平成29年の聴験

年の瀬恒例、今年の音楽体験の纏めをしたためたいと思います。先ずはベストライヴから。

2017年ベスト・ライヴ
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鬼神のような演奏。スクエアプッシャーの楽曲を生演奏で鳴らしてしまうスーパー・バンド。このためだけにソニマニ行くかギリギリまで迷ったのですが行って超絶良かった。運送トラブルから機材が届かなかったのにも関わらずもう笑うしかないほどに圧巻の演奏を魅せてくれて。これは文句なしに2017のベストオブベストでした。

リヴィング・レジェンド。Hey Judeの、あんなに幸せに煙い空間はなかった。近年幾度も来日していたからかWebなんかでは厳しい意見の人も見掛けられましたが、初見の自分は始まって30分くらいからどんどん尻上がりに良くなっていくポールに”マジヤベエ”でした。

日本に於ける今年のワールドミュージック最大のトピック、モロッコの呪術音楽集団ジャジューカのライヴ。学生時代にブライアン・ジョーンズの盤で知ったこの音楽をまさか渋谷で浴びれるとは…!生で聴くジャジューカは「バラカ」というか毒出しが起こる感じというか身体が浄化されるような亜空間体験感がありました。

3時間にも及ぶALL新曲による、先の大戦から百年後までの"現代の戦争で戦後初の戦死する自衛官"を描いた渋谷WWWで2015年11月に行われたライヴのフィルム。ライヴ・テーマも今となってはまた感じ方も変わるかもしれませんが、冒頭からのノイズ・フィールドレコーディング的な音像からサックス、そして電子音も織りなす絶対的な音像は音楽的にも圧倒的なものがありました。

ここ数年クラシックを齧るようになって。そんな中で観た初ライヒは題名のない音楽会で使われていた「クラッピング・ミュージック」も良かったですがやっぱり圧巻は「テヒリーム」。1981年の時点で音楽はこんなにも進んでいたなんて…!クラシック器楽と声楽と、テクノの打音をアコースティックで…口あんぐりしすぎてエクトプラズム出そうになりました。

何しろかにしろあの雷のようなギターの鳴響。あれにはやられました。ギターだけでいったら一位の衝撃。そして単に刺激的なだけでなくブラジルの薫りというか上品さがあって。最高に格好いい年の重ね方だと感じた一夜でした。

この二つは自分の中では共通感覚があって、もうひたすらに楽しい、音楽の歓びを得れた最高の一時でした。

今年もフェス・シーズンに幾多の名演が繰り広げられましたが中でもエクスクルーシヴだったのがYoutubeでの中継で観たコーチェラでのハンス・ジマー。この記事には載ってませんがインセプションの奴も最高。こうした大物枠だとサマソニのトレヴァー・ホーンもみたかった!大きな楽団、どんどん来日してほしいなぁ。

今年逝ってしまった遠藤賢司さん。今までも名前は良く聴かせていただいていたのですが、今年PARKという音楽番組で勇姿をみてその格好良さに惚れて。そして伊勢佐木町での追悼上映へ行ったのでした。そこでみせられた火炎のようなエナジー、全身全霊の純音楽の焔に当てられ、カッカしながら家路についたものでした。

次点はEddie Palmieri at Bluenote Tokyohr-Sinfonieorchester X Francesco Tristano X Moritz von Oswaldetcetc....ここには収まりきらないくらい2017年は素晴らしいライヴを浴びれました。

2017年に出逢ったアルバム・ベスト10選


ここからは個人的リスニング・ニュースを。

今年書いた音楽記事のベストでは上にも挙げましたが

アーティストの制作時の年齢と聴く自分自身の年齢の共鳴を書いた

Daft Punk 『RAM』以降のうねりとVaporwaveからの2010年代の音楽潮流の結実としての2017年のAORな光景を画いた

は力を込めて書けた気がしています。

年齢的なバイオリズムでいうと今年は60s Rockに嵌った年でした。
と、今までそこまで食指が動かなかったこの辺りのHRやブルーズなROCKに心惹かれました。またこの時代のものだとThe Beatles - Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band 50周年記念盤にも新鮮な喜びを与えられました。

現在進行形のロックでは今年はKing Krule - The Oozが不穏でEdgeの効いた気を吐いてくれました。

2017年のExperimental Music / Noise

今年最大の実験的な音楽体験は

このね、扇風機のギターを弾かせてもらったとき、もう最高だなと。この楽器なら聞き専から脱却できるかもしれないなんて想いました。

また

そしてノイズでは法政大学でみたエレファントノイズカシマシのギグが演劇的な結界から最終的には圧倒的に突き抜けた音界へ抜けたのがベスト・ライヴクラスの体験でした。

World / Traditional

今年のワールド音楽ではEddie Palmieriも年間ベストライヴクラスに良かったし、Omar SosaとGustavo OvallesのインストアライヴやThe Piano Era 2017にて聴いたDiego Schissi with 北村聡, Mario Leginha, Bobo Stenson Trioにも感銘を受けたし、トルン(ヴェトナム竹琴)奏者・小栗久美子Live @Vietnam FestivalAFRICA HIBIYA FESTIVALでのライヴ等も良かったですが、アルバムでいうといいのを年末の皆様方の年間ベスト等で聴けて。

