あべのハルカス美術館にて北斎展を観ました。
6時半の羽田発に乗り、伊丹から天王寺へ。大体8:40過ぎにあべのハルカスに入り、16Fへ。
そうするともう少しだけ入場列が出来ていて、そちらに並びました。
別にチケット列もあったのですが入場券も販売は10時からなので、事前にコンビニなどで券を買っておくのが良いかと想います。入場の際に言えばオリジナルのチケットと代えてもらえます。
”開場の1時間前に着いちゃったよ”と想ったのですが、これ、お薦めです!何しろ一巡目に入った時に空いた状態でほぼノーストレスでみれます。
2周目をしようとまた最初に戻ると、人混みで絵がみれるって状況ではなくて。そうした意味でも8:50くらいから並ぶとエクスクルーシヴな時間を過ごせると想います。
中に入ると、北斎の60才を越えた時期からの作品群が。
≪玉巵弾琴図≫の妖玄な女性。
≪獅子図≫の金地に墨でバッと描かれた獅子達。
≪為朝図≫の鮮やかな武の姿も良かった。
北斎は
ダ・ヴィンチのスフマートのような柔らかい質感の色彩の作品を幾つも出しており、このスタイルでは
≪節家の商家≫、
≪花見≫、
≪端午の節句≫や子供たちの弾ける元気さが楽しい
≪初夏の浜辺≫などがありました。
≪千絵の海 総州銚子≫の荒ぶる波に踊る船、砕け散る波頭が印象的な≪波濤図≫が次に。
≪東海道名所一覧≫は地図としてのアート。後にこれの大陸版
≪唐土名所之絵≫なども描かれました。
その後は≪富嶽三十六景≫。
太田記念美術館にて≪冨嶽三十六景≫全46枚をみた後だったのでここは駆け足で。照明の光量もあり、太田記念美術館でよりヴィヴィッドな色彩で。参考資料で
≪凱風快晴≫の初期ver,であるピンク富士のパネルもありました。
次に展示してあったのが≪諸国滝廻り≫シリーズ。
≪諸国滝廻り 東都葵ヶ丘の滝≫の水流描写の立体感。
≪諸国滝廻り 美濃ノ国養老の滝≫の直角に落ちる轟滝。
≪諸国滝廻り 木曾海道小野ノ瀑布≫の岩肌のようにストレートな滝姿。
≪諸国滝廻り 和州吉野義経馬洗滝≫の蛇行と馬がまた良くて。
≪地方測量之図≫なんて面白い題材の絵も。
また≪諸国名橋奇覧≫も面白くて。
≪諸国名橋奇覧 飛越の堺つりはし≫という凄い橋景色や
≪諸国名橋奇覧 三河の八つ橋の古図≫には
尾形光琳の≪八橋図屏風≫を想起したり。
≪諸国名橋奇覧 すほうの国きんたいはし≫も線雨がシンプルによかった。
ここから植物彩画。
≪百合≫のデザイン性、
≪芥子≫の美、
≪牡丹・蝶≫の香ってくるような描写。
≪朝顔・蛙≫は楚々としてました。
≪垂桜・鷽≫の鮮やかな青に浮かぶ花々。
≪辛夷花・文鳥≫の可愛らしさ。
≪藤・鶺鴒≫の洒落たデザイン性。
≪杜鵑花・子規≫の晴天。
≪長春・黄鳥≫の霜降りのばら。
≪白粉花・鵤≫のこれまた可愛い鳥の表情。≪鳶尾草 瞿麦 翡翠≫のカワセミの良い表情。
≪小薊・鵙≫のアザミのとげとげな美、
≪虎耳草・蛇苺・鵙・翠雀≫のこまっしゃくれた鳥の顔が好い。
そして個人的に大のお気に入りになったのが≪巌頭の鵜図≫。黒羽の中に銀河な輝きがあって。花鳥図から恒星へ行く素晴らしさ。大変気に入りました。また
≪桜に鷲図≫も好ーいフォルムでした!
