![]() 時折入る実写の実行犯たちの90年代の映像は、どこか赤軍派の様な頬がこけ目が血走った元インテリエリートの持つ凶暴さ。そして麻原の余りにもファニーな存在感。20年前私は10歳だったのでそこまで詳細には覚えていませんが、今改めて「日比谷線」やその他の駅名を聴くと、自分の生活圏の中で化学兵器による無差別テロが起きたという戦慄を覚えると共に、オウム事件を基にした『20世紀少年』の取材が良くできていたなぁとか、オウムが暗い影を(少なくとも自分には)残しているのはそのポップさと体感の裏打ちなのだろうなと思い起こしました。 ほぼ後追いでとんねるずの番組に出ていた麻原をみたり、オウムの音楽をwebで聴いてみたり、強い衝撃を当時の10代の少年として受けたことは間違いありません。私だけでなく、学年の悪ガキなんかもピアノで「しょーこーしょこーしょこしょこしょーこー」と弾いていたのは結構全国的なものだったのかもしれません。 大学時代、文学部の授業に潜ったらオウムの修行の種本は中沢 新一の『虹の階梯』だったと知り、どのようなものか興味が出て図書館で借りましたが、読んでも意味が分からず、放置したのを覚えています。 私は一時期、ホットヨガやらスピリチュアル的な聖地巡礼にうつつを抜かした経験があるのですが、そういったものから得た実感から推察するに、オウムに高学歴のインテリたちが呑み込まれたのは、圧倒的な神秘体験の体感があったからだと思います。ヨガなんかは実際やってみると精神の変容が(特に上手いトレーナーの指示に従うと)感じられます。『虹の階梯』に書いてあるチベット密教のメソッドを元に、オウムは薬物まで使っていたのですから、恐らくは確かな体感神秘があったのでしょう。 インテリというのは下手に知識をため込んでしまうものですから、世界の大体を自分は知っていると過信する者もいます。そんな人間が全く知らなかった精神体験を体感してしまうと、ころっとやられてしまう。そんな筋書きがオウムにいかれたインテリたちをみていると感じます。 また目が悪かった麻原は人心掌握の達人だったらしいですから、『金閣寺』の柏木のように狡猾に心を鷲掴みにしたのかもしれません。 神秘体験、天上の刺激。自分は音楽が好きなのですが、音楽を、特に詩ではなく音を追求していくということはどこか意識が飛ぶような体験を求める気持ちがあるのではないかなと思います。快楽を何よりも追求する心。自分がオウムのアニメをみて戦慄したのは、出会うタイミングが違えば私もオウムの様な組織にやられてしまったのではないかという恐怖も少しあったからかもしれません。 一時期、自分の人生で脳内麻薬のバブルを迎えていたころは、信者どころか教祖のような万能感を得て、そんな尊い自分を評価しない社会に強烈な憎悪を抱えていました。自分は良くも悪くも麻原ではないですが、もしかしたら自分の中にも麻原がいるのではないか、という闇というか、狂った部分が自分の心の襞の中に隠しこまれている気もします。 魔境、という言葉があります。禅の修行者が中途半端に能力を覚醒した際に陥りやすい状態で、意識の拡張により自我が肥大し精神バランスを崩した状態のことで、仏教の教えでは、魔境に陥りそうになったらすぐさまその過信を消し、謙虚な心を失ってはならないと教えています。 あの頃の自分の状況も、今思えば魔境に入っていたのかもしれません。単純に天狗になった以上の体感した神秘経験もありましたから。と同時にこの魔境の事を知ったとき、自分で自分をクレイジーだなと想うのは「あの先があるのか」と少しワクワクしてしまったんですよね(苦笑)煩悩消えてねー、駄目だこりゃ、という感じですね。 その魔境に陥っていたころの話をもう少しすると、当時仲良くさせて頂いていた大学の先輩がいたのですが、まぁ後輩としてよく無茶振りさせられていたんですよ。で自分も嫌いじゃないので無茶振りに精一杯答えていたのですが、だんだん自分のはっちゃけぶりがその先輩のキャパを越えて、君とはやってられんわと決別されたのでした。 その事を昨日大学時代の友人との昔話で「あの人は結局いい人で、俺がクレージーだったんだな」と話したら「マフィアのボスが手に負えなくなった若造を追放しようとして殺されるとか、そういう感じかもな」と言われました。うーむ、言い当てているような気もしますね。。 そんな事柄が頭のどっかにありながら、前述の先輩とも仲の良いドラマーの先輩から誘われ、先輩のバンドをみに渋谷NO STYLEへ行ってきました。 ![]() ![]() 結論からいうと、めちゃよかったです。20時すぎから行ったのですが、ザ・ビリーズピストルにはロックって人格だなぁとか、本当にシンプルな気持ちになれる音だなぁとか思ったし、BLUE STRAIGHTは先輩のドラムがやばく華やかで、しかもベースが横須賀のヤンキーみたいなスカジャン着てるのに中身が江戸っ子みたいなチャキチャキの白人(しかも髪がアニメキャラみたいな色)だし、ギターヴォーカルの男子も若々しくていいし、先輩のバンドで今まで見た中で一番フレッシュな音に感じれて非常に良かったです。 体を動かして、汗かいて、なんか、楽しくなっちゃって、近頃まともに昔ながらのロックンロールを聴いておらずにいたのですが、やはり生で狭い地下のライヴハウスで体感するとロックってまじめに楽しいなぁと感じました。そして、ふとあの先輩は自分がコントロールできる範囲で遊んでいて私に無茶振りしていたのだけれど、私にとってそれは自分の能力を超えたフィールドで、アウトオブコントロールこそが正義だと私は勘違いしたのかもしれないなと、ちょっと思いつきました。 そうなるとどれだけ狂うか競争になって、暴走しすぎてゲーム自体をぶち壊しに自分はしてしまったのかなと。魔境を痛飲してゲロを吐いてしまった。そしてそれが起きないように厳しい制限が課せられることを招いた。そういうことかもしれません。 そこで、論を進め、魔境の先へ行くことを考えるに、アウトオブコントロールを良しとせず、自分がコントロールできる領域を高めていくことなのかもしれないなと思いながら東横線で帰りました。いわばセル戦前の悟空と悟飯が精神と時の部屋でした、超サイヤ人状態を普通の精神状態でする修行、みたいな。 オウム真理教の幹部も、自分の精神がアウトオブコントロールであることを良しとしハルマゲドン思想に酔わなければ、罪を犯し死刑になることもなかったのかな、と思います。勿論時にはアウトオブコントロール領域までジャンプするのも必要ですが、コントロールできる高度を上げるのはもっと大事です。 オウムの幹部たちは下手に真面目だったため、教義を原理主義的になってしまい、いわゆる世間的な"いい塩梅"から大きく外れた行動に出てしまったのだと思います。遺跡遺産を破壊するイスラム原理主義者にしても、ロベスピエールの恐怖政治にしても、理論が現実を超越して歯車が回り始めると、どこまでも先鋭化し、余りにも突き抜けたものになってしまいます。その意味で革新をやるためにはとことん身体的な納得感、直観的な把握ができるバッファがないと、社会を破壊するしかないところに精神的に追い詰められてしまうのではないか、等とも想います。 その為には運任せではなく、着実で実直な地味な鍛錬とコミュニケーションが必要になるでしょう。そしてそうすることがOVER30の努めなのかもなぁなんて想いながら、今夜はここら辺で筆をおきます。ヒットが伸びた先にホームランがあるような、イチローの様なプレースタイル、いいなぁと思いました。
by wavesll
| 2015-03-18 01:57
| 小噺
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