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川端龍子展 at 山種美術館

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Twitterで本日迄だと知り、前から行きたかった【特別展】没後50年記念 川端龍子 ―超ド級の日本画― - 山種美術館へ赴きました。

まずいの一番に目に飛び込んでくる「鶴鼎図」がいい。川端龍子は洋画の技法も習熟している日本画家で、ちょっと普通の日本画とは異なるテクスチャーとフォルムな感覚が面白かったです。

そして小千谷で開催されている祭りを描いた「角突之巻(越後二十村行事)」も迫力ある筆致。龍子は20代で新聞や雑誌の挿絵画家だったこともあり、絵画のモチーフにジャーナリスティックさというか取材力を感じます。

また「華曲」に描かれた灰緑の鬣の獅子の可愛らしいこと。『少女の友』第10巻1号付録の「花鳥双六」も大変Kawaii出来で好きでした。

さて、展示はここからダイナミックな作品へ。
当時、繊細巧緻な画風が主流であった院展において、大胆な発想と筆致で構成された大画面の龍子の作品は「会場芸術」と批判されたことや院展内の軋轢もあり、脱退にいたります。そして、1929(昭和4)年、自ら主宰する「青龍社」を創立、戦時中も展覧会を開催するなど精力的な活動のなか、一貫して大衆のための作品を発表し続けた龍子、上に載せた「鳴門」等の海の迫力が描かれた作品が見事で。特にトビウオが描かれた「黒潮」が好きでした。

また平安時代の装飾経、紺紙金泥経に着想を得た「草の実」や飛行する胴体が透明な戦闘機が描かれた「香炉峰」も独自の作風で。戦争関連だと庭に落ちた爆風で吹き飛ばされてる野菜を描いた「爆弾散華」なんていう作品も。

象がやってきたことに喜ぶ子供たちが可愛い「百子図」や南洋・ヤップ島の娘を描いた「羽衣」なんてCuteな作品もあったり、桜の下で黄桜宜しくカッパが酒を呑む「花下独酌」や鯉に月が重なる「月鱗」なんて作品もあったり。

そう想えば棺に眠るミイラとそこから飛び立つ蛾達が描かれた「夢」なんて作品もあったり、黄金の草叢が描かれた「土」も美しかったし、PCで画かれたデジタル描線のような「月光」なんて作品もあったり色々な引き出しがありました。

大きな作品だとちょっと大味さも感じられる龍子ですが、小品は密度がぎゅっとしていて良くて。カッコいい「千里虎」や干支が描かれた「年賀状(十二支)」、また数々の俳句が描かれた短冊達もみごとでした。最後の部屋にあった「松竹梅のうち「竹(物語)」」も良かった。ダイナミックなラージ絵画も凝縮サイズだと更に魅力を増す気がしましたが、巨大作品の持つ抜け感は逆に2017年モードな日本画な気もしました。
by wavesll | 2017-08-20 22:03 | 展覧会 | Trackback | Comments(0)

山村浩二 『右目と左目でみる夢』@渋谷ユーロスペース

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山村浩二 右目と左目でみる夢 “怪物学抄” 予告編


山村浩二 右目と左目でみる夢 “サティの「パラード」"予告編


数々の映画賞を総なめにした『頭山』で著名な山村浩二さんのアートアニメ短編集、『右目と左目でみる夢』を渋谷ユーロスペースでみてきました。

終映後真っ先な感想は”あー楽しかった!”

アートスタイルが埋没的でないから多様なヴァリエーションでも一貫性があって、それでいてきっちり“楽しい”のがいい。高尚だけど退屈なのとは違ってエンタメとしての分かり易さの匙加減がハオでした。

予告編が公開されている『怪物学抄』や『サティの「パラード」』もそうですが、音楽にも感性を感じるのが好い。ジブリなんかもそうですが、名作には名曲がありますから。

そして勿論映像が素晴らしい。アニメって実写と違って描いたものしか写らなくて。だから抽象表現でも面白味の意図が出やすくて、そこで如何に偶然的なファンタジーを達成するかが腕の見せ所なのでしょう。

石川九楊氏が『書は筆遣いの軌跡、書する姿が立ち上がる』と映像的な楽しみを話してくださっていたけれど、山村さんのアニメはまさに筆のアニマというか、描書の姿が立ち昇る感覚で。

線と線の"間"が絶妙。短編には古事記や俵屋宗達などを題材としたものも。温故知新というか、本当にユニバーサルな価値は時の流れに淘汰され残ったものに在るのかもしれません。

盆の時期、私には認知症の祖母がいるのですが、祖母の妹であるおばさんが昨年亡くなってしまって。眠る祖母を訪ねると、目を開けて「今妹と話しているから」。心霊といいますが、霊魂というのは心の現象として実在しているのではないかと想ったり。私も昔の知己が夢見に出ることがあります。

imaginationが, REMの事象としてでなく、目が覚めている状態でめくるめく映像体験。真っ暗な劇場は現と夢の間にある空間なのかもしれません。

すっくと立ったARTとしてのフィルムを大変愉しく拝見しました。
by wavesll | 2017-08-14 17:33 | 映画 | Trackback | Comments(0)

夏輝津軽 参・奥入瀬渓流、三内丸山遺跡、青森県立美術館

夏輝津軽 壱・岩木山、鶴の舞橋
夏輝津軽 弐・五所川原立佞武多
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青森旅行記、2日目の朝は奥入瀬渓流、阿修羅の流れへ。
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3年前に訪ねた時のような美麗な木洩れ日はそこからクルマで離れた時に木立で現れたのですが、湧水が美しく、清廉な空気がありました。

