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辺境探検家 高野秀行氏講演会 'N' 早稲田大学探検部カムチャツカ遠征報告会

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大隈講堂で行われた辺境探検家 高野秀行氏講演会 'N' 早稲田大学探検部カムチャツカ遠征報告会に行ってきました!

今夏(2017年)実施されたカムチャツカ未踏峰登頂遠征隊の報告会とクレイジージャーニー等でも活躍が伝えられる高野秀行さんによる講演会。

先ずは高野さんの講演会で、早大探検部時代に行ったコンゴでのモケーレ・ムベンベというネッシーのようなUMAを探索した探検の記録VTRが流れました。

高野さんはこのムベンベ探索で3度コンゴを訪ね、1回目は政府と探検の許可やムベンベが見つかった時の所有権や写真の権利の交渉を行い、VTRで流れたのは2度目の40日の探検の様子。

村に辿り着き、村人の間の話し合いの末探検が許され、村人と道なき道をムベンベがいるテレ湖まで60km歩み、ボートでのソナー探査と夜は暗視スコープでの24時間での探査を行った様子が流れました。

探検チームの一人がマラリアにやられたり、食料がなくなり飢えからコンゴ人が誤射したゴリラを食べたり、当地で普通に食べられているというチンパンジー、大蛇、鰐その他を食べたりと言う映像が。

高野さんはもう十年前とかからこうした映像で講演をしているそうですが、昔はゴリラとかの時に笑い声が起きていたのが最近は倒れる生徒が多くJKキラーと言われると笑っていいのか悪いのかみたいな話も。

コンゴ人民共和国は東西冷戦で東側で入国が難しい国だったのですがペレストロイカで緩んだところを上手く交渉したということでした。

ムベンベ探検の頃はUMA探索は邪道と言う捉えられ方をされたそうですが、そこから書籍がヒットし有名になると後輩たちがUMA探検を真似するようになって。ある後輩が松戸にいる”マツドドン”を探すというので「そりゃないだろ」と言ったら「高野さんには言われたくない」と言われ、「悪しき前例をつくった」とw

現在も、現役時代に書籍を出した高野さんの影響力は絶大だそうです。
高野さんが作家として生きていくのを意識したのはムベンベ本のすぐ後、「おいしい」とw

作家としてのキャリアにおける探検部時代の意義を聴かれると「未だに探検部の延長線上」で「OBでなく未だに現役のつもり」とのこと。

さて、探検部の人々は「探検とは?」ということを強く深く考えようとしていました。高野さんにも「探検とは何か」ということを聞いていて。

すると現役生がこの夏に行った「リニア新幹線のルートそのままで南アルプスを踏破」を取り上げて、「これが探検部ですよ」とw 「探検部は凄い上の先輩たちから現役までやってることや感性が変わらない」「(探検の意義として)タテマエをいうのも昔から。でも辻褄が合わずに破綻する」とw

自分が面白いと想える、他人がやってないことをやってしまう。適当な名目を付けて最後は破綻しても、それが探検だ、と。

「辻褄が合いすぎるとだんだん狭くなる」そうです。例えば反体制に関しても「反体制な人も自分たちが権威になってしまい、ハラスメントをしてしまったりする」「権威になったり皆から尊敬されることは良くない。尊敬されないでいるのは大事。最後は破綻」とw

そんな高野さんは現在アフリカ納豆を探査しているらしく、もしかしたら西アフリカが世界最大の納豆エリアかもしれないらしいです。

探検に際して探検部のコネとかは余り今は直接の効果はないけれど、いつも同行して映像を撮ってくれるのは探検部で2コ上だったNHKの映像ディレクターだそう。

今の時代は映像を残すことは必須で、文章とは他に映像でしか伝わらないものもあるし、5年後10年後に幻になってしまうかもしれないものの記録としても昔より重要だとの事と言うアンサーで講演は〆られました。

5分の休憩を挟んでいよいよ、今夏行われたカムチャツカ探検隊の報告。こちらは30分程の映像でその様子が映されました。

探検隊は6人。そもそもカムチャツカを選んだ理由は今まで政治的な理由からあまり探検隊が踏み入れていない土地で、今回の目的は外国人未踏のレジャーナヤ山に登ること。費用は自分での負担の他クラウドファンディングでも集めたそうです。

来訪した場所はチュクチ人という人々がトナカイと共に暮らす場所。事前にロシアの国家機関から探検の許可を得て、インストラクターも雇っていたのですが、村の長が許さないと探検はできず、予定が狂い、更に水害で当初使う予定だったキャタピラトラックが使えず、計画に狂いが。

隊はボートと徒歩で進みます。ボートに載せられる重量から食料を削り、釣りをしたりベリーやキノコを食べながら進みます。道中で一人の隊員が足を捻ったり、1cmもある蚊にメンバーたちが苛まれたり。テントの裏にクマの足跡があったことも。

7日遅れでベースキャンプとなる小屋(あったはずの村は既になくなっていた)に辿り着くも、残された日数は僅か。ここでレジャーナヤ山に登ることを諦め、小屋から近い山で、人類未踏峰であろう山に登ろうと計画を変更します。

ここでつらい決断が。足を痛めている隊員を連れていけないと隊長は判断。彼女も多くのコストをかけてここまで来たのだから納得できないと当初言いましたが、最後はその決定に心を決め、5人で”ワセダ山”と名付けた山にアタック。

無論誰も道を切り拓いていない山、完全に己たちで判断し山を登り、見事登頂!
隊長は「この山は当初最終目的地点ではなかった。悔いることもあったし、中途半端な結果。ただ、大学時代は人生における途上、ゴールではない。将来行き詰ったときにこの経験を想いだすことで力になると想う」と感慨を述べていました。

そして帰国。テロップだけで、帰りの時に撮影担当の隊員が食中毒になりヘリで搬送されたとも流れました。

映像の後で探検隊6人がそれぞれ探検を振り返る一言を述べていました。

装備と訓練担当だった隊員は「実力が足りなかった。この後悔を活かしていきたい」
医療係だった隊員は「事前の準備が大事。自分が持っていけるものだけが確実」
広報を担当した隊員は「ただ知ってもらいだけでなく興味を持ってもらえるように苦心した」
撮影係の隊員は「探検とは現地に行くことでしか手に入らない情報を獲ってくること」
記録係の隊員は「探検は報告書をつくり何をしたか伝えることが重要で只楽しむ旅とはそこが違う」

そして隊長から発表されたのはロシアに問い合わせた結果、探検隊が登頂した山は一度も登頂された記録がない未踏峰だという返答が来たということ。ワセダ山という名前を申請しているそうです。

