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宇多田ヒカルのこれまでの作品で半生を聴いて

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ここ数日、宇多田ヒカルを聴いていました。
今までこの音楽の綺羅巨星のオリジナル・アルバムにきちんと向き合ってこなくて。

中高生の内は椎名林檎を聴いていた自分は、宇多田ヒカルさんとは異なる水脈をずっと追っていて。それでも活動休止前最後のライヴ中継を映画館でみたり、『Fantôme』収録の「忘却」を由比ガ浜で聴いたのは2016年のBest聴験でした。けれど何となく真正面からオリジナルアルバムを聴き込むことをこれまでしてこなかったのですが、Spotifyで聴けると聴きここ数日『First Love』から『Fantôme』、そして小袋成彬「Lonely One feat. 宇多田ヒカル」まで聴いていたのでした。この記事はそんな十代当時に林檎やブランキー、邦ロックに心酔し真正面から聴いてこなかった自分が今宇多田ヒカルを聴いた感想です。

最初に聴いた『Ultra Blue』は、まるで女の子の心の裡を覗き見てしまったような感覚があって。「そうか、宇多田はあまりに女の子的すぎるからあの頃は聴けなかったのかもしれない、中高の頃はエロくて破滅的な林檎に浸っていた」と想って。そこから『Heart Station』へ行った時に”うわ!女の子が女性として成熟している”と。宇多田さんのアルバムは、まさにその人生が凝縮されていて、存在そのものを味わうような気がしました。

そこから屈指の名盤とも評される『Deep River』へ。遠藤周作の『深い河』は私も大好きな小説だったので相当に期待したのですが、最初に出てきた感想は”おお!宇多田、若い!”というもので。純な心がストレートに出てきた名盤だと感じながらも最初に聴いた二枚での印象とさほど変わらない感じで。若い時分の感性を、今の私の耳では感じたのでした。

ところが此の『Deep River』、なんと19才の時の作品だと聴いて!19!?ありえない成熟振りに舌を巻きました。自分は宇多田さんの一個下なのですが、当時の自分なんかほんとに餓鬼んちょも餓鬼んちょだったなと。

そこから『First Love』と『Distance』を聴いて。そしてもう一度『Deep River』を聴くとこの巨大な才能が舶来の新たな隕石というインパクトから一皮も二皮も進化して日本の歌としてすっと入って来る様へとメタモルフォーゼしたのが感じられて。

宇多田ヒカルという人物が少女から女性へと変貌していくビルグンドゥスロマンとして彼女の作品は聴けて。彼女の人生の軌跡、彼女という存在そのものを味わうような藝術作品で。やっぱりアルバムという形で抽出されるのは素晴らしいものだと想いました。

またアルバムの中での楽曲の流れ・時系列とは別に宇多田ヒカルさんの曲はJ-POPとしてその時々の時代の想い出とリンクして多層のドラマの脈の中に位置づけられるのだなと。一人の女性の半生が日本で暮らしている内に私の人生で幾度も強く自然とアクセスしていたのだなと。鴨居の映画館で活動休止前ライヴのライヴビューイングをみて「このひと、何回生涯を生きてるんだ…!」と想ったのを思い出しました。

その上で聴く”人間活動”以後の楽曲群。『Fantôme』ではちょっとトロピカルハウスみたいな電子音が打たれたり、KOHHとのコラボで在ったり、「あなた」でもそうですがクリス・デイヴを起用したり、今回の小袋さんの音もJames Blake以後の音像が色濃く感じられ、現行の洋楽の音が奏でられていて。

しかしその上で非常に強く感じたのが宇多田さんの歌唱の力の増大で。『Fantôme』でも、メロディの脂身は減ったのに楽曲がさらに骨太に感じたのはその唄の力強さ故。「Lonely One」でももの凄い表現力の発露を魅せてくれています。

私は宇多田さんのライヴ経験は先にも書いたライヴビューイングでライヴにおいてもファンタジスタという印象があり、人間活動から復帰した後のTVでのライヴを聴いても凄味を感じて。ヴォーカルが活動休止前よりさらに真に迫る芯が発せられるというか。

椎名林檎とEMIガールズぶりにデュエットし、Kohhもそうですが自分の公式音源に他者の声を入れたのも歌唱の深化があったからではないかと想います。なんか、(勝手ながら)今の音の昇華というか、この先に『Deep River』が出たような時のような化け方にこれからさらに進むのではないかとちょっと想ってしまいました。

宇多田さんは年でいうと同世代なのですが、活躍が早かったのもあるし、精神の成熟で相当に先へ生かれている方で、寧ろ林檎と同期だなに感じるのが強くて。今改めて音源を通して彼女の半生に傾聴して、素晴らしい女性と同時代に生きてるんだなぁと静かに感動しました。そして、今までの自分の直線にはなかった音/人を受け止められるようになれたのは、俺も年を重ねて好いこともあるのだなと想ったのでした。

by wavesll | 2018-03-22 22:37 | Sound Gem | Comments(0)
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