欲望の資本主義 世界の景色が変わる時 第1・2章
第3章 パクス・アメリカーナの終焉…? 元大手銀行重役ピーター・ラールが語るアメリカの今、トランプに託した思惑 ラール 「彼は頭がよく かなりのやり手です。トランプの着眼点は良かった。何が本当の原因なのか言及したのは彼だけでした。それが彼の特長です。 アメリカ国民は世界のために負担を担ってきました。しかし今や世界は変わったのです。帝国は衰退するものです。≪パクス・アメリカーナの時代≫は終わりました。 他の国々は自分たちの足で立つのか、他国と協力するのか考えねばなりません。いずれにせよアメリカだけが世界の安全に責任を負いその費用をアメリカ国民の税金で賄う発想はもう終わりです」 "パクス・アメリカーナ"の終焉 ヤシャ・モンク:政治学者 「リベラルな国際秩序はアメリカがリーダーシップを発揮し世界に大きく関与することで成立します。しかしその恩恵は複雑で分かり難いものです。 なぜ国連に大金を拠出しなければならないのか国内にも問題があるのに。その金を国内の問題解決のために回すべきだという方が簡単です。 長期的に見ればそれはアメリカにとって損失となります。政治的な面だけでなくアメリカ国民全体にとっての損失です」 二度の世界大戦を経て世界経済の中心となり、世界の警察官となったアメリカ。しかし常に不安定な要素を抱えていた 外への介入と孤立主義の分裂 ジョナサン・ハイト:社会心理学者 「アメリカはこれまでもしばしば内向きになってきました。 私の曽祖父母4人全員がアメリカにきた1907年当時は移民の大きな波がありました。それが大きな反発を生みアメリカは1920年代に門戸を閉じたのです 人々は人種でなく文化を気にしているのです。急激に文化が変わってしまうのが嫌なのです。 もう一つ見るべきは国民の目的意識です。ソ連と戦っていた時 私たちはアメリカを≪自由世界のリーダー≫と呼んでいました。 ですがいったん冷戦が終わるとそてまでのように≪自由でオープンな国≫であることを必要としなくなりました。我々のアイデンティティでなくなったのです。 そして9.11の後 突然新たな敵かもしれない存在が現れました。”もっと閉じた国にしたほうがいい”多くの人々がそう思うきっかけとなったのです」 新たなる敵の前に再び門戸を閉じようとするアメリカの姿は既にあの時から ジャッキー・クルバック:Gautier Steel社 CEO 「国防のことを考えても この国で私たちに危害を加えようとする人々から私たちは国民を守らなければなりません。国民を守るだけでなく国を守らなければなりません」 そんなアメリカの本質を見抜いていた人物がいる。それは今から200年ほど前に遡る フランスの政治思想家、アレクシ・ド・トクヴィル。トクヴィルは19世紀のアメリカに渡り、民主主義における光と影を考察した ハイト 「アメリカがイギリスから独立した時、トクヴィル以外にもヨーロッパから何人かやって来ました。その全員が独特のアメリカ人気質について語っています。 アメリカは広大な国で中央政府がなく自分たちで自分たちを統治していたのです。中央集権化されているフランスに比べアメリカ社会の強みの一つは我々は自発的な組織を作るのが得意だということです。 中間共同体、地元の市民組織などですが多くの人が見てきた通り50年ほどでこれらが消えつつあるのです」 アメリカ民主主義の「光」"中間共同体"の存在 ジャン=ピエール・ルゴフ:社会学者 / 作家 「民主主義は個人が所属するコミュニティーからの自由を可能にする要素があります。これは民主主義の良い面です。しかし民主主義には別の面もあります。 トクヴィルが自身の著書の中で説明しています。『アメリカのデモクラシー』では同時に個人が内に閉じこもる傾向も指摘しました。どこにもつながっていない、集団に同化もしていないと考える個人です」 アメリカ民主主義の「影」どこにもつながらない”個人” ダニエル・コーエン:経済学者 「ハーバードで教鞭をとるアメリカの社会学者ロバート・パットナムのすばらしい著書『孤独なボウリング』の中で1960年のはじめから少しずつこのコミュニティーや中間共同体…それは親たちの中間共同体であったりブリッジやボウリングのクラブなのですが、これら全ての共同体という基盤が崩壊したという説明を思い出しました アメリカの社会基盤が崩壊したからこそ今日彼らは”孤独”だと感じている。トランプの人気はその”孤独”の表現の一つだと思います」 豊かさの中で消費を楽しむことを自由と感じるうちに、いつのまにか大事な繋がりを失っていたのか?