部員たちが常に「探検とは何か」を考えるというのは、今の地球上には人類が未踏で且つ”面白そう”な場所が少なくなってきているからでしょう。マルコ・ポーロやバスコ・ダ・ガマ、或いはハイラム・ビンガムの時代とは大きく状況が変わりつつあります。

「探検」、未知のハントをすることが難しい時代だからこそフロンティアの新雪を探して狩り暮らしの彼らは「探検とは」を自問するのでしょう。

今回の探検を最後に探検部をやめる部員もいるそうです。それだけ壮絶な体験だったということでしょう。

報告を聴いて思ったのは”失敗したということ、悔いが残ることは限界に挑んだ証であり未来に可能性があるということ。誰も行ったことのない場所へ行く、道を切り開く、それこそが最上の行為”だということ。1次情報、或いは0次情報ともいえる獲物を狩る彼らの姿に大変な感銘を受けた夜でした。
by wavesll | 2017-10-31 00:26 | 小ネタ | Trackback | Comments(0)

第69回正倉院展@奈良博レヴュー

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正倉院展をみてきました!
あべのハルカスでの北斎展から谷町四丁目G CURRYでの牛すじGカレーを挟み、近鉄奈良駅についたのは13:14分位。

”どれくらい並ぶのだろう?去年の正倉院展では1.5hくらい並んだな”と想っていたら、なんと全然列が短い!北斎展や京博の国宝展に美術クラスタが分散したのかもしれません。

開場に入るとすぐに目に飛び込んでくるのが上にも画像を載せた≪羊木臈纈屛風≫。

ろうけつ染めの屛風。日本でつくられたことが確実だそうですが、実は天平期に日本には羊がいなかったそう。伝搬した西方文化に心躍らせ想像の翼を羽ばたいた古代の人々の思いが素晴らしい。

また、見ている内に気づいたのですが、木の幹をエメラルドグリーンの猿が登っていて。尖っているというより円やかなハイクオリティの美しさが正倉院好みですね。

この隣にはもう一つろうけつ染めの屏風である≪熊鷹臈纈屛風≫が展示してあるほか、≪臈蜜≫の展示も。ミツバチの巣から作った蝋なのですね。

≪鳥花背八角鏡≫は鳳凰、麒麟、狻猊が描かれた鏡。≪槃龍背八角鏡≫は双竜と亀の鏡。また≪緑綾帳≫は青銅色に美しく、≪木画螺鈿双六局≫の木画という技法も面白かったです。

正倉院展では古代の楽器が去年も展示されていましたが、今年も大理石製の縦笛の≪玉尺八≫と樺巻装飾の縦笛の≪樺纒尺八≫が笛の音と共に展示され、西方の竪琴≪漆槽箜篌≫はオリジナルと再現品の二品が展示されていて、ロマンが掻き立てられました。

そして≪碧地金銀絵箱≫は本展覧会の白眉の一つ。エメラルドブルーに金と黒で彩られたヒノキ製の箱は英国茶会にでも出てきそうな玲瓏さがありました。

≪蘇芳地六角几≫は仮玳瑁というタイマイのようにみせる加工が面白かった。

≪玉長坏≫と≪玉器≫はウイグルのホータンからの素材でできた逸品。古代の行路にワクワクします。

≪緑瑠璃十二曲長坏≫もハイライトの一つ。下からのアングルも鏡でみれ、エメラルドのような緑の透明な美を愉しめます。そしてよくみるとウサギの文様が彫られていて◎

≪金銅水瓶≫も印象的な逸品。注ぎ口の鳥の意匠も面白いですが、首の処の幾何学的なデザインがロボロボしていて気に入りました。

≪犀角坏≫はインドサイの角の盃。≪斑犀合子≫はサイの角の腰飾り。古ならではだなぁと。

鼈甲の蔓が巻き付いたようなカタチの≪玳瑁杖≫は今回の一番うれしい発見の品でした。プリンスみたいなハートのデザインが面白い≪錫杖≫も良かった。

水晶・真珠・瑪瑙などでつくられた≪琥碧誦数≫は青ガラスが泡のような≪雑玉誦数≫や水晶が雫のような≪水精玉≫と合わせて麗しの宝石ショッピングで売って欲しい◎念珠の箱である≪亀甲形漆箱≫も黒に金のロゴが真に好い感じでした。

≪東南院古文書 第三櫃 第十八巻≫という東大寺の荘園に関する越前国の報告書は本筋とは関係ないけれども「糞」という漢字が書かれていて、”古代のフォントハンターだったらこの「糞」は使いたいな”と想いましたw古文書だと紀伊国・淡路国の決算報告書、阿波国の納税基礎数報告書である≪正倉院古文書正集 第三十七巻≫も細い字で綺麗でした。

≪黒瑠璃把白銅鞘金銀珠玉荘刀子≫はメスみたいな古代の小刀。≪沈香把仮斑竹鞘樺纒金銀荘刀子≫も木を巻き付けた技巧が面白かった。

また≪紐類残欠≫という水晶玉の腰飾りの網袋の組みひもは『君の名は』効果かもと。

≪赤紫黒紫羅間縫帯≫はドット欠けの美。≪雑帯≫は古代のギンガムチェック。≪最勝王経帙≫は経巻のつつみで迦陵頻伽が描かれていてその残片の≪組帯残片≫も印象的。そして竹ひごで編まれた≪竹帙≫が”これはアフリカか!?”と想う位ヴィヴィッドで好きでした。

聖語蔵からは≪阿毘達磨大毘婆沙論 巻第七≫の筆運びが美しくて良かった。また鳩摩羅什の経典を写した≪仏説菩薩蔵経 巻下≫もありました。

国宝展、北斎展からするとデザート的な見応えでしたが、正倉院展をデザートにできることに此の秋の関西のアート展の底知れなさを感じます。

国宝指定の基準の一つに”他に類のない独自の意匠”というものがあるそうですが、≪羊木臈纈屛風≫なんかはその域に達していると感じたし、その他≪碧地金銀絵箱≫や≪玳瑁杖≫など幾つも素晴らしい名品があり、好い展覧会でした。
by wavesll | 2017-10-30 08:29 | 展覧会 | Trackback | Comments(0)

北斎 -富士を超えてー @あべのハルカス美術館 画業の究み、天然自然の筆致の奥義

あべのハルカス美術館にて北斎展を観ました。
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6時半の羽田発に乗り、伊丹から天王寺へ。大体8:40過ぎにあべのハルカスに入り、16Fへ。
そうするともう少しだけ入場列が出来ていて、そちらに並びました。

別にチケット列もあったのですが入場券も販売は10時からなので、事前にコンビニなどで券を買っておくのが良いかと想います。入場の際に言えばオリジナルのチケットと代えてもらえます。