市内へ戻り、三内丸山遺跡へ。ボランティアガイドさんに1hほど遺跡内を案内してもらって。三内丸山遺跡、この規模の施設で入場無料なのも凄い。

そして、此の地で古のものが出土するのは江戸時代からわかっていたそうですが、本格的な調査は平成に野球スタジアム建設計画の際からだと知って吃驚。広大な敷地をこんな形で維持管理する行政、イケてるなー。

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三内丸山遺跡といえばこの木造建築。再現された櫓の傍にはオリジナルの六穴が保存されていました。この櫓、どんな用途だったのかは未だに解明されてはいないそうですが、東西になる向きに立てられているそうで、太陽の運行と関係あるのかもしれないとみられているとのことでした。
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高床式住居や竪穴式住居も中まで覗けました。縄文人は栗の木を維持管理して使っていたようで、虫よけに火が通った栗の木の住居の内部はスモーキーな薫りがしました。
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缶珈琲で小休憩。この北東北限定のジョージア、豆の風味がして美味しかった。
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ミュージアムへ。巨大木造建築の六つ穴の中にあった巨木の柱の残存した部分などが展示してありました。
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出土品の中には勾玉からヘアピンなんかも。縄文人、洒落てる。
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縄文版ムンクの『叫び』みたいな土偶も。
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クリスタルの矢尻なんて、FFな世界だ。
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出土した骨から、縄文人は多くの魚や動物を食べたりしていたことがうかがわれます。
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A lot of 土偶
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土器ドキDOKI
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三内丸山遺跡からは日本各地の産物が出土していて。縄文の太古から物流ネットワークがあって交易していたのですね。
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レストランで食べた"ソフト栗夢"。モンブラン風。
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三内丸山遺跡のすぐそばに青森県立美術館もあって。

ウルトラマンをデザインした成田亨の作品が目当てだったのですが、まさかあんなに棟方志功があるとは!サモトラケのニケに着想を得た『賜顔の柵』の凄さ!そして入り口のシャガールはミュシャの『スラブ叙事詩』も驚愕のラージサイズ!成田さんの角っとしたバルタン星人や水彩画のメトロン星人、トゲトゲしたピグモン、ユーモラスなダダ、スクエアなゴルゴスやヤマトン、ガマクジラ、ザラブ星人も良かった◎
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『あおもり犬』は裏からも撮りました◎うっすら青い顎鬚が描かれてました。
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奈良美智さんのもう一つの屋外展示、『森の子』。アンコール・トムの仏顔のよう。
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ARTを観終え、行きと同じく帰りも秋田空港へ。空港のレストランで飲んだ雪の茅舎 大吟醸という地酒が非常に美味しかった。なぜか釣りキチ三平のレリーフが。十和田湖とゆかりがあるのかな?
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2014年のMichinoku Michiyuki、そして2015年の津軽の色彩に次ぐ3度目の青森。来るたびに大いなる自然に包まれる気持ちになります。広大な空間に満ちる夏の輝きを堪能した1泊2日でした。今度訪れるとしたら櫻の季節に弘前かな。また再訪するのが楽しみです◎
by wavesll | 2017-08-09 00:01 | | Trackback | Comments(0)

田名網敬一 「貘の札」@NANZUKA

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田名網敬一 「貘の札」を渋谷NANZUKAにてみてきました。
田名網さんはSUPERCAR『ANSWER』のジャケを描いた方。若冲meetsアメコミなサイケデリックな曼荼羅画。表面に一部光るプラ素材?の欠片を撒いていてキラキラ輝くのが絵に動画性を帯びさせていると感じたところ、映像作品もあって。普段映像作品って全部みないのだけれど、これは一周魅入られてしまいました。今週土曜迄。是非生でみて欲しい。御薦めです。

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by wavesll | 2017-08-01 20:49 | 展覧会 | Trackback | Comments(0)

書だ!石川九楊展@上野の森美術館

書だ!石川九楊展@上野の森美術館に行ってきました。
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≪歎異抄(全文)No.18≫
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藝大へ行った帰りにみかけたこの展覧会。がっつり書の展覧会へ来たのは初めてだったのですが、こーれは大変に格好良い展覧会でした。

初っ端≪エロイ・エロイ・ラマサバクタニ≫から薄墨に太く書かれた文字群!あふるる心情がみてとれます。≪言葉は雨のように降り注いだー私訳イエス伝≫の強烈な文字の詰め方、書き込みに、自分自身が中高時代に執拗なまでに英単語を連打でぎちぎちに描き込んだノートを想いだして。

≪生きぬくんや≫もマンガの吹き出しのような勢いが炸裂、≪エロイエロイラマサバクタニ又は死篇≫は82mに及ぶ超大作で、作品の途中で轟風が吹くかのように巨大な文字が出てくるのが印象的。この時期は≪世界の月経はとまった≫のように灰色の地に書かれた作品が多いですが、そこから白の世界へ戻って≪はぐれ鳥とべ≫が書かれて。白に言葉が配置されると、文字がビートになる感覚がありました。

それは李賀詩シリーズにも顕著で。黒で塗りつぶされて奥にうっすら文字が書いてある≪李賀詩 將進酒 No.2≫をみると、昔"自分がMステに出るなら各国語が入り混じったわけわかめなライムをして、その言葉とは無関係に歌詞として日本国憲法がスクロールさせたい"と考えたのを想いだしたというかw

