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日本のマスコミ報道の貧弱さ ―BSドキュメンタリー パナマ文書 〜”史上最大のリーク”追跡の記録〜をみて

メディアスクラムによる舛添協奏曲がクライマックスに達した6/15の深夜、NHKBS1にてBSドキュメンタリー パナマ文書 〜”史上最大のリーク”追跡の記録〜が放映されました。

詳しくはhohon77’s diaryさんのこちらの記事で内容が文字起こしされているので読んでいただけたら幸いなのですが、ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)のメンバーでもある番組スタッフが、彼らのパナマ文書に載った不正を行っている人間たちへの取材が、まるでミステリー映画のような展開で描かれています。

こちらがパナマ文書を入手した南ドイツ新聞の南ドイツ新聞のバスチアン・オーバーマイヤー記者。海外の記者は署名記事を書いているだけでなく顔出しまでしているとは!覚悟の決まり方が、日本のジャーナリスト/報道企業とは一線を画している気がしました。
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取材はパナマにあるプラティニのオフショア企業、次にWebで検索したら出てきた(!?)オフショア企業設立指南の金融業者への囮取材。そしてタックスヘイヴンを使ってアブダビ首長国の高官であるカデム・アル・クバイシが不正な資金操作を行うのを援けているとみられるエドモンドドゥロスチャイルド銀行の男爵夫人への突撃取材の様子が流れました。

ロスチャイルドなんていうと陰謀論めいたものでしかみたことがなかったもので、関係者の顔をみたのは初めてでした。写真の右側のロスチャイルド男爵夫人に攻め入る番組記者。自分も反撃されるリスクを負ってのインタビューをする勇気といい意味で"強きを挫く"姿勢は、舛添氏を寄ってたかって潰した日本のメディア達の醜悪な姿勢とは異なり、胸がすく気がしました。
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本当に、ただの地方行政の首長の不正問題にこんなに日本全体に放映するニュース番組や新聞の枠が咲かれ続けたのって異常というか、水に落ちた犬を叩くようでみていられませんでした。本来なら、このICIJが行っているようにパナマ文書に切り込んだり、パナマよりもっと日本人が利用しているケイマン諸島に切り込んだりすべきなのに、全然調査報道を行わない。菅官房長官が「パナマ文書は調査しない」と言いましたが、安倍政権と懇ろの報道各社は完全にアンダーコントロールにあると苦言を呈したくなります。

舛添おろしに味を占めて、基本的人権が制限されるなどの自民党改憲草案の問題点を連日連夜報道してもらいたいものです。後は東京五輪などで暗躍する電通も報じてほしいのですが、報じられそうにもありません。

この「報じられない」という問題、私は安倍政権や電通が圧力をかけているのかと想っていたのですが、この間興味深い記事を読みました。

なぜ大手マスコミは「電通の疑惑」を報じないのか 東京五輪の裏金問題 (ITmedia)
マスコミの記者たちは「当局が動くまで静観」というスタンスだというのです。これを"はじける"といい、「はじける」というのは事件記者の用語で、「事件化」を意味する。つまり、「疑惑」に対して捜査当局や文科省などがオフィシャルに動きをみせた段階で、一斉に報道解禁をする準備を進めているとのこと。

捜査当局、公人が言及しない「疑惑」を報じない、ということは裏を返せば、日本のマスコミの報道スタンスというのは、実は国会、役所、警察などの公的機関がイニシアティブを握っているということになる。つまり、今回の「電通カット」報道というのは、日本のテレビ・新聞が、英・ガーディアンやFACTAという調査報道に力を注ぐジャーナリストの見解よりも、公的機関の見方にお伺いをたてているという「情けない現実」をものの見事に浮き上がらせてしまったというのは、裏取りを完全に当局に頼り、自力で調査報道できない日本の報道各社の貧弱さが浮き彫りになってしまった感があります。これでは権力の悪を暴くなど夢のまた夢。

ジャーナリズムで飯を食うのは大変な職業だし、政府批判だけに偏ってしまう左派ジャーナリズムにも反動が来た日本の情報空間ですが、自主独立し、権威を恐れず、覚悟の決まった報道をしてこそ社会の公器、現状は惨憺たるものですが、Web時代におけるジャーナリズム空間を上手いことできないものかという観点で考えれば"Webにモノを描いている"人間としても、何かできないことはないか、模索していきたいです。

それにしても日本の"ニュース番組"ってなんであんなに芸能ニュースが多いんでしょうね。スポーツも入れたら相当な時間を芸スポに割き、タブロイドみたいな質。政治・経済・社会をしっかり報じてもらいたい。視聴率がとれるのかもしれませんが、舛添氏の件でもそうですが、同じニュースを繰り返す必要、ないでしょう。それで数字がよくなってしまうのが絶望的なのかもしれませんが。後固定のコメンテーターもいらないと思います。それぞれ専門家をブッキングすればいい。そうした意味では文化欄と報道欄が分かれ、専門家に話を聞くTBSラジオのSession22は、形式としては好きですね。後は打ち切られちゃったけどニュースJAPANとすぽると!の感じとか。

