

Bunkamuraに
ピエール・アレシンスキー展へ行ってきました。
ベルギーの現代の巨匠。日本の書にも影響を受けた黒、一方で鮮烈なカラフルさ。コミックから着想を得たコマ割は古代遺跡の趣。それらが結実した
『至る所から』はアレシンスキーならではの偉大な絵でした。直に見るとその巨大さにも驚きました。
芸術集団コブラ時代の
『職業』シリーズ、漁師、美容師、自動車整備士、樵、神父、兵士、消防士、ファッション・デザイナー、音楽家という具体的人物キャラクターをイマジネイティヴに描く。この具象と抽象のバランスがいい。『ネオン』『太陽』『稲妻』『錬金術』は篆刻な感性。日本での書の体験を咀嚼した『移動』は
ROVO『MON』の様、
『夜』と合わせ絵画と書のフュージョン。
『根と脇根』のコマ割、
『ときには逆もある』や『無制限の責任』のマティスな感覚。『新聞雑報』の頃はポロックのアクションペインティングにも影響を受けたとか。『仮面の下の三人の声』はミロを感じます。
『誕生する緑』の色彩!水色・緑が躍る。『魔法にかけられた火山』の鮮やかな緑。『手探りで』のカリグラフィーはタギングを先取りしているのは
Patrick Hartlの先祖ともいえるかも。『見張り』の黄緑、『中庭への窓』の赤。
『見本』のパステルと黒。
『写真に対抗して』などの下部挿画(プレデラ)という発想はコミックからきたそう。
『肝心な森』で彩りとコマ割りが止揚。
『氷の目』の色味の綺麗と試みの面白さ。『ブータン』・
『真上から見たニューデリー』のマヤやトンパの古代絵文字感。
『ボキャブラリーI-VIII』はオランダのデリフトを想。
『間接税の会計』や『言葉であり、網目であり』、『神聖ローマ帝国裁判官』・
『あなたの従僕』等の基から何かの用紙に絵を描く作品群や『メトロポリタンの口』、『イースト川』、
『ローマの網』といったマンホールを紙に押し付けて描く手法がフィールドレコーディング的なブリコラージュの面白さがありました。
『プリズム』の綺麗さ。丁度いい密度が素晴らしい。
『ヴォワラン印刷機の大地』と『ヴォワラン印刷機の黄色』、『モンタテールのヴォワラン印刷機』の2003年の新たなるスタンダード。今世紀に入っても未だ瑞々しさを失わない、重くなりすぎない溌剌さに驚嘆しました。
『直線的な廊下』は
福田平八郎『漣』に比するデザイン性。『ぼた山 VII』のシンプルさ。
『最終撹拌』等の丸キャンバス作品も。『のぞき穴 II』 『のぞき穴 III』 『のぞき穴 IV』は2015年の作品、生けるレジェンドの姿、最上の平衡感覚と新鮮な感性に惚れ惚れしました。
コミックのコマ割りを絵画に落とし込むのは立体を絵画に落とし込んだキュビズムにも似た平面表現だと感じました。今、もしこれらと同じレベルの試みをしようと想ったらゲームやアプリを絵画に落とし込むとか…??インタラクティヴ性を出すという意味では展覧会自体がメディア・アートとは言えるかもしれませんね。
展示は明日まで。1400円。19時までやっていて粒揃いかつ軽やかな展覧会なので仕事帰りでも快く観れると想います。