欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき 第1章~第3章 書き起こし

前編「欲望の資本主義2017 ルールが変わる時」20160103(Dailymotion)

"富や成功"への欲望 "資本"は自由自在に移動する "消費"が資本主義のエンジンだ わたしたちはいつからこんな世界を生きているのだろう?ヒトとモノの間をお金が行きかう、際限なく膨張してきた資本主義。

"経済的豊かさ それを求めるのは人の本能だ" "イブは『欲望』に呪われた"

より早くより遠くへより良いものを 飽くなき欲望が加速する世界 市場の論理にすべてが覆われ一瞬先も予測不能なこの世界 そして今

トランプ「メキシコとの間に壁をつくる!」

流れが変わったのか。"「闇の力」が目覚めたようだ" 消費・成長・富への欲望 私たちは何処へ向かうのか "アダム・スミスは間違っていた" 経済学の父はあやまちを犯したのか "もう一度ルールを書き換えろ" ルールを書き換えよ "ケインズは「悪用」されている" "ケインズだったら「クレイジーだ」と言うね" あの男を呼び覚ませ "日本が成長を追い求め過ぎれば資本主義の「死」を迎えるだろう 『KAROUSHI』という名のね" "資本主義の「死」を宣言するのはまだ早い"

資本主義は何処へ向かうのか 世界の経済のフロントランナー達が紡ぐ欲望と言う名の物語

「欲望」は満たされることを望まない 「欲望」は増殖することを望む

太古からヒトは所有と交換を繰り返してきた ある時お金が生まれ市場が生まれ欲望の交換はこの貨幣なるものに託された やめられない、止められない


第一章 資本主義の、現在

資本主義 それはお金、資本を際限なく投じ増殖を求めるシステム

安田洋祐(大阪大学准教授)
「今 多くの国が低成長に苦しんでいます。それでも世界経済は成長し続けられるのでしょうか?成長し続けていくべきなのでしょうか?」

ジョセフ・スティグリッツ(コロンビア大学教授 2001年ノーベル経済学賞受賞 アメリカ大統領経済諮問委員会委員長 世界銀行チーフエコノミストなどの要職を歴任)
「いま問題なのは世界の総需要が不足していることだ。そのせいで世界経済が減速している。それにはいくつかの原因がある。
まず中国の減速。"量の成長"から"質の成長"へ変化し世界に大きな影響を与えている。もうひとつはユーロ圏だ。数々の問題を抱えている。ユーロでは通貨の統合が成長を妨げてきた。

ただ全体としては別の要因が潜んでいる。不平等の増大だ。貧困層から富裕層へと富は吸い上げられ富裕層は貧困層に比べお金を使わない。これが全体の需要を押し下げ成長にブレーキをかけているのだ」

トマス・セドラチェク(チェコ総合銀行チーフエコノミスト 経済学者 24歳のとき初代大統領の経済アドバイザーに抜擢 チェコでベストセラーとなった著書『善と悪の経済学』は世界15か国語に翻訳)
「今の世界は資本主義かそれとも"成長"資本主義か。僕は"成長"資本主義だと思っている。みんな成長のことばかり気にしている。成長できなかったら「もう終わりだ」ってね。おかしいだろう、どこに書いてある?聖書に?空に?数学モデルに?過去に証明されたのか?ノーだ。資本主義が必ず成長するというのはナイーブな思い込みだ。

成長に反対なわけじゃない。いい天気が嫌なはずがないだろ。問題は社会 年金 銀行…すべて成長が前提となっていることだ。まるで毎日快晴だと決めつけて船を造るようなものだね。そんな船はダメだ。凪でも嵐でも航海できるのがいい船だろう。そりゃ天気がいいに越したことはない。でもそれを前提にして船を造ってはいけない」