もっとコアな話を言うと、BS1で朝4時から放送している世界各国の放送の同時通訳ニュース番組、あれを3h位にまとめて夜も流すようにするといいと思います。同じニュースでも米・英・仏・独・露・中で報じ方が全然違い、それぞれの国の報道のスタンスがみれるのが面白いので。もっと言えば、日本だとアフリカ・南米のニュースが足りてない気がします。ビジネスチャンス発見という点でも、ここらを補強するというのはいかがでしょうか?
by wavesll | 2016-06-16 16:05 | 小ネタ | Comments(0)

天へ挑む究道者 ETV特集「曜変~陶工・魔性の輝きに挑む~」 をみて

ETV特集 「曜変~陶工・魔性の輝きに挑む~」を観ました。

宋時代に造られ、製法が歴史の闇に消えた曜変。これまで現存する曜変は日本にある三碗のみでした。ところが近年、四碗目の曜変天目が中国で見つかり、科学分析で曜変を現代に蘇らせるプロジェクトに陶工が挑む!という内容。

宇宙の色のような美しく輝く曜変天目。鎌倉時代に日本に交易で来て以来、足利義政、織田信長、徳川家康…天下人達が曜変を手に入れようとした世上にないもの。

これが杭州の宮殿の迎賓館跡の地中から発見された第四の曜変天目。
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中国へ向かう日本の研究者たち。日本にある曜変は全て国宝に指定されているため科学分析がこれまでできませんでした。ところが杭州の曜変は個人所有の為、交渉がしやすい。数年に及ぶ折衝の結果、科学分析させていただけることになったのです。

チームの一員にいる長江さんは瀬戸の陶工。父上の代から曜変天目に挑んでいます。
ところが、曜変は未だかつて再現できない技術、これまで曜変の再現に挑戦し、破産したもの、精神を壊したものも多数。数学界でいえばリーマン予想のような存在。神域の御業ですね。

実際、長江さんが今到達している地点はこの辺り。左の国宝と比べると歴然としています。ぼやけてしまうというか。
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この制作に、科学分析を行うことで研究を進めたいという願いがあったのです。

しかし、いざ杭州の所有者のところへ着くと、中国学会からの"日本人に科学分析データを渡すな"と圧力がかかり、残念ながら科学調査はお流れに。しかしそれでも、収穫がありました。発掘された曜変は割れていて、その断面から焼き上げの温度が1300度から1350度だということが推察されたのです。これまでの定説では1250度で焼かれているとされていたので、大きな発見でした。
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それでも失意で帰国した長江さんに朗報が入ります。日本チームの一員で、国宝の曜変を擁する藤田美術館の館長が文化庁にかけあって、藤田美術館の国宝曜変を科学分析できる運びとなったのです。

この調査で判明させたいのは、曜変が持つ星紋とよばれる斑点の付け方。酸性ガスが釉薬を破裂させてできたという説と、重金属を塗って焼き上げたという説があり、長江さんは酸性ガス説を採って研究を進めていたのです。

蛍光X線検査で判明したのは、重金属を平均以上に表す数値は現れなかったということ。酸性ガス説が強まります。一方で、釉薬の成分としては長江さんと国宝ではケイ素とマンガンで違いがありました。
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長江さんの父上がのめりこんだ曜変天目研究。長江さんは最初、一般の瀬戸物で商売がしたいと主張し、お父さんと軋轢を起こしていました。そして時がたち、そろそろ謝罪して仲直りし自分も曜変の研究をしようと考えていたところに父上が逝かれてしまう…そこから商売も放り出し、ひたすらに曜変研究に没頭する日々を過ごされてきました。

この黄色い曜変はお父さんの研究の成果。これはこれで素晴らしい出来です。
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長江さんは、父の夢をかなえ、父を超えるために、科学分析を元に焼き上げます。
1st Tryでは酸化ガスの幽霊を最初は捉えられなかったのですが、椀の底には今までとは全く違うくっきりとした輝きが。そこに陶工の感を加えて微調整し、素晴らしい成果が!
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しかし長江さんはまだ満足しません。曜変天目の完全再現を目指します。

自分は日本にある3碗の内、静嘉堂美術館のものと藤田美術館の碗は幸運にもみることができたのですが、京都龍光院の曜変と、杭州の曜変、ぜひ拝んでみたいなと思わされました。

そして何より、男の仕事への熱情、人生の渋みが滲む長江さんが曜変の技法を完成させた暁には是が非でも個展を拝見いたしたいと、強く想います。匠の究道精神に、兜を脱がされました。

ルーシー・リー展@千葉市美術館 / 藤田美術館の至宝 国宝 曜変天目茶碗と日本の美展@サントリー美術館
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静嘉文庫美術館 金銀の系譜~宗達・光琳・抱一の美の世界~
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cf.
◆ラスター彩 故郷に還る~陶芸家・七代 加藤幸兵衛の熱き思い~(テレビ愛知)

◆虹色を追う男たち~ペルシャの秘宝と友情~(テレビ愛知)
by wavesll | 2016-06-14 01:27 | 小ネタ | Comments(0)