言葉のフォルムと意味が展開、転化しそれ自体がオリジナルな輝きになるというか。個人的には水カンをみたときに”やられたー”とか思ったものでした。あっちの方が実装能力が高すぎておみそれなんだけどw

さらに≪李賀詩 感諷五首(五連作)≫は何というか将来のHIPHOPを感じたというか、言葉をビートにした先に、ラップをPCで加工して引き延ばして拡大延長したテクノミュージックのような、巨魁な作品でした。

そして次の部屋に入ると更に石川氏の書は飛躍して。≪徒然草 No.22≫はもう電子的な草叢のような書画だし、≪徒然草 No.16≫はもはやポストロックな山海。

そして≪歎異抄(全文)No.18≫は図形楽譜化のような、音楽の理性と身体としての文字フォルムが止揚していました。

一方で≪無間地獄・一生造悪≫のような極太のフォントや≪逆説・十字架・陰影≫のような神代文字化した様な漢字フォントの作品もあって。そして本当に方形の、地図のようにもみえる≪方丈記 No.5≫も素晴らしかった。

2Fへ上がるとそこには何と源氏物語の各帖をモチーフにした書が。もう、どれも良くて。桐壺、帚木、夕顔、若紫、葵、花散里、明石、蓬生、松風、少女、玉鬘、常夏、篝火、野分、真木柱、梅枝、若菜 上、若菜 下、柏木、匂宮、竹河、橋姫、椎本、総角、早蕨、宿木、東屋、浮舟、蜻蛉、手習、夢浮橋…好いの上げようとしたら上げすぎてしまったw

これを視ながら感じていたのは、ともすればこういう"現代的なセンス"は”西洋的”と捉えられがちだけれども、こういった感性は日本人、日本文化の中の内在していたのだなと。梅棹忠夫『文明の生態史観』を読んだのもそうだし、数年前京都旅行でみた角屋のモダン・デザイン性にもその想いの萌芽がありました。

そこから中2階へ降りると、≪カラマーゾフの兄弟 III≫などの作品が。文学を題材にするときに、言語での味わいと訳文の解釈の問題をどうするかとかの意見が出ました。興味深い。

≪生涯は夢の中径≫も良かったし吉本隆明に捧げた≪もしもおれが死んだら世界は和解してくれと書いた詩人が逝ったー追悼吉本隆明≫も素晴らしかった。

そこから、社会的な問題意識を持った作品群が続いて。≪二OOO一年九月十一日晴ー垂直線と水平線の物語I (上)≫や≪9/11事件以後II≫、≪戦争という古代遺制≫、≪領土問題≫、≪敗戦古希 其一≫、≪敗戦古希 其二≫。敗戦期に誕生した石川氏ならではの筆致でした。

そして、器に四文字熟語をかいて沢山つくった≪盃千字文≫も愉しいし、最後に展示してあった≪五十年を語るー妻へ I≫、≪五十年を語るー妻へ II≫も理知的な中に温かい愛情を感じる素敵な作品でした。

この日は石川氏による≪歎異抄≫解説がありました。
石川氏は計20作の歎異抄を書いたのですが、No.18でようやく全文ヴァージョンまで完成して。
隷書を横に延ばしていく中で、縦の画を横の画が突っ切るスタイルが生まれたことがブレイクスルーだったとのこと。

質疑応答コーナーでは、"無心で書いているのか?"との質問に”徹底的に有心”と答えていて。評論家もやっていたから、相当に綿密な計算のもとでかかれていると想ったのですが、やはり。

手癖で書かないようにどんどんスタイルを変えて行ったり、時に左手で書いてみたり。歎異抄では文字の滲みすら起きないようにインクと紙を選んだとのこと。

また”読めない文字も書なのか”との質問には”書を視る上でいけないのは『上手い・下手』とか『読めるかどうか』を考えること。書は『書くこと』であり、書く姿があればそれは書。絵画との違いは一点一画を書いていくリズム、自分はあくまでも文章を書いている”とのことでした。

梅棹さんもそうだし、吉田博展@東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館 日本人にしか描けない洋画、その探究でも"凄腕の旅人だ"と想ったものですが、文学の海へダイヴし自らとケミストリーを興して作品として発火する石川さんも、本当に素晴らしい旅人だと想いました。

本当の未知は、有心の先の、完璧なコントロールの先にある偶然天地に。刺激的な展覧会でした。なんと今日まで。是非是非お薦めです。

cf.
石川九楊の「書」だ。(ほぼ日刊イトイ新聞)

by wavesll | 2017-07-30 09:47 | 展覧会 | Trackback | Comments(0)

吉田博展@東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館 日本人にしか描けない洋画、その探究

東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館にて生誕140年 吉田博展をみてきました。

《日本アルプス十二題 劔山の朝》
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《穂高山》
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《瀬戸内海集 帆船 朝》
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いかがでしょうか?1枚目と3枚目、実は版画なのです。こんなに透明感のある光の描写が版画で出来るとは…!