スティグリッツ
「低成長は避けられる。もしもアメリカ ヨーロッパ 各国で考え方を変えることができれば成長は可能だ」

安田
「資本主義はこれからも持続可能だと考えますか?」

スティグリッツ
「市場経済はずっと続いていくだろう。市場経済のあり方には政治が大きく影響する。30年ほど前にアメリカをはじめ各国で市場経済のルールの書き換えが始まった。ますます不平等を生むようなルールに書き換えられたのだ。それだけでなく市場経済の効率性が下がり生産性の下落を招いたのだ。目先のことだけに人々が夢中になってしまうようなルールの変更だ。

長期の投資ニーズがあり長期の貯金をしている人々がいる。だが金融市場は目先のことだけで機能不全に陥っている。私たちの市場経済が招いた決定的な変化の一つだ。だから今再びルールを書き換えないといけない。これからのルールは繁栄を分かち合い、より成長しより公平な分配をうながすものでないといけない。実現できると思うし実行可能な目標だと思う」

セドラチェク
「共産主義だった国から来た身としては共産主義を捨てて資本主義をインストールしていたころ民主主義国家での資本主義は何よりも自由のためのものと信じていた。成長は良いものかもしれないけれどたとえるなら車の"最高速度"だ。それは大事なことか?そうだ。一番大事なものか?いいえだ。

確かに資本主義は"成長"のための豊かな土壌だ。しかしこの20年間で二つの関係がひっくり返って私たちは成長を資本主義の"絶対必要条件"だと信じ込んでいる」

東京の百貨店で
セドラチェク
「消費の大聖堂だね。いつもリュックひとつで旅をするんだ 僧侶みたいだろ。手でもてる以上の物は僕はいらない。自由はかつて"物からの自由"を意味していた。今や自由といえば"消費する自由"だ。消費できるほど自由を感じる。消費できないと自由じゃないと思ってしまう。だから毎日働かないといけない…。映画『マトリックス』でもあっただろ。いらないものを買うためにしたくもない仕事をする。エデンの園の呪いだね」

禁じられた果実 もうヒトは後戻りできない 消費への欲望 それを満たすための労働 果てしない欲望の無限回路がはじまる

セドラチェク
「『CUBE』っていう映画を知ってるかい?『CUBE』はカフカの不条理劇にも通じるんだが気がつくと四角い空間に閉じ込められていて…物語の終盤、実は自分たちが『CUBE』を造っていたことに気がつくことになる。

専門化した社会では自分のしていることが分からなくなる。フランスの哲学者ラカンはこう言った"分かっているけど止められない"。私たちの問題は分かってさえもいないことだ。どんなに働いても欲望を満たすだけのものは作れない」

第2章 成長は、至上命題?

スティグリッツ
「経済成長について話すときは"成長"の意味をはっきりさせないといけない。GDPは経済力を測るにはいい指標とは言えない。環境汚染、資源乱用を考慮にいれてないし、富の分配も社会の持続性も考慮されていない。問題だらけだ。経済における成長の本質をこの先変えていくべきだと強く思っている。

すでに明らかなのは物質主義的経済ー天然資源をじゃぶじゃぶ使って二酸化炭素を大量に排出するようなことは持続不可能だという事だ。もうそのような成長はなしえない。だが他のかたちの成長がある。まだまだ反映できるし新たなイノベーションを生み出せるはずだ」

安田
「その変化を起こすには何が重要ですか?」

スティグリッツ
「政府の政策が必要だ。テクノロジーやインフラや教育にもっと投資をしないといけない。地球の気温を2度も上昇させてしまったことで多くの投資が必要になっている。経済を整え新エネルギーに移行し都市構造を変える。私たちには巨大なニーズがあるはずだ」

新たな需要を生む変化 その予兆はやはりこの地(サンフランシスコ)から生まれるのか

スコット・スタンフォード(シェルパ・キャピタルCEO 元ゴールドマン・サックス社員 2013年ベンチャー投資企業を設立)
「Uberへの投資がきっかけで今の会社の共同設立者と出会った。立ち上げのかなり早い段階で投資をした。ごく小さい会社だったがアイデアに魅力を感じた」