”開場の1時間前に着いちゃったよ”と想ったのですが、これ、お薦めです!何しろ一巡目に入った時に空いた状態でほぼノーストレスでみれます。

2周目をしようとまた最初に戻ると、人混みで絵がみれるって状況ではなくて。そうした意味でも8:50くらいから並ぶとエクスクルーシヴな時間を過ごせると想います。

中に入ると、北斎の60才を越えた時期からの作品群が。≪玉巵弾琴図≫の妖玄な女性。≪獅子図≫の金地に墨でバッと描かれた獅子達。≪為朝図≫の鮮やかな武の姿も良かった。

北斎はダ・ヴィンチのスフマートのような柔らかい質感の色彩の作品を幾つも出しており、このスタイルでは≪節家の商家≫≪花見≫≪端午の節句≫や子供たちの弾ける元気さが楽しい≪初夏の浜辺≫などがありました。

≪千絵の海 総州銚子≫の荒ぶる波に踊る船、砕け散る波頭が印象的な≪波濤図≫が次に。

≪東海道名所一覧≫は地図としてのアート。後にこれの大陸版≪唐土名所之絵≫なども描かれました。

その後は≪富嶽三十六景≫。太田記念美術館にて≪冨嶽三十六景≫全46枚をみた後だったのでここは駆け足で。照明の光量もあり、太田記念美術館でよりヴィヴィッドな色彩で。参考資料で≪凱風快晴≫の初期ver,であるピンク富士のパネルもありました。

次に展示してあったのが≪諸国滝廻り≫シリーズ。≪諸国滝廻り 東都葵ヶ丘の滝≫の水流描写の立体感。≪諸国滝廻り 美濃ノ国養老の滝≫の直角に落ちる轟滝。≪諸国滝廻り 木曾海道小野ノ瀑布≫の岩肌のようにストレートな滝姿。≪諸国滝廻り 和州吉野義経馬洗滝≫の蛇行と馬がまた良くて。

≪地方測量之図≫なんて面白い題材の絵も。

また≪諸国名橋奇覧≫も面白くて。≪諸国名橋奇覧 飛越の堺つりはし≫という凄い橋景色や≪諸国名橋奇覧 三河の八つ橋の古図≫には尾形光琳の≪八橋図屏風≫を想起したり。≪諸国名橋奇覧 すほうの国きんたいはし≫も線雨がシンプルによかった。

ここから植物彩画。≪百合≫のデザイン性、≪芥子≫の美、≪牡丹・蝶≫の香ってくるような描写。≪朝顔・蛙≫は楚々としてました。

≪垂桜・鷽≫の鮮やかな青に浮かぶ花々。≪辛夷花・文鳥≫の可愛らしさ。≪藤・鶺鴒≫の洒落たデザイン性。≪杜鵑花・子規≫の晴天。

≪長春・黄鳥≫の霜降りのばら。≪白粉花・鵤≫のこれまた可愛い鳥の表情。≪鳶尾草 瞿麦 翡翠≫のカワセミの良い表情。≪小薊・鵙≫のアザミのとげとげな美、≪虎耳草・蛇苺・鵙・翠雀≫のこまっしゃくれた鳥の顔が好い。

そして個人的に大のお気に入りになったのが≪巌頭の鵜図≫。黒羽の中に銀河な輝きがあって。花鳥図から恒星へ行く素晴らしさ。大変気に入りました。また≪桜に鷲図≫も好ーいフォルムでした!

≪滝に鯉≫は登竜門を描きながらも上を目指さない鯉が主眼だと聞いて面白いなとw≪露草に鶏と雛≫は下絵もあり、それが良かった。

≪雉に蛇≫のキジの尾とヘビの対応が面白く、≪鷹図≫の反り感も最高でした。

また美しい≪若衆図≫や生活用品を描いた≪馬尽 馬除≫、≪馬尽 竹馬≫なんてのも。

北斎は半ば仙水としての中国も描いていて。≪花和尚魯智深図≫の太鼓腹、≪詩哥写真鏡 李白≫の今にも詠いそうな體の表情、≪詩哥写真鏡 杜甫≫の雪景色。月を望む≪詩哥写真鏡 安倍の仲麿≫≪詩哥写真鏡 春道のつらき≫なんてのも。

≪鬼児島弥太郎・西方院赤坊主≫も迫力がありました。

≪百人一首うばがゑとき 柿の本人麿≫の斜めの煙は≪百人一首うばがゑとき 源宗于朝臣≫では煙が滝の様。

≪歌占図≫も文人振りも良かったし、≪女三の宮図≫や≪白拍子図≫のカクっとした服飾がまた良くて。

≪『和漢絵本魁』初編より「那智の滝に文覚荒行 其二」≫は滝の飛沫がオーラのようで。これは根付にもなっていました。≪百物語 笑ひはんにゃ≫の不気味さw≪蓮上釈迦図≫もどこかインチキ臭いお釈迦様がw

≪日蓮波題目画稿≫は海に朱で画こうとしている日蓮が。≪釈迦御一代記図会≫の鬼の凄味。≪鍾馗図≫の亀甲のような腹も凄かった。

≪画本葛飾振≫の侍のカッコよさ。≪『大日本将軍記』初輯≫も素晴らしく、≪下絵帖≫なんかも。≪肉筆画帖≫は鷲や蛇が良かった。≪『富嶽百景』下絵 「写真の不二」≫には朱で下書きが入っていました。≪『富嶽百景』下絵 「夕立の不二」≫≪『富嶽百景』下絵 「文辺の不二」≫も良かった。

≪北斎自画像≫は”此のジジイ本当に楽しそうにはしゃぎやがる”とw≪老人像≫には狂気すらあけすけに見せていて良かった◎≪日新除魔図 閏九月廿一日≫なんてのをサラっとかけちゃうのが凄い。画狂だ◎

娘の応為の作品も飾られていました。≪月下砧打ち美人図≫や≪女重宝記≫では北斎より女性の綺麗さ、強さが描かれていて。≪関羽割臀図≫では腕の手術をされながら囲碁を打つ豪壮な画。≪応為書状≫では親しみが持て且つかっこいい字でした。

そして再び北斎。≪鳳凰図天井絵彩色下絵≫、凄い。正に火の鳥。

そしてここからがクライマックス。≪濤図≫。小布施の上町祭屋台天井絵であるこの濤は、北斎の波の究極。浪のなかにクエーサーのような飛沫が閃いて。

銀河、自然天然の、すべてをぶっとばすような美しさに偉大なるArtの力を感じました。額縁も北斎が下絵を描いていて。中には羽が生えた天使?も北斎は西洋画も研究していたそうなので本当に天使かもしれません。

