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シャガール 三次元の世界展@東京ステーションギャラリーにて大理石の彫刻と陶器によって浸透率が高められ、絵へ導かれる

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東京ステーションギャラリーにてシャガール 三次元の世界展をみてきました。

シャガールって今まで熱心には観てこなかったというかメルヘンな感じがちょっと体に馴染まなかったのですが、立体のシャガールって凄く良くて。

陶器は立体のキャンバスで思う存分表現に遊んでて、彫刻はきらきらが散りばめられた大理石の聖明さにシャガールの闇か光化されてる感じ。そして絵の濃部に辿り着く。いい展覧会でした。

まず最初の部屋で目に入るのが≪誕生日≫。宙に浮かんでひょいっと恋人にキスする姿。その”カタチ”が唯一無二だと感じて。そしてその傍に大理石に彫られた≪誕生日≫が。この”新しいシンボリックなカタチの創造”が特異点としてのシャガールを感じました。

同じ部屋には≪ふたつの頭部と手≫という大理石の彫刻が。まるで角砂糖のような質感が素敵で。展覧室に入って最初の作品≪町の上で、ヴィテブスク≫は故郷の街の空を飛ぶ恋人たちが記号的に描かれていてプロトタイプ性を感じました。

そして愈々陶器の展示が。≪青いロバ≫には小学生が紙粘土でつくったようなピュアさが素晴らしくて。このための下絵も展示してあって制作過程がわかる展示としてもいいし、下絵等の途上の品もそれ自体が作品として魅力的でした。≪二羽の鳥≫もそうですが、シャガールのメルヘンな色遣いが陶器に色づいた透明な色彩がとても美しくて。

その傍の絵画だと≪逃避 / 村の上の雄鶏と雄山羊≫の山羊がまた象徴的に昏さがあって対照的でした。≪彫刻された壺≫の大きく口が開ききった壺に、”あぁこの人は自分の立体のキャンバスとして陶器に絵を描いているのだな”と。≪把手のついた壺≫のフリーキーに突き抜けた色彩がまた良くて。

マティスのような≪井戸端の女≫や内臓のように肉体的な≪預言者エリヤの馬車≫そして≪横たわる女≫のテラコッタの素焼きも魅力的。≪水浴する女≫はテラコッタとブロンズ製の二品が。

≪青い婚約者たち≫の男に女二人の絵が立体化した感じも物語性があっていいし、≪キマイラ≫は古代から発掘されたような惹きがありました。

≪空想の動物≫も白い石膏製と黒いブロンズ製で、組み込まれた恋人像が白は骨、黒は筋肉のように感じました。≪緑の夜≫の仄かな灯り。≪ラ・バスティーユ≫は昏く赤い影が。≪山羊に乗る子供≫のブロンズ像は毛並みが植物の様でした。

テラコッタの≪雄鶏≫は溶けかかったしっとりした肌質で、石膏の≪雄鶏≫は木を彫ったような質感。墨絵の≪画家と雄鶏≫には年賀状感も。≪鳥≫と≪鳥=魚≫は神話的な古代性を感じました。

≪黒い手袋≫は肉感のあるまなざし。シャガールは少女趣味に感じていたけれど、やはり男の絵なのだなと。≪たそがれ≫は世界で恋人と二人だけで寄り添って生きる様が。ここまで描けるのは自己陶酔がある男の弱さや良さなのだなと。

≪二つの顔のある頭部≫は逆さに繋がった男女の顔が描かれた絵画。≪大きな人物≫は最初の妻ベラとベラがなくなった後再婚したヴァヴァの融合像。シャガールにとって青は特別な色なのだなと。

≪二つの顔を持つ紫色の裸婦≫のムラサキが鮮やか。≪月明りに照らされる二重の顔≫は2人の女性のペルソナが。ヴァンスの石で創られた≪恋人たち≫はがっちり触れ合い離れない感じ。大理石の≪自画像≫は白くてきれい。≪黄色い顔の自画像≫もテーマカラーはブルー。

≪サン=ジャン=カップ=フェラ≫の『Bバージン』な青。≪二重の横顔≫はギリギリな造形が面白い。≪青い羽根の振り子時計≫も大きな鳥と柱時計が印象に残る幻想的な絵。≪小舟と魚≫も月夜の青で。

シャガールは色味がつくと昏い方向に傾いていく気がする一方で大理石の彫刻はきらきら輝く粒子が白に明度が高くて、シャガールの昏さを明るく昇華して非常にいいなと想いました。

≪女と動物≫はまるで3DCGをぐりぐりやってるような鑑賞体験。油彩の≪緑の目≫の大きな目や≪ヴォテブスクの上に横たわる裸婦≫は故郷の灰空に浮かぶ女性の身体が。≪恋人たちと山羊≫は愛し合う二人に山羊が交わる感じ。≪雲の中の恋人たち≫は恋人たちを金色の光が包んで。

≪波の上のロバと鳥≫は仏画のような穏やかな描写。≪恋人たちと木≫は隆起する大理石の質感が見事。≪赤い雄鶏≫のカップルを見つめる優しい赤鶏のまなざしが良くて。≪雄鶏と女≫≪鳥と恋人たち≫、≪雄鶏と恋人たち≫のための下絵の鳥もいい。鳥はポジティヴな象徴に感じました。

