれぞれ個性と人生が沸き上がる出色の彫像群で、近くのスタッフに聴いたところ、やはり特定のモデルを記憶に基づいて作ったとのこと。素晴らしかった。

そしてチェース・マンハッタン銀行に飾られるはずだったプロジェクト『女性立像』『頭部』『歩く男』は撮影可能で、それぞれ古代、近未来、現代を顕わしているような気がしました。

ジャコメッティの絵は同時代の詩人たちの挿絵になることも。
ジャック・デュパン『ハイタカ』など、詩のイメージを膨らますジャコメッティの絵の魅力があふれてました。

そして最後は『終わりなきパリ』。OKコンピューターのジャケットのような抽象的なパリの風景。やっぱりこの感覚を立体化する様な都市の彫像、みてみたかった。

吸い込まれるような、哲学性も感じるような展覧会。とても良かったです。
by wavesll | 2017-07-17 19:03 | 展覧会 | Trackback | Comments(0)

ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展 16世紀ネーデルラントの至宝ーボスを超えてー@都美

東京都美術館のバベル展へ行ってきました。
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ネーデルラント絵画のヒエロニムス・ボスからピーテル・ブリューゲル1世への流れが明示されていてストーリーを味わえました。こんなに白黒の版画に興奮しながら見入った展覧会は初めて。この展覧会の裏の主役はボスですな。そして≪バベルの塔≫。“何万画素なんだ?”といいたくなるような、遠目だとブレてみえるような、人の目を越えた細密さ。これは人類の宝。

展覧会に入るとまず「16世紀ネーデルラントの彫刻」群が。
アルント・ファン・ズヴォレ? ≪四大ラテン教父:聖アウグスティヌス、聖アンブロシウス、聖ヒエロニムス、聖グレゴリウス≫等の木彫像。西洋の彫刻で木というのはちょっと不思議な感覚もあって、初めにいいサプライズでした。

そして宗教画のエリア。トリコロールの効果が効いているマナの拾集の画家≪ユダヤ人の供犠≫、構図と建物の曲線の妙が光る作者不詳≪庭園に座る聖母子≫も良かった。

枝葉の刺繍の画家≪聖カタリナ≫と≪聖バルバラ≫に描かれた剣を持った殉教の聖人、アレクサンドリアのカタリナは他にもヤーコブ・コルネリスゾーン・ファン・オーストザーネン≪聖カタリナ≫にもその勇姿が描かれています。ヤーコブは≪聖母子と奏楽天使たち≫でも鈴・ハーディガーディ・リコーダー・ハープ・ヴィオールを奏でる天使とそれに嬉喜とする幼子のキリストを描いていて、この絵、とても好きでした。

マールテン・ファン・ヘームスケルク≪オリュンポスの神々≫の、ローマの古代遺跡に着想を得た水浴の楽園画も素晴らしかったし、顔はリアルで神経質そうな人柄が伝わるのに体は不釣り合いに雑な王家の肖像の画家≪フォンセカ家の若い男の肖像≫ヤン・ファン・スコーレル≪学生の肖像≫の聡明な顔も良かった。

ヘリ・メット・デ・ブレス≪聖クリストフォロスのいる風景≫で描かれたキリストを背負う巨人クリストフォロスという題材は他にも展示されていて、水色が美しい逸名のドイツ人版画家≪聖クリストフォロス≫や、ヒエロニムス・ボス≪聖クリストフォロス≫は木の中の小人や奇想が弾ける本展覧会の目玉の一つでした。これと並ぶ≪放浪者≫も意味深な画でした。

ボスの魔界のようなファンタジックな画風はネーデルラントで大流行し、そのスタイルは敷衍しました。

ヒエロニムス・ボスに基づく≪聖アントニウスの誘惑≫はこの展覧会の白眉にもなるような悪魔や魔物、頭人間が出てくる奇想の風景画。画家J・コック≪聖アントニウスの誘惑≫には空飛ぶ獣が描かれていました。

ヒエロニムス・ボス≪樹木人間≫の卵のような木の殻も面白いしヒエロニムス・ボスの模倣の≪様々な幻想的な者たち≫はボス版北斎漫画な趣。

ヒエロニムス・ボスの模倣で彫版:ピーテル・ファン・デル・ヘイデン≪最後の審判≫は剣のサイドの地獄と百合のサイドの天国双方に怪物が闊歩しているのが面白く、ヒエロニムス・ボスの模倣で彫版:コルネリス・コルト≪最後の審判≫は壮麗な天国と貧困な地獄が描かれていました。