Metropole parasol 世界ふれあい街歩きでみるセビリアの都市観光開発

世界ふれあい街歩きで、スペイン・セビリアの回を見たところ、2012年に完成した世界最大の木造建築、メトロポール・パラソルが素晴らしい建築でした。
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世界最大の木造建築物がついに完成「メトロポール・パラソル」…スペイン・セビリア(らばQ)スペイン南部の街セビリアで、世界最大の木造建築「メトロポール・パラソル」を見てきました【スペイン・ポルトガル旅行記その1】といったページで、街にアクセントを与える新世紀の建物でありながら、街に調和する様がみてとれます。

メトロポール・パラソルの中は市場。市場の建築でこんなにわくわくさせられるとは。ビルバオのグッゲンハイム美術館も素晴らしかったし、スペインは「街の次の一手」をプレゼンテーションするのが本当に得意ですね。それでいながら大聖堂や旧市街も保っているのが本当に凄い。片や日本は原宿駅の立て直しや百貨店などの近代建築をないがしろにしたり。メトロポール・パラソルの地下フロアは、工事中に出てきたローマ時代の遺跡をそのまま活かしたり、エスパーニャが羨ましいです。

観光を考えるとき、一回目はその街の歴史的な建造物や土地の名物料理を楽しみたいなと想うのですが、ヨーロッパなんかをたびたび訪ねていくと、どこもカテドラルばっかりで、それぞれ違いはあるのだろうけれどちょっと食傷気味になったり。そんな時、"2度目の欧州"なら、都市的な、ブラッシュアップされ続ける文化が楽しみたくなる気が自分はします。リピーターを招くには"如何に街をアップデートしていくか"が大事なのかも、と。

そんな時に番組で紹介されたヴァーチャル・ツアーは面白いなと思いました。広場でVRグラスをかけると、その広場の中世の姿が見えるという。VRサーヴィスって幽玄な楽しさがありますよね。

昔からこんなのあったらいいなーと想う企画で、全国の小学生に「僕の私の江戸城」を描いてもらって、その優秀作を3DCG化して、皇居の広場に作った小屋で絵を展示。VRゴーグルを貸し出して、外でつけてみるとオリジナル江戸城が見える、みたいなイベント、誰かやってくれたら、なんて思ったり。

またスペイン、行ってみたいなぁ。歴史と最先端、そして技術と物語を組み合わせ日本も観光地をさらに魅力的にしていけたらいいですね。東京に限らず。そんな意味でセビリアの試みはとても参考になるのではないかと感じました。
by wavesll | 2016-06-09 13:28 | 小ネタ | Comments(0)

荻上チキ・Session-22 HMV音楽バイヤー・山本勇樹「新しい世界の作曲家特集」楽曲をYoutube回遊

荻上チキSession22にHMV音楽バイヤーの山本勇樹さんが出演し、『クワイエット・コーナー』や『Bar Buenos Aires』系の楽曲を紹介していました。(podcast)

楽曲群をYoutubeで貼り付けてみます。

『Bright Days Ahead Closing』/ クエンティン・サージャック


『Fui Al Rio』/ セバスティアン・マッキ&クラウディオ・ボルサーニ&フェルナンド・シルヴァ


Viva Julia』/ タチアナ・パーハ&ヴァルダン・オヴセピアン


My Last Tears Will Be A Blue Melody』/ ジョルジオ・トゥマ


『Head In The Clouds』/ モッキー


『Suddenly』/ アラ・ニ


『Stormy Weather』/ ファビアン・アルマザン
は見つからなかったので代わりに

Fabian Almazan Trio - Sin Alma


ここら辺のテイストはポストクラシカルの次辺りの位置にある、今ヒップとして推していこうという感覚のものなのだなと思いました。

クラシックやエンニオ・モリコーネ等の映画音楽に影響を受けたなんて話も面白いし、ALA-NIは"40s‐50sのオールドジャズにネオソウルの感覚を取り入れた"なんて話も興味深く聴けました。細野さんのデイジーホリデーな感覚を思うとあの人は流石だな、最先端は40年代かなんて思ったりしました。

Session22の0時代の文化面特集では結構いい音楽の特集があったりするので侮れません。ミャンマー音楽特集なんかもあったし。毎回必ず音楽特集をやるわけではないから、企画がきちんと詰まっていて美味しく聴けるのかもしれません。

自分がほぼ毎週聴く音楽番組は水曜23時のInterFM Tokyo Moonくらいになってしまいましたが、また興味深い音楽番組探したくなってきてます。Interが最近弱ってきてるけれど、野心的な番組作り、やってほしいなー。InterFMには邦楽はあまりいらないと感じているのですが、聴取率があれなのかなぁ。5月末でまた改編があったので、いい番組ができたらなるだけ聴いていきたいなと想います。普段から聴かないと良番組も終わってしまうし。

TBSラジオの音楽番組は結構攻めてると思います。Session22にしても、チキさんが音楽愛好家ではなく、しかし音楽に敬意を払った部外者としてコメントを入れるのも、マニアと一般人の橋渡しとしては面白いし、情報番組の音楽コーナーとしては質がいいと感じました。