北斎の画力は人生を重ねるごとに究極へ向かっていて。晩年の作は真に神域へ迫っていました。

≪鬼図≫はのん兵衛オヤジな雰囲気が伝わってきて。≪富士に松図≫は2本の松を中央に置く構図が美味い。≪流水に鴨図≫は水面の波が時空を越えていくような感覚。≪画本彩色通≫も凄い。

≪河骨に鵜図≫の荒涼さ。≪胡蝶の夢図≫は文人のオッサンの優男な感がいい。≪狐狸図≫はブリーチのあいつじゃないかw

≪七面大明神応現図≫は日蓮が龍を呼び起こす図。≪源三位頼政図≫も凄い画。≪李白観瀑図≫は自然の前で人がなんと小さいことか感じさせてくれました。

そして≪富士越竜図≫。魅入られました。北斎が辿り着いた富士の極致。

「己 六才より物の形状を写の癖ありて 半百の此より数々画図を顕すといえども
七十年前画く所は実に取るに足るものなし 七十三才にして稍(やや)禽獣虫魚の骨格草木の出生を悟し得たり
故に八十六才にしては益々進み 九十才にして猶(なお)其(その)奥意を極め 一百歳にして正に神妙ならんか 百有十歳にしては一点一格にして生るがごとくならん
願わくは長寿の君子 予言の妄ならざるを見たまふべし 」

と云った北斎。人生を進むごとにどんどん上手く凄くなっていく筆。この富士は、不死の希と、しかし魂が天へ昇っていく感覚があらわれるような覚りを感じました。

≪雲竜図≫はそんな神域が闇から呼び起したような迫力があって。

そして≪雪中虎図≫の夢幻。北斎翁が最後に辿り着いたのはファンタジックなときめき。画聖は天へ浮かんでいきました。こんなクライマックス、画業の究み。高みに至る人生の軌跡に感動しました。
by wavesll | 2017-10-29 07:19 | 展覧会 | Trackback | Comments(2)

太田記念美術館にて葛飾北斎≪冨嶽三十六景≫全46枚をみた

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表参道の太田記念美術館にて葛飾北斎 冨嶽三十六景 奇想のカラクリ展をみてきました。

冨嶽三十六景は実は36枚ではないことを御存じでしょうか?私は初めて知ったのですが、人気がありすぎて10枚追加し全46枚あるのです。そしてこの展覧会はその全作が展示されるというもの。

生で観る冨嶽三十六景は、浮世絵の実物に加え保存のため照明の光量も抑えているため、色味のヴィヴィッドさはそこまででもないのですが、実物大の浮世絵に顔を近づけてみると、その筆致というか摺致から線一本一本の迫力が伝わってきました。

本記事では、各景に一言コメントをつけていこうと想います。冨嶽三十六景はWikipedia Commonsで公開されていて各画にはそこからLinkを張りました。

46枚の順番はつくられた順ではなく、今回の展示の順番でコメしていきます。タイトルの”冨嶽三十六景”は省略しました。

≪凱風快晴≫:富士の赤が美しい。鰯雲のような雲の姿も雄壮さを湛えている。

≪相州梅澤左≫:ベロ藍(プルシアンブルー)の富士もさることながら、鶴が一羽一羽個性が伝わるような描写が素晴らしい。

≪常州牛堀≫:展示してあったものは藍と白の鮮やかなもので、船の勇美さが良かった。

≪山下白雨≫:北斎は富士山の特に山肌に非常に拘りをもって微細を描いているように感じた。右下の黄色の文様は雷だそう。そのデフォルメ具合も凄い。

≪甲州犬目峠≫:歩く人の大きさから景色の雄大さが伝わってくる。

≪五百らかん寺さゞゐどう≫:冨嶽三十六景には富士を眺める人々が良く描かれていて、これもその一つ。背中だけでも性格が顕れるような描写力が見事。

≪東海道吉田≫:このGIFでも有名な絵。茶屋に集まる人々の江戸時代らしいちゃきちゃきした感じが好き。

≪礫川雪ノ且≫:三十六景唯一の雪景色。しんとした雪景と、人物たちの華やいだ空気の対比が印象的。

≪東海道程ヶ谷≫:左端の人物の立ち姿、好きだ。

≪御厩川岸より両國橋夕陽見≫:水のもにょもにょした感覚が見事。

≪隅田川関屋の里≫:地を這う霧の造詣がスピード感を増す効果が。

≪ 神奈川沖浪裏≫:やはり凄い。白波はつづらのようにも見え、”そうかこれは富士の氷雪に呼応しているのか”と。

≪駿州江㞍≫:紙が吹き飛ばされることで目に見えない風が実体として描かれた逸品。

≪武陽佃嶌≫:様々な形の舟達が快く配置されている。

≪ 甲州伊沢暁≫:薄桃の射す朝景。みじたくしている人々の姿がまたいい。

≪甲州三坂水面≫:冨嶽三十六景はもちろん実在の場所を主題としているのだけれども、北斎はそこにモキュメンタリー的な手法と言うか、画としての面白さを求めて脚色を施したものも数多く在り、影が点対称に映るこの絵もそんな一枚。

