ルバイヤート 絶対への諦念と生の彩

c0002171_18454127.jpgオマル ハイヤーム (著), ‘Umar Khayyam (原著), 岡田 恵美子 (翻訳) のルバーイヤートの文庫本を地元の古本屋で見つけ、さらっと読んで今白ワインを飲みながら軽く酔って感想を書いています。

このペルシャの、生前は天文学者として知られた詩人が残した四行詩集について私は、『酒を飲め、現世を楽しめ』というメッセージくらいしかしらず、快楽的な生を肯定するエピクロス的な、放蕩といってもいいような詩集なのかなと思っていました。

しかし、科学者として、学識を深めていくうちに、ハイヤームはイスラム教の教理に対して疑義を抱くようになり、かといって科学が真理のすべてを明らかにしてくれるわけでもなく、生には意味などない、永遠に続く魂などなく、全ては土に返され、自分が生まれてきたことも死ぬことも、後の世には何の意味もなさないという、寂寞とした思いに駆られていることがその言葉から伝わります。人生は苦しいことばかりだと。

そこで神への陶酔の疑義を、酒や美しい人への陶酔で埋め、幻である人生のただこの一瞬、今、現世を楽しもうという一種諦念からの生への意思を詩に認めていたのだと思いました。

わが心よ、神秘の謎を解くことはお前にできず、
すぐれた知者の境地に至ることもできはしない。
盃に酒をみたし、この世を天国にするがよい、
あの世で天国に行けるかどうかわからないのだから。


彼の一種科学的な、現世を楽しもう。悲しいものは飲まずに、酒を飲もうという意思は、神という存在が希薄になった現代に生きる人々の心に響くと思います。ただ、解説によると、酒を飲むというのはただ単に享楽に溺れるのではなく、人事を尽くしたのち、天命を待つ間酒で楽しくなろうじゃないかという意味だそうです。

翻訳の岡田さんは、詩をイランの文学者サーデク・ヘダーヤトの著作に倣い、8グループに分け、その頭にイランに関する前文を書いています。
イランの人々の思想や生活。詩がとても人気があったり、砂漠に遠足に行ったり、壺を見た時に『この取っ手は美女の腕でできている』と思うような人が土にかえりそれが壺になり、土になり、生命が生まれるといった感覚が書かれていて、興味深かったです。

末尾の解説で、四行詩の原文の際のリズムについて解説がありましたが、原文と音のアルファベット表記、そして日本語訳という構成にしていればより詩を楽しめるかなとは思いました。

しかし、人のできることは永遠でなく、いつか消え去る。だからこそ、今の生を彩ろうというハイヤームのメッセージは十分に伝わり、訳も平易で読みやすかったので、大変面白い本でした。この調子で『王書』など他のペルシャ文学にも手を広げていきたいなと思いました。
by wavesll | 2013-04-26 18:34 | 書評 | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : https://kamomelog.exblog.jp/tb/19907513
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
<< 今週の一曲 佐村河内守 RIS... 今週の一曲 Jai Paul ... >>