吉田博は水彩画、油彩画、そして新版画と、「日本人にしか描けない洋画」を探究した人。その人気は海外の方が高く、かのダイアナ妃やフロイトも吉田博の絵を持っていたそうです。

私自身、こんな版画ははじめて視て。海外の猿真似でない、しかし洋画の手法を内に取り込んだハイ・クオリティに、すっかり魅了されました。

展覧会の始まりは福岡・久留米生まれの吉田が不同会という絵の塾に入るところから始まります。
その頃の≪無題(習画帖)≫の上手いこと。水彩の≪驢馬≫も、単純に上手くてデッサン力を感じます。≪京極≫、≪上野、東照宮≫の鉛筆風景画も素晴らしいし、鉛筆画では≪小丹波≫という風景画も線の細さが魅力的。

その他≪石橋≫、≪花のある風景≫、≪浅間山≫といった陽光の光景に加え、≪冬木立≫の冬、≪中禅寺 日光≫の秋の風景も見事。この人の水彩画、ほんと好きだなぁ。構図が好いし、透明感が群を抜いている。この時期の油彩も≪雲叡深秋≫など心に残りました。この展覧会、ほぼほぼすべての絵が好い!またこの時期の写生帖もあって、飛騨や富士山が見事に描かれていました。

1900年頃の画壇は、フランス帰りの黒田清輝達白馬会によって牛耳られていました。そこで吉田博、僅かな金と書き溜めた絵画を背負って海外へ渡航。それもフランスでなくアメリカ。デトロイトやボストンで絵画展は大成功。そこから欧州など世界中を回ります。なんたる行動力!

≪街道風景≫は海外でも好まれた、なんてことない道路の風景画なのだけれどスナップショットのような美しさのある作品。≪村の橋≫はアピチャッポン監督のような空気感。≪菖蒲園≫の靄描写、≪宮島≫、≪湖の眺め≫の光の描写、≪晩秋風景≫の翳りの描写、≪朝≫の曇の描写、≪霧の夕陽≫、≪霧の農家≫のトワイライトの朱と緑。この人は朝焼け・夕暮れの赤光が最上。

≪田舎の夕暮れ≫の丸っこい家や≪冬の閑景≫の静かな風景、≪帆船≫の灰青い水色、西洋美人を描いた≪昼寝ーハンモック≫なんて作品も。ボストンを描いた≪グロスター≫、マサチューセッツを描いた≪チューリンガムの黄昏≫、フロリダを描いた≪ポンシデレオン旅館の中庭≫、イギリスの≪ウィンザー橋≫、『三四郎』でも言及された≪ヴェニスの運河≫、マドリードでの≪ヴェラスケス作≪メニッポス≫模写≫や≪レンブラント≪自画像≫模写≫なんてのも。

白馬会に太平洋画会で対抗していた吉田博、ついに文展の審査員になり、画壇の頂へ登ります。

この時期は優美な≪松≫、しとやかで可愛らしい≪月見草と浴衣の女≫、色彩が綺麗な≪つつじの咲く高原≫、肌寒さが伝わる≪越後の春≫、≪芥屋大門≫や≪琉球≫といった建築風景等水彩画も描かれましたが、主に油彩画が展示してありました。

≪池の鯉≫、≪堀切寺≫海外の人が日本の風景を描いたかのような筆致の≪瀧≫、≪高原の池≫の秋、山の尖りのフォルムが美しい≪穂高の春≫や≪穂高山≫の巨魁な山姿は高山を愛した吉田博ならでは。

≪富岳≫のMassiveさも素晴らしいし、≪槍ヶ岳と東鎌尾根≫はまるでヨーロッパの山の様。三枚の縦長の絵による≪野営≫はデジタルサイネージっぽかった。

日本的な≪烏帽子岳の旭≫にSF的な風景画の≪鷲羽岳の池≫と変幻自在。

≪バラ≫シリーズでは鉢植えや支え棒のあるありのままなバラの絵が描かれて。≪青銅器とバラ≫なんて面白いモチーフも。

≪ステンドグラスの窓≫はルオーみたいな筆致。

≪荷馬川岬≫は江戸の味わい、≪登山図≫、≪雪景≫の山景も素晴らしかった。

ここまででも見逃せない絵画ばかりだったのですが、ここから更に吉田博の藝術は跳躍します。渡邊庄三郎と組んで新版画を始めるのです。

≪牧場の午後 渡邊版≫や≪穂高山 渡邊版≫のようにまるで水彩画のような細やかなグラデーションとフォルム。≪帆船 朝日 渡邊版≫、≪帆船 日中 渡邊版≫、≪帆船 夕日 渡邊版≫の水の揺らぎ、グラフィカルな色彩、瀬戸内海に浮かぶ舟の輝き、素晴らしい。≪馬返し 渡邊版≫のような江戸を思わせる作品も。

この時期は油彩もあって。≪庄吉≫という武骨な人物画や色っぽい≪裸婦≫も良かった。

そして海外の風景画が素晴らしくて!≪グランドキャニオン≫、≪ヨセミテ公園≫、≪モレーン湖≫という北米の大自然の光景、≪モンブラン≫、≪アルプスの山小屋≫という欧州の山岳風景、ヴェネツィア≪サンマルコ広場≫はなんともお洒落な一枚でした。

そして、ついに吉田博は自らの手で新版画制作に乗り出します。

ユーモラスな≪ホノルル美術館 米国シリーズ≫、カッコ良くスルっと伸びた≪エル キャピタン 米国シリーズ≫、赤紫に輝く≪グランドキャニオン 米国シリーズ≫、こちらも勇壮な≪モレーン湖 米国シリーズ≫、質感が心地よい≪ブライトホルン山 欧州シリーズ≫、もう”うーわー!すげぇ…!”となってしまう≪マタホルン山 欧州シリーズ≫≪スフィンクス 欧州シリーズ≫も色彩豊かで◎