≪遠江山中≫:本来あり得ない上と下から同時に鋸が挽かれる様を描いた作品。

≪東海道品川御殿山ノ不二≫:本来この方向から眺めると富士山はみえないが、そこは巧いフィクションとして描いている。

≪甲州三嶌越≫:真ん中の碧の巨木が大変に魅力的で、この巨木は他の処にあった矢立の杉を山深さを顕わすためにここに挿入したらしい。

≪青山圎??枩≫:無論東京からではこんなに大きく富士山はみえないが、ここではダイナミックに誇張されている。

≪隠田の水車≫:今の渋谷川の水車。水は本当は上には回らないが、ここでは絵の面白さのためにこうした演出が為されている。

≪ 尾州不二見原≫:円のリズムが非常に快い。

≪深川万年橋下≫:「冨嶽」なのに富士山がこんなにも小っちゃく、富士をみつける楽しみがあるともいえる。傘を深くかぶった釣人が格好いい。

≪登戶浦≫:鳥居が連なって海から立つ感じ、江川海岸の海中電柱っぽさある。

≪上總ノ海路≫:生で観るとグラデーションの美しさに吉田博に繋がるものを感じた。

≪本所立川≫:材木馬の縦の線の景観が美しい。

≪身延川裏不二≫:46枚目に描かれた一枚。富士は山嶺群の中に。

≪江戶日本橋≫:記念すべき冨嶽三十六景の一枚目。日本橋の雑踏ではなく、江戸城の遠景が描かれているのが興味深い。

≪江都駿河町三井見世略圖≫:三十六景の2枚目。これも三越の賑わいでなく屋根の人物たちや凧にフォーカスされているのが面白い。

≪東都浅艸本願寺≫:屋根がでかい。そしてまた凧。北斎、凧好きかも。

≪東都駿䑓≫:丘の緑の彩色、松から富士山に抜ける空円が美しい。

≪従千住花街眺望ノ不二≫:吉原の風景も北斎の目線だとこう切り取られる。

≪相州七里濵≫:湘南・七里ガ浜を江の島抜きで画くとは北斎もなかなかに狙うなぁw

≪下目黒≫:北斎は冨嶽三十六景で、有名な場所だけでなく通常取り上げられないような場所も描いている。これもそんな一枚。

≪武州千住≫:堰枠がアクセントになっていい感じ。また人体描写が素晴らしい。

≪相州仲原≫:なんでもないスナップショットのようで、きちりといい演技が人物に施されているのが見事。

≪駿州片倉茶園ノ不二≫:茶畑が描かれた逸品。また冨嶽三十六景に出てくる馬は愛らしさがある感じがいいなぁ。△とOのリズムが気持ちいい。

≪駿州大野新田≫:牛たちが逞しくも可愛らしい。

≪武州玉川≫:川の水面の線描の美しさと青と白のグラデーションが素晴らしい。

≪相州江の嶌≫:定番の観光ポストカードのようなデザイン。

≪相州箱根湖水≫:シンプルにデザインされた芦ノ湖の風景に山岩の斑点が面白い効果を生んでいる。

≪ 東海道江尻田子の浦略啚≫:36枚目の冨嶽三十六景。海の図像画線が真に綺麗。

≪東海道金谷ノ不二≫:そしてこれが37枚目。これは本当に凄い画!海波のデザイン性、そして波のリズムは丘にも伝わって。この絵をしれて良かった!

≪甲州石班澤≫:これもまた凄い。とてつもないスケール感があるのは漁師の”孤”が描かれているからかもしれない。

≪信州諏訪湖≫:描かれた時代にはもう失われていた幻の水城の風景を文書記録から蘇られた逸品。

≪諸人登山≫:実は冨嶽三十六景でこうした富士山の近景はこの一枚だけ。富士に登る人たちの勢いと風情が偲ばれる。

そしてこの展覧会では北斎以外にも、娘の葛飾応為の柔らかい夜の光が美しい≪吉原格子先之図≫や雅な≪源氏物語図≫、女性の身の施し方のマニュアル本に応為が挿絵を入れた≪女重宝図≫や歌川広重などが三十六景と同じ場所を描いている作品群、そして北斎が三十六景を描くときに参考にしたという河村岷雪≪百富士≫等も展示してありました。
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三十六景以外で特に身を見張ったのが北斎が三十六景を描き上げた後に描いた≪富嶽百景≫。白黒で画かれた富嶽百景の冊子が見開かれていたのですが、≪海上の富士≫という作品など、波濤から鳥達が生成され飛んでいく美事な奇想が描かれていて、”Great Wave”の先にまた進化した浪がありました。

北斎の絵の上手さ、取り分け人物の人格が顕れるようなカラダの描き方が抜群で。引き締まってきびきびした職人たち。ホクホクして楽しそうな町人。旅慣れた渡世人など、本当に上手い。

そして富士山。静岡の方に行くと、富士山が本当に良く見え、山に抱かれているような畏敬を富士に想います。江戸の都も富士山に抱かれていたのだなぁと。

そして最後に拙写真を。太田記念美術館から帰る夕闇の代々木公園からみえた富士山の影です。現代も富士の山は東京を抱いているのだと沁みました。

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by wavesll | 2017-10-27 22:29 | 展覧会 | Trackback | Comments(0)

Cornelius Mellow Waves Tour 2017 at Studio Coast

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ハイ・センスの塊。無機物や風景に生命をみいだすような音が、バンド演奏で鳴らされるとは…!ギターの迸る様はこれ突き詰めたらアートリンゼイクラスになりそうなくらい。

開演前は波音と音楽が鳴って。Shazamするとアンドリュース・シスターズの『せめて夢で』やSuzanne Cianiの『The Third Wave-Love In The Waves』等でした。

そしてスクリーンに映される4人の影。
一曲目は『いつか / どこか』。映像はMETAFIVEのように歌詞が小気味好く打ち込まれるものでした。

そこから『Drop』『Point of View Point』『Wataridori』等の代表曲ががんがん鳴らされて。映像はPVからのものや、GROOVISIONSなもの。

音が、本当にかっこいい。コンクリート打ちっぱなしの様な、テクノロジーが生命を帯びるような音。小山田さんの歌声がどこかネオテニーさを感じさせ、炸裂するGutarが圧倒的に格好いい音像を鳴らして。

そして『Surfing on Mellow Waves pt 2』が白眉で、映される波の映像が自然の構造物、伽藍としてみえ、電子音のように響く海猫の声、天上に昇るような音にアセンション?しそうになりました。

そして『GUM』から『Star Fruits Surf Rider』からの『あなたがいるなら』。

『Star Fruits Surf Rider』ってこんなにいい曲だったんだって想いました。トロピカルに彩色されるフロアに快く歌が響いて。

そして『あなたがいるなら』。この唄が聴きたかった。ただ、ただ、憧れ、恋しい人への想いを沁みじみと綴った音楽。”あなたがいるならこのよはまだましだな”。

大切な人に出逢える奇跡。その温もりに感謝が湧きいずる、泉のような歌だなと感じました。

ENではアコギをもってラフな感覚でMCなどもあり(本編はMC無しでした)メンバー紹介を。キーボードの女性はバッファロードーターの人だったのですね。

最後は『E』がガツンと。やっぱりこの轟、カッコイイなと。上質なパフォーマンスを楽しんだ夜でした。

Set list

1. いつか / どこか
2. Helix / Spiral
3. Drop
4. Point Of View Point
5. Count Five or Six
6. I Hate Hate
7. Wataridori
8. The Spell of a Vanishing Loveliness
9. Tone Twilight Zone
10. Smoke
11. 未来の人へ
12. Surfing on Mellow Wave pt 2
13. 夢の中で
14. Beep It
15. Fit Song
16. Gum
17. Star Fruits Surf Rider
18. あなたがいるなら

EN
19. Breezin'
20. Chapter 8~Seashore And Horizon~
21. E

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by wavesll | 2017-10-27 07:32 | Sound Gem | Trackback | Comments(0)

挑発する藝術の秘 アイ・ウェイウェイ《安全な通行》《Reframe》@横浜トリエンナーレ

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横浜トリエンナーレでのアイ・ウェイウェイ(艾未未)《安全な通行》《Reframe》は救命ボートと難民によって実際に使われた救命胴衣による美術館正面の外壁全面を用いたインスタレーション作品で、トリエンナーレの象徴ともいえる作品。