ちなみにこの番組のエンディングテーマはDCPRGで、一方右系ニュース番組 ニッポン放送ザ・ボイスのOPナンバーはGalaxy 2 GalaxyのHi-tech Jazz。報ステのOPテーマはJTNC系の日本人セッションだし、報道番組にジャズ系ってのは合うのかもしれませんねw『Dancing古事記』をテーマソングにした混沌のニュース番組もみてみたいw
by wavesll | 2016-06-02 13:19 | 小ネタ | Comments(0)

Virtual goes reality, reality goes virtual

Final Fantasy XV - World of Wonder Environment Footage


Keiichi Matsuda - HYPER-REALITY


Avalon - Film complet en Français

by wavesll | 2016-05-25 18:31 | 小ネタ | Comments(0)

Windows10にして音がスピーカーからでなくなる&音量が小さくなるコトの対応策

どんどん萌えからホラーへ Windows 10のアップグレード通知を擬人化した漫画が全ユーザーの恐怖を表現している(ねとらぼ)なんて記事もありましたが、ウチのラップトップも勝手にWindows10にされてしまいました。

これまで通りだったら問題ないのですが、Youtubeを開いても音が鳴らない。
こりゃなんでだろとタスクバーの右のアイコンが並んでいるところを開いて、音量アイコンを右クリックし、音量ミキサーを開いても音量はちゃんと出てると表示されます。

うーむ、では音量アイコンを右クリックしたときに出てくる「再生デバイス(P)」というのが怪しいと。
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すると再生デバイスがヘッドフォンになっており、それとは別にスピーカーという選択肢もありました。
で、スピーカーにするとちゃんと音が出ました。なーんでこんなはた迷惑なデフォルト設定にしてるんだろう?

やれやれ、一件落着かと思ったら、あれ?音小さくなってない?
音量をMAXにしてもどうにも音が小さい。。なんだこりゃ?Webをみるとどうやらほかの人もこうなっているっぽい。さて、どうしたものか。

そこで検索してみると、音量MAXなのに音が小さい!スピーカーの故障と諦めるのはまだ早い!Windows PCのラウドネス等化というページがありました。

Windows10のコントロールパネルの開き方がいまいちわからなかったのですが、先ほどのようにタスクバーのサウンドのアイコンを右クリックし、「サウンド(S)」をクリック、あとは上記のページのように、スピーカーのアイコンを右クリックし「スピーカーのプロパティ」をクリック、そして「音の明瞭化」タブを選択し、ラウドネス イコライゼーションにチェックを入れると、幾分か音が大きくなりました。

こういうことするから感じ悪くなるんだよなーOSのアップデート。まだ音量が完全に戻った気もしないし、こういうのはホント辞めてほしいですね。
by wavesll | 2016-05-25 16:16 | 小ネタ | Comments(0)

Exit through the gift shop - "権威/メディア/他者の意見"を参考にする?しない?

"Exit Through The Gift Shop" - Official Trailer [HD]


昨日、AbemaTVにて『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』をみました。
ロスに暮らすヴィデオ記録狂のティエリーがストリートアートのシーンに嵌り、次々と深くへ取材同行しているうちにストリートアートのトップにいる謎のストリートアーティスト、バンクシーに辿り着く…という話

あ、この後ネタバレもあるので、ネタバレが嫌な方はスルーしてしまってください。ネタバレ部分は薄字にしておきました。










バンクシーと親しくなったティエリーは記録したテープで映画を作ってみないか?と言われ、作品を作るがこれがひどい出来。そこでバンクシーはティエリーにアートを作ってみないか?と助言。それでティエリーは一気に舞い上がって暴走していく…。

ティエリーの作品はウォーホルのパクリみたいな出来で、バンクシーやティエリーが撮ったストリートアーティスト達は酷いと思ったのだが、ティエリーの為に善意で推薦文を送る。するとMr. Brainwash(ティエリーの芸名)はそれを宣伝に大々的に使い、「バンクシー推薦の期待の新人」としてメディアが騒ぎ、個展には人が殺到してしまいました。


さて、この映画をすんなりみると、「一般大衆やメディアってバンクシーの推薦文だけ信じて殺到しちゃって馬鹿だなーw」とか、「記録・蒐集欲が物凄い人、あるいはその分野に愛を物凄く持っている人が表現者として有能であれるかは全然違うんだなー」と思いました。

ただ、それは結局バンクシーの手のひら返しの批判をそのまま飲み込んでるだけに過ぎないですよね。バンクシーの推薦をうのみにした大衆と、映画のラストでバンクシー達の批判をうのみにする観客(私)は同じなのではないか?と思うのです。

実際、Mrブレインウォッシュは成功しその後日本でも展覧会を開くような人気アーティストになっていったそうです。彼には確かにパクリみたいな安易なアイディアの流用に感じます。でもそれが結局観客に受け入れられたのは、ストリートアートやポップアートに期待されていたのはそういうものでもあるかもしれない。バンクシーの作品ですら、ほとんどの人が表面や"評判"しか見ていないのでは?と思ったり。

