カビール・セガール:元 投資銀行新興市場部門ヴァイス・プレジデント 近著『貨幣の「新」世界史』 「あなたが何かを買う時、欲望が何かを手に入れたいとサインを出している。そうなるように人間は進化してきた。例えば私が『お金』と口にするだけであなたの体には心理的な変化が生まれる。お金という言葉を聞くだけで体に電流が走り反応してしまうのだ。 冷静な感覚でいられなくなる。いつもお金や欲望が頭の中にあるとしたら、あなたの脳は絶えず思考回路をつなぎ変えていることになる。あなたはお金を使っているつもりでお金に使われているんだ。人生を左右してしまうほどの強い力だよ」 増殖する資本に魅せられて。欲望の世界はまくを開けた。 ジョナサン・ストラル(ベンチャー投資家、アメリカ) 「資本主義は人間の創造性をドライブさせる。最高の人間、最高のアイデアが勝つ世界だ。」 つくって、使って。つくって、壊して。古いものを壊して新しいものを作るアイデアが力を持つ世界。 創造的破壊 ダニエル・コーエン(経済学者、フランス) 「シュンペーターの表現は現実をよく捉えているからこそ人々の心をつかんで何度もよみがえってくる」 マルクス・ガブリエル(哲学者、ドイツ) 「iPhoneを発明しても同じiPhoneを作り続けていたらダメだろう?」 ウルリケ・ヘルマン(経済ジャーナリスト、ドイツ) 「世界中で労働者の賃金が頭打ちになっている現状は資本主義にとってとても危険な状態だと言えるわ」 欲望が私たちを駆り立てる 「Anti Capitalista」 成功とは 価値とは お金とは 今「闇の力」が蘇る。 欲望の資本主義2018 闇の力が目覚める時 後編 第6章 幻想の貨幣愛 ウォール街 カービス・セガール(電子決済サービス企業戦略担当、アメリカ):元 投資銀行 新興企業部門ヴァイス・プレジデント。大統領選挙戦のスピーチライターも務めた。近著『貨幣の「新」世界史』 彼は元投資銀行のトレーダー。巨大なマネーの売り買いを仲介してきた。 セガール 「私の仕事は企業と投資家をつなげることだった。例えばアリババの新規公開株(IPO)に携わったよ。企業が株式上場するときの一番の山場が新規公開株(IPO)だ。企業がそれを望んでも投資家が乗ってこない時は厄介だ。 『市場がお金を出したがっていません』と企業に説明しなけいといけない。心証を害さないように丁寧な言葉でね」 投資のリアル セガール 「アリババやフェイスブックなどが新規株を公開する時は全く逆だ。投資家たちが株を買いたがっても皆が皆買えるわけではない。10億ドル分注文するクライアントにもこう言わないといけない。 『すみません。5000万ドル分しか提供できません』。『注文の5%だけ?』と言われても『買いたい人が多すぎて…』ってね。」 ビッグマネーの調整 セガール 「資金が10億ドルに満たない投資家とは話すこともなかったね。『5億ドル持っているから口座を開きたい』と言われても『それは少なすぎる。他の受付に行ってください』と伝えるのだ。 私の大手取り引き先は1000億ドルの資金を持っていてその人と毎日話していたから…普通の感覚をなくしていったよ。誰かの大切な資金なのにその価値を画面上の数字にしか思えなくなる。現実感がなくなるんだ」 数字は幻惑する カール・マルクス(ドイツ生まれ 1818-1883) 資本主義というゲームのルールに深く向き合った男、マルクス。彼は革命を望んだだけではない。生涯をかけて書き上げたのは資本主義の構造の解明に挑んだ論理の書だった。 『資本論』カール・マルクス著 1867年 マルクスはお金を王様に例えてこう記した。 この人(カネ)が王であるのは、ただ他の人々が彼に対して家来として振る舞うからでしかない。ところが家来たち(モノ)は反対に、彼が王だから自分たちを家来だと思うのだ。 王様が王様なのは皆が王様だと思うから。これからも王様であってほしいと願うから。幻想程強いものはない。 トマス・セドラチェク(経済学者、チェコ) 「私たちはGDPが1~2%増加するだけで歓喜する社会に生きている。