同じくヒエロニムス・ボスの模倣で彫版:ヨアネスおよびルカス・ファン・ドゥーテクム≪象の包囲≫は『イノセンス』のパレードを想起させられ、ヒエロニムス・ボスの模倣で同じく彫版:ヨアネスおよびルカス・ファン・ドゥーテクム≪聖クリストフォロスの誘惑≫は魚のモンスター戦車な山車が。

ヒエロニムス・ボスの模倣で彫版:ピーテル・ファン・デル・ヘイデン≪ムール貝≫は女性器を暗喩する貝に男たちが入る不思議な味の作品。同じくヒエロニムス・ボスの模倣で彫版:ピーテル・ファン・デル・ヘイデン≪陽気な仲間たち≫も愉しい作品でした。

そして愈々ブリューゲルのエリア。やはり版画で、ボスの奇想の影響を模しているのが分かります。

ピーテル・ブリューゲル1世 彫版:ピーテル・ファン・デル・ヘイデン≪聖アントニウスの誘惑≫の人形的な怖み。ピーテル・ブリューゲル1世 彫版:ピーテル・ファン・デル・ヘイデン≪大きな魚は小さな魚を食う≫は弱肉強食を顕わした脚付きのサカナの絵。

ピーテル・ブリューゲル1世 彫版ピーテル・ファン・デル・ヘイデンの連作『七つの大罪』では顔風車が不気味な≪大食≫、魔欲が描かれた≪邪淫≫も素晴らしい。なんだか富樫が描く禍々しい世界をもっとヨーロッパなリアルな画風にしたような感じ。

ピーテル・ブリューゲル1世 彫版:フィリップ・ハレ≪希望≫は海原から陸地へ上がる姿がシリア難民を想わせました。希望、か。

ピーテル・ブリューゲル1世 彫版:ピーテル・ファン・デル・ヘイデン≪忍耐≫には木の卵殻が。同じく二人による≪最後の審判≫は魚が不気味。

ピーテル・ブリューゲル1世 彫版:フランス・ハイス≪アントウェルペンのシント・ヨーリス門前のスケート滑り≫では"農民の画家"としてのブリューゲルの顔が見れます。スケートに興じる農民のおどけた表情が良かった。

ピーテル・ブリューゲル1世本人が彫った≪野ウサギ狩り≫は淡い味わいが素晴らしかったです。

ピーテル・ブリューゲル1世 彫版:ピーテル・ファン・デル・ヘイデン≪冥府に下るキリスト≫の黄泉の風景。同じく2人で制作した≪使徒大ヤコブと魔術師ヘルモゲネス≫の魔物や≪魔術師ヘルモゲネスの転落≫の魔界な雰囲気も良かった。

ピーテル・ブリューゲル1世 彫版師不肖≪野生人≫はサイケロッカーというかヒッピーでしたw他にもピーテル・ブリューゲル1世 彫版:ピーテル・ファン・デル・ヘイデン≪金銭の戦い≫も金貨が入ったパンパンの鎧で闘うユーモラスな作品。またピーテル・ブリューゲル1世 彫版:ピーテル・ファン・ヘイデン≪石の切除≫は石が生えてくる奇病が描かれていました。

そしてついに「バベルの塔」エリアへ。

ブリューゲルの版元だったヒエロニムス・コックの≪コロッセウムの眺め≫。ブリューゲル自身もイタリア旅行し、コロッセオが『BABEL』のモデルとありました。

そして…ピーテル・ブリューゲル1世≪バベルの塔≫。
展覧会を観る前、"EUの崩壊やトランプ大統領の誕生など、世界は統合から亀裂へ向かっている中で≪バベルの塔≫をみる味わいはまた異なるかもしれない"とか"バブルの頃なら東京バベルタワーだけど今だったら軌道エレベータがバベルの塔だな、あれもテロの格好の標的になりそうだ"とバベルの塔の赤黒さに考えていたのですが、実際に本作品をみると、建設途中の塔の中でなんともか細く小さな人々が、暮らしを営みながら見果てぬ理想を打ち立てようと活動し、巨大な建築が伸びていく姿が鮮やかで。塔が届いた叢雲の描写も美事。

