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太田記念美術館 江戸の悪 PartII に石川五右衛門の釜茹でを眺めにいったらヴィランの冷気にあてられた

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"暑い時には熱いものを"と想い、石川五右衛門の釜茹での浮世絵を表参道の太田記念美術館で開催されている江戸の悪 PartII にみにいきました。

そのお目当ての歌川国芳 ≪『木下曽我恵砂路』≫が初っ端に。これは舞台を画いた作品らしく、舞台上でこれをやってしまうとはとんでもない演出だなと。歌舞伎って浮世絵の実体化版だなと惚れ惚れしますね。

そして本展覧会でも白眉の一つ、豊原国周≪神力谷五郎豪傑期最図≫
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この威容。いかにも無頼な龍の文様と眼光。たまらない。この絵は天保水滸伝に着想を得たもので、同じく天保水滸伝から歌川国定(三代豊国)≪近世水滸伝 競力富五郎 中村芝翫≫≪近世水滸伝 夏目子僧新助 岩井粂三郎≫も龍虎相見える藍の深さが非常に格好良いものでした。

この展覧会は様々な観点から”悪人”を顕わすもので、最初は盗賊などの犯罪人たち。歌川広重≪青野ヶ原ニ熊坂手下ヲ集ム≫ はいかにもな盗賊たちの顔、顔。月岡芳年≪芳年武者无類 源牛若丸 熊坂長範≫の貴公子牛若の空中戦。

五右衛門の作品は他にも無款≪『楼門五三桐』≫や歌川国貞(三代豊国)≪東海道五拾三次之内 京 石川五右衛門 東海道五十三次の内 京二 真柴久吉 ≫というような作品も。

浮世絵をみると”ほほう、日本史にはこんなキャラも登場するのか”と想うことも多くて。女装の盗賊を画いた歌川国貞(三代豊国)≪豊国漫画図絵 弁天小僧菊之介≫もその一人。中世・近世の印象的なシーンとしては月岡芳年≪英名二十八衆句 稲田九蔵新助≫の”あんこう斬り”の吊るし斬りの場面も大変に凄惨なものでした。

また著名人だと大岡越前をモチーフとした歌川国貞(三代豊国)≪ 『晴模様染衣更着』≫の水色の着物のぱりっとした感じや、当時の名優、市川小団次の訃報に寄せた豊原国周≪小仝三升五人俤≫のきわっとした目つきもスゴくて。歌川豊国≪斧定九郎 松本幸四郎≫もい~いツラしてましたw

悪の代表として侠客も取り上げられています。大阪の侠客達を画いた歌川豊国≪『仕入染雁金五紋』≫の威風。月岡芳年≪東錦浮世稿談 神田伯勇 幡随院長兵衛≫は湯殿で襲撃され血みどろになりながら鱈腹水を飲み干す様を描いたもの。

歌川豊国≪『助六由縁江戸桜』≫と歌川国貞(三代豊国)≪梨園侠客伝 髭のゐきう≫の髭の意休の白髪の格好良さ。

歌川国芳≪国芳もやう正札附現金男 野晒悟助≫以前観たのより発色が変わっていましたがやはり素晴らしかった。国芳の同じシリーズだと≪国芳もやう正札附現金男 梅の由兵衛≫も黄色赤青が鮮やかに反応していました。

歌川国貞(三代豊国)≪東海道五拾三次之内 赤阪 沢井又五郎 東海道五十三次の内 赤坂 沢井助平≫で画かれるアジアの獅子のようなぎょろっとした目つき助平さんは名前の通り遊郭を覗くのが趣味の人だとかw歌川国貞(三代豊国)≪『名高殿下茶店聚』≫も良かった。

月岡芳年と共に英名二十八衆句を画いた落合芳畿≪英名二十八衆句 邑井長庵≫は娘を遊郭に売り渡し父親が得た金を奪うために殺人を犯す医師を描いたもの。豊原国周≪雲上野三衣策前 河内山宗俊 市川団十郎≫もまた悪僧で。

歌川国貞≪『菅原伝授手習鑑』(車引)≫は隈取のかっこいい作品。ダース・シディアスだ◎異様な格好という点では歌川国貞(三代豊国)≪見立三光之内 日 平清盛≫の中国皇帝のような冠も凄かった。清盛を画いた絵だと月岡芳年≪平清盛炎焼病之図≫は病苦を閻魔などであらわした作品。ちょっと絵が一時期の江川達也が参考にしてたようなスタイル。