シャンパンを開けて国民全員がお祝いするようにね。乳幼児死亡率が4%減少するよりもGDPに夢中になる。どうしてだろう、言わばお金に対するフェティッシュな欲望だね。」 お金への『偏愛』? セドラチェク 「お金の象徴化とも言えるね。本当にナンセンスだ。日本のGDPが2%上がったところで…人々への収入の影響はほとんどゼロだ。乳幼児死亡率4%減は実際に恩恵がある。自分が少し『善人』になれた気がするからね。 世界中に十分に食べるものがない人がいる中で自分が十分な食事をしていても自責の念にかられなくなるために自分の収入のたった1%を与えるだけでいいんだとしたらどうだ?1%で世界中が幸せになれるならやるよね。 所得の50%ならどうだろう?やる人は多くないだろう。こんなふうにお金への執着があるわけだ。」 セガール 「ウォール街ではいつも人は『もっと』を求める。その元にあるのは不確実な未来への備えだよね。持つお金が多ければ多いほどより未来は安心だと感じる。それで…人は時々過剰に安心を求めてしまう。そして人々が貯蓄に走ると社会に恐慌が起きる。 私たちは恐怖と欲望からできている。だから『もっともっと』となってしまうんだ」 不安ゆえの『もっと』 およそ90年前に起きた世界大恐慌。画期的な処方箋を提示したのは稀代の経済学者 ケインズだ。 J・M・ケインズ(イギリス生まれ 1883-1946) 失業が社会の最大の不安だとした彼はこんな言葉を残している みな 月を欲するため 失業が生まれるのだ。欲望の対象 すなわち貨幣 それを生むことができず欲しがる心を抑えられないのならば失業の問題など解消できない -J・M・ケインズ著『雇用・利子および貨幣の一般理論』 ケインズは貨幣を月に例えた。ヒトは手の届かないものへの憧れにいつも囚われてしまう。 人々の心の底にある無意識をコントロールすることこそ資本主義の鍵だとケインズは気付いていた。 セドラチェク 「お金が道具ではなく目的になってしまうんだ。お金はあらゆるものと交換可能だから人はお金を欲望する。いつの間にか貯めこむことが喜びになってしまう」 使うためのお金が貯めるためのお金に。目的と手段が逆転したらいつしかヒトはお金の奴隷になる 第7章 二つの世界を欲望が覆った 西の資本主義、東の社会主義。当時、世界は二つに分かれていた。巨大な二つの力の均衡。 その頃西の世界に現れた二人の指導者。 ロナルド・レーガン(在任期間1981-1989) マーガレット・サッチャー(在任期間1978-1990) ダニエル・コーエン(経済学者、フランス) 「あれは1980年代…興味深い事件が起きた。経済が危機に直面していた時代、レーガンとサッチャーが革命を起こした。『生産性にとらわれる時代ではない』『ポスト物質主義時代が到来する』…そんな考えは誤りなんだと彼らは認識した。大きな経済改革が不可欠だとね。 それまでの社会の型を破壊し変形させたのだ。彼らは『悪徳の栄え』を引き起こすことになる。彼らは強欲を成長の原動力として解き放った」 欲望の解放がルールを変えた ウルリケ・ヘルマン(経済ジャーナリスト、ドイツ) 「レーガンはトランプにとって偉大なるお手本でありトランプがやろうとしている富裕層への減税と軍事費の拡大、それはまさにレーガンと同じことをしているのよ」 歴史は繰り返す 悲劇として?喜劇として? コーエン 「1980年代以降の資本主義は工業の時代だった50~60年代とは変わってしまった。社員や労働者を切り離していく中に新たな価値を見出したのだ。かつては大企業が労働者を守ることに組織としての大きな価値を置いていたのにそれを捨て去っていったのだ。」 解放された『市場の力』 コーエン 「レーガンとサッチャーが80年代に行った革命で市場が解放され、ウォール街のマネーのパワーが解き放たれた。この時期にウォール街でほしいままに振る舞った『乗っ取り屋』たちはさまざまな企業を買い占め、分割して売り払った。 オリバー・ストーンの映画『ウォールストリート』で実によく描かれているよ。