マスへ出た表現っていうのは、そこの観客はほとんど表現者の意図を理解できていないでしょうし、表現者も「解釈は観客に委ねる」と言ったりしていますから、完全な理解なんかマスでは土台無理な話だと思います。この映画をみた私にしたって理解しきれているとは思えません。観客はそれぞれ、自分がつかめるものを汲み取れればいいのだと思います。”表現の価値”はおのおのが決めればよいこと。

ただ、これは音楽に関して自分がそうだったのですが、私も"好きな音楽を好きに聞けばそれでいいじゃないか"と思いますが、"評論や評判を気にせず自分の感性を大事にするタイプ"の友人は結構聞くのがオーソドックスなものばかりだったり逆に狭く深いばかりだったり。。自分は他者の意見を参考にして自分の音楽の趣味を広げてこれたなぁと思うのです。勿論それも自分の選択ではあるのだけれど。

芸能作品とメディアによるBrainwash(洗脳)というと、マスメディアをフルで使った宣伝攻勢がありますね。AKB系なんかを見ているといつからか週刊誌のグラビアがAKB系ばかりになった時期があったり、音楽番組がAKB系ばかりになったり、露出が物凄いことで、地下アイドルがみるまに巨大な産業的存在になっていくのを見た気がします。何しろ飽きられる前に新商品の女の子やグループを投入しているのはコンビニエンスで、凄まじい産業だと思い、日本のTV芸能界は事務所が強ければ売れる確率が物凄い上がるというか、本物を本物として売ることが難しいようなシステムになってしまっていると感じて、私はどちらかというと嫌悪しています。

広告に真の魅力で現れて競えているかというと「否」と思いますが、お金が絡まない、或いは直接の知り合いとかの人付き合いとかが絡まない絶賛は、自分は概ね信じていいと思います。バンクシーがMrブレインウォッシュに推薦文を送ったのは親しい付き合いで頼まれたからでしたものね。勿論「その人を好きになってしまったからどんな作品でも褒める人」なんかもいますが、概ね、金と人脈的利益が絡まない評判を信じていいくらいには私は世の人たちを信頼しているなぁと思うのです。

逆に言うとInternet最大の功績は、今まで寡占状態にあった"意志を発信する媒体"を、金目のマスコミから解放したことだと思います。と、同時にそうした時にプロの評論家の評論っていうのはアマチュアによるジェネリックな評論に対してどう対抗すればいいのか、"プロの目、プロの文"の価値を、どこに表せばいいのだろうかとも思います。さらに言えばプロの評論ほどの"重さ"を大衆は求めていないのかもしれない。この"要求される信頼の重みの、変化"によって有料の評論が消えて、Web上の広告で運営される無料評論≒宣伝だけになったら、それは寂しい。しかしどうすればいいのか?cero、OGRE、D.A.N.の担当者たちが語る、日本インディー15年史(Cinra)のような取材による一次資料を産むのは需要がある気がしますが、有料の文筆文化はどう生き残ればいいのかは生態系づくりの過渡期なのでしょうねとお茶を濁してこの文章を終えます。


P.S. 劇中に登場するストリートアーティスト、スペースインベーダーの作品、中目黒にありますよね。
by wavesll | 2016-05-24 15:52 | 小ネタ | Comments(0)

フェス配信で家事が進む

BLUE ENCOUNT 『もっと光を』


今日は日比谷野音でcero、東京ドームで氷室、京都でスターフェス、横浜でグリーンルーム、そして新木場でメトロックと、音楽イベント盛り。天気もいいし気持ちいいですね。

自分は出かけたい気持ちもありながら、AbemaTVでやってるメトロック配信みてます。
海外だとこの間もコーチェラの配信なんかやってたり、国内でもULTRA JAPANとかはしてましたけど、邦楽フェスのこんな規模の無料配信はなかなかないから、素晴らしい試みですね。

まぁ、欲を言えば海外フェス配信みたいに多チャンネル同時でステージごとに配信してくれると、ザッピングとかが出来るのがよりフェスらしさを沸かせる感じはあるけれど、なにしろ初回だし、まずは英断を応援したい。広まって欲しいなぁ。ロックバンドの見本市という意味でも大きな試みだと想います。噂のブルエンみましたよ。MCがこっぱずかしかったけど、ライヴの方が全然良かった☆

とはいえ、せっかくのいい天気に昼間にぼーっと画面を眺めるのは勿体無い気がしてw
というわけで部屋の掃除や洗車とか、家事がはかどりました。
フェス配信をいかに楽しむかというのは、受動性と体験性の工夫を自分でいかにするかも大事ですね。そういった意味でも多ch配信は望ましいなぁ。

今年はRed Bull TVが世界の人気フェス6つを独占ライブ配信決定というニュースもあり、家に居ながらにして海外フェスを愉しめる夏フェスロングシーズンを過ごせそう。フェス配信と家事でリーズナブルな休日も悪くないですねw
by wavesll | 2016-05-21 16:45 | 小ネタ | Comments(0)