強力なヴィジュアル・イメージを放つ本作品に対して、Twitterでみた一つの意見に膝を打ちました。
それは「これはケバブなのではないか」という視点。

成程と。なぜ救命胴衣を縦に重ね連ねたかの一つの解としてケバブのメタファとして中東世界からの様を顕わそうとしたというのはあるかもしれないと想ったのでした。

勿論これはアイ・ウェイウェイが提示したこのヴィジュアルに対する一つの見解であり、確定した正解とは言い切れません。寧ろこの謎の意味を考える行為そのものがこのArtの価値なのだと想います。

昨夜「断言には一歩引き、断言で否定されたらその根拠を訊き反論するといい」と書きました。

確かに呪いの様な言論にはその正体を明らかにすることは健全な行為ですが、自分を否定してくる言説に触れたときの方が居心地のいい環境にいるより化学反応というか、論考が深まることはあります。

挑発してくる敵はいまいましいけれども、しかしそういう人間を完全に排除すると色々と鈍ります。

そしてその時に安易に正解を聴かずに”何故か?”を考え続ける営為が思考の深度を増幅させることもあるかもしれません。

ただ前述したように”謎”が人間関係などに関わる場合は寧ろさくっと聴いた方が解決スピードが上がり実利があることも多く、そして悩みすぎて潰れてしまっては元も子もありません。

そうした時にArtが”この意味が分かるか”と挑発することはとても大きな意義を持つと想うのです。

挑発するArtは現代美術に限らず、例えばジブリ・アニメもそうです。宮崎駿監督の『耳をすませば』の企画書が凄すぎるという記事が先日話題になりましたが、その企画書を具現化する能力に舌を巻くと共に企画としての深い眼差しに驚嘆しました。

それは「もののけ姫」企画書に於いても「風立ちぬ」企画書に於いても、名匠による作品は時代へ突き刺さる洞察から、いかに生きるべきかという本源的な秘に挑む目論見なのだなと。

それはアイ・ウェイウェイのインスタレーションにも通じるものがあると感じました。圧倒的なヴィジュアルの強さで具現化された”Concept”の見事さ。
無論全てのArtがそういうものでもないと理解していますが、生の秘、その深い謎を提起する藝術を私はみてみたいなぁと透徹な朝の空気に想いました。
by wavesll | 2017-10-26 09:43 | 私信 | Trackback | Comments(0)

断言との付き合い方

断言を多用したり簡単にこっちの意見を否定する人間の自信に脅かされることってないですか?

けれど、よくよく話を聞いてみると知識の無さを感じることが多く、単に阿呆故の浅慮ではないかと最近思うのです。

と同時に阿呆な決断が現実に迫力を持って効力を発揮するのも事実で。複雑で中間色の話はウケが悪い所があります。

私は相手の意見を否定することは基本しないで、相手からの否定の言葉には”確かにそうかもしれない、自分のこの考えにはOXという弱点があって、そこをこの人は重要視し否定をしているのかも”と自分の中で補完してしまいがちです。

しかし否定意見を投げかけられたときに必要なのはまずは反論であり、或いは「何故そう思うのか」の根拠を求める態度だと想います。

言い放されているのを放置すると精神健康上具合が悪いですから、防御技術は必要だなと。単なる浅薄な否定に付き合ってはしょうもない。あまりに不愉快が続くならば、板橋の縁切榎でも行って交わりを絶つのもありかと。

物事には必ずいい点と悪い点があり、意見の精確さを誠実に述べようとすると白黒は付けにくいものです。だから、本当はコミュニケーションに於いては「自分の見識だけが正解でないかもしれない」と自らを疑う知見を持つことが必要だと想います。

話をしていて自らの意見から全く譲らず主張するだけの人間には「あぁこいつは聴く耳持たないのだな」と不愉快な気分になるものです。

本当はコミュニケーションは丁寧に言葉を尽くすことが必要で、一旦相手の意見を飲み込んだ上で「確かにそういう気持ちは成り立つけれど、OXという根拠を加味すると私はこう思うがどうだろう」とするのが理想で。

自分の意見に疑問を持たずガチガチな強硬姿勢を通したいならば懇切丁寧な説明をしないといけないなと。

否定の言葉を投げられてもちゃんと根拠が示されれば、単なる呪いの言葉ではなく改善すべき課題の提示となります。

断言をすることは現実的なパワーを持ち、その自信ありげな雰囲気が状況を打破することはありますが、断言をするだけでその後にその説明をきちんとしない人間とはある程度の距離をおいた方が良いという噺でした。

cf.
◆『嫌われる勇気』は読まずに、関連文書を読む ~自己欺瞞を超えて <アドラー心理学に触れて>

◆安倍は何故勝ったのか。「リベラル」「保守」とはそもそも何か。 -総選挙の分析を調べ、政治を考える
by wavesll | 2017-10-25 20:41 | 小噺 | Trackback | Comments(0)

安倍は何故勝ったのか。「リベラル」「保守」とはそもそも何か。 -総選挙の分析を調べ、政治を考える

衆議院議員選挙は自民党の大勝に終わりました。

希望の党が失速し、立憲民主党が躍進はしたけれども、野党が割れ自公の与党連合に負けた結果となりました。

今回の選挙に限らず、「リベラル」「保守」といった言葉が政治記事では飛び交います。中には「日本のリベラルはリベラルな経済政策を行っていなく、寧ろ保守の自民党がリベラルなリフレ政策を行っている」なんてごちゃごちゃした話も。

そんなぐちゃぐちゃに対して「リベラル」の逆は「保守」ではなく…歴史に耐えるものさしで、中島岳志さんと現代日本を読み解く政治学(Yahooニュース)という記事は羅針盤を示してくれました。

そもそもの「リベラル」「保守」の起源から、現代においてどのような定義でこれらのタームが用いられているか、そして本質的な政治視座をどう設定できるか。

私自身、「リベラル」という横文字をふわっとしたニュアンスで使っていたので、丁寧な説明は大変勉強になる良記事でした。

さて、今回の選挙、森友・加計問題は私はそこまで大きな話でもないと考えていたのですが、安保法制、秘密保護法案、共謀罪にはかなり違和感を持っていたのに加え、遂には消費増税を唱え、「安倍はアベノミクスだけは上手くやったけれど、8%に上げたことは完全なる失策だったな」と考えていた最後の壁も崩されたことで、私は反自民に投じました。

しかし結果としては自民の大勝。しかしTVは「排除発言」がどうだとか浅い話しかしないし、今回の選挙の結果についてどう考えればよいのだろう?何故安倍は勝ったのかと「?」を想っていた時、投票行動などに詳しい政治学者で慶応大学教授の小林良彰さんと憲法学者で九州大学教授の南野森さんがSession22にて行った今回の投票を分析が非常に役に立ちました。