日本を題材にした新版画も。≪烏帽子岳の旭 日本アルプス十二題≫の赤光の射す青闇。≪劔山の朝 日本アルプス十二題≫のグラデーションの輝きと言ったら!≪白馬山頂より 日本アルプス十二題≫の桃色の山。≪穂高岳 日本アルプス十二題≫は木の描写が浮世絵っぽく感じました。物凄い好い絵。≪黒部川 日本アルプス十二題≫の活き活きした河川の描写。≪鷲羽岳の野営 日本アルプス十二題≫の薪の爆ぜり、≪針木雪渓 日本アルプス十二題≫も良かった。

瀬戸内海の光景を描いた作品群も素晴らしい。ダイアナ妃も執務室に飾ったという≪光る海 瀬戸内海集≫はやっぱり素晴らしいし≪雨後の夕 瀬戸内海集≫も綺麗。≪鞘の浦 瀬戸内海集≫も良かった。

≪帆船 朝 瀬戸内海集≫≪帆船 午前 瀬戸内海集≫≪帆船 午後 瀬戸内海集≫、≪帆船 霧 瀬戸内海集≫、≪帆船 夕 瀬戸内海集≫、≪帆船 夜 瀬戸内海集≫は、同じ版木で色を変えて様々な光景を顕わしたもの。これが本当にどれも素晴らしい!この空気感、その場の映像を見ているような、本当にきれいな画でした。

≪朝日 富士拾景≫は富士山のくっきりした山肌が美しい。≪植物園の睡蓮 東京拾二題≫は現代的、≪亀戸 東京拾二題≫の藤の花と太鼓橋。≪金魚すくい 東京拾二題≫は女性がかわいらしい表情。≪不忍池 東京拾二題≫、≪旧本丸 東京拾二題≫は観光スナップのよう。

空刷りの線がプレスされているオウムが面白い≪於ほぼたん あうむ 動物園≫も良かったし、廣い宵の光景が展開される≪雲井櫻≫は弩級の作品だし、色っぽいリアルなヌードの≪鏡之前≫、聡明な域を感じる≪こども≫も良かった。≪上高地の春≫、≪白馬槍≫、≪糸魚川にて≫の油彩三枚も良かったし、≪駒ヶ岳山頂より 日本アルプス集≫の雲と光の描写は新海誠みたい。≪駒ヶ岳岩小屋 日本アルプス集≫はタイムレスな魅力のある木版。

≪雲海 鳳凰山≫の大きな眺望。そして≪渓流≫のグラフィカルな素晴らしい流水の描写はこの展覧会でも白眉でした。

吉田博は新たな画風を求めて、地球を回ります。インドの≪フワテプールの舞踊場≫の華厳さ、≪プワテプールシクリ(王宮)≫、≪ラクノーのモスク≫のイスラムの美には、”イスファハーンやサマルカンドにも行ってほしかったなー!”と。≪イト、マト、ウッドウラーの墓≫、≪ウダイプール≫もエキゾでした。

≪シンガポール 印度と東南アジア≫には在りし日のシンガポールをみて。≪ラングーンの金塔 印度と東南アジア≫の赤光。≪カンチェンジャガ 朝 印度と東南アジア≫と≪カンチェンジャガ 印度と東南アジア≫にはヒマラヤが。

≪ベナレスのガット 印度と東南アジア≫は"これぞ!"という構図。≪タジマハルの庭 印度と東南アジア≫の明るい白が美しくて。吉田博は光景版画で夜のヴァージョンも刷ることが多いのですが、≪タジマハルの庭 夜 印度と東南アジア≫素敵な雰囲気でした。

≪フワテプールシクリ 印度と東南アジア≫≪ウダイプールの城≫も素晴らしい。なんというか、超上級のわたせせいぞうみたいな味。≪エロラ カイラサテンプル 印度と東南アジア≫も素敵だったし、≪ウダイプールの島御殿 印度と東南アジア≫は意識と景色が融けていくような美がありました。

海外を意識してか、桜の名画も吉田博には多くて。≪弘前城 櫻八題≫はこれぞ日本の美といったショット、≪三渓園 櫻八題≫、≪春雨 櫻八題≫もいいし、知恩院を描いた≪樓門 櫻八題≫≪嵐山 櫻八題≫という京の桜も良かった。

吉田博の新版画の精緻さ、綿密さは本当に頭抜けていて。80度摺りを入れた≪東照宮≫、96度摺りを入れた≪陽明門≫の美事なこと。素晴らしかった。

≪上海市政府≫のエキゾな建物や、≪大同門 北朝鮮・韓国・旧満州シリーズ≫、≪北陵 北朝鮮・韓国・旧満州シリーズ≫の落ち着いた雰囲気も好きでした。

戦中、吉田博は従軍したり、軍事産業をスケッチしています。≪港之夜≫のハーバーの落ち着き、従軍先の中国で画いた≪星子≫。

面白いのは半ば想像だと想いますが戦闘機の光景を描いた作品。≪急降下爆撃≫は会田誠の≪紐育空爆之図≫を想起。≪空中戦闘≫は大地のうねりが面白かった。≪軍需工場≫では労務が、≪精錬≫、≪溶鉱炉≫では融けた鉄の輝きが描かれていました。

吉田博の旅。世界をめぐるそのバイタリティと自らの作品に化学反応させる手腕は、本当に理想の旅人だと感じました。ちょっと梅棹忠夫の探検にも通ずるものを感じたり。

しかしそんな彼が最後に残した木版画は≪農家≫という、何でもない日本の農家の土間というか台所というか、屋内風景でした。旅の先に、彼は遂にルーエンハイムへたどり着いたのかもしれません。