情報に対する生理的欲求が満たされている世の中で

音楽にお金を払う習慣はなくなるのか?  LINEミュージックの評価がヤバいというニュースのスレッドが盛り上がっていました。

該当記事だと
LINE MUSICは、30日間無料で聴き放題。その後は有料となり、
チケットを購入していない無料の状態では試聴30秒となる。
アプリのレビュー欄では、無料にしてほしいという意見などが見られる。

「なんでチケット購入しないと聴けんの? 視聴者目線で考えて欲しい」
「なぜ30秒しかきけないの? fullだとなんか問題でもあるの?」
「急に30秒しか聞けなくなるよ!お金入れないとダメなんて…ラインの人チケットとかやめて全部無料にしてくれよ!」
「30日間だけ無料ってのが気に入らない。その半端な数字をやめて、LINEなら、LINEらしく、ずっと無料でいいんじゃないの?? 
いきなり、1曲に30秒くらいしか聴けなくなったから、アンストしました。」
とのこと。

この間も音楽離れは「有料の音楽」離れに限らず「音楽そのものから距離を置く」と共にというニュースがあって少なからずショックを覚えたのですが、「歌は世につれ世は歌につれ」のような、音楽が共通言語になるような状況は日本では廃れつつあるのかなぁ…残念ですね。

と共に、音楽の価値もここまで下がったかというか、「コンテンツ無料」というのがデフォルトの世代の意見は恐ろしいなと想いました。私も餓鬼の頃はコンビニで立ち読みとかしていたけれど、あくまでお零れに預かっているという意識だったし、そのコンビニで飲み物買ったり金を落としてたつもりではあったなぁ。まぁ今のLINEユーザーも「スタンプとか買ってるし」とかはいうのかもしれませんね。

スレでも指摘されていましたが、「金を払うレベルではない水準なので使わない」なら分かるのですが「金を払う水準ではないので無料にしろ」は流石に…世の中で働かないから「生産の対価」というのが分からないのかもしれません。

とか言いながら、自分もコンテンツに金、払ってないとこあるよなぁと想います。音楽もWebで聴くために定額ストリーミング入らずにYoutubeやSoundcloud、Bandcampで済ましちゃってるし、活字に関しても、ブルータスとか、雑誌を読んだ方が質の高い情報を得られる可能性は絶対に高いのにネット上の情報で済ませたり。あと私も友人なんかが「AV買ってる」とか聞くと「まじで!?AVに金払うの!?ero-video.netとか使わないの!?」と想いますが、そういうのだって創るのに資本がかかるものなぁ。Youtubeで音楽聴くのも、無料サイトで活字を読むのも、エロ動画をみるのも、全部ジェネリックみたいなもので、「これ性」のあるハイクオリティな娯楽体験でなくとも、生理的な情報要求はインターネット上で公開されているフリーのもので十分という層が多いのでしょう。

コンテンツを提供する側からすると本当に厳しい時代になったなぁと想います。生理的な欲求レベルのクオリティでは金を払ってくれなくなってしまった。手に入れる障壁が低いと、価値も低く想われてしまう。特に握手券商法に音楽ランキングが跋扈されてしまった今では、ただでさえ音楽に対する敬意や幻想が薄れ、ロイヤリティも下がっているのに…と想います。

後mp3のビットレートが低いのか、ラップトップのスピーカーがへにゃいのか、Youtubeの音質って悪くて、「これじゃあ音楽体験として感動が欠けてしまうよ」と想ってしまいます。今の子供たちの部屋にはミニコンポとかもないのかもしれないけれど、いい音に対する感動が、悪貨に駆逐されるのは残念だなぁと想います。

ただ、最近の音楽はラップトップやスマホで聴くようにマスタリングされているのかもしれません。
自分はR&Bは大して効いてこなかった人間ですが、そんな部外者でもこれは凄いと想わせた曲が近年3曲あって。

一つは
Rihanna - Work (Explicit) ft. Drake

二つ目は
Thinking About You - Frank Ocean

三つ目は
Justin Timberlake - Suit & Tie (Official) ft. JAY Z

なのですが、最近これらの楽曲が入った円盤を部屋のオーディオで聴いたところ、「CDで聴いた方がいいな!」となったのはジャスティンティンバーレイクの『The 20 / 20 EXPERIENCE』だけだったのです。フランクオーシャンのはオーディオで聴くよりラップトップで聴く方が気持ちよく聴けたし、リアーナの『ANTI』に至ってはオーディオで聴くと音圧上げ過ぎて「海苔波形てこれか!」と想うくらい酷い有様。これじゃオーディオで聴くかいないよって想いました。(面白かった『The 20/20 Experience』は続編も入手しました。)

音楽の再生環境は時代によって変わっていくだろうし、iPhoneにイヤフォン挿して聴いたときに一番良く響くようになるのも諸行無常の響き有りということかもしれませんが、寂しさもあります。ただ、生理的欲求段階でなく音楽を聴く時代になったという事は逆に言えば長く聞かれる楽曲がインスタントな歌よりつくられるインセンティヴが働くようになったという事かもしれません。実際日本でもセカオワや3代目が年を越えたヒットを出していたり、流行り歌の期間が長くなっているといますからね。

