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地点 X 三輪眞弘 X イェリネク X KAAT 『スポーツ劇』 ―興味深い靄々の残る問題提起

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『ミステリヤ・ブッフ』で地点を教えてくれた子に誘われ、KAATでの『スポーツ劇』千秋楽をみてきました。

背伸びして格好つけても仕方ないので本音で話すと、少なくとも中盤までは"これは疲れるな…"と想っていました。台詞の内容自体は難解な表現はないのですが、芝生の反り立つ壁みたいなセットの中で反復横飛びしながら複数の登場人物がそれぞれにかみ合わない演説を叫んでいるのは、小説というより説明文(しかも散文以上に連続性のない)を読んでいるような気分と言うか。

そんな中で自分がこの劇を自分なりに理解する取っ掛りとなったのは『観客というアティチュードへの批判』が読み取れた時でした。

『God Bless Baseball』でもそうですが、スポーツと言うのを現代演劇で取り上げる際にはナショナリズムというか、戦争の代替物だったりとか、"敵と味方"というか、そういったものの表象として取り上げられることがあると思います。この『スポーツ劇』でもそういった形での(一種ありがちな)論の展開はあるのですが、それ以上に印象に残ったのは“観客的姿勢(他人に己の夢を託して委せる姿勢)”への批判を感じた事でした。

自分の人生で、自分の夢を、自分で叶えずに、その姿や心をスターに託す。その生き方への批判。それはしかし、"演劇という興業”をやっている地点自身にとってもアンビバレンツな問題提起の様にも思えました。実際に終盤に"観客は必要だ"とか"拍手をしたいだろうけれどまだみなさんに伝えたいことがある"のような台詞が出てきます。"観客"という立場ではなくて、自分の人生を自分が成し上げるべきだという論を"観客"に言う。中々に複雑な状況だなと想いながら見ていました。

更にこの劇で私が感じた第二のキーワードは『部外者』でした。部外者としてしか社会に関われない。「発電所」なんかの台詞があって、あぁこれは福島第一を初めとする原発の問題にかかわる部分なのかなぁ、原子力発電技術と言うブラックボックス、原発村と学者たちというブラックボックス、余りに世の中にブラックボックスが増えすぎて、部外者としては極めて不透明な世の中に暮らさなければならないことへのモヤモヤを顕しているのかなぁと。

と同時に、先の"観客"もそうなのですが、"部外者"を産みだすことになったのは現在の社会が"分業"によって成り立ち、専門化とイノベーションによる高度化によって発達してきた、その副産物として"観客≒部外者"が生まれたということを考えると、この劇は極論すれば文明のメカニズムへの批判とも観れる気がしました。

しかしそれは取りも直さず、地点と言う劇団やKAATが成り立つのも現代の繁栄の賜物であり、観客を批判しながら観客を必要するのと同じく、矛盾を孕んだ主張、といえるかもしれないな、と想ったのでした。とはいえ、こういうのは0or100の選択でなく濃淡の話でもあるし、進化の方向性への問題として"馬鹿らしい"と切り捨てるには適当でない、意味ある問題提起だったと思います。

その為の考える土台としてアダム・スミス『国富論』やマーシャル マクルーハン『メディア論―人間の拡張の諸相』等の古典を読むことが、コンセンサスを築く上で有効なのではないかと言う予感がします。マクロな話で言えば、現代に生きる上で、人々に要求される"教養"は年々量と質を変えていて、それらを生涯かけて学び磨き続けることが分業社会におけるブラックボックスだらけの世を光を増していく術なのではないかと想いました。

また、最後に音楽の話を。
劇場の客席を挟んだ左右の二階のテラスに男女が別々に列を無し、パイプ(リレーのバトンにもみえる)を使って叩いたり、吹いたりして音を出す生演奏は、ブラジルの創作楽器集団UaktiやBluemanを想起しました。劇中に何度か爆撃音とジェット機の音が響いたのですが、あれは良く分からなかったな。戦時下の地域という事の表現だったのだろうか?まぁ正直、地点の彼らが言いたいことの20%も理解できた気はしませんでしたが、なかなかいい靄々を味わえて、面白かったです。ただ『ミステリヤ・ブッフ』に感じたMagicは無かったかな。

Uakti | Tiquiê River / Japurá River (Philip Glass) | Instrumental SESC Brasil


uakti beatles


Blue Man Group - Medley (Melodi Festival 20-02-2010)


Blue Man Group The Complex Rock Tour Live

by wavesll | 2016-03-22 01:19 | 小ネタ | Comments(0)
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