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大内延介九段 アジア縁台将棋紀行にみるアジアの多様な文化的遷移・ヴァリエーションの妙

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NHKBSPの名作再放送枠プレミアムカフェは大変面白いのですが、先日放送された大内延介九段 アジア縁台将棋紀行がやはり大変面白くて。

日本の将棋のルーツはどこにあるのか?確かに囲碁は中国・韓国にもあるけれど、将棋ってアジアリーグとかは聞かないなと想ったら、アジア各地にそれぞれの形のルールで存在して、その根源は古代インドのチャトランガにあるとされているそうです。

大内九段はインド亜大陸を訪ね、デリー等でチャトランガを指す人を探しますが、チャトランガ指しをみつけることは出来なくて。

このチャトランガは東へ渡って将棋になり、そして西に渡ってチェスとなります。そして一旦ペルシアに渡ってチェス化してからインドに逆輸入されたのがシャトランジと呼ばれるインドチェス。大内九段は市井の達人と青空将棋ならぬ青空シャトランジを打つことになります。

そこからインドを離れた大内九段はタイへ行きマークルックを打ち、中国で象棋を打ちます。面白いのは日本の将棋では九段の大内さんも初めて打つシャトランジやマークルック、象棋では敵の駒を自分の駒に獲れない等ルールが異なり、負けてしまうという事。AIと違ってヒューマンインターフェイスはユーティリティ運用が可能かと想っても、やはり初見は厳しい。けれど数度打つとメキメキとレベルを上げていく様に有機的ディープラーニングの神秘をみたり。

ウィルスのRNAの進化における紫外線での欠損を鮮やかにビデオテープの書き換えと転化したのが鈴木光司『リング』シリーズでしたが、文化を遺伝子で比喩したミームという概念のように、土地の空間的・歴史的遷移が様々な文化的ヴァリエーションをつくるのが私はとても好きで。

楽器なんかもそうですよね。ペルシアのサントゥールなんかも東西へ変容しながら伝わって。梅棹忠夫『文明の生態史観』における「中洋」の豊饒さには舌を巻きます。

将棋は一種の戦争ゲームですが、サッカーも戦争をスポーツ化したゲーム。ヘゲモニーをとっている西欧由来ならではで一元化された国際ルールの下でWorld Cupが行われるのは流石。

そんな中で日本がコロンビアに勝ったのが「アジア初の南米からのW杯での勝利」としてWebのフォーラムでアジア各国から”レペゼンアジア”として称賛が贈られているのがとても心を打って。

西洋に対する東洋という形で中東から極東までの超広域がAsiaという名であらわされたのが、現実に心の中での大きな共同体として効用を及ぼしている。その形而上からの形而下への働きが面白い。

そして共通基盤をつくっていく欧州に対して将棋もそうですが様々なOSが林立するアジア地域の、一種一神教に対する多神教的なありようが面白く感じて。四大文明の内の三つをはじめとする根源から発生した虹色の文化ヴァリエーションが一元化されずに共存されるアジアの魅力を探究していくことをこれからのディケイドの一つの目標として生きたいな何て思いました。

cf.
日本に伝来してからも将棋は大きく変わって来たんですね「鳳凰」「盲虎」なんて駒もあったとは。空間的だけでなく歴史的な遷移も面白い。



by wavesll | 2018-06-22 23:01 | 小ネタ | Comments(0)
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