SNSの”正しい息苦しさ”に岡田尊司『過敏で傷つきやすい人たち』を読む ー鈍感と過敏は同居し、愛着障害による幸福感の欠如は零百思考をしないことと安全基地をつくることから改善する

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ふかわりょうの「ハイレゾ社会に御用心」というコラムを読んで”ハイレゾに関する基礎知識では間違っているけれど、Twitterがどんどん些細な粗さも許されなくなってきているなぁ”と想う昨今。

個人的には「少しのズレも許せなくなっちゃった」という意味で『LOVE PHANTOM症候群』と名付けているこの現象を考える上で岡田尊司『過敏で傷つきやすい人たち』を読んでみました。

やー!この本は面白い!同著者の『対人距離がわからない』はあまりガツンと来なかったのですが、『過敏で傷つきやすい人たち』の内容は上のような問題意識を持っていたからか、かなりするっと入ってくるものでした。

本書の中で語られるのは過敏性を持っている人は”ネガティヴな認識をしがちな人”よりも生きづらさを感じやすい事。そして遺伝などの生得的要因と強い結びつきがある神経学的過敏性よりも、養育要因や社会的体験、愛着対象との関係が強く影響する心理社会的過敏性が不味い場合の方が生きづらさや幸福度に強い相関を示すという事。

面白いなと想ったのは過敏な人は同時に鈍感な一面(低登録)も持っているという事。それ故ワガママだと認識されたり、人から指摘されることも多く、ネガティヴな認識を持ちやすい傾向がある、と。そしてネガティヴな認知以上に過敏さと強い相関があるのが、全部良いか全部悪いかのどちらかになりやすい両極端な認知(二分法認知)の傾向でした。

過敏性の原因には発達障害や愛着障害も成り得て、不安定な愛着は「他人には何も期待せず関わりを断つ回避型」か「大騒ぎして愛情や関心を得ようとする不安型」をもたらします。そして愛着不安が強い人は幸福度が低くなる傾向がかなり強いそうです。

愛着は単なる心理的現象ではなく自律神経系の働きに密接に結びつく生物的・生理的なもので、愛着が安定した人はストレス耐性が強いのに対し、不安型愛着の人はストレスに対して情緒的反応が過剰になりやすく、家族やパートナーにも愛憎の両方を巻き起こしやすく、ストレスも長引きやすい、と。

一方回避型愛着スタイルの人は一見クールに見えながら、実は気づかないふりをしているだけでストレスホルモンは上昇しており、直接自分がストレス源と関わる立場になるとポッキリ折れてしまうことがあるそうです。

愛着障害はもともとは親から虐待されたりネグレクトされた幼児に使う言葉でしたが、実際には大人になっても引き摺っている人が多く、その人たちを「未解決型愛着スタイル」と言うそうです。

ではどうすればいいのか。本書は過敏な人の適応戦略として

1. 刺激量を減らす
外からの刺激が閾値を超えないようセーブ。頭に出てくる雑念は懸案事項を書き留めることで外部化し抑える。またこのタイプの人と話す人は喋り倒さず沈黙も設ける。

2. 刺激を予測の付くものにする
生活や活動をルーティン化し、予測ができるようになると刺激の苦痛は半減。このタイプの人と付き合う人はサプライズは避ける。

3. 安全限界を超えない
刺激が閾値を超えそうになって、イライラや疲労感、集中力の低下などの兆候を見つけたら限界を超える前に止める。休みの日にぼーっとすることもメンテナンスとして大切。

4. 薬も効果的

5. 不快な刺激やストレス源の人間などを回避する

6. 感覚探究が高く神経システムが安定するために必要な刺激量が大きい人は旅行や芸術、スポーツなども大切に

7. 低登録な人は気が回らなかったり切り替わりが悪いと言われる人もいるが、寧ろ運鈍根は信用を得ることも。また過敏さと鈍感さが同居している人の過集中は天才的な閃きを生むことも。

8. 低登録の人は大きな刺激でないと感応できないので、スイッチが入りやすいように刺激強め、行動や質問と組み合わせてメッセージを送る

等が挙げられていました。(過敏な人たちは多様であり、これら等から自分に合うメソッドを自分で選び出すことが大事。)

本書はさらに進んで、過敏性を克服するために

1. 肯定的認知エクササイズで幸福と社会適応を高める

・感謝するエクササイズで、得ることが出来ている快楽に馴れっこにならないようにする
・「奇跡が起きて何でもできる力を得たとしたら、あなたはどうなりたいですか」という希望のエクササイズをする
・親切にするエクササイズはオキシトシンを分泌させる

2. 二分法的認知の克服エクササイズ

・良いところ探しのエクササイズ
・許しのエクササイズ
・第三者の視点を持つメタ認知のエクササイズ
・自分が相手と入れ替わるエクササイズ

・マインドフルネスの三分間呼吸法
背を伸ばし座って目を閉じ、1分目は自分の心の状態を感じ、2分目は呼吸を意識し、3分目は足先から膝、腿、尻、腹、背中、腕、肩、首、顔、頭の感覚に目を向けボディ・スキャニング。

・ひたすらポジティヴであればいいのではなく批判的な目も持たないと危険

・行動目標は小さなゴールの成功体験を積み重ねる
・主体的な関与が苦痛を減らす

3. 安全基地を強化する

・一日中ぴったりとくっついていられ、安全で、心地よい存在で、自分の反応に応えてくれる存在=安全基地をつくる

・ケアが必要な人の問題を解決する時は、その人をケアする人の大変さを受け止めたり本人の状況の理解を援けたりすることが効果的。

・愛着は相互のものであり、不快な相手は逆に自分のことを不快に感じていることも。相手を責める前に自分を客観視することが肝要。

・相手を全否定することは人間関係を破壊する。つい気を許して口にする否定的な口癖も積み重なれば相手を安全基地ではなくさせてしまう。

・人が健康に生きていくには依存と自立両方が必要

・安全基地になれない人からは、心理的、物理的に距離を取る

・恋愛や家庭でなく、仕事や趣味が安全基地になることも

という過敏性の本の愛着障害の克服に安全基地が大事だということを記し本書は終わるのですが、ここまで読んで冒頭のSNSの「少しのズレも許せない症候群」に関して、寧ろSNSを安全基地としている人が多いことの裏返しなのかもしれない、なんて思いました。

明け方書いたエントリで「左の人は無自覚な右の人を受け止め諭す度量がないと現実は変わらない」と書きましたが、寧ろSNSでのエコーチェンバーが安全基地としての機能を果たしているとすれば、無理に意見を異にする人と交わろうとするよりもクラスタで固まることが精神を安寧させるのではと。そういった意味でブロックやミュートを駆使するのは現実的改善かもしれませんね。

その上で、他者、それも「当たり前」が異なる人と語り合おうとする人は、クソリプの応酬だと拒絶されぬ工夫、例えば「Yes~but~」法などを使うことが、鬱憤晴らしに終わらない実効力を持つのではないかと改めて記してこの記事を終わります。

by wavesll | 2018-06-19 19:15 | 書評 | Comments(0)
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