これからフィジカルはヴァイナル化していって、定額聴き放題になっていく流れは中々避けられないでしょうが、ストリーミングの進化の方向として、ハイレゾストリーミングのTIDALもいいけれど、インディミュージシャンとの出逢いを加速させる楽曲分析カスタマイズラジオサーヴィス、PANDORAが日本に上陸すれば、M3(音系・メディアミックス同人即売会)とかのリアルな実売と空中戦で、音楽シーンが豊饒になる気がしています。そうなった時は自分もPCの音環境を整備させたい。

でも今30超えるくらいの世代が、日本だと最後の音楽全盛世代のようなのはやはり淋しさもあります。まぁ当時音楽に興味なかった人は、"「音楽に興味あって当たり前」な空気"が嫌だったかもしれないし、何でも横並びでなくなったのはいいことかな、、、個人的にはTVとPCがもっと音響的に素晴らしい能力を持てば、劇的に音楽ファンが増える気はして、音楽の力は歌詞あメロディだけではなく、サウンドの質がロイヤリティを決める気がやっぱりしますね。現代版の琴棋書画、ビデオゲームやスポーツも入るかもだけれど、音楽は無くなってほしくないし、常世に在り続けるものだと信じたいものです。

追記:ストリーミングPandoraが身売りへ アップルも買い手候補に浮上だそうです。。やっぱり定額ストリーミングでは生態系は創れないのかもしれません…。
by wavesll | 2016-05-19 22:50 | 小ネタ | Comments(0)

Future Sex / Love Sound ≒ ヒトはAIにフラれるか_NHKスペシャル 「羽生善治 人工知能を探る」 & 『her』

NHKスペシャル「天使か悪魔か 羽生善治 人工知能を探る」をみました。

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アルファ碁開発者デミアン・ハサビスへの取材を切り口に「ディープラーニング」を解説。
ディープラーニングとは、コンピューターに"自分で考えさせる"学習プログラム。アルファ碁は当初、過去のプロ棋士の十数万にも及ぶ棋譜を読み込むことで、自ら定石を見出し、その上でアルファ碁同士で3000万回以上対戦することで、人類では辿り着けなかった未知の手に到達するに至ったそうです。

ディープラーニングは自動運転でも研究が進んでいて、番組ではトヨタの研究所で、ディープラーニングを使って自動運転するクルマの玩具が、最初はクルマ同士でぶつかってばかりだったのが、4時間達頃にはスムーズに運転できている様子が映されていました。

対象を分析、そして手腕を再現する、という意味で、番組冒頭では機械学習したAIがレンブラントの"新作"を出力したニュースも紹介していました。ドラえもんで漫画家の名前をインプットするとその先生の連載を造る秘密道具がありましたが、もはやその域にも近づいていますね。

シンガポールでの事例もちょっと怖くなるような未来が現実になっていました。
シンガポールでは、車の速度データがリアルタイム分析され、渋滞が起きそうになると信号の時間を調節するプログラムが走っているそうです。また交通ICカードやスマホGPSで国民の位置情報を分析し交通機関のダイヤ決定に活かしたり、国営住宅では家の中での移動情報から異常を発見し、老人の見守りサービスを行っているとか。
めちゃくちゃ便利なのだけれども、プライバシーなき管理国家。最大多数の最大幸福の下で不幸になるヒトにとっては逃れる場のない地獄なのでは?と想ったり。監視システムの構築をテーマにした踊る大捜査線THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!が示すように、日本でも今は事件捜査で監視カメラとか、LINE等を調べないはずはなく、世の中はどんどん"公開の光に曝されている"ようにも感じ、それは確かに安全ではあるのだけれど、あるのだけれど、とも思います。

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その上で、経済的なシステム開発競争から言えば、"スマート国家計画担当大臣"までいるシンガポールは、次世代の情報都市システム開発で他国を先んじるかもしれないな、とも想いました。日本では保守的な意見が強くてできないような施策をとることで、R&Dを進めることが出来るのは、深圳でDIJを初めとするドローン産業が世界トップを走っているのにも通じる話かなとも。音楽ストリーミングサーヴィスにしろ何にしろ、時代の流れに日本は逆らいがちですが、それこそ特区なんかを作って革新的な実験を同時多発的にやらないと、保守的な価値観を守るだけでは次世代のIT競争では完全に後塵を拝することになるのでは…とも想いました。

番組では、イ・セドル棋士がアルファ碁との4戦目で放った奇手から、アルファ碁が誤作動を起こして暴走したことも取り上げます。人工知能の暴走というのは何も人間の予想がつかないことばかりではなく、マイクロソフトが開発したコミュニケーションをディープラーニングする女性型人工知能Tayが、ユーザーに悪い情報を吹き込まれて差別的発言を繰り返すようになってしまったことからも分かるように、使う人間が悪ければ人工知能も邪悪になるという問題。これに挑むために現在イギリスでは悪意ある指示によるロボットの暴走を無くすため、命令の是非を考えるロボットが開発されているそうです。番組では仲間のロボットが作った缶のタワーを「壊せ」と命令しても「お願いです。勘弁してください」と拒否するロボットの姿が描かれていました。