そして本展覧会の最後の、最晩年の作品は田園風景を描いた≪初秋≫。ここにもファウスト博士の感慨のような、優しい心を感じました。

常設のゴッホ≪ひまわり≫もみました。この展覧会、本当にオリジナルな、日本人しか描けない洋画とは何かが表れていたし、今でもエキサイティングで先進的に感じました。前期は30日までで、後期は66点入れ替えだそうです。前期チケットがあれば800円でみれるそうだし、これはまた行かねば!素晴らしい展覧会でした。
by wavesll | 2017-07-29 07:30 | 展覧会 | Trackback | Comments(0)

藝「大」コレクション展と東京藝術大学ゲーム学科(仮)展

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Monaural mini-Plug live at 不忍池を観てタイの音楽快楽に浸った後、タイ展へは行かず東京藝大へいきました。

いざ藝「大」コレクション展へ!

お目当ては高橋由一 / 鮭でした。そこでちょっと意外だったのが結構描写が荒く感じて。黒田清輝展@東博 もう一つの坂の上の雲の時も感じましたが絵画技巧ってやっぱ進化を続けてるんだなと逆に感銘を受けました。

展示された品々はさすが銘品揃い。会場に入るとすぐ出てくる「月光菩薩坐像」の、胴体が崩壊して空になったその姿は一際印象的だったし、「弥勒来迎図」の青緑の配置の美しさ。

狩野永徳「唐子遊図」の子どもたちの戦争ごっこには微笑ましさも感じ、若杉五十八「鷹匠図」の江戸時代の油彩という面白さ。

柴田是真「千種之間天井綴織下図」のレトロボタニカル、狩野芳崖「悲母観音」の金緑青の美。

橋本関雪「玄猿」の瑞々しい墨絵も、前田青邨「白頭」の消えゆく肖像画、高野松山「静動文庫」のエジプトの壁画のような蒔絵も素晴らしかった。

この展覧会のサウブタイトルは「パンドラの箱が開いた!」なのですが、その匣と同じ種類だと言われる彩文幾何学文ピュクシスもあり、同じコーナーにあったマルセル・デュシャン「トランクの中の箱(シュバルツ版)」はこの展覧会でみれてよかったものの一つ。小型インスタレーションといった趣で素晴らしかった。

「平櫛田中コレクション」のコーナーでは田中太郎「ないしょう話」が内向きトライアングルで内緒話するフォルムが新味があって面白かった。平櫛田中「活人箭」のきびきびした風貌、「灰袋子」と「禾山笑」の泰然とした大笑いにも明るい気持ちにさせられました。また大内青圃「像柱」は仏師の洋像で興味深かった。

「卒業制作ー作家の原点」では特に立体作品が素晴らしくて。

松田権六「草花鳥獣小手箱」は近未来の奈良とでもいうような金黒の美は物凄く良かった。山脇洋二「置物(犬)」のデフォルメされた超古代感、松田禾堂「香炉」は地球だし、坂井直樹「考・炉」はメカニカル。窯の地層がみえるような前沢幸恵「憧憬」、柴田鑑三「山寄りの谷 谷寄りの山ー富士山ー」の逆転空洞富士に吉野貴将「~森~ (cosmos)」の仏具のシシ神のようなフォルムも良かった。そして地村洋平「Herald」のソフトコーラルのようなガラス立体も素晴らしかったです。

勿論絵画も逸品ぞろいで。和田英作「渡頭の夕暮」の夕虹の水面、レトロフューチャーな砂浜のセーラー服の高山辰雄「砂丘」、三味線娘が可愛い白滝幾之助「稽古」、白青灰が炸裂する吉田侑加「景しき遠く」も良かったです。

また変わったところでは町田美菜穂「首都っ娘~首都高速擬人化プロジェクト~」というミクストメディアもありました。

「現代作家の若き日の自画像」コーナーでは文庫本4冊は貼り付けた会田誠のが面白かったwその他キレイめな村上隆や頼朝風にかいた山口晃の他、ヴィジュアル的にかっこいい齋藤芽生や松井冬子、モノクロの綿密な書き込みで動植物に包まれた冨谷悦子、自撮りが表示されたガラケーの山のインスタレーションの渡辺篤も面白かったです。

「石膏原型一挙開陳」コーナーでは日蓮が彫られた高村光太郎「獅子吼」、力強い北村西望「男」、聖性すら感じる生命感の石川光明「猪」、能楽師のフォルムが迫力があった後藤良「能野口兼資師黄石公」も素晴らしかった。

「藝大コレクションの修復ー近年の取り組み」コーナーではラグビー服で安まる小磯良平「彼の休息」、原撫松「裸婦」も魅力的だったし、葛揆一郎「外科手術」は不思議な空気の絵画でした。そしてトランプの絵柄のような仏画の長谷川路可「二菩薩半身像」も面白かった。

この他藤田嗣治の資料とか、結構みるもの多くて面白かったです。一期は8/6までで、二期には尾形光琳や曾我蕭白、伊藤若冲などが出てくるのでこちらも気になるなぁ。あ、ちなみに高橋由一「鮭」は二期も展示されるそうです。800円。二回分見れるお得なチケットもあり。

そしてその後寄ったのが同時開催の東京藝術大学ゲーム学科(仮)展、VR等の色々なゲームが置いてあって、私は「鞍馬の火祭り」というのをやったのですが、VRの没入感が凄くて!前にやったVRゲームでは酔ってしまったのですが、映像がこちらの動きと同期し勝手に動かないタイプだと酔わないことが分かって良かった◎

その他「Z」という、実際のブロックを積み上げると、投射されるキャラがブロックに合わせてアクションする作品もやりました。面白かった!

