安倍は何故勝ったのか。「リベラル」「保守」とはそもそも何か。 -総選挙の分析を調べ、政治を考える

衆議院議員選挙は自民党の大勝に終わりました。

希望の党が失速し、立憲民主党が躍進はしたけれども、野党が割れ自公の与党連合に負けた結果となりました。

今回の選挙に限らず、「リベラル」「保守」といった言葉が政治記事では飛び交います。中には「日本のリベラルはリベラルな経済政策を行っていなく、寧ろ保守の自民党がリベラルなリフレ政策を行っている」なんてごちゃごちゃした話も。

そんなぐちゃぐちゃに対して「リベラル」の逆は「保守」ではなく…歴史に耐えるものさしで、中島岳志さんと現代日本を読み解く政治学(Yahooニュース)という記事は羅針盤を示してくれました。

そもそもの「リベラル」「保守」の起源から、現代においてどのような定義でこれらのタームが用いられているか、そして本質的な政治視座をどう設定できるか。

私自身、「リベラル」という横文字をふわっとしたニュアンスで使っていたので、丁寧な説明は大変勉強になる良記事でした。

さて、今回の選挙、森友・加計問題は私はそこまで大きな話でもないと考えていたのですが、安保法制、秘密保護法案、共謀罪にはかなり違和感を持っていたのに加え、遂には消費増税を唱え、「安倍はアベノミクスだけは上手くやったけれど、8%に上げたことは完全なる失策だったな」と考えていた最後の壁も崩されたことで、私は反自民に投じました。

しかし結果としては自民の大勝。しかしTVは「排除発言」がどうだとか浅い話しかしないし、今回の選挙の結果についてどう考えればよいのだろう?何故安倍は勝ったのかと「?」を想っていた時、投票行動などに詳しい政治学者で慶応大学教授の小林良彰さんと憲法学者で九州大学教授の南野森さんがSession22にて行った今回の投票を分析が非常に役に立ちました。

ラジオ番組ですが、上のリンクから一定期間は聴け、Radikoのタイムフリー期間なら10/23(月)22:00-24:00のTBSラジオで聴けるのですが、有意義な情報だと感じたので、以下に選り抜き文字起こしします。

(選り抜き開始)
<選挙結果は「議席」と「得票率」という”結果”がある。>
今回、比例代表は自民党37.5%、小選挙区だと75%の議席を取った。

一方で自民党が取った得票率は43%。

本当の”民意”は「得票率」だけれども、選挙後に話題になるのは「議席」の方。

得票率と議席がズレるのは与野党問わず起こり、それは小選挙区制度の問題。

<では自民党は今回どこから票を持ってきたか、>

先ず今回、自民党支持者の85.2%が自民党に投票している。身内を固めきれたのが大きい。安倍さんは支持率は上下しているように見えるが、自民党の支持者からはしっかり支持されている。

一方無党派層で一番多かったのは立憲民主で28.3%。それから希望の党と自民党が22%で同じくらい。結局”反自民票”が割れてしまった。

”自民党は支持するけれども安倍は独断的だから支持しない”という人には小池の排除発言は独断的に見え悪印象だった。野党の票を割ったオウンゴールがあった。また民進から希望に移る際に安保に関する政策を転向した候補者が信頼を失ったこともあったかもしれない。そして小池自身は選挙に出なかったため、盛下がっていった。

一方立憲民主は準備が足りず、小選挙区でも候補者が足りなくて、比例代表では東海6区で候補者が足りなくて自民に一人分譲る結果になってしまった。

結果立民への票と希望への票は拮抗。そうなると自民党は43%の得票率で自民以外の得票率が57%でも70%以上の議席を取れてしまうという結果が起きた。

2009年の民主党が政権交代をした際も得票率は50%いっていない。小選挙区と言う制度は民意の反映において問題点がある。

<世界の民主主義には2つある。 >

一つはウエストミンスター民主主義。英米加豪などの旧イギリス領での政治制度では”多様な意見を入り口で多数決で決める”為、小選挙区制をとる。

もう一つがコンセンサスデモクラシー。欧州大陸では比例代表で国民の民意をそのまま国会に持っていく。国会で議論をして決めていく。

日本の制度だと、50%行っていない得票率の候補が選出された上で、国会で多数決をし定数不均衡の2:1があるため地方に住む12%の民意がモノを言うので、7%位の民意で決まる。