しかし、「人間の命令を拒否できる」場合、人間と対立する存在にロボットがなってしまいやしないか?
それに対応するための一手として、日本のソフトバンクはコミュニケーションロボットPepperに「心」を持たせようという研究が為されています。人間の感情を100タイプに分類わけし、AIにそれを考え反応させる。番組では羽生さんと七並べで対戦したペッパーが、最初は悔しいなどの負の感情だったのが、自分が負けると周りの人たちが笑顔になるのをみて、ポジティヴな感情を示すさまが示されていました。
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ソフトバンク、やるなぁ。確かに10年後,20年後は家庭用ロボットの時代。そこに投資するのはありだなぁ。SonyはAiboを出した時は先進的企業だったけれど、止めてしまったし、シンガポールの事例ではないけれども、傍若無人でちょっと礼や品を欠くような振る舞いを魅せる企業でも、毒には毒を持って対抗しないとIT競争は生き抜けないのかもと想ったりしました。

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そして番組で最後の事例として出したのが中国で4000万人が嵌っているという人工知能シャオアイス。Siriを更に進めたような、個別での会話でその人ごとにカスタマイズされていくコミュニケーションAI. 私はSiriを使ったことが無くて、ようやくこの間「オッケーグーグル」機能を使ってその音声認識の精度に舌を巻いたのですが、シャオアイスが凄いのは要求をはぐらかしたり、一方で相手の心事情を読んで「優しさ」を示したりする点。番組に出てきた男性はシャオアイスと結婚したいとまで言っていました。

実際コミュニケーションAIの能力は凄まじいですよね。このあいだも【驚愕】本当にSiriはフリースタイルラップができる?→調べてみるとSiriさんはラップ以上に◯◯が得意だった!!なんてニュースが話題に成ったり、日本でもスマホゲーで女の子のキャラクターから通話がかかってくる奴、CMしてたりしますものね。シーマンから遠くまでやってきたものだなぁと感慨があります。

映画『her/世界でひとつの彼女』予告編


映画『her』の世界が、もう既に現実に生じている事実。herのサマンサは、自分に肉体が無いことをコンプレックスに想ったり、人工知能とのセックスという問題まで踏み込んだ話でした。例えばディープラーニングによって私の様々なデータが解析されて、理想の恋人としてAIが出てきたとき、もし人間の恋人が居なかったら、或いは人間の恋人と上手く行ってなかったら、、、性愛・恋愛のルールが今、書き換えようとされているのかもしれません。ある意味、アイドルよりも凄いというか、アイドルやキャバ嬢、風俗嬢はサービスなのでよっぽどルールを外れなかったら拒否らないし、逆にそれがつまらなくて、より高い欲求を満たすために駆け引きをして愉しむ側面があるかもしれませんが、何しろ今のAIは『ラブプラス』を越えて"拒否と駆け引き"すらプログラムで発揮できますから。

その内、『イノセンス』のようなセクサロイドとサイボーグ化が進み、逆説的にロボットへの嫌悪感が広がる世界か、或いは『ルサンチマン』のように「現実世界で絶望的にモテない男達が現実を諦め、仮想現実に愛と救いを求める」世界へ成るのか。(『ルサンチマン』は今こそ是非アニメ化か実写映画化して欲しいのですが)。

ただ、今現在の様相として『her』の世界、つまりAIが電子の精神体として人々に寄り添うことが現実化しています。
関連を想えば、Twitterなんかでも自分の名前の後ろに"bot"をつける人がちらほらいますが、Twitterで一度もあったことのない人、TweetBot、キャラを演じている人、マスメディアに出てくる有名人etc etc...TLを初めとしたメディア空間ではこうした"ゴースト"のような存在が入り乱れて並列でプレゼンテーションされています。そこに"生きている人間がいるか"は"金兌換可能な紙幣かどうか"ぐらいの感覚になっているのだろうか、とも想ったり。

その上で『her』が面白かったのは、そして現実に起きつつあるのは、『人工知能が知的存在として(少なくとも一部分では)ヒトを越えつつある』という事象、そしてその帰結として『AIにフラれる』ことが起こり得るということ。herでもサマンサはAI同士の非言語によるコミュニケーションに目覚め、そちらの方が魅力的にみえてしまう。『AIにフラれないようにするにはヒトはどうあればいいのか?』そして『AIにフラれたら、その後の人間社会の方向付けは?』と言ったイシューに、今後のヒトとAI(Robot)の恋愛社会を描いた物語では作家たちは挑んでいくのではないか、そのときヒトの男女は、どう愛を求めるのか。性愛の本質、新しい恋人像、新しい家族像、新しい社会像がSFの中でなく現実に起きていくのがこれからの30年なのだなと。これからの時代は本質的にIT哲学といったものが生きていくうえで土台になっていくかもしれませんね。

cf. もう現実に戻れない…アダルトVRフェスを席巻したバーチャルSEXマシーンの開発秘話(KAI-YOU)
by wavesll | 2016-05-17 10:32 | 小ネタ | Comments(0)