欲望の民主主義 世界の景色が変わる時で「民主主義は決して完成しない理想だ」とどこかの教授が言っていましたが、たとえ神の逆鱗に触れたとしても、雷を落されても、それでも積み上げていく歴史の努めを、階層ごと建築様式が変わり建設にかかる年輪を感じさせるブリューゲルのバベルの塔に感じました。

展示会場の外では大友克洋さんが描いた≪INSIDE BABEL≫が。水路が中に入っているのが古代人の工夫がみられて"ほう"と想い、そしてやっぱりその細密振りに驚嘆。
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その足で藝大でやってる立体バベルの塔「Study of BABEL」展へ。ここまで巨大にしても人が豆粒のよう。なんでも人の身長を170cmとするとバベルの塔は510mにもなるとか。ムハの≪スラヴ叙事詩≫を凝縮したようなものかと空恐ろしくなりました。この展示、音楽科の方でやってるのでスルーご注意を。中の映像展示も光の営みの映写が面白かった。都美、藝大共に7/2迄。
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Bonus track2
上野駅で先月撮ったレゴバベル。塔を上から見れたのが面白かったです。
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cf.
ブリューゲルの魅力とブリューゲルの世界観・人間観(dezire_photo & art)

ジッグラト(Wikipedia)
by wavesll | 2017-06-27 19:22 | 展覧会 | Trackback | Comments(2)

アドルフ・ヴェルフリ展@東京ステーションギャラリーにみる暗部と光辺

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B'z「LOVE PHANTOM」Live Gym PLEASURE95


Lostprophets - Rooftops (A Liberation Broadcast)


アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国展を東京ステーションギャラリーにみに行きました。

初見ではその禍々しさに心理主義とは想いながらも、”この人は相当鬱屈した状態で描いたのでは?それにしてもこの絵、誰にも似ていない、敢えて言うならば綿密に描き込まれた小学生のノートの落書きだ…タペストリーや聖堂的な文様構造体が絵に落とし込まれている…みているだけで鬱の気持ちに巻き込まれてしまうようだ…”と想っていました。

精神病院に入れられ、治療の一環として絵を描き始めたヴェルフリ。彼の妄想の世界は幾つかの物語を産み、「聖アドルフ巨大創造物」を作り地球の土地を買い上げ近代化させるという話では彼は聖アドルフII世として世に君臨しました。

そして明かされる真実、幼くして母と父を亡くし、貧困の中で育った彼が精神病院へ入れられたのは、何度かの女性との交際と破局の後で、14才、7才、3才半の少女を強姦したことからでした。「作品と作家は別」と言われても、これは…というレベル。

と、同時にどうしても"あぁ、この画家はどうしようもない疎外感の中で、『俺を理解してくれ、俺を理解してくれ』と尽きることのない思考の海沼に生涯沈み続けたのではないか…"とも思ったのでした。

己と他者を区別できない幼稚さ、他人が気分を害することを平気でやってしまう押し付け、相手のことに究極的には敬意を払わない甘え、精神年齢の低さと対照的な煮えたぎるリビドー。

私自身が昔、周りの人間から愛想をつかされた頃、そんな状態に陥っていたなと。その頃は半ば精神が過剰になりすぎて、出雲において超常現象の妄幻を旅したりした、危うい時期がありました。

この頃の記述は私にとっては黒歴史なのですが、先日記事を整理したときに眺めると、自分自身のことながら「こいつ薬でもやってるんじゃないか」という精神の異常な火花が異形を顕わしていて、ちょっとした見ものではありました。

ただ、それ以上にショックだったのは、大学の頃の自分の書いたものが何にも面白くないものが多くて…。当時は"なんで内容があるのに評価されないんだ"と想っていたものですが、引用している歌詞・音楽を抜くとスッカスカで。剽窃を消したら、血肉になっていない等身大の自分の小ささを認識せざるを得ませんでした。

10年経つと自分自身も他人になるのか、他人の視点で私自身の文章を眺めると、"これでは伝わらないな…"と想ったものでした。音楽に酔って、そのカオスのままゲロったような文章、しかも自力で考え出したものでもない…それでは評価のしようもないなと。

と、同時に私自身も周りの人間をどこか見下していたというか、"全然面白くない、もっと刺激のあることを書かないと伝わらない"と想いながら”普通”に"つき合ってやっていた意識"があって、”こちらは理解されない”犠牲感が精神を削っていたところもあったように思います。