≪滝に鯉≫は登竜門を描きながらも上を目指さない鯉が主眼だと聞いて面白いなとw
≪露草に鶏と雛≫は下絵もあり、それが良かった。
≪雉に蛇≫のキジの尾とヘビの対応が面白く、
≪鷹図≫の反り感も最高でした。
また美しい
≪若衆図≫や生活用品を描いた≪馬尽 馬除≫、
≪馬尽 竹馬≫なんてのも。
北斎は半ば仙水としての中国も描いていて。≪花和尚魯智深図≫の太鼓腹、
≪詩哥写真鏡 李白≫の今にも詠いそうな體の表情、
≪詩哥写真鏡 杜甫≫の雪景色。月を望む
≪詩哥写真鏡 安倍の仲麿≫や
≪詩哥写真鏡 春道のつらき≫なんてのも。
≪鬼児島弥太郎・西方院赤坊主≫も迫力がありました。
≪百人一首うばがゑとき 柿の本人麿≫の斜めの煙は
≪百人一首うばがゑとき 源宗于朝臣≫では煙が滝の様。
≪歌占図≫も文人振りも良かったし、≪女三の宮図≫や
≪白拍子図≫のカクっとした服飾がまた良くて。
≪『和漢絵本魁』初編より「那智の滝に文覚荒行 其二」≫は滝の飛沫がオーラのようで。これは根付にもなっていました。
≪百物語 笑ひはんにゃ≫の不気味さw≪蓮上釈迦図≫もどこかインチキ臭いお釈迦様がw
≪日蓮波題目画稿≫は海に朱で画こうとしている日蓮が。
≪釈迦御一代記図会≫の鬼の凄味。≪鍾馗図≫の亀甲のような腹も凄かった。
≪画本葛飾振≫の侍のカッコよさ。≪『大日本将軍記』初輯≫も素晴らしく、≪下絵帖≫なんかも。≪肉筆画帖≫は鷲や蛇が良かった。≪『富嶽百景』下絵 「写真の不二」≫には朱で下書きが入っていました。
≪『富嶽百景』下絵 「夕立の不二」≫や
≪『富嶽百景』下絵 「文辺の不二」≫も良かった。
≪北斎自画像≫は”此のジジイ本当に楽しそうにはしゃぎやがる”とw
≪老人像≫には狂気すらあけすけに見せていて良かった◎
≪日新除魔図 閏九月廿一日≫なんてのをサラっとかけちゃうのが凄い。画狂だ◎
娘の応為の作品も飾られていました。
≪月下砧打ち美人図≫や≪女重宝記≫では北斎より女性の綺麗さ、強さが描かれていて。
≪関羽割臀図≫では腕の手術をされながら囲碁を打つ豪壮な画。≪応為書状≫では親しみが持て且つかっこいい字でした。
そして再び北斎。
≪鳳凰図天井絵彩色下絵≫、凄い。正に火の鳥。
そしてここからがクライマックス。
≪濤図≫。小布施の上町祭屋台天井絵であるこの濤は、北斎の波の究極。浪のなかにクエーサーのような飛沫が閃いて。
銀河、自然天然の、すべてをぶっとばすような美しさに偉大なるArtの力を感じました。額縁も北斎が下絵を描いていて。中には羽が生えた天使?も北斎は西洋画も研究していたそうなので本当に天使かもしれません。
北斎の画力は人生を重ねるごとに究極へ向かっていて。晩年の作は真に神域へ迫っていました。
≪鬼図≫はのん兵衛オヤジな雰囲気が伝わってきて。≪富士に松図≫は2本の松を中央に置く構図が美味い。
≪流水に鴨図≫は水面の波が時空を越えていくような感覚。≪画本彩色通≫も凄い。
≪河骨に鵜図≫の荒涼さ。≪胡蝶の夢図≫は文人のオッサンの優男な感がいい。≪狐狸図≫はブリーチのあいつじゃないかw
≪七面大明神応現図≫は日蓮が龍を呼び起こす図。
≪源三位頼政図≫も凄い画。
≪李白観瀑図≫は自然の前で人がなんと小さいことか感じさせてくれました。
そして
≪富士越竜図≫。魅入られました。北斎が辿り着いた富士の極致。
「己 六才より物の形状を写の癖ありて 半百の此より数々画図を顕すといえども
七十年前画く所は実に取るに足るものなし 七十三才にして稍(やや)禽獣虫魚の骨格草木の出生を悟し得たり
故に八十六才にしては益々進み 九十才にして猶(なお)其(その)奥意を極め 一百歳にして正に神妙ならんか 百有十歳にしては一点一格にして生るがごとくならん
願わくは長寿の君子 予言の妄ならざるを見たまふべし 」 と云った北斎。人生を進むごとにどんどん上手く凄くなっていく筆。この富士は、不死の希と、しかし魂が天へ昇っていく感覚があらわれるような覚りを感じました。
≪雲竜図≫はそんな神域が闇から呼び起したような迫力があって。
そして
≪雪中虎図≫の夢幻。北斎翁が最後に辿り着いたのはファンタジックなときめき。画聖は天へ浮かんでいきました。こんなクライマックス、画業の究み。高みに至る人生の軌跡に感動しました。