帰る場所を失ったことで、抱えることになった孤独と不安 アメリカが恐れるものは自分自身だ 民主主義の乱用、冒険と征服の精神…己の力への思い入れと過剰な誇り、そして若さゆえの性急さなのである -トクヴィル マルセル・ゴーシェ:政治哲学者 / 編集者 「我々は「暴力的な軍隊」という意味ではもはや争いの中には生きていません。しかし我々は”競争状態”にあります。これこそグローバル世界や我々が生きている個人主義の世界の掟なのです」 吉田徹:北海道大学教授 「誰もが生き延びようとしていますよ」 ゴーシェ 「そういうことです…それでもやっぱり厳しいことですよ。実際、ホッブスの方程式は別の次元で今でも機能していることが分かります」 万人の万人に対する闘争。今から350年以上も前に残された言葉。トマス・ホッブズ 所詮は人間も動物と一緒なのか?教育、文化なき状態、自然状態にあるとき、ヒトは財産や資源をめぐって、争いを続けるという。欲望と欲望のぶつかり合い。 そこで考え出されたのが社会契約であり、それを司る統治者の存在。聖書に登場する海の怪物、リヴァイアサン。ホッブズは人々で出来た鱗を持つ怪物に、国家をなぞらえた。 右手には世俗的権力を顕わす剣を、左手には宗教的権威を顕わす杖を持つ、国家権力の象徴 第4章 アメリカ、未来へのシナリオ 一つの物語が終焉を迎え、強大な力を求めるアメリカは一体どこへ向かおうとしているのか? モンク 「可能性は3つあると思います。1つはトランプ氏のような独裁的なポピュリストが独立機関を弱体化し裁判所を無視し報道の自由を抑圧することです。」 未来へのシナリオ1 独裁的なポピュリストによる独立機関の弱体化・報道の自由の抑圧 モンク 「2つ目に最も可能性が高いシナリオはトランプに対する抵抗が生まれ独立機関は破壊されずに済むということです。それでも政治システムの規範が崩れます。 トランプ氏が政権を去っても彼のようなポピュリストの人気は落ちません。30年、50年、70年と経つ間に民主主義体制は弱まり、毎回ではないにしろトランプ氏のような大統領が次々と現れるでしょう」 未来へのシナリオ2 独立機関は破壊されないがポピュリストの人気が高まる モンク 「3つ目は最も希望がある可能性です。多くの若いアメリカ人が今 起きていることを見てこの状況を拒否し民主主義の大切さを再確認することです。 民主主義が脅かされたら何が起きるか?身をもって知り民主主義のために戦うことです。政治に積極的に関わり憲法の大切さを思い出すことです これが最も希望のあるシナリオです」 未来へのシナリオ3 民主主義の大切さを再確認し民主主義のために戦う マルクス・ガブリエル:哲学者 「”アメリカ・ファースト”には国民がトランプを弾劾しうるという意味も含まれます。もし彼らがトランプを弾劾したらそれは民主主義が独裁政治に勝つ貴重な瞬間だと言えるでしょう。 この特異な個性による危機を実際にアメリカ人が回避することができたならその時アメリカの優れた民主主義制度を証明したことになり みな感心するでしょう。 今 私たちが目撃しているのはどこに向かっているか不明な船です。ドナルド・トランプと現在のアメリカの行政機関との対立。そしてチェックアンドバランスのシステム。 これが私たちが今 現在目撃していることであり民主主義の制度に対する極端なストレステストです」 極端なストレステスト? ホッブズはこうも言っている 財産、名声、支配への欲望が争いの元。そしてその先にあるのは戦争だ と ゴーシェ 「このようなグローバル世界においてはなおさら自分たちを守ってくれるプロテクターとなる集団の必要性を感じるのです また全ての個人が頼れる集団がないことの大きな不安を感じているのです」 グローバル世界からの経済の波。それはそもそも民主主義の敵なのか? 世界に広がる欲望の資本主義と、国という壁が守る欲望の民主主義。この捻じれの先にあるのは…? 人々の生き残りをかけた争いはヨーロッパでも加速度を増し複雑化していた。開かれた国境、解放される人々の欲望と感情 フランスが抱える 民主主義のもう一つの闇 それは… 欲望の民主主義 世界の景色が変わる時 第5章 第6章 第7・最終章 欲望の民主主義 世界の景色が変わる時をみて cf. 欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき 第1章~第3章 第4章~第5章 第6章~第8章 第9章~最終章
by wavesll
| 2017-05-31 20:22
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