三菱一号館美術館 プラド美術館展 - スペイン宮廷 美への情熱 をみてきた。プラドの小品を集めた展覧会。小品と侮るなかれ、大画家達が巨大な作品を大人数で作るために自ら描いた見本絵を楽しめると言う仕掛け。
最もみれて嬉しかったのはペーテル・パウル・ルーベンスによる『聖人たちに囲まれた聖家族』まるでルーベンス版『アテネの学堂』のような美しい色彩。油絵のいいのって、なんか美味しそうなのですよね。
Top2に印象的だったのはヤン・ブリューゲル(2世)の『豊穣』。6つの乳房を持つ女の人を初めとして咲き零れる花々、実り誇る果実。奇想の楽園が美しかったです。
奇想というとダーフィット・テニールスの諧謔の効いた『猿の画家』『猿の彫刻家』も良かったし、ヤン・ファン・ケッセル(1世)が奇妙な光景の『アジア』、蝙蝠の羽が生えた不気味な赤ん坊に股がった悪魔が印象的なビーテル・フリス『冥府のオルフェウスとエウリュディケ』もハオ。
美女達の画も多かったです。ドメニコ・ティントレット『胸をはだける婦人』、グイド・レーニ『花を持つ若い女』も良かったし、ルイス・パレート・イ・アルカーサル『画家の妻、マリア・デ・ラス・ニエベス・ミカエラ・フルディニエ』も美人。ホセ・カマロン・イ・ボナナート『座る女』はマダムでした。マドリードの不祥の画家による『スペイン王妃、マリアナ・デ・アウストリア』の髪型はアミダラのよう。またペーテル・パウル・ルーベンス『狩りをするディアナとニンフたち』やルカ・ジョルダーノ『スペイン王妃マリアナ・デ・ネオブルゴ(ノイブルク)騎馬像』に力強く行動的な女性像をみました。若妻なバルトロメ・エステバン・ムリーリョ『ロザリオの聖母』、石像のように青白いコッラード・ジャクイント『イフィゲイアの犠牲』も洗練された美しさがありました。
双眼鏡というモチーフが面白いビセンテ・パルマローリ・ゴンザレス『手に取るように』、鮮烈な日差しのコントラストが美しいマリアノ・フォルトゥーニ・イ・マルサル『フォルトューニ邸の庭』も印象的でした。
宗教画ではエル・グレコ『受胎告知』もあったし、カルロ・マラッティ『眠る幼子イエスを藁の上に横たえる聖母』の闇に浮かび上がる姿の美。ヘラルト・ダーフィット『聖母子と天使たち』の黄金の優しさ。ドメニキーノ『聖ぺテロの涙』の青と黄、仏国不祥の画家の『自らの十字架を引き受けるキリスト教徒の魂』の十字架で埋まった世界や、偽ブレス『東方三博士の礼拝』『12部族の使者を迎えるダビデ王』『ソロモン王の前のシバの女王』も好。ピセンテ・ロペス・ポルターニャ『聖ヨセフの夢』『聖ぺテロの解放』の天使はクールでしたねー。天使だとフランシスコ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス『トビアスと天使』も。
ロココなフランシスコ・バイェウ・イ・スビアス『オリュンポス、巨人族の戦い』も素晴らしかったし、ジャンバッティスタ・ティエポロ『オリュンポス、あるいはウェヌスの勝利』はBest3クラス。
ヘルマン・ファン・フォレンホーフェン『死せる鳥たち』、ハブリエル・メツー『死せる雄鶏』の黒、ファン・バン・デル・アメン『スモモとサワーチェリーの載った皿』、ルイス・エヒディオ・メレンデス『静物:風景の中のキイチゴの皿、アセロラ、ハシバミ』はしずる感ありました。
フィリップス・ワウウェルマン『タカ狩りの一団』、ヒエロニムス・ボス『愚者の石の除去』、カルロス・デ・アエス『ヤシの林(エルチェ)、気球を描いたジョン=フランシス・リゴー『3人の花形空中旅行者』等、題材が面白いものも幾つもありました。
その他、ミゼルコルディアの聖母の画家『金細工工房の聖エリギウス』、不気味可愛いアンドレア・デル・サント『洗礼者聖ヨハネと子羊』、マリアノ・フォルトゥーニ・イ・マルサル『日本式広間にいる画家の子供たち』、フランシスコ・ドミンゴ・マルケース『眠る猫の頭部』、イグナシオ・ピナーソ・カマルレンチ『ファウヌス(子供のヌード)』と、プラド美術館展、頭から尾まで餡子が詰まったタイ焼きのように、非常に満足できる良品ばかりの展覧会でした。今月末まで。1700円でも損した気にはなりませんでした。