ラジオ番組ですが、上のリンクから一定期間は聴け、Radikoのタイムフリー期間なら10/23(月)22:00-24:00のTBSラジオで聴けるのですが、有意義な情報だと感じたので、以下に選り抜き文字起こしします。

(選り抜き開始)
<選挙結果は「議席」と「得票率」という”結果”がある。>
今回、比例代表は自民党37.5%、小選挙区だと75%の議席を取った。

一方で自民党が取った得票率は43%。

本当の”民意”は「得票率」だけれども、選挙後に話題になるのは「議席」の方。

得票率と議席がズレるのは与野党問わず起こり、それは小選挙区制度の問題。

<では自民党は今回どこから票を持ってきたか、>

先ず今回、自民党支持者の85.2%が自民党に投票している。身内を固めきれたのが大きい。安倍さんは支持率は上下しているように見えるが、自民党の支持者からはしっかり支持されている。

一方無党派層で一番多かったのは立憲民主で28.3%。それから希望の党と自民党が22%で同じくらい。結局”反自民票”が割れてしまった。

”自民党は支持するけれども安倍は独断的だから支持しない”という人には小池の排除発言は独断的に見え悪印象だった。野党の票を割ったオウンゴールがあった。また民進から希望に移る際に安保に関する政策を転向した候補者が信頼を失ったこともあったかもしれない。そして小池自身は選挙に出なかったため、盛下がっていった。

一方立憲民主は準備が足りず、小選挙区でも候補者が足りなくて、比例代表では東海6区で候補者が足りなくて自民に一人分譲る結果になってしまった。

結果立民への票と希望への票は拮抗。そうなると自民党は43%の得票率で自民以外の得票率が57%でも70%以上の議席を取れてしまうという結果が起きた。

2009年の民主党が政権交代をした際も得票率は50%いっていない。小選挙区と言う制度は民意の反映において問題点がある。

<世界の民主主義には2つある。 >

一つはウエストミンスター民主主義。英米加豪などの旧イギリス領での政治制度では”多様な意見を入り口で多数決で決める”為、小選挙区制をとる。

もう一つがコンセンサスデモクラシー。欧州大陸では比例代表で国民の民意をそのまま国会に持っていく。国会で議論をして決めていく。

日本の制度だと、50%行っていない得票率の候補が選出された上で、国会で多数決をし定数不均衡の2:1があるため地方に住む12%の民意がモノを言うので、7%位の民意で決まる。

比例代表は選挙では多数決をせず国会の審議で多数決をするため多数決は一回だが、小選挙区は選挙と国会で多数決を2回する。

選挙結果で民意を反映できるのか。
イギリスは二大政党じゃなくなっている。スコットランド独立党、英国独立党があり、保守党と労働党だけでは済まない。ドイツもそう。米国で共和党と民主党で上手く行っているのは、米国には地方交付税がなく、地域によってかなり明確な色をもって金持ちと貧しい人で住民が住み分けているため死票が少なく民意が反映しやすいからとのこと。

日本では小選挙区は合わないと小林教授。

<比例代表の問題点>
一方で南野教授は「比例代表一本だとワイマール共和国のように、選挙の前に選挙後どのような連立が起きるか投票者が分からない状況が起きる」と述べる。

連立が前提となると、ワンイシューで連立が崩壊するリスクもある。日本でも例えば辺野古の時社民党が抜けたりしたが、ワイマールだと平均内閣維持期間が8か月から1年だった。コロコロコロコロ政権が変わると、国民側から”強い執行権を持ったリーダー”への希求が生まれ、それがヒトラーに繋がったという指摘もある。

上のように比例代表にもメリット・デメリットがある。またフランスは下院で二回投票制を行っており、大統領選挙も決選投票を行っている。(この場合、選挙コストは増大する)。

小選挙区も比例代表もあり、模索を続けるほかない。

<年齢層別の投票先の差異>
さて、今回の総選挙では10代20代が自民党に入れた。30.4%が自民党に比例代表で入れている。立憲民主が3.5%、希望が6.5%。

立憲民主に入れたのは60代。学生運動世代が社会党時代から上にシフトしている。自民党に入れたのは15.7%。

(筆者注:朝日新聞の調査では18~29歳では41%が自民と答え、希望13%、立憲6%を上回った。一方、60代では自民27%、立憲20%、希望10。)

若者の自民党支持は13歳から14歳の頃に民主党政権を体験し、「民主党は駄目だ」という原体験をキープしている。逆に60代はロッキード事件を体験し、それをキープしている。

実際、今回公明党が「#2009年何してた」というキャンペーンを行い、若い世代に民主党時代のトーンを訴えようとしていた。実際自民党は若い人ほど票を投じている。これは今の就職率が高いことも大きい。

<男女の投票先の差異、社会争点と生活争点、対立争点と合意争点>
女性はどちらかというと希望の党が多く、男性は立憲民主の方がかなり多かった。
これは党首が女性だったことに加え、立憲民主は生活争点(年金、社会福祉)より社会争点(憲法、集団的自衛権)を訴えたこともあると考えられる。

安倍は社会争点(教育基本法、憲法改正)で下野し、2012年以来生活争点を前面に出している。アベノミクスを訴え、男女共同参画を訴え、今回は「保育園落ちた日本死ね」に対し消費税増税分を保育園幼稚園無償化に使うと訴える。

”百点のリベラル政策をやれ”と野党がいう所を”51点のリベラル政策をやります”とするところで、自民党支持層の支持を失わずにその他の層へも訴える。これは上手い。

この安倍首相の戦略、立憲と希望で野党が割れたこと、そして小選挙区制度が今回の「議席率」という結果に繋がった。

争点の出し方が「消費税を8%のままにした方がいいですか?それとも10%に上げた方がいいですか?」ならば結果は違ったかもしれない。しかし「幼児教育に使った方がいいですか?」という生活争点を出しながら「国難突破」という社会争点を安倍は出した。

そして「幼児教育無償化」と「北朝鮮強硬姿勢」は誰も反対しない合意争点であり、対立に成らず現状維持になりやすく、実に巧みだった。憲法などの対立争点はあまり主張しなかった。

このように選挙対策を練った上で、野党がバタバタしている時に解散できるのが解散権が伝家の宝刀といえる理由。与党にかなり有利な制度といえる。

世論調査をすると今回の選挙の政策イメージは≪立憲民主と共産≫と≪それ以外≫の二極構造と捉えられていた。共産は立憲に食われて、希望は自民や維新とは十分に違いを示せなかった。

安保法制なども有権者は「決まったものは仕方ない」という現状肯定な所があり、賛否は半々くらい。この反対票が野党で割れ、賛成は大半へ自民へ流れた。

<憲法改正問題>
憲法9条も三項を加えることは賛成が62.3%、反対が32.7%。ここでも安倍の巧い方策が目立つ。ただ、この改憲が将来どういった変化が生まれるかというとかなり大きな影響が生まれるかもしれず、そこを学者や政治家はきちんと解き明かし論議をしないと禍根を残す。