この他幾つもゲームが展示してあって。並べばそんなに待たずにやれそうなかんじでした。2Fではファイナルファンタジーの企画も。無料だし、お薦めです◎30日まで。
by wavesll | 2017-07-22 17:21 | 展覧会 | Trackback | Comments(0)

ジャコメッティ展 at 新美 ー魂を凝縮し削ぎ落された彫像群

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国立新美術館のジャコメッティ展をみてきました。

スイスに生まれ、パリにて才能を開花させた20世紀最大の彫刻家、ジャコメッティ。

見ているものを見えるようにつくると小さくなってしまった彼の彫像は、せめて1mの長さにしようと細長いフォルムになっています。

骨格と、肉と髪が、極限まで削ぎ落とした細長い人物彫像。卒塔婆のような、その人物の魂や人生が凝縮された静謐なる迫力。

彫刻は入れ換えなしだけど素描や絵画作品は前期後期があり、今日までの前期展示では画家だった父のコレクションらしき北斎の模写なんていう作品もありました。

彫像は人物がほぼ全てで、例外的に恐竜化石の生体展示のような『犬』と骨身になった魚のような『猫』がありました。

ただ、その他、エッチングや油絵なんかも展示してあって。その題材は人々のデッサンもありましたが、『真向かいの家』や『アレジア通り』などパリ街中や家の中、故郷スタンパの風景なんかも。ジャコメッティの流儀で街を造ったら、どうなるのだろう?

そのhintとして、群像シリーズがありました。思い思いに逍遥する『3人の歩く男のグループI』、異界の知的生命体のような『森、広場、7人の人物とひとつの頭部』、ヒトが金属植物のように伸びていく『林間の空地、広場、9人の人物』と。ジャコメッティの彫像は、空間を描くことは関係を描くことなのだなと。

ジャコメッティの初期はキュビズムやシュルレアリズムに傾倒していました。

オーソドックスな彫像ともいえる初期(1917年)の『シモン・ベラールの頭部』、キュビズムを立体でつくった『キュビズム的コンポジションー男』と『コンポジション』、『キューブ』

シンプルなフォルムの『見つめる頭部』『横たわる女』、アフリカに影響を受けたようなピカソ的な『カップル』、西アフリカから影響を受けた『女=スプーン』、ニューギニアに影響を受けた『鼻』は展覧会全体の中でも白眉でした。

そこから『小像(男)』、白い『裸婦小立像』といった小像の部へ。

さらに展覧会は女性立像の部へ進みます。髪が光輪のようで、まるで一本の剣のような『大きな像(女:レオーニ)』、髪や胸のコアが表現された『髪を高く束ねた女』、1952年頃の『女性立像』は青銅器時代のフォルムのよう。

そこから群像群を挟んで、モデルを前にした制作へ。『男の胸像』、弟を創った『ディエゴの胸像』『石碑I』の胸のゴリゴリした部分がまた魅力的で。

マーグ家との交流の部や『ヤナイハラの頭部』などの、阪大文学部の矢内原伊作との交流作のコーナーも素敵で。特に青のボールペンでフランス・オプセルヴァトゥール紙特別号に描いた『幾つかの頭部』、レ・レットル・フランセーズ紙に描いた『頭部、人物像など』、パリ=ジュール氏に描いた『4人の人物』などが非常に洒落ていて好きでした。

そしてとりわけ印象的だったのが9体の『ヴィネツィアの女』

キャプションに記憶に基づく制作とあったのですが、あまりにそれぞれ個性と人生が沸き上がる出色の彫像群で、近くのスタッフに聴いたところ、やはり特定のモデルを記憶に基づいて作ったとのこと。素晴らしかった。

そしてチェース・マンハッタン銀行に飾られるはずだったプロジェクト『女性立像』『頭部』『歩く男』は撮影可能で、それぞれ古代、近未来、現代を顕わしているような気がしました。

ジャコメッティの絵は同時代の詩人たちの挿絵になることも。
ジャック・デュパン『ハイタカ』など、詩のイメージを膨らますジャコメッティの絵の魅力があふれてました。

そして最後は『終わりなきパリ』。OKコンピューターのジャケットのような抽象的なパリの風景。やっぱりこの感覚を立体化する様な都市の彫像、みてみたかった。

吸い込まれるような、哲学性も感じるような展覧会。とても良かったです。
by wavesll | 2017-07-17 19:03 | 展覧会 | Trackback | Comments(0)

Animals of Tammachi

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by wavesll | 2017-07-07 18:04 | 街角 | Trackback | Comments(0)

世界へ懸ける人、日本で懸ける人、この國の仕事観・労働社会環境へ思馳せるTV3番組

 山路を登りながら、こう考えた。

 智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。

 住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、画が出来る。

 人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。やはり向う三軒両隣りにちらちらするただの人である。ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。

 越す事のならぬ世が住みにくければ、住みにくい所をどれほどか、寛容て、束の間の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。ここに詩人という天職が出来て、ここに画家という使命が降る。あらゆる芸術の士は人の世を長閑にし、人の心を豊かにするが故に尊い。
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NHKBS1 柔道とJUDO~世界で進化する柔の道~を視ました。

現在、世界に広がるJUDO.