事業に極めて疎い人間が企業の価値をバラバラにしてしまった。これが新しい金融資本主義の動きの基礎となっている。」 資本の増殖を求めて、バーチャルな価値が行きかい、増殖する現場。そこで見えた資本主義のリアル。 セガール 「何十億も扱える投資家…彼らがどんな決定をするかが市場を動かす。家で少数の株を買う人は市場を動かさない。『200万株買いたい』『数十億ドルする会社を買いたい』と言う人が動かす。ソフトバンクの株を数十億ドル分買いたいと言うような人だ。 銀行員と政治家の相互関係…それが資本主義を動かすわけだ。」 巨大なマネーがさらなるマネーを引き寄せる セガール 「政府が銀行からお金を借りることを金融界は基本的に断ることはない。これが現代社会の基盤になっている。いわばJPモルガンなどの大銀行は連邦準備銀行の資金を利用できるわけだ。政府にお金を貸し利子を取れるような企業は他にないよね。大きなパワーだ。 政府と銀行の関係は互いに共生する生物のようだ」 ルールを手にし圧倒的なパワーと巨大なリターンを求めるウォール街。掲げてきたのは自由な取引。だが… コーエン 「レーガンが唱えた『トリクルダウン理論』を覚えているか?彼は社会の上の富は下に滴り落ちると言われたが全く違った。とても寛容…というよりもあまりに楽観的な考えだった。もともと持っていた人の手に富は残ってしまった。」 富は…滴り落ちなかった 東西冷戦の終結 膨れ上がる資本の運動 勢いは止まらなかった 加速するグローバリゼーション トマス・セドラチェク(経済学者、チェコ) 「物事が良い状態になるには、必ず悪い状態の時にエネルギーを蓄えているように見える。これは資本主義と共産主義の間でシステムが変わる時にもそうだったと思うね。90年代のはじめに私はそんなことを考えていた。 当時チェコは経済のシステムを変えようとしていた。その際変化は比例的に進むと考えていたのだがそれは間違いで実際はJカーブが描かれた。」 変化はいつもJカーブ セドラチェク「そこで思い出したのがスラヴ民話に出てくる『死の水』と『生の水』だ知ってるかなぁ」 マルクス・ガブリエル(哲学者、ドイツ)「いいえ」 セドラチェク 「誰かが死んだり瀕死の事態になったりした時、その人を生き返らせるためにはまず『死の水』をかける。するとすべての関節が外れる。その後に『生の水』をかけると生き返る。『生の水』だけでは効かないのだ。 同様に資本主義にエネルギーを与えているのは共産主義の存在でありそれが今は欠けているのかもしれないね。」 ガブリエル「まさにそうだね」 資本主義 社会主義 セドラチェク 「資本主義を考える時 共産主義と比べるのは実はとても困難だ。もちろん他のシステムと比較してもいいのだが、残念ながらこの二つが何十年かの間実際に並存していたのでね。 資本主義の社会では共産主義的な実験を許容されるだろう。もし私が、お金も要らないし銀行も携帯電話も紙も要らないと決めたら実行は可能だ。 実際にドイツの美しい森の中に行ってジャガイモを育てて私たちを止める人はいない。それどころか人々は私たちに興味を持って『頑張れ!』と応援してくれるはずだ。 でもその逆は絶対に機能しない。共産主義は資本主義的実験を許さない。」 資本主義=資本主義+社会主義? ガブリエル 「私たちが『資本主義』と呼んでいるものは…もちろんこの言葉の意味はこの200年間で変化してきた。なぜなら私たちが資本主義としてその特徴を説明しようとしているシステム自体が変化し続けてきたからだ」 セドラチェク 「そうだ。シュンペーターが鋭い言葉を言っていた。資本主義に終わりがないのは自身が変わり続けるからだと。」 昨日の資本主義≠今日の資本主義? 創造と破壊のスピードは、上がり続ける 『欲望の民主主義 世界の景色が変わる時』をみて
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| 2018-01-24 20:50
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