彼はアプリでクルマを呼べる新しいビジネスモデルに投資した それは従来のタクシードライバーの雇用を奪う事にもなる 創造と破壊は裏表

スタンフォード
「テクノロジーは経済を活性化するか雇用を奪うだけか。そういうことは考えてない。そういう心配をするのは僕たちの仕事じゃない。僕たちは5億ドルを運用している。そのお金は僕たちのお金ではなくて出資するパートナーたちのものだ。彼らは自らの資本を僕らの投資に委ねてくれている。僕らに収入があるのは投資がリターンを生んだ時だけだ。資本金をコントロールするボスがいるのさ」

安田
「以前はゴールドマン・サックス(投資銀行)に所属していたんですね。投資の戦略や考え方で何か違いがありますか?」

スタンフォード
「面白い質問だね。考えたこともなかったな。はっきり言えることはすべての仕事は資本主義システムの中にあるんだよ。そもそもゴールドマン・サックスでも今の会社シェルパ・キャピタルでも目的は同じだ。短期間でお金を稼ぐこと。ただ今は常に新たなビジネスのアイデアを考えている。誰かの起業を手助けするだけでなく時には自分たちで新しい会社を立ち上げる」

お金、投じれば増えて返ってくる そんな資本主義のセオリー だがいつでも通用するわけではない

安田
「利子率はますます低くなっています。もう投資も成長も見込めないと言う人たちもいますが…」

スティグリッツ
「ケインズを始め 多くの近代経済学者たちは利子率の役割 調整機能を強調しすぎた。利子率より重要なのは借り入れのための"信用"だ。低い利子率は不況を招いている政策の結果に過ぎない」

セドラチェク
「クルーグマン(経済学者)の主張で同意できないことがあるんだが、彼の主張は"低い利子率で借金すれば"、"経済が好転して"、”借金を返せるようになる”。真ん中の文を抜いたらどうなると思う?違う意味が見えてくるよ?"低い利子率で借金すれば"、"借金を返せるようになる"。これは銀行員だったら警報ものだよね。危険すぎる。火で火を消そうとするようなものだよ」

スティグリッツ
「テクノロジー、インフラ、温暖化対策に投資すれば利子率なんてすぐに上がるさ!」

セドラチェク
「ナイフや火のようなものだ。コントロールできる代物じゃないんだ。利子率っていうのはどう扱っていいものか本当にわからないものだ。どんなにいい投資でも、高速道路・大学・研究機関とかを作ったとしてもお金は必ず返さないといけない。教育レベルが高くて優秀な経済学者がたくさんいて大きな潜在力を持っている日本のような国でも借金を返せずに苦労している

文明社会は"安定"を売り払ってしまった。そして無限に"成長"を買っている。僕らはいつもではなくとも時々成長をもたらす経済を作り出したが今は崩れかかっている」

安田
「人々の成長への期待が膨らみ利子という概念が広まったことは成長資本主義のそもそもの起源なのかもしれないですね。人々の考えを変えたのかもしれません」

セドラチェク
「その通りだと思う。利子はアルコールのようなものだ。どちらもエネルギーをタイムトラベルさせることができるから。

金曜日の夜にお酒を飲んでいると突然歌いだしたり…ほら、この国は"カラオケ"好きの国だろう?お酒が入っていると歌いやすいよね。"このあふれるほどのエネルギーはお酒が与えてくれたものだ"って思うかもしれないが、ノーだ。それは間違いだ。お酒がエネルギーをくれるわけじゃない。お酒がしたのは土曜の朝のエネルギーを金曜日の夜に移動させただけだ。

二日酔いは間違いなく翌日に来るがお金は40年も50年も時を超えることができる。こんな風に危機につながったりするんだ。エネルギーが消えてしまうのだ本当に必要な時に…」