東京五輪無差別級で日本を破ったオランダのヘーシングも、世界選手権で日本を破ったフランス柔道も、戦後GHQに禁止され職にあぶれた柔道家が世界へ活路を見出した結果。

日本の閉鎖空間の中で牛後と燻るならば、海外で鶏口となった方が活きる。これには国内電機企業が不遇にした技術者が韓国へ行ったのを彷彿とさせられました。ヘーシングを鍛え技に力で勝つ柔道を作り上げた道上伯はその先駆けだったのだなと。

ロンドン五輪で金が獲れなかったのは世界各地でサンボやチダオバやモンゴル相撲など現地の格闘術が加味された新たな柔道が生まれていたから。

日本から飛び出した柔道指導者はフランス柔道育ての親である粟津正蔵をはじめとして個性教育を大事にするようです。コロンビアの女子選手を教える柔道家は「勝つことが恩返し」という。ワールドスタンダードになるとはこういう事。

それに対して日本柔道代表の井上康生監督は「異常な」レベルの鍛え方を目指して異種格闘も組み込みながら修業しています。先頭を走る伝統は革新をし続けなければならない、世界が追いかけてくる、追い越さんとするトップランナーの立場の厳しさがありました。

その後みた日曜美術館の萬鉄五郎回。藝大に首席で入学しながら、泥を被ってでも己の求める画業を突き詰めた芸術家。

当時先端だった後期印象派を追いかけてた頃は魅力をそこまで感じなかったのですが、故郷に帰り土に根差した辺りからオリジナリティーがぐんぐん出て。冒頭に載せた『裸婦(宝珠を持つ人)』など凄まじい域に達していました。

藝の道って、死ぬまで研ぎ続けることができる。黒田清輝展@東博を観た際も西洋列強に"坂の上の雲"を日本人は追いかけた感慨がありましたが、本当の個性は先端を越えた先の、心身の底からにじみ出てくる、人生そのものの藝で。

真似ぶことから研鑽は始まりながら、守破離の境地へ達した先に本当の藝術の開拓があるのだと。自分のアイデンティティと、その分野の先端の土地の技を合わせた美がそこにありました。

と、同時に日本ではこういう異端はかなり白眼視されたこともあったそうです。国外へ流出した柔道家たちに日本が脅かされることもそうですが、この國の全体主義的な"空気"が日本を弱めることにもつながるのではないか、そんなことを考えさせられました。

また地球規模でみれば、柔道が広がったこともそして逆に西洋絵画の技法が広まったのも人類の幸福量を上げたと想います。

そう思っていたところに、第26回FNSドキュメンタリー大賞 ノミネート作品 透明な外国人たち 彼らに支えられた街TOKYOは重く響きました。
東京で生活する中でよく見かける外国人労働者。そこにいることが当たり前になりすぎて、なのに、彼らのことを何一つ知らない……。彼らはまるで透明人間のように、“見えない存在”なのかもしれない。

中でも技能実習制度の外国人たちの職場は、日本の若者の働かない場所。彼らはなぜ日本に来て、どういう思いで生活しているのか? クリーニングと総菜製造。二つの現場で働くベトナム人を取材した。やがて一人が突然の失踪。再び巡り合った時、彼が語った失踪の理由は意外なものだった……。
経済格差を利用し、年収の数倍の費用を払って日本にやって来たアジアの人達を貧困に落とし込んで使役する仕組み。

番組の中で"大人になってもらわないと"という言葉がありましたが、現状の苦しさを耐え抜くことが大人なのだという"空気"は日本人自身もどん詰まりに疲弊させているのではないか。それを強く想わされました。

これからAI化によってホワイトカラーが減っていくと、肉体労働者の比率が上がっていくとしたら。そうした時ブルーカラーの待遇を良くするのではなく外国人とロボットと競わせ、奴隷人民層をつくるか。"社会を成り立たせる"って何でしょう。

トリクルダウンが虚妄だったことが暴かれた今、国際競争力を奴隷依存のダンピングでなくイノベーションと自由闊達な"人間原理"から"成り立たせられないか"。意思決定層がみている景色と、下で働く人たちがみている景色は違うかもしれないけれど。

この番組のナレーションはなんと向井秀徳だったのですが、覆面リサーチボス潜入みたいな試みが階層の架け橋な仕組みとしてあったら冷凍都市にもぬくもりが少し発生するのかな。。

少なくとも現状の風土を変えなければ、日本は海外の人から働くに魅力的な土地から外れていくと想います。

グローバル競争の中で個人として出来ることは何か?度量の大きな社会なんてのは実現が難しいこの自己責任な割にきりきりいわれる國内を相手に疲弊するのは得策ではなさそうか?世界規模にニッチを見出しオンリーワンになるまで道を究めるのも一策か?

『草枕』冒頭を心に標しながら、そんなことを考えました。


cf.
◆『欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき』をみて

◆欲望の民主主義 世界の景色が変わる時をみて
◆三木清『人生論ノート』@100分de名著
◆『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を読む
◆『嫌われる勇気』は読まずに、関連文書を読む ~自己欺瞞を超えて <アドラー心理学に触れて>
◆アダム・スミス 著, 山岡 洋一 訳 『国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究』 読書メモ
◆マット・リドレー 『繁栄 明日を切り拓くための人類10万年史』 交易と創新による10万年の商業史
◆常に最大の効用生産性を発揮するのが幸福なのか -ザック・リンチ/ニューロ・ウォーズを読んで
◆『日本教の社会学』読書ノート1 日本は民主主義でも自由でもない
◆パリ白熱教室 トマ・ピケティ講義 第1回(dailymotion)
by wavesll | 2017-07-04 20:34 | 私信 | Trackback | Comments(0)