Coppél-i.A. : les Ballets de Monte-Carlo s’emparent du thème de l'intelligence artificielle
今週の土曜観劇はモナコ公国モンテカルロバレエ団による「コッペリア」。
ゼンマイ仕掛けの人形であるコッペリアに恋人が恋してしまうドタバタ喜劇である原作を鬼才ジャン・クリストフ・マイヨーが人工知能(仏:intelligence artificielle)時代における「アンドロイドが心を持ったら?」という物語に翻案して。オペラとかだと古典に現代要素を入れてくるのはよくある演出ですがバレエでこのレベルとは!今後の見る目の基準が上がっちゃうくらい凄く面白かった!
マッドサイエンティストな変人感あふれるDr.コッペリウスがアンドロイド・コッペリアを起動する冒頭部分から図抜けていて、何しろコッペリアを演ずるルー・ベインの踊りが「あ!こんなロボットダンスがあるのか!」という素晴らしすぎる挙動で。このダンスをみるだけでも価値大アリ!
Dr.コッペリウスはコッペリアに人の心を学ばせようとスワニルダとフランツの結婚式に連れていくも、フランツがコッペリアに心奪われるだけでなくそこでコッペリアもフランツに惚れてしまって…という筋書き。
この物語の肝がDr.コッペリウスの哀しさで。自分の理想の女性アンドロイドをつくるも、いざアンドロイドが人間らしさを学んだら、変人非モテおじさんである自分の求愛を拒否して魅力あるイケメンに惚れてしまう。創造主なのに!生みの親なのに!という悲哀あふれるダンスが、今でいういい年してアイドルにガチ恋する自分の年齢分かってないオッサンにも通じる悲劇になってましたね~w
原作通りスワニルダと友人たちがDr.コッペリウスの研究部屋に入り込んで人造人間たちと遭遇する場面はまるで『イノセンス』を思わせるような風合いもあったり。このA.I.時代のコッペリア、アンドロイドが人の心を持ったら?という物語がどんな終幕を迎えるかは是非ご自身の目でお確かめください。