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パラジャーノフ『ざくろの色』に想う、表現に対する観客参加性のI/O

The Color of Pomegranates, part 1
The Color of Pomegranates, part 2
c0002171_1422527.jpgセルゲイ・パラジャーノフ監督『ざくろの色』をみました。
アルメニアの国民的詩人、サヤト・ノヴァの生涯を描いた、神聖さの中に土着性が馨る魅力的なアート・フィルムとして、私は「これ、裸とか出てくるけれどいやらしい感じしないなー。性的なあざとさがないけど匂わせる位で清潔な感覚と神秘的な感じがあるから、女の人は好きそうだな。わけはわからんところもあるが、映像で魅させる。途中で僧になるのは『エルトポ』みたいだが、あっちは少年趣味、こっちは少女趣味だな」なんて想いながら見ていました。ただ、この映画を紹介してくれた女性はとても男性的に感じたと言っていたので、中性的、あるいは男女を超越した美が描かれた作品なのかもしれません。

そして見終わった後、新美へルーヴル美術館展を観に行き、"風俗画というのはモキュメンタリーの様な、演出された現実の面白さがあるな"などと想いながら帰ってきて、『ざくろの色』DVDに同梱していた『パラジャーノフ・コード』というパラジャーノフの解説映像(なんとDVD2枚組で160分位ある!)をみたら、吃驚仰天、『ざくろの色』は世俗の欲望と精神性の気高さの間で主人公の詩人がもだえる様を描いた映画だったのです。それを"煩悩感ないなー"等とみていた私はどれだけ欲に塗れているのか…反省しきりです。

『パラジャーノフ・コード』で、『ざくろの色』の場面や設定を逐一解説を受け、"あぁこの場面の意味はこういう事だったのか、こういう読み解き方があったのか"と蒙が開けました。例えばざくろの色=赤=血の色=肉体の色=愛欲=世俗的な欲望といったような見立てや象徴を使った演出は、舞台劇のそれのようで、行間を想像する読解力が観客にも必要になるなぁと。

ここら辺は宗教画等にも通じるものがありますね。ルーヴル美術館展に展示されていた絵画も、ただ単純に色のならびを見るだけではなくて、その絵で扱われている事物の象徴しているものに意味があったり、画の中に物語があったりするのを読み解くことで面白くなる絵画が沢山ありました。EUREKA!をもたらすアハ体験の快楽性によって作品に"観客が読み解くという作品参加性"を与えていたのだな、等と思いました。

観客が演者の表現に参加するという事象は、今また新しい形を迎えているようにも思います。アイドルの現場でのオタ芸やコールなんか、どっちが主役かわかりませんものね。私もバンドのライヴに行き始めのころは、周りのモッシュに合わせるのに必死で、ろくに音楽聴けてないことがありましたよw後はダイヴしている人とかも一種の"演者"の一人になってますよね。今は周りの目など気にせず、好きに揺れたり跳んだりするように図太くなりました。何のための生体験なんだよって話ですからねw

ライヴの観客参加性は、モッシュとかシンガロングだとか、コールアンドレスポンスだとか昔からありましたが、今はSNSと組み合わせて、自分の体験を肴にコミュニケーションが加速させる、コミュニケーションの方が主になっているような空気はある気がします。一方それはアーティストにとってはきちんと音楽を聴いてもらえないと嘆く側面も。とは言え、他人が主役になるより自分が主役になる方が好きだという時代の空気感は、私も分からないでもありません。

そういった"アウトプットの観客参加"と違って"EUREKAの観客参加性"は"インプットの観客参加"の様に感じられます。前者が表現が精神を高く顕示させるのに対して、後者は精神を深く掘り下げていくような。双方必要なことで、双方面白い。TVなんかだと"もういいよ"ってくらいに説明過剰な表現が垂れ流しになっていますから、行間を空け想像の余地を残して、受け取る側のイマジネーションによって表現を完成させるという贅沢な体験も、大事だなぁなどと思いました。

エントリ冒頭のlink、なんと『ざくろの色』、Youtubeに全編上がっていました。解説映像で知った、タルコフスキーとも友情があったパラジャーノフ監督の波乱に満ちた人生は勿論衝撃的ですが、そういった文脈(あるいは前述した"読み解き")がなくても、この映像美と音楽の良さは非常に印象的でした。

ヨーロッパとアジアが交わる土地に生きたユーラシア人のパラジャーノフ監督の他の作品も見てみたくなりました。アラブが舞台の彼の遺作『アシク・ケリブ』とか。音楽的にも東欧から中東な民族的なリズムと音色で、ちょっとこの間書いたマケドニアにも共通するようなあのあたりの地域の複雑な妙味を感じさせられる作品で、非常に良かったです。あのあたり、最近とても気になります。

ソヴィエトによって投獄までされたパラジャーノフ。独裁政権というのは芸術を弾圧するのは何故だろうと考えると"人々に想像力を喚起させたり、独裁者と違う感性が屹立することを独裁政権は耐えられないのかもしれない"等とも想いました。イラクで遺跡を壊すISILといい、独裁者と言い、彼らには文化よりも大事な"政治"だったり"宗教"といった価値観があり、そこで権力闘争に明け暮れているのでしょうが、私はなよっちいと言われても文化芸術のもたらす精神的な自由さを重視していきたいな等とも想った日でした。少なくともこの主役の詩人(なんと女性が演じていたそうです)のずば抜けた美青年ぷりは一見の価値ありです。
by wavesll | 2015-03-08 02:34 | 小噺 | Comments(0)
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