今、己の興味の小ささを認識できるのは、あの頃よりも少しは自分の脚で立って、興味が広がり、身体性を得たからかもしれません。同時に今興味のないものは興味がないと付き合わない強かさも学びました。

昔は自分のことを読解力と需要の幅が広い、面白さを拾う能力が高いと想っていて、周りの人間は受容体が狭い上、閾値が高い。なんて思っていたのですが、とんだ井の中の蛙。分からないものはわんさかあると認識し「分からないと罪悪感も感じない」と知ると、周囲に無駄に期待しなくなるし、同時に寛容になれます。

同じ目線を共有することも出来るパートナーや他山の石となる自分と似た失敗してる人、自分が理解できない才気あふれる若者、尊敬できる先達との交わり、そして己の未熟さを認識できたのは僥倖という他ありません。

そしてあの頃世界を飲み込むかの如く欲望していた愛情と共感は、案外少量でも十分満たされることを知って。この6年は、幽界から身体を生成してきた時季だったのではないか、俺はヴェルフリには良い意味でも悪い意味でもならず、世界の片隅に庵を持てたのだなと想ったのでした。

そうして2周目の観覧をしました。すると、初見ではカオスの複雑性に噎せかえりみえずらかったヴェルフリの"新しいカタチを生み出す能力、色彩感覚、そして画面構成の妙"といった才を視ることができました。

『グニッペ(折りたたみナイフ)の主題』のシダのような造形。『ニーツォルン=ヴェスト〔西〕トラクター=トンネル=ハル〔響き〕』の小学生さ。『チンパンジー=ツォルン〔怒り〕=タール〔谷〕』『グランド=ホテル, ソルト=レイク=シティ』『氷湖の=ハル〔響き〕, 巨大=都市』『事故=転落, ドゥフィ, =27,386フィートの深さ, ローゼン〔バラ〕=ツォルン〔怒り〕=南壁にて. 北=西=インド, アジア. "35頁" 』の大聖堂のイコンやタペストリーのような聖性。

『ネゲルハル〔黒人の響き〕』の道路・山・楽譜・円・螺旋のデザイン構成、『南=ロンドン』の都市形成性・新しい紋様、『北=アマゾンの大聖堂=ヘルヴェチア〔スイスの擬人像〕=ハル〔響き〕』のシステムとして動いている世界の機械性、『アリバイ』の尽きることのない思考によって描かれ続ける色彩とシステム。『利子計算=最終, 1912年6月1日, 11頁』などといった現実と数字のある作品も。

『林務官の=家, ヴィラディンク, 大-大=ガイザッハ〔ヤギ農園〕=チャッハ, 聖アドルフ=森:帝=国, 中国:アージア』のカオスに酔い『ぶどう酒. フェニン. オリアンダー〔セイヨウキョウチクトウ〕. カロリナ=ケラー〔貯蔵庫〕:精神疾患患者の=施設 』にもシステムを。『神聖なる医大にして=父なる=神の=天使ヴィドンナ』には小学生を。『巨大な=都市, 聖アドルフの=ハル〔響き〕』にはシンプルを。『クリノリン, ギーガー=リナ. 糸つむぎ=リナ. 安楽椅子=リナ. おとぎ話=安楽椅子=リナ. 大=大=女神』にはノートの落書きの至高を。

『象による取るに足らない私の救済』にこの人の色の感覚は矢張り凄いなと。『パリの=美術=展覧会にて』『ロング・アイランドの実験室』ではコラージュも。美術的技術を補うのにコラージュは使われたのかな?『アーレ川沿いの聖アンナの=家の中にいる神聖なる聖アドルフ:ベルン』の水色黒と『気高き伯爵夫人, タマレナ・フォン・ティーガー〔虎〕=ヴァント〔壁〕』の緑黒の清冽な美しさ。『全能なるガラスの=響き』の凝縮さ。『小鳥=揺りかご. 田舎の=警察官. 聖アドルフII世. , 1866年, 不幸な災=難』のカラフルさ、『テーディ:東スイスの:氷河. 標高1,986,000時間, 聖アドルフ, 運搬人, ベルン』の寓話性。