比例代表は選挙では多数決をせず国会の審議で多数決をするため多数決は一回だが、小選挙区は選挙と国会で多数決を2回する。

選挙結果で民意を反映できるのか。
イギリスは二大政党じゃなくなっている。スコットランド独立党、英国独立党があり、保守党と労働党だけでは済まない。ドイツもそう。米国で共和党と民主党で上手く行っているのは、米国には地方交付税がなく、地域によってかなり明確な色をもって金持ちと貧しい人で住民が住み分けているため死票が少なく民意が反映しやすいからとのこと。

日本では小選挙区は合わないと小林教授。

<比例代表の問題点>
一方で南野教授は「比例代表一本だとワイマール共和国のように、選挙の前に選挙後どのような連立が起きるか投票者が分からない状況が起きる」と述べる。

連立が前提となると、ワンイシューで連立が崩壊するリスクもある。日本でも例えば辺野古の時社民党が抜けたりしたが、ワイマールだと平均内閣維持期間が8か月から1年だった。コロコロコロコロ政権が変わると、国民側から”強い執行権を持ったリーダー”への希求が生まれ、それがヒトラーに繋がったという指摘もある。

上のように比例代表にもメリット・デメリットがある。またフランスは下院で二回投票制を行っており、大統領選挙も決選投票を行っている。(この場合、選挙コストは増大する)。

小選挙区も比例代表もあり、模索を続けるほかない。

<年齢層別の投票先の差異>
さて、今回の総選挙では10代20代が自民党に入れた。30.4%が自民党に比例代表で入れている。立憲民主が3.5%、希望が6.5%。

立憲民主に入れたのは60代。学生運動世代が社会党時代から上にシフトしている。自民党に入れたのは15.7%。

(筆者注:朝日新聞の調査では18~29歳では41%が自民と答え、希望13%、立憲6%を上回った。一方、60代では自民27%、立憲20%、希望10。)

若者の自民党支持は13歳から14歳の頃に民主党政権を体験し、「民主党は駄目だ」という原体験をキープしている。逆に60代はロッキード事件を体験し、それをキープしている。

実際、今回公明党が「#2009年何してた」というキャンペーンを行い、若い世代に民主党時代のトーンを訴えようとしていた。実際自民党は若い人ほど票を投じている。これは今の就職率が高いことも大きい。

<男女の投票先の差異、社会争点と生活争点、対立争点と合意争点>
女性はどちらかというと希望の党が多く、男性は立憲民主の方がかなり多かった。
これは党首が女性だったことに加え、立憲民主は生活争点(年金、社会福祉)より社会争点(憲法、集団的自衛権)を訴えたこともあると考えられる。

安倍は社会争点(教育基本法、憲法改正)で下野し、2012年以来生活争点を前面に出している。アベノミクスを訴え、男女共同参画を訴え、今回は「保育園落ちた日本死ね」に対し消費税増税分を保育園幼稚園無償化に使うと訴える。

”百点のリベラル政策をやれ”と野党がいう所を”51点のリベラル政策をやります”とするところで、自民党支持層の支持を失わずにその他の層へも訴える。これは上手い。

この安倍首相の戦略、立憲と希望で野党が割れたこと、そして小選挙区制度が今回の「議席率」という結果に繋がった。

争点の出し方が「消費税を8%のままにした方がいいですか?それとも10%に上げた方がいいですか?」ならば結果は違ったかもしれない。しかし「幼児教育に使った方がいいですか?」という生活争点を出しながら「国難突破」という社会争点を安倍は出した。

そして「幼児教育無償化」と「北朝鮮強硬姿勢」は誰も反対しない合意争点であり、対立に成らず現状維持になりやすく、実に巧みだった。憲法などの対立争点はあまり主張しなかった。

