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NODA・MAP 『エッグ』 繰り返し演じられ"真実"へ解釈を更新していく物語

Eテレで放送された野田秀樹の『エッグ』、録画して23時からみていたのですが、1時すぎに観終わって、今もその余韻の中に飲まれています。

NODA・MAP 第19回公演「エッグ」北九州公演

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自分はこの劇に前情報、ほとんど入れてなくて、椎名林檎が音楽やってるくらいしか知らなかったのですが、架空のスポーツ"エッグ"のどんちゃん騒ぎから始まるこの舞台、素晴らしかったです。この舞台をネタバレ無しで楽しんでほしいので、まだ見てない人にはこの先の文章は読まないで、「絶対いいから最後まで観てくれ」と言いたいw

ただ、まぁ極力ネタバレはせずに、書ける感想を書きたいと想います。

途中までTVを観ながら思っていたのは「やっぱ舞台は生じゃないと駄目かなぁ」ということでした。去年、フェスティバルトーキョーで2つの舞台をみた時と比べると、家でTVでみる舞台はステージ上の熱演とソファに寝そべってみているこちらに温度差があるというか、とにかく序盤・中盤はハリ、ハリの藝でしたし、正直厳しいか、、、生で観とけば違うのかも、、等と考えていました。ハリ芸の勢いで劇は進んでいくのですが、結局何が演じられているのかわからない、と言ったところが本音でした。

しかしそれは正しかった。同じ構造がヴェールを暴かれて繰り返される終盤からクライマックスにかけて、その"糊塗されていたカーテンが暴かれ、歴史の真実が上演される"ことで、一気に惹きこまれ、正直震えさせられました。頭では"あぁこのネタか"と想ったのですが、それでも震えさせられたのはこの劇の構造と演出、そして演技の質が非常に高かったからだと想います。

"塗り替えられた歴史のヴェールを剥がし真相を露呈させる"という意味では岡田利規 『God Bless Baseball』に通じるものがありますが、表現としての強度はこちらの方が遥かに強いと感じました。"歴史を忘れ、『広報によってつくられたイメージ』の中で生活する危険性"なんかのメッセージも、強度があると想います。歴史文書を燃やすシーンは、闇に暗部を放り込む日本の官僚機構や回顧録さえ書かない日本の政治家を考えさせられましたね。

いつだって身代わりになるのは、弱い立場の人間で、強者はのうのうとやっていく。愛すらも得られない操作された世界、なんていうとちょっと陰謀論に傾きすぎる嫌いもありますが、そういった不信感を感じさせない推進力のエネルギーにあふれた舞台、ちょっとこれは凄かった。まだ見てられない方は、是非ご覧になられることを、戟奨致します。クライマックスの深津絵里の表情、鋭利なほど美しかったです。

by wavesll | 2016-01-24 02:26 | 舞台 | Comments(0)
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