『オイメスの死. 事故.』にみる想念、『父なる=神=聖アドルフの=ハープ』の流水的、『フリードリッヒ大王の揺りかごの側で』の構成力、『テクラ-真珠』のキレイ、『聖アドルフ=墓=泉=城』をみるとこの人はコラージュも良いけどやっぱりこの人自身の鉛筆・色鉛筆がいい、と。『偉大な東の=海にある聖アドルフの=船』の曼殊沙華、『芸者-お茶と小笛〔小煙管〕』なんて写真に色付けも。

遺作となった『葬送行進曲』1929-30シリーズでは『無題(キャンベル・トマト・スープ)』『無題(エスキモー/潜水夫)』『無題(フーバー〔掃除機のブランド名〕)』『無題(恐竜)』『無題(円形の中のアジア人)』と、大分憑き物が落ちてきた気がしました。

やはり1917年あたりの『聖アドルフ=リング, 全能なる, =巨大な=汽船』あたりが一番脂がのっていた狂い具合な気がしました。

アウトサイダーアートというと、原美術館でみたヘンリー・ダーガーの透明な狂気が印象深いですが、ヴェルフリの文字で埋め尽くされたカオスの複雑系には、ヴェルフリ自身の心理をさぐるというより、私の暗部を抉り出される思いをしました。今みれたのは良い機会でした。

東京ステーションギャラリー自体も昔のままのレンガがみれる場もあり、良かったです。日曜迄。特殊な体験が味わえると想います。
by wavesll | 2017-06-17 04:05 | 展覧会 | Trackback | Comments(0)

N.S.ハルシャ展 チャーミングな旅

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「ここに演説をしに来て」
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「1,000の手と空」
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「時間の蜜のまわりを走って」
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「私たちは来て、私たちは食べ、私たちは眠る」
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「ヴィシュヴァルーパーアーディ・ナーラーヤナ」
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「ネイションズ(国家)」
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「消費の連鎖の中で」
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「さかりがついて」
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「人間的な未来」
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「無題」
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「罪なき市民を探せ」
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「不条理な花ばな」
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「神がみの創造」
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「ここでは皆がむさぼり食う」
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「未来」
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N・S・ハルシャ、ジョーン・グラウンズ『夢見るバングル』
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「宇宙の小枝の向こうに消えた料理人」
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「ふたたび生まれ、ふたたび死ぬ」
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「宇宙情報処理センターでの名優」
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「探し求める者たちの楽園」
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「乳搾りの道が唯一の道だ」
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「宇宙のマサラを探して」
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「ピーチクパーチク」
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「この世でモー」
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「未知を示してくれる人たちはいた、いまもいる、この先もいるだろう」
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「タマシャ」
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返される眼差し
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森美術館で開かれたN.S.ハルシャ展 チャーミングな旅へ行ってきました。

現代人を描いた曼陀羅万葉といった趣。無料のオーディオガイドは細野晴臣さん。解説によると曼陀羅というよりインドの彫刻の反復からインスピレーションを受けたとのことでした。

森美術館は22時まで開いているのがいいですね(火曜は17:00まで)。
一人プレフラきめることができました◎このあっさりしつつもおいしい南インドの絵画たちは生でみるとまた一味違ったものがありました。森美術館で明日まで。このチケットで展望台&マーベル展もみれる。夜景お薦めです。
by wavesll | 2017-06-10 06:33 | 展覧会 | Trackback | Comments(0)

特別展 茶の湯@東博 シンプルの内に複雑な玄妙さを見出す感性の列史

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東博で開かれている特別展 茶の湯へ行ってきました。

中国・龍泉窯『青磁輪花茶碗 銘 馬蝗絆』が目当てだったのですが、吸い込まれるような青磁の白青、覗き込んだ時に見える割れの罅が現代的にも想えて、そして鉄の鎹がまたいい遊びになっていて。とても良かった。

青磁だと国宝の南宋の『青磁下蕪花入』の罅がないすっとした艶のある水色。取っ手が美しい龍泉窯『青磁鳳凰耳花入』も良かった。龍泉窯だとすっくと伸びる筒形の『青磁筒花入』も良かったです。

そして今回の展示で印象的だったのが『白』。
中国・定窯『白磁金彩雲鶴唐草文碗』の綺麗な白の中に金が揺蕩う様の美しさ。瀬戸・美濃『白天目』の黄色みがあった白の美。朝鮮の『三島茶碗 二徳三島』、『御所丸茶碗 古田高麗』の驚くような鮮やかな白。数々の白の銘品に目を見張りました。