憲法改正の発議への手続きは、国会で2/3以上の賛成で可決し、可決されてから60日から180日かけて国民投票が行われる。公職選挙法と勝手が違い、現状だとCM等もバンバン行うことが出来るなどの規制が緩い。
(選り抜き終了)

さて、文字起こしの最後で触れられていた憲法改正の国民投票。安倍首相はまだ先のことだと言っていましたが、それを視野に入れているのは間違いありません。

その際、50日以上にも及ぶ政治運動期間が設けられるとのこと。そうなった際は例えばTwitterや、デモ、或いは電話運動など、政治活動が行われることだと想います。

ただ、近年の政治言論をWebでみていると自分と異なる政治思想を持つ人に対して、非常に攻撃的で、ともすると軽蔑したり馬鹿にしたり、下にみる発言が、右にしろ左にしろ散見されます。

今回の投票率は台風がぶつかったこともあり、戦後2番目の低さの53.68%でした。
政治思想が固まっている人を動かすのは難しいものがありますから、憲法改正したい勢力も、改正させたくない勢力も、残りの46%の層の掘り起こしが大きいと想います。

そういう時に上にあるような態度を露見させていると、「こいつとは根本から話が合わない」と思われ、対話には何の説得力も発揮できないと想います。

内輪でのびのびやるのは私も好きだけれど、そもそもの「当たり前」が異なる相手と話すときに対話を拒絶し相手の話を聴かず自分の主張を押し付けるだけでは、意識が高いのではなく、ただ偉そうな鼻つまみ者になってしまいます。

あるTV番組で選挙コンサルの女性が「一寸の虫にも五分の魂があることを忘れた候補者は落ちます」と言っていて。

どんなに無知に見えても、どんなに愚かに見えても、そもそも政治意識が低くても、みなプライドがあり、それを害されたら途端にそっぽを向く”浮動の一票”なのだと胆に据えねば選挙の戦は勝てないのだと感じ入りました。

「こうあるべき」の「こうあるべき」が共有できない人とコミュニケーションしなければならないのは、端的に言って苦痛で。私自身も苦手中の苦手です。けれど「選挙に勝つ」という結果を出すために「他者を動かしたい」なら、それは必要となるだろうと想うのです。

とはいえ論評者は常に2番手以下、行動を起こした人が1番手。言うは易し、行うは難し。これは不変。実装するものが道を切り開きます。

その上で、中々Webでの「情報発信」では工夫をしなければなりませんが、政治運動においてはPUSHよりもPULL、傾聴の姿勢が実効力を持ちうると想います。

ただでさえ”正義”を背負うと、人は強硬姿勢になりがちで、それはその人にとっての「当たり前の価値観」に基づいた結果です。

けれどより自分が望む結果にハンドリングしたいならば、そしてその未来が独りよがりでなく広く受け入れられるものならば、傾聴し出てきた問題意識への解として、自らの主張を丁寧な言葉で提案出来たら一番いいし、その問題を掬い解決する事こそが政治なのだと想った選挙戦でした。

Arcadia - "Election Day (7" Version)" (Official Music Video)

by wavesll | 2017-10-24 20:18 | 私信 | Trackback | Comments(0)

Omar Sosa - Gustavo Ovalles インストアライヴ@HMV record shop 渋谷

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Omar Sosa-Gustavo Ovalles Duo FULL CONCERT


キューバ出身のピアニスト、オマール・ソーサとベネズエラ人の打楽器奏者、グスターボ・オバージェスの渋谷HMV record shopでのインストアライヴをみてきました!

Omarさんの天空へ吹き抜ける健やかで格好いいキーボード。この人達の音、すごい好きです。心がフェザーに晴れます。

Gustavoさんのアフリカの民族楽器や自作の口で咥えながら弦を弾く楽器、そしてヴェネズエラの民族楽器などもNatural-Supernaturalな魅力があって。そしてあんな神性を帯びたマラカス初めて聴いた!

明日の晴れ豆でのライヴはコラ奏者のSECKOU KEITAも加わり、まだチケットがあるとか!かーなりお薦めです。間違いない奴です◎

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by wavesll | 2017-10-23 22:14 | Sound Gem | Trackback | Comments(0)

二子玉ライズにてSLACKLINE NIPPON OPEN トーナメントを観てきた!

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二子玉川にて第8回ギボン日本オープンスラックライン選手権大会を観てきました!

Campeão Mundial de Slackline 2015


Giovanna Petrucci - Copa Nacional Gibbon Slacklines


男子決勝Teruto vs Haruki 2016東京[GIBBON CUP二子玉川]


Slackline WorldCup Battle - Carlos Neto vs Gappai - real-time feature!


スラックラインは幅約5cmの伸縮性のあるナイロンベルトの上をバランスを取りながら立ったり歩いたりアクロバティックなトリックを決めたりする綱渡りとトランポリンを融合したようなスポーツ。

名前は聞いたことがあったのですが、生で観たのは初めてでした。

何しろ凄い!空中技が物凄くて!特にブラジルからの招聘選手Pedro Pafael Marquesなんか度肝を抜かれるPLAYをばんばん決めて!スーパーマンポーズもw!熱くなりました!

男子部門の他女子部門、ジュニア部門、Over40歳のマスター部門なんかも。ブラジルから来たGiovannna Petrucciも凄いパフォーマンス決めて!

そして日本人選手も凄腕揃い。ジュニア部門は9歳からいたし、みな10代や20そこそこで技を決める決める!レッドブルの選手の木下晴稀なんか高度が本当に高い伸身の技を決めるし、世界チャンピオンにもなったことがあるという大杉”Gappai”徹なんか仙人のような技を繰り出してました。

このスラックライン、実はドイツ・シュッツトガルトのGIBBON社の創設者ロバート・ケイディングがスポーツとして普及させたという点が、新しいスポーツのスタートアップのユニコーンだという点でも刺激を受けました。

体操天皇杯を生で観た時も”こいつら人間技じゃねえ”と想いましたがSlacklineの選手たちもイマジネーションをBeyondしてました。スラックライン体験コーナーもあったのですが、10秒立つのも大変でw

かなり刺激的な体操 X XsportsなSlacklineの大会は明日の日曜も二子玉RISE・ガレリアで開かれます。二子玉川の改札を出てすぐの場所で、屋根もあるので雨が降っても楽しめます。さらに今日のトーナメントの勝者たちによる決勝なので、もし良ければ★!
by wavesll | 2017-10-22 00:04 | 小ネタ | Trackback | Comments(0)