歌川豊宣≪新撰太閤記 此人にして此病あり≫ は信長が鉄扇で光秀をぶつところを描いた作品。歌川国芳≪『東山桜荘子』≫は蛇を纏う人物が格好いい作品。

そしてこの展覧会の白眉が月岡芳年≪新撰東錦絵 鬼神於松四郎三郎を害す図≫
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キルビルのように復讐を果たす”鬼神のお松”が遂に本懐を遂げるシーン。男の苦悶の表情とお松の冷徹な表情の対比が素晴らしく、水面も美しくて。これが一番好きな画でした。


豊原国周≪異種薔薇犯妻会 当ル卯の夏 高助 原田お絹≫、≪異種薔薇犯妻会 当ル卯の夏 半四郎 写真お若≫、≪艶色七人毒婦≫の毒婦たちがクリムゾン・レッドの背景に映えていました。

そして妖術使いの篇。歌川芳艶≪両賊深山妖術競之図≫と月岡芳年≪袴垂保輔鬼童丸術競図≫は怪盗袴垂保輔と鬼同丸(鬼童丸)が深山で妖術競べをする図。

楊洲周延≪東錦昼夜競 玉藻前≫は九尾の狐の正体を現す場面。変身シーンは昔から光線が出るんですねw 歌川国安≪『音菊高麗恋』≫では日本人にもインドに行った天竺徳兵衛という商人がいたのかと軽いサプライズがありました。

歌川国貞(三代豊国)≪『児雷也豪傑譚語』≫はガマガエルに乗った児雷也とナメクジに乗った綱手がまさにNARUTOの世界。歌川国貞≪豊国揮毫奇術競 須美津冠者義高≫はネズミの道士。

歌川国貞(三代豊国)≪『しらぬい譚』≫は蜘蛛の妖術を会得し戦う姫の画。歌川国貞(三代豊国)≪豊国揮毫奇術競 蒙雲国師≫は正体が蛟の妖術使い。歌川国貞≪『大和大和花山樵』 ≫もカッコよかった。

歌川国芳≪木曽街道六十九次之内 鵜沼 与右ェ門 女房累≫はレインボーな魂魄が印象的。歌川国貞(三代豊国)≪『東海道四谷怪談』≫は絵の中に折り返しがあって、障子の裏表にお岩と小平がみれるという仕掛け絵。豊原国周≪歌舞伎座 中満久 皿屋舗化粧姿鏡≫は逆さ傘でお菊の幽体を防ぐ画。

歌川国貞≪見立三十六歌撰之内 在原業平朝臣 清玄≫で清玄というストーカー坊主がいたことを今回初めて知って。ストーキングされていた桜姫を画いた月岡芳年≪新形三十六怪撰 清玄の霊 桜姫を慕ふの図 ≫も。確かに桜姫、可愛い。清玄は大分人気だったらしく、彼を女体化した女清玄を画いた歌川国貞≪『隅田川花御所染』≫なんて作品も。

その他、好いた男にまた会えるかもと放火の罪を犯した八百屋お七の事を歌川豊国≪『封文其名題』≫や処刑のシーンを画いた歌川国芳≪『恋模様振袖妹背』≫で知りました。

妖刀による凶行を画いた歌川国芳≪源氏雲浮世画合 鈴虫 福岡貢≫や同じく福岡を画いた月岡芳年≪英名二十八衆句 福岡貢≫のカッコよさ。

歌川国芳≪遇躬八芸 武蔵野秋月≫もワッルい面でよいよい。歌川国貞(三代豊国)≪梨園侠客伝 団七九郎兵衛 かわら崎権十郎≫も気合の入った刺青がいかす。歌川国芳≪鏗鏘手練鍛の名刃 佐野治郎左エ門 ≫の血飛沫もまた危険な格好良さ。

落合芳幾≪英名二十八衆句 げいしや美代吉≫、この人の描く血の滲みは情念が伝わる。歌川芳房≪清盛布引滝遊覧義平霊難波討図≫は雷となった悪源太義平の怨霊の図。悪にも色々な意味が日本にはあって、舞台上では歌川国貞(三代豊国)≪『三幅対戯場彩色』≫に描かれる善玉・悪玉みたいな役回りも。

盗賊、侠客、悪の権力者、毒婦、妖術使いetcetc...様々な”悪”の冷気にあてられた夏の夕となりました。

by wavesll | 2018-07-22 03:19 | 展覧会 | Comments(0)
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