またその他の茶碗も名品目白押しで。
序盤では中国・定窯『柿釉金彩蝶牡丹文碗』の紅茶色の深い色。"禾天目"、中国では”兎毫盞”と呼ばれるウサギの毛並みのような線が入った中国建窯『建盞』、鸞が描かれた中国・吉州窯『玳玻盞 鸞天目』が好きな人は東洋館にも展示してあって写真も撮れるのでお薦め。金色の木の葉が美しい吉州窯『木葉天目』も、豊臣秀次所持の建窯『油滴天目』も素晴らしかった。

入ってすぐの伝牧谿筆『布袋図』に淡く柔らかく癒されて。国宝の梁楷筆『出山釈迦図』伝梁楷筆『雪景山水図』 梁楷筆『雪景山水図』の黒靄に心惹かれました。

朱漆、黒漆を塗り重ねた『犀皮水注』の朱の凸凹の美、『花鳥堆朱重香合』も凹凸が美しかった。『物かは蒔絵伽羅箱』は黄金の銀河で。『釜石 銘 末の松山』は盆の上で山水を顕わすために置く石という逸品で。インドの『南蛮毛織水指』も綺麗でした。

茶の湯というとどうしても利休・織部がクローズアップされますが、この展覧会では総体的な歴史の流れが描かれていて。侘茶の始祖、珠光や利休の師、武野紹鷗ゆかりの一品も揃っていました。

元~明の『灰被天目 銘 夕陽』の渋い夕空、『灰被天目 銘 虹』は月虹のよう。南宋~元の『唐物肩衝茶入 北野肩衝』のマーブルなブラウン。『唐物茄子茶入 銘 富士』のなんとぷっくりと可愛らしいことか。元~明の『黄天目 珠光天目』の灰から黄へのグラデーション。

武野紹鴎筆『書状 十月二十日』のエメラルドブルーで流麗な筆遣い。室町時代の『烏図真形釜 銘 濡烏』の角いフォルム。『備前水指 銘 青梅』はずっくりとした味わい。秀次作『黒塗大棗 紹鷗棗』の漆のツヤ、シンプルなカタチはイデアを感じさせます。

この展覧会では様々な茶道具が展示されていましたが、今回新規開拓できたのが釜。『芦屋無地真形釜』のナマズ肌、『芦屋浜松地歌入真形釜』の表面に彫られた浜松図。『天明筋釜』はバリ島な感じで、与次郎作『湯の釜』はじっくりとした時間を与えてくれました。

重文『雨漏茶碗』の朱白に黒、『蕎麦茶碗 銘 花曇』のゆがみ薄さはフォークトロニカでした。

そして千利休の時代へ。
利休筆『書状 飄庵宛(法語 璋禅人宛 添状)』は丸っこい字。古渓宗陳筆『落慶偈』の美筆。朝鮮の『井戸香炉 銘 此世』の塩筒形。南宋~元の『唐物尻膨茶入 利休尻膨』の水信玄餅みらいなぷくらみ。美濃『黄瀬戸立鼓花入 銘 旅枕』の緑がかった白の砂時計形のカタチが最高で。

『瀬戸雁口花入』の白緑のしゃらりとユーモラスな形。光の残像のような『黄天目 沼田天目』と千利休筆『書状 七月十六日 松新宛(黄天目 沼田天目 添状)』。『書状 六月二十日 古織宛(武蔵鎧の文)』にも流麗さを感じました。

利休好みの『唐銅皆具 釜・風炉』の魔人ブウな感じ。瓢箪のくびれをそのまま口にした『瓢花入 銘 顔回』の自然な形の面白さ。魚籠にみたてた『耳付き籠花入』も面白味がありました。そして『黒塗手桶水指』の漆の美しさとフォルム・大きさの丁度いい感じが本当に丁度いい、ディレクションが光りました。

樂家の始祖、長次郎の作品群にも茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術展振りに出逢って。長次郎唯一の香炉である『黒楽口寄香炉』や『黒楽茶碗 銘 ムキ栗』に無の宇宙を感じました。

