以前、社会人2年目位の時mixiに、"もう俺(達)は人生2周目に入っている"と書いたことがあります。
生徒・学生の時は年々どんどん自分が成長していく事を学習の内容の高度化から感じていたのに、会社人生に躓いてしまった私は仕事を通じた自分の成長を感ずることもなく、かといって文化的体験や刺激に対しても舌が肥えるというか、新しい刺激をそんなに感じなくなってきてしまっている。いわば人生の2周目に入ってしまい既視感の上に生きる度合いが増してしまっている。円環する人生に飽きてしまっている。どうする?と。 その時の私が出した答えは1つには結婚し子供をつくれば我が子の成長を通して自分も新たに鮮烈に直接的な時間の流れを味わえる。2つには仕事を通じてキャリアを築いていくゲームをすれば自己成長を味わえる。そして第3が特に趣味・行動の面で今までの自分がやってきたものとは異なる分野に手を出していくというものでした。 そこから4、5年経った今もって私はキャリアの面では燻っています。一方で同級生たちなんかは家庭を築いたり仕事で誇りと実績を創っていったりしていて『グミ・チョコレート・パイン』のような感覚を持つ場面も増えました。 と、同時に今年で30の大台に乗ることになりいよいよ転職活動において尻に火が付き始めたり、祖母が認知症になり介護になったり父が初期がんになったり、異性との付き合いが上手く行ったりいかなかったりと、"永遠に続く円循環の人生"というわけでもない、らせん構造でもなく、急にずどんと状況が変わっていきました。 このシステムどこかでみたことあったなと言うと遥か懐かしきスーパーファミコンのソフト『不思議のダンジョントルネコの大冒険』で"ハラヘラズの指輪"を装備しいつまでも同じ階でレベル上げをしていると地震が起きて底が抜け強制的に下の階に回される感覚に近いな、なんて思い当りました。 少なくとも自分の20代の時間はハラヘラズの指輪でのダンジョン探査の様なものであったと思います。人としての成長において、特に経済人・社会人として責任の深度を増すことに関しては非常に浅く留まり、一部のバロメーターのみレベルアップしてきたと、振り返ると突き当たります。 まぁ、ここからどんどん反省モードになって自分を追い込んでいく事も十分すぎるほど出来るのですが、あえてここはこの"ハラヘラズな人生の進め方"のポジティヴな捉え方を考えてみることで、人口減少期、あるいは移民増大期のにっぽんでの生活の指針を発案してみたいと思います。(前置きが長くなりすぎましたね、たぶん本論より前置きの方が長いと思います) それは一言でいえば"多層複線的な歴史を謳歌しよう"という事です。 地球上には無数の歴史があります。小説・人文・雑誌・ラジオ・TV・音楽・スポーツ・学術・食事・演劇・自然・街・建築・技術・企業etc…それらの個々のプレイヤーのジャンルの中での<中心-辺境>や後世から見た"未来視"を歴史横断的に味わおうと思うにはハラヘラズモードになった上でガンガンに読み込み、実践していかなければ"ベストアルバムさえ聞いていないニワカリスナー"にすら辿り着けないでしょう。 どの道自分の持ち分の時間と精神力・体力は限られており、趣味趣向の選好、そしてチャンスは千差万別ですから棚卸をしてみれば自分だけのオリジナルな組み合わせと出力の仕方になっているはずです。その事実を意識することで、自分を知り、自分の可能性にもっとポジティヴになっていまという歴史的瞬間も謳歌できるのではないかと思います。 "莫大な資本と資源を駆使して新領域を切り開く"ことで人々に新鮮な"今"を感じさせるのではなく、本来の焼き畑農業、つまり焼き畑地域を巡廻して戻ってくるときには元の土地には森林が生えているというようなサステイナブルな新鮮さを持って文明生活をスローに、しかし印象的にできるのではないか、そしてただ単なる円循環ではなく、多分野を体験することでアイディアの交配が進み革新的創新も起きていくのもハラヘラズ的にずどんと行くのではと思うのです。などとデスクトップ上で論じてみました。 例えば音楽はハラヘラズのサイクルに入りつつあると思います。 停滞するメタルシーンと、過去のサウンドの焼き直しだったアイドルシーンが冗談のようにクロスブリードしてbabymetalが生まれたり、とかね。 あと『ランダムアクセスメモリーズ』の1点突破から80s再評価、あるいはヴェイパーウェイブの様なムーヴメントが現れては下火になりましたが、その伏流として私はブラジルの風がここ数年ずっと吹いていると感じていました。おそらくW杯もあって音楽業界が仕掛けていたのと、サンバあるいはブラジリアンジャズのリズム感、熱狂とサウダージが並列に置かれる感覚が今の時代に合っているのではないかと思います。 一昔前に若者の間で流行ったマイルスの『On The Corner』にも、去年来日したAtoms For Peaceにもブラジル人が参加し伯剌西爾の空気を孕んだサウンドを展開しています。また今年の上半期耳目を集めたNovos du blazilも大胆にブラジル音楽をクラブに持ち込んだユニットでした。更に昨年はミナスの新鋭アントニオロウレイロも来日し、素晴らしいライヴを届けてくれました。 只いくらリオ五輪があるとはいえ、ブラジル音楽ブームのピークは去りつつあるかもしれないなということで更に次の予測を私なりに打ち上げると、キーになるのはナディア・ブーランジェ女史かなと思います。彼女は、近年ブラジルEMI期の作品が再発され昨年来日公演を行ったエギベルトジスモンチの師匠で、彼に「あなたはもっと自分のルーツを研究するべき」と示唆したクラシック音楽の講師です。 その彼女の下で育ったもう一人の南米ならではの音楽を打ち立てた偉大なミュージシャンにアストル・ピアソラがいます。タンゴの革新者である彼もナディア女史の下で学んでいたのです。同じDNAを持つ者というだけでなく、アルゼンチンとブラジルはミュージシャンの交流も盛んで、地域として連携しているという点も見逃せません。 そんなわけで南米の音楽大国のブラジルとアルゼンチンを中心に新世代の感覚を持ったDj達によって10年代後半の音が鳴らされていくのではないか。個人的にはタンゴをデジタルな質感のビートで表現したらどうなるのか、またロックやクラブジャズを卒業した人間が聴ける新世代のブラジリアンなジャズロックバンドが出てきてくれないかなどと考えています。
by wavesll
| 2014-07-31 04:31
| 私信
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