カネは時を越え時がカネを生む この錬金術を何故ヒトは欲望したのか

第3章 魔術の誕生

セドラチェク
「西洋の古い書物を読んでみると実に皮肉で興味深いんだが必ず利子について論じられている。聖書・ヴェーダ(ヒンドゥー教の経典)・コーラン・アリストテレス。否定的な感情とともにね。なぜかわからないが利子は禁じられていた。歴史を振り返ると利子は"禁断の果実"だったんだ。富をもたらす一方で問題を引き起こしてきた」

利子、それは未来の利潤のため休むことなくヒトを働かせる これも、禁断の果実

そこにはある男の欲望があった 14世紀イタリア メディチ家の始祖ジョバンニ・メディチは利子を禁ずる教会の目を避け、フィレンツェとロンドンの為替レートの違いを利用し莫大な利益を得た 

カネは時だけでなく空間の差を利用して無限に増殖していくことに


"貨幣は元々交換のための手段 しかし次第にそれをためること自体が目的化した" アリストテレス

昨日より今日、今日より明日 増え続ける 欲望 その欲望を正当化し免罪符を与えた男がいる 経済学の父 アダム・スミス(1723~1790) 『国富論』(1776年) "それぞれが自らの利益を求めれば見えざる手によって社会全体も富み栄える" その理論は人々に欲望を肯定したのだ

安田
「そもそも資本主義の推進力は何なのでしょうか?」

アルヴィン・ロス(スタンフォード大学教授 2012年ノーベル経済学賞受賞 市場の制度を設計する「マーケットデザイン」研究の先駆者)
「市場の最大の機能は誰が何を欲しがっていて誰が何を持っているかすべての情報を集めることだ。供給と需要が一致することで魔法のように価格が決まる。その難しさは 情報を得て計画することなど誰にもできないことにある。なぜなら情報は多くの人々に拡散するものだからだ。そしてまた情報が市場に集まることで最適な結果が生まれる」

安田
「世界の利子率は下がり続けてマイナス金利の国もあります。資本主義の終わりの兆しを語る人々もいますが?」

ロス
「資本主義の死を宣言するのは早計だ。資本はリターンを得続けているよ。シリコンバレーに住んでいるんだが多くのビジネスが集まっているのは今も新しい会社が利益を上げているからだ。もしもマイナス金利が続いたとしても新しい形の金融取引が発展し金融機関の資本はリターンを得られ続けるだろう」

スティグリッツ
「市場とはある日誕生したのではなく進化しつづけてきたものだ。何千年も前の市場経済はとてもシンプルなものだっただろう。私が思う大変化は産業革命だった。資本主義は科学と技術を両輪としている」

発明 イノベーション 大規模化 成功すれば競争相手に一歩先んじ生産効率を上げられる その加速は止まらない

スティグリッツ
「このダイナミズムによって人々が農作物を市場で買ったり女性が家で編み物をしていたような原始的な市場経済からより大規模な会社ほど有利で経済規模を拡大できることになった。そしてイノベーションが駆動する経済だ」

スタンフォード
「私たちはより効率化する方法を常に探しているんだ。経済学でいうところの生産性だね。労働力が変わらないのに成果物は増える。そして利潤 成長 波及 創造的破壊を追究する。いかにして効率的な進化がなされない古い産業を駆逐するか。市場をとれ。需要と供給が働きあって加速して規模の効果が働いて新旧交代が起こる。それがイノベーションだ。そして消費者をハッピーにするんだ」

思想 そして技術が 欲望を開放し 資本主義は成長がかかせないシステムへと変貌した

欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき 第4章~第5章 第6章~第8章 第9章~最終章
『欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき』をみて

cf,
アダム・スミス 著, 山岡 洋一 訳 『国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究』 読書メモ

『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を読む

欲望の民主主義 世界の景色が変わる時 第1・2章 第3・4章 第5章 第6章 第7・最終章
by wavesll | 2017-04-03 22:15 | 書評 | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : https://kamomelog.exblog.jp/tb/26553373
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
<< 欲望の資本主義2017 ルール... これぞ暁斎!展@Bunkamu... >>