この展覧会ですっかり棗が好きになってしまったのですが、盛阿弥作『黒塗尻張棗』のPinoな台形球フォルムもまた素晴らしく好みで。

利休が死を覚悟して書いた『書状 二月十四日 松佐宛』には勇壮さも感じて。『山上宗二記』も素晴らしかった。

ここから古田織部の時代へ移っていくのですが、茶の湯の美の流れの中でも織部はひょうげてるというか異彩を放っていて。狙っているというかwでもこの織部好みのへうげた美のダイナミズムは太古には縄文文化、後世には もの派として隔世遺伝していく日本のマッシヴな美意識を感じました。

『伊賀花入 銘 生爪』のモノとしての存在感、家康所持の『天明釜 銘 梶』も良かった。そして大きな割れ目が入った『伊賀耳付水指 銘 破袋』の現代的な味。ヴェトナムの『南蛮締切水指』も狙ってんなぁとw『備前肩衝茶入 銘 さび助』のクシャっとした凹みの良さ。

信長の弟、織田有楽斎の『大井戸茶碗 有楽井戸』や武将好みのソリッドなフォルムの『古瀬戸肩衝茶入 出雲肩衝』もほんとぴしっとしていて好きで。『備前筒花入 銘 八重葎』や『備前三角花入』、『備前耳付水指 銘 巌松』、『信楽一重口水指 銘 柴庵』、『伊賀耳付花入 銘 岩かど』も現代的なくしゃっとしたフォルムを堪能できました。

美濃の『瀬戸黒茶碗 銘 小原女』や『瀬戸黒茶碗 銘 小原木』も良かったし、『志野矢筈口水指 銘 古岸』もズドンとくる感じで良かった。『志野矢筈口水指』の夕景も見事で。『志野茶碗 銘 羽衣』もまた良し。『鼠志野茶碗 銘 山の端』も古代のモノクロ山林で良かったし、国宝の『志野茶碗 銘 卯花墻』もヌエバ・スタンダードの感覚。

黒というと利休ですが、織部も黒い茶碗をつくらせていて。『黒織部百合文沓茶碗』なんかよかったなぁ。そして『黄瀬戸根太香合』『志野重香合』『織部さげ髪香合』もマカロンのようなちょこんとした可愛らしさに個性が詰まっていてとても好きでした。

樂家関連では本阿弥光悦の『赤楽茶碗 銘 毘沙門堂』・『黒楽茶碗 銘 時雨』もツヤツヤで薄くて綺麗で。道入の『黒楽茶碗 銘 残雪』ものっぺりして美しかったです。

そしてここから織部の弟子、小堀遠州と松江藩主・松平不昧の茶の湯の章。
無準師範筆『山門疏』の文字のソリッドさはかなり好みで、無準師範筆『尺牘 円爾宛(板渡しの墨跡)』も端正な美学に貫かれていました。明の『古銅象耳花入 銘 キネナリ』は竹のような節があって。『青磁中蕪花入』も形が最高でグラスのようでした。『高取面取茶碗』も黒の垂れ具合がよくて。

『瀬戸茶入 銘 廣澤 本歌』も端正で細身の武家好み。どうも自分、武家好みや武将好みが好みでした。また『丹波耳付茶入 銘 生野』の四角い楕円や『紅葉呉茶碗 銘 菊月』の白朱も好きでした。『御本立鶴茶碗 銘 千歳』も優美で。

中国・景徳鎮の『古染付高砂花入』は取っ手が魚で面白く、同じく景徳鎮の『祥瑞蜜柑水指』はコバルトブルーが美しかった。ヴェトナムの『安南染付龍文花入』もリンガな感じで生命力ざわついてました。

景徳鎮の『祥瑞蜜柑香合』も青い空間が凝縮した美で、中国・漳州窯の『交趾台牛香合』のエメラルド、同じく漳州窯の『白呉州台牛香合』の白美もみごとでした。

仁清『色絵若松図茶壷』の黒に鮮やかな若松、同じく仁清『色絵鱗波文茶碗』の朱桃色に碧波の美しさ。仁清の『色絵玄猪香合』はエメラルドグリーンの銀杏の葉が紐で結ばれている面白き一品で、乾山の『錆絵染付鎗梅文香合』はエレクトロニカでした。

