『欲望の資本主義2018 闇の力が目覚める時』をみて

欲望の資本主義2018 闇の力が目覚める時をみました。


現代の気鋭の経済学者、哲学者、ジャーナリスト、投資担当者などが語る現代資本主義の様相。

『欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき』そして『欲望の民主主義 世界の景色が変わる時』に続く本作、今回中心に据えられた経済思想はシュンペーターとマルクス。『創造的破壊』と『資本主義はその成功ゆえに自壊する』、そしてシュンペーターがマルクスの思想から見出した資本主義に潜む『闇の力』が論じられていました。

番組では現在進むインターネット技術による社会変革が、中流層から富を奪い極一部の超富裕層との格差を広げていること、技術革新が賃金上昇に繋がらないことが社会に不安要素を産んでいると論じます。

そしてAI技術などによって現在の業務の半数ほどが機械に置き換えられる結果、仕事がなくなるため、経済を回すためにベーシックインカム等が行われるかもしれない、実際にニクソン大統領の頃にベーシックインカムは施行直前まで行ったと語られます。

けれども、現状をみていると、そういう楽天的な状況が訪れるという未来観測よりも、超・資本主義というか、ロボット資産を持つ者、或いはGAFA(Google, Apple, Facebook, Amazon)等の圧倒的なプラットフォーム資産を持つものが容赦のない利潤を上げ、大衆は鵜飼の鵜になるディストピアな未来が見える気がします。

実際、今までの技術革新による生産性の向上は労働時間の短縮をもたらしませんでした。”より良い生活”を求めて人は”仕事がない状態”を”余暇”でなく”失業”として恐れる。

それは仕事に於ける自己実現であったり社会からの承認という意味での生きがいの喪失という点もあるかもしれません。或いは”何もすることがないヒマな人間”そのものが社会における不安定要素となるという点もあるかもしれないと考えると、”労働を越える”ことは学者の方々が考えている以上にハードルが高いことにも感じました。

実際、本番組でも”労働者に配分を多くする良い経営者は、悪い経営者との闘いに負けてしまう”と語られています。再配分の機能を個人や企業に求めるというよりも税による国家の機能として施行すべきで、その意味で課税逃れをタックスヘイブンを介して行う経済強者に対しての網を張ることへの国際的な体制をつくる必要があると思いながら、抜け駆けを考えると頭が悩ませられます。

ただでさえ、自国の利益を移民などに侵食されたくないという”排除の『悪』”が生まれている現代。

その裏にあるメカニズムをドイツの哲学者フリードリヒ・シェリングは『どんな組織もどんなシステムも時間を経て自身を維持するためには他のシステムを排除しなければならない。外部がないシステムは内部に「異質なもの」を作り出さなければならない』と論じました。

資本主義がその暴力性を抑えていたのは社会主義という「異質な対抗馬」があったから。そのタガが外れ、自分の身内の中から排除の対象をみつけるように動き出す『悪』。インデペンデンス・デイではないですが、人類が纏まるには宇宙からの侵略者が要るのかもしれません。

アントニオ・ネグリの言うところの『<帝国>』に対して個人が生き抜く術はなんなのか。私は大昔の学生時代に「Rage Against the Machineとなる力は創造性であり、Creativismな世が来る。仕事はますます創造的になる」なんて一席をぶったのですが、本番組ではフロイトを引いて『芸術家はいつも創造性の欠如への恐怖にさらされている』ことの不幸を説きます。

楽しいはずの創造が、義務になり搾取の対象となると、つらくなる。かといって体力が搾取される仕事では利潤が低い。現代の資本主義は、例えば雪が数十センチ積もるだけで大きく混乱するようなギリギリまでのハイパフォーマンスを稼働して成り立たせている。

生産の形態、条件が、社会の構造を決める テクノロジー、そして経済の在り方が社会の、ひいては人間のありようを決める これがシュンペーターがマルクスの書に見出した『闇の力』でした。

シュンペーターが書いたように資本主義はその成功ゆえに土台である社会制度を揺さぶり自ら存続不能におちいる。社会主義へと向かう状況が「必然的に訪れる」かは見通せませんが、資本主義の一番尖端である米国で社会主義的論調が勃興するのはマルクスの視座に合致した出来事にも感じます。とはいえこの不完全ゆえに変革を受け入れる資本主義というシステムの中で我々は数十年生きることに概ね恐らくなるでしょうから、自分でよりマシな意思決定をして行動していく他ないでしょう。

サヴァイヴしていくことの貴さと、世界を想う尊さ。これからさらに人間世界はドラスティックに変革していく転換点が続くと予感させられました。

by wavesll | 2018-01-25 06:01 | 書評 | Trackback | Comments(0)
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