中でもとっぴんぱらりのぷうさんのベストにあった
Residente『Residente』”カリブ海に浮かぶアメリカの自治領プエルトリコで活躍するヒップホップグループCalle13のメンバー初のソロアルバム。DNA鑑定を行い、自分のルーツが認められる国々を訪ねて現地のミュージシャンとコラボして作られた作品”ということで西アフリカやモンゴルなどの様々な音が、しかし散漫にならずに纏め上げられて鳴らされていてテーマとしても音としてもいいと思いました。

また”このアルバムもSpotifyで聴けるの!?”と驚いたのが
民謡クルセイダース『エコーズ・オブ・ジャパン』。日本の民謡をイマの音楽として鳴らす動き、去年俚謡山脈馬喰町バンドアラゲホンジに見せられましたが今年初めて知ったのが民謡クルセイダース。彼らの音は日本の民謡そのものをラテン・マナーで鳴らしていて、それこそResidenteと対を為すルーツとグローバルの音世界がありました。

そして伯剌西爾音楽では今年はMarinho Castellar / Marinho Castellar & Bando DisrritimiaというBrazilian Acid Folk名盤に加え西班牙ではAltanative FolkとしてのFlamenco ―Silvia Perez Cruzに出逢えたのが大きかった。日本の伝統音響の革新としての能 X VJ LIVE at 天空樹も印象的だったし、IUOOHYOといったサウス・コリアの女性POPシンガー達も良かったです。

Field Recording

今年の私的フィールドレコーディング聴験でトップに持ってきたいのが実は私自身が採集した音で。

またフィールドレコーディング的な音遣いという面で坂本龍一 設置音楽展 ryuichi sakamoto async @ワタリウム美術館Silence (Original Motion Picture Soundtrack)も特別な体験で。

また旅先での採音のサンプリングとしてThomash in store live at Techniqueも”こうありたいな”と想わされるパフォーマンスでした。

来年の抱負

今年聴いたアルバムで、椎名林檎の『平成風俗』は特別な一枚となって、その感想記事に”30を過ぎて5歳遅れで林檎の感覚を追いかけている気がする、今の林檎も数年後に肚に落ちるのではないか”と書いたのですが、この年末にWOWOWぷらすとで流れた田中X宇野X鹿野X西寺の音楽総決算トーク椎名林檎とトータス松本「目抜き通り」日本の出自の不確かさ。西洋文化の波にさらされた曖昧な物語の先端として、昭和の音づくりというかジャズの名うてのアレンジャーでチームでつくる日本のアイデンティティの提示。時代に線を通しているから平成の終わりと五輪の跡でも生き残れるなんて語られていて、成程と。紅白では本人から『カルテットのエピローグ』と語られたこの曲、ビッグバンドジャズな音に数年後にバイオリズムが合うかもしれません。

”ほう…”と想いながら文化的語りに刺激を受けつつ、一抹の不安がよぎったのは”俺、この一年くらい趣味を濃くし過ぎて、コンテンツを介してしかコミュニケートできなくなっているのではないか、他者の世界観を飛び移り続けるだけでなくて己自身の身体性に基づく言葉で語らないと、どこかで穴に落ちるのではないか”というもので。

固有名詞を越えて普遍的な自然言語で”知らない人”にも届くような物語を紡げるだろうか。そんな想念を抱えながら昨日水道橋Ftarriでの友人でもある平木周太さんのライヴへ馳せ参じたのでした。
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友の人生初ライヴ。音がスピーカーから鳴った時”ライヴって時空間をルールしてるというか思想で満たすことなんだ”と。個人的には白黒なマーク・ロスコな音景から鐘の音で記憶空間?に飛び途中でヒマラヤにヘリで迫ったような感覚がありました。最後はノスタルジーの波がいつかの夏の日に寄せて。

この日のライヴは全編にわたって良くて、倉垣卓麿さん、Radio ensembles Aiidaさん、岡川怜央さん、梅沢英樹さん + 上村洋一さん、大和田俊さんそれぞれに聴き所見所にあふれた心的感性が刺激されるとっても良いライヴで。

みなさんの”この音が好きだ、これを鳴らしたい”という気持ちが伝導されて。機材に対峙する演奏者のみなさんのまなざしが印象的でした。

その後の軽い打ち上げがまた初めて行ったときの屋久島のユースホステルの飲みのようなスパークがあって。なんか、ほんと色々感じるもののある一夜で、今年の良いライヴ納めになったのでした。

ここ数年、本当に素晴らしい音楽やArtに触れることが出来て。その幸運に感謝しつつも等身大に咀嚼・血肉化して開かれた中で技を行えたらと思います。あとは媒体を経ずにもっと野良で音を探れたらいいなぁ。そんな抱負を来年に向けて持って今年の音楽体験纏めを終えたいと思います。

cf.





by wavesll | 2017-12-31 08:20 | Sound Gem | Trackback | Comments(0)
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