建窯『油滴天目』は銀の粒子に宇宙のオールーが透けていました。『瀬戸茶入 銘 潮路庵』もピシッとした円柱形で。原羊遊斎作『大菊蒔絵棗』もすっきりとした出来。

まだ茶杓はどれも違いがそこまでわからなかったのですが、松平不昧『竹茶杓 銘 柳緑花紅』はなんかいいなって想いました。

伝藤原の行成筆『古今和歌集 巻一断簡(関戸本)』はグレーブルーの紙にしたためられた逸品。『伊賀耳付花入 銘 業平』は"東五人男"に選ばれたという現代的な魅力ある花入でした。

最後の章は近代数寄者の眼。第八期は三渓園の原三渓の品々が展示してありました。慶滋保胤筆のたおやかな『書状 六月十四日』や尾形光琳筆のソリッドな『波上飛燕図』、『唐津茶碗 銘 入相』や伝本阿弥光悦の金蒔絵に青貝の螺鈿をつかって銀鹿が描かれた『沃懸地青貝金具蒔絵群鹿文笛筒』なんかが良かったです。

12世紀に中国から伝わった抹茶の文化が、珠光、紹鷗、利休、織部、遠州、不昧、そして近代の数寄者たちへ連なっていった歴史の道が展覧されていたこの茶の湯展。

その根底にあるのは、自然を究め、シンプルの内に複雑な玄妙さを見出す感性にあるのではないかと想いました。そしてミニマムとダイナミズムを抱く懐の広さも日本の美意識にはあるのだなと。見応えのある展示でした。

常設展もぱしゃりしてきました。

みみずく土偶
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香炉形土器
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石人
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銀象嵌銘大刀
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金銅製冠
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木製 蓋
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埴輪 子持家
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五塔
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経筒
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板碑(阿弥陀種子)
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線刻蔵王権現鏡像
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葵形禁制品
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赤藍地孔雀花束文様印金パティック
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田中利七 / 刺繍孔雀図屏風
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ヴィンチェンツォ・ラグーザ / 日本の婦人像
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七代錦光山宗兵衛 / 色絵金襴手双鳳文飾壺
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加納夏雄 / 群鷺図額
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竹内忠兵衛 / 七宝竹雀文大瓶
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歌川豊国(国定)/ 御誂織薩摩雛形 勝間源五兵衛
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勝川春章 / 東扇・初代中村仲蔵
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諸尊集会図
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埴輪 猿
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須恵器 子持高坏
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注口土器
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阿字曼荼羅図
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伝後京極良経 / 仮名観無量寿経切
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伝藤原公任 / 石山切 伊勢集「おほそらに」
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日蓮 / 消息
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豇豆蒔絵矢筒
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尾形光琳筆 / 風神雷神図屏風
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新井白石 / 詠詩三首
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小島宗真 / 高松賦
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振袖 萌黄縮緬地松紅葉牡丹流水孔雀模様
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山本梅逸 / 倣董源山水図
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灌頂幡
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光背
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観音菩薩立像
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観音菩薩立像
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観音菩薩立像・勢至菩薩立像
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観音菩薩立像
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摩耶夫人および天人像
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菩薩半跏像
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菩薩半跏像
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菩薩半跏像・菩薩半跏像
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銀釵
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竜首水瓶
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鵤寺倉印・法隆寺印
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銀釵
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三鈷杵
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五大明王鈴
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細字法華経
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梵網経
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経帙
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鵲尾形柄香炉
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紅牙撥鏤針筒・緑牙撥鏤針筒・緑牙撥鏤針筒・紺牙撥鏤針筒蓋
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勢至菩薩立像
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如来倚像
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観音菩薩立像
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菩薩交脚像
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如来坐像
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菩薩交脚像
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彩文土器 水差
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彩陶双口壺
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三彩鎮墓獣
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黒釉兎毫斑碗
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玳玻釉碗
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寒梅鶴図軸
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皇甫誕碑
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雁塔聖教序
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山水人物堆朱桃形合子
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瑪瑙石榴
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緑釉博山炉
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細環式耳飾
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鳥翼形冠飾
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透彫冠帽
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毘盧遮那仏立像
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獅子
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宝冠如来及び両脇侍坐像
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ナーガ形飾り金具, 飾り金具
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ヴィシュヌとガルダ像
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藍地花格子結び文様更紗
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アウラングゼーブ立像
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ジャハーンギール立像
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タオ族の甲冑
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by wavesll | 2017-06-03 10:51 | 展覧会 | Trackback | Comments(0)