このように選挙対策を練った上で、野党がバタバタしている時に解散できるのが解散権が伝家の宝刀といえる理由。与党にかなり有利な制度といえる。

世論調査をすると今回の選挙の政策イメージは≪立憲民主と共産≫と≪それ以外≫の二極構造と捉えられていた。共産は立憲に食われて、希望は自民や維新とは十分に違いを示せなかった。

安保法制なども有権者は「決まったものは仕方ない」という現状肯定な所があり、賛否は半々くらい。この反対票が野党で割れ、賛成は大半へ自民へ流れた。

<憲法改正問題>
憲法9条も三項を加えることは賛成が62.3%、反対が32.7%。ここでも安倍の巧い方策が目立つ。ただ、この改憲が将来どういった変化が生まれるかというとかなり大きな影響が生まれるかもしれず、そこを学者や政治家はきちんと解き明かし論議をしないと禍根を残す。

憲法改正の発議への手続きは、国会で2/3以上の賛成で可決し、可決されてから60日から180日かけて国民投票が行われる。公職選挙法と勝手が違い、現状だとCM等もバンバン行うことが出来るなどの規制が緩い。
(選り抜き終了)

さて、文字起こしの最後で触れられていた憲法改正の国民投票。安倍首相はまだ先のことだと言っていましたが、それを視野に入れているのは間違いありません。

その際、50日以上にも及ぶ政治運動期間が設けられるとのこと。そうなった際は例えばTwitterや、デモ、或いは電話運動など、政治活動が行われることだと想います。

ただ、近年の政治言論をWebでみていると自分と異なる政治思想を持つ人に対して、非常に攻撃的で、ともすると軽蔑したり馬鹿にしたり、下にみる発言が、右にしろ左にしろ散見されます。

今回の投票率は台風がぶつかったこともあり、戦後2番目の低さの53.68%でした。
政治思想が固まっている人を動かすのは難しいものがありますから、憲法改正したい勢力も、改正させたくない勢力も、残りの46%の層の掘り起こしが大きいと想います。

そういう時に上にあるような態度を露見させていると、「こいつとは根本から話が合わない」と思われ、対話には何の説得力も発揮できないと想います。

内輪でのびのびやるのは私も好きだけれど、そもそもの「当たり前」が異なる相手と話すときに対話を拒絶し相手の話を聴かず自分の主張を押し付けるだけでは、意識が高いのではなく、ただ偉そうな鼻つまみ者になってしまいます。

あるTV番組で選挙コンサルの女性が「一寸の虫にも五分の魂があることを忘れた候補者は落ちます」と言っていて。

どんなに無知に見えても、どんなに愚かに見えても、そもそも政治意識が低くても、みなプライドがあり、それを害されたら途端にそっぽを向く”浮動の一票”なのだと胆に据えねば選挙の戦は勝てないのだと感じ入りました。

「こうあるべき」の「こうあるべき」が共有できない人とコミュニケーションしなければならないのは、端的に言って苦痛で。私自身も苦手中の苦手です。けれど「選挙に勝つ」という結果を出すために「他者を動かしたい」なら、それは必要となるだろうと想うのです。

とはいえ論評者は常に2番手以下、行動を起こした人が1番手。言うは易し、行うは難し。これは不変。実装するものが道を切り開きます。

その上で、中々Webでの「情報発信」では工夫をしなければなりませんが、政治運動においてはPUSHよりもPULL、傾聴の姿勢が実効力を持ちうると想います。

ただでさえ”正義”を背負うと、人は強硬姿勢になりがちで、それはその人にとっての「当たり前の価値観」に基づいた結果です。

けれどより自分が望む結果にハンドリングしたいならば、そしてその未来が独りよがりでなく広く受け入れられるものならば、傾聴し出てきた問題意識への解として、自らの主張を丁寧な言葉で提案出来たら一番いいし、その問題を掬い解決する事こそが政治なのだと想った選挙戦でした。

Arcadia - "Election Day (7" Version)" (Official Music Video)

by wavesll | 2017-10-24 20:18 | 私信 | Trackback | Comments(0)
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