≪女と魚≫の身体の斜めな立体平面感。魚だと≪通りの魚≫や≪魚のある動物≫は食が様々な場面で画かれて。食という意味では≪鳥の上の女≫のまな板感と皿に描かれた≪腕をあげる女≫も良かった。

ユダヤ人であるシャガールは旧約聖書をテーマに様々な作品を残していて。

イシュタルの青い門が描かれた≪青いアーチの前の人物≫もいいし、≪聖書の女 ラケルとレア≫や≪聖書の女 サラとリベカ≫の白い大理石に描かれた平面彫刻が綺麗で。

≪エルサレム(嘆きの壁)≫が実際の東京駅のレンガの壁に置かれる演出も良かった。その隣にはもっと引いた光景が描かれた≪エルサレム≫も。

そして絵画では白眉の≪過越祭≫。聖なる夜の墨夜に赤と緑、そして黄色が入り、天使が闇の中で福音を鳴らす。凄く好きな作品でした。

≪アブラハムの犠牲≫は大理石の生成の形に彫られていて。≪モーセと十戒≫もいいし、≪モーセ≫が彫られたロニュの石の古代遺跡感が素晴らしい印象を与えて呉れて。≪竪琴を弾くダヴィデ≫のための下絵の色味のコラージュ感がこれはこれで特別で。

≪ダヴィデ王≫の天使が訪れる瞬間。大理石の≪ダヴィデとバテシバ≫の荘厳な雰囲気。ロニュの石で創られた≪バテシバI≫と≪バテシバII≫は遺跡をみるかのよう。≪聖母の前のキリスト≫のための下絵のコラージュの良さ。≪十字架降下≫は仏画のゆうな朴訥とした感じ。≪燭台≫はとぼけているのがいい。

≪『聖書』のための挿絵:≪カルメル山上のエリヤ≫(テリアード版『聖書』第2巻、版画86)≫と≪『聖書』のための挿絵:≪夢に現れた神に智慧を与えてくれるよう願うソロモン≫(テリアード版『聖書』第2巻、版画77≫は銅版やエッチングの過程も展示してありました。

大理石の≪アダムとイヴ≫も朗らかに笑って。≪天蓋の花嫁≫の二人の花嫁。≪キリストと雪の村≫の空を飛ぶソリ。≪ヤコブの梯子≫は人々の歴史が梯子の垂直で顕わされて。≪キリストの磔刑≫は傷口が赤くにじんでいました。

≪ダヴィデ王≫の二柱の彫刻。≪橋の上のキリスト≫の昏重さの一方で≪二人の裸婦と山羊≫の菩薩な顔。≪花束を持つ恋人たち≫のプロヴァンスの石の古代な風合い。≪聖母子≫は生成りの力強さがあり≪聖母とロバ≫のシンプルさも良かった。

花をシャガールは愛したらしく、とても詳細に明るく描かれていて。≪青い花瓶の花束≫の熱や≪花束の中のカップル≫の幸せそうな姿。黒髪が華になっていく≪夜の裸婦≫の女の子の可愛らしさ。≪燭台と白いバラ≫の机一杯に広がる華束。≪赤い背景の花≫の燃えるエナジー。

≪逆さ世界のヴァイオリン弾き≫のふわっとした印象。≪アルルカンの家族(タピスリーのための下絵)≫の太さの生命力。≪地上の楽園≫と≪村の恋人たち≫のエデン感。≪雄鶏と恋人たち≫の大理石に彫り込また姿。大理石とブロンズの二体の≪女=雄鶏≫も良かった。

≪黄色い家と屋根の上のロバ≫のファンタジックさもいいし、≪ラ・コリヌ(ロバ、魚、月、二羽の鳥)≫と≪ラ・コリヌ(二羽の鳥とウサギ)≫はなんとエルサレムの石でつくられて。

1970年近くになるとシャガールの画がネクストレベルへ行く感じが。≪ダヴィデの詩篇≫の闇に赤が煌々となる鮮やかさ。≪時の流れに(逆さブーツのマントを着た男)≫の花火のような彩り。≪ギターを持つ女≫はカラフルverなアイヌ美術の様。

≪回想≫≪画家と妻≫の色で区分けされて塗られた表現がまた”次の展開”を予期させて。≪ダヴィデとバテシバ≫のための下絵や≪黒い月≫のための下絵のピンクなコラージュも綺麗で。≪シバの女王の到着≫のための下絵はレインボー。≪騎手≫のための下絵は金の輝き。

≪紫色の裸婦≫は下絵も凄くいいし、粒立ちのいい色味の煌のアルルカンの画ヂカラにやれられました。そして≪アルルカン≫も下絵が幾何学的な色付けで凄く良くて。

そして最後に展示してあったのは≪ヴァヴァの肖像≫。異色肌ギャルのような緑の肌で。その隣の下絵は素肌のヴァヴァで。そして最後に大理石の≪ヴァヴァ≫は穏やかな表情で。シャガールが愛に包まれた生涯を送ったことを感じさせられました。

シャガールの展覧会、最初は立体物がとても心に沁みて。そして絵画には濃密な感情が色づいて。シャガール自身も特に大理石の彫刻で魂が洗われていくような感覚。光と闇の間を航行していくような鑑賞体験となりました。

そしてどの作品にも”シャガールならではのカタチ、色”があって。それってオリジナリティに達した特別な芸術家にだけの領域なのだなぁと感じ入りました。

by wavesll | 2017-11-25 13:33 | 展覧会 | Comments(0)
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