![]() 上の写真はYCAT上から出たバスから降りて撮った朝の京都駅。 今は夜行バスでも座席にコンセントが付いているタイプでも横浜-京都が3200円くらいで行けるんですね。凄い世の中だ。 慌ただしい朝の京都駅でコンビニおにぎりを食し、湖西線のこんな渋い列車で霧の山と琵琶湖を眺めながら滋賀・堅田駅へ。 ![]() ![]() ![]() ![]() この展覧会では奄美時代のみならず、幼少期から彼の画業の軌跡を捉える展示となっていました。 何しろ最初に展示された作品≪菊図≫を画いたとき一村(当時の雅号は米邨)少年は7才!神童じゃないか!父の影響を受け南画を学んだ一村はその才能を多くの画に記しています。 可愛らしい≪紅葉にるりかけす/雀≫と≪柳にかわせみ≫。滝に仙人がちょこんと座っているような≪観瀑≫。金地に綺麗な≪花菖蒲≫、青い露が美しい≪つゆ草にコオロギ≫。咲き降る≪藤図≫にシックな≪木蓮図≫。墨とピンクの≪紅白梅図≫、鈍色なエメラルドグリーンな≪瓢箪図≫、墨の山景に桃色が煌めく≪武陵桃源図≫と彼のまなざしが自然や虫に向けられていることがみてとれます。中でも梅が枝の波動と化していく≪墨梅長巻≫は十代での大作。 ≪桃果図≫黄色の暖色が美しい≪菊図≫、葉の迫力がある≪蓮図≫、そして墨の葉が凄い≪蓮図 擬八大山人筆意≫。長命を顕わす≪菊水図≫と牡丹を画いた≪富貴賞図≫、そして仙人が食べる≪桃果図≫の生命力を画いた三作も素晴らしい。 そして20才の時に描いた≪蘭竹図/富貴図衝立≫の金色にカラフルな牡丹が咲き誇りそして青の葉がダイナミックな画は圧巻!裏の勢いの良い墨草も素晴らしかった。 そして≪南天とろうばい≫の赤の映え。鈍い青が印象的な≪浅き春≫。≪椿図屏風≫はまた金地に咲き誇る椿の樹が描かれ琳派な趣向。 23才で南画から別軸へ画業を変遷し30で一村は千葉へ移住します。個人的にはこれまでの作品も好かったけれども、一村のオリジナリティがここから大きく開花していく様が本当に素晴らしかったです。 シンプルで抽象的な≪石図≫、シャクヤクが美しい≪椿図≫、影が何とも印象的な≪竹≫。グリーンにレッドが最高な≪南天≫に木が勢いよく流れる≪白梅図≫。 そして≪棕櫚≫の火花のように弾ける植物描写!これは本当に素晴らしい!≪つゆ草≫の青のワンポイントもいいし、≪秋色≫の零れる赤。あの世が滲む≪彼岸花≫も好かった。 さらに≪秋日村路≫の素晴らしい事と言ったら!秋があふれている。一村には奄美を描いた画家という認識があったのですが、本展覧会で彼が画いた千葉の秋の朱黄の美しさを知れたのは本当に収穫でした。 流体がきれいな≪毒だみの花≫、黄色に白がいい≪粟≫、中心の赤と周りの黒がいい≪鶏頭≫。リラックスした≪ホオズキ≫にべた塗りで美味そうな≪柿≫。甘そうな南瓜に虫への温かい視線がみえる≪かぼちゃにキリギリス≫。 表情豊かな≪翡翠≫に二羽の関係性をみるのも楽しい≪軍鶏試作≫。牛がのどかな≪春郊≫、異世界な感覚があった≪黄昏野梅≫、≪桃華仙境≫のピンクも好かった。 向日葵の濃さのトーンがゴッホみたいな≪八重ひまわり≫。濃い塗り方の≪桐葉に尾長≫も本当に印象的でした。 ここから亜人物画のスペースが。紙の繊細さが伝わる≪お雛様≫にスイカな色合いの≪紙立雛≫。≪雛図≫は顔が好い。子どもの為の温かい心が伝わる≪お雛様≫も好かったし、男の子の為の≪兜≫も好かった。 すっくと立った≪蓮上観音図≫。浪がうねる≪あばさけ観音≫。女性の悟りの表情がある≪白衣観音像≫に羅漢の男らしさが伝わる≪十六羅漢像≫、≪羅漢図≫12点はユーモラスでした。 灰色の巣が暖かい≪巣立ち≫に、≪春林茆屋 仿謝蕪村≫・≪麦秋図≫・≪牛のいる風景≫・≪さえずり≫というスナップショット的な団扇作品も。 そして第二会場。38才にして画壇にデビューし雅号がいよいよ田中一村となります。ここから日展や院展への挑戦と、そして日本画壇・川端龍子との決別迄の作品が展開されました。 昏い夕景を画いた≪入日の浮島≫、網がモチーフの≪四ッ手網≫。ヤマボウシとトラツヅミが描かれた≪白い花≫は二作とも素晴らしかった。特に緑にあふれた方が好きでした。 ≪浅春譜≫の空色。≪早春≫の里山。≪春林≫のにゅるっと伸びる翳。≪野梅≫のスパンコールのような白。≪千葉寺春彩≫のゴールデンなマジックアワー。≪晴日≫は青のグラデーションに黒く太い木影。ずばっと縦長な≪山桜≫や扇な≪露草に蜻蛉≫も好かった。 ≪四季草花図(旧襖)≫≪千葉寺 麦秋≫の火花のような花の描写が素晴らしくて。しみじみと暮れていく≪水辺夕景≫にわらぶき屋根が劇画調に描かれた≪農家の庭先≫、里の情景だと≪千葉寺 浅春譜≫も好かった。≪冬景色≫は薄明に雪積る木々の姿。ピンクな≪野の馬≫もいいし、≪千葉寺 麦秋≫のトトロなデカい木や珍しい青空が描かれた≪仁戸名 蒼天≫、太陽のぬくもりを感じる≪菊花図≫も好かった。 そして≪秋色虎鶫≫のなんたる楽しさ!秋の綺麗さが詰まった素晴らしい絵画でした。本当に一村の秋の描写は快い◎ 青い山影な≪筑波山≫もいいし、九州・四国・南紀の旅で描かれた≪阿曽村千里≫・≪僻村暮色~恵良村≫・≪僻村暮色≫・≪雨薺≫は大きなスケール感が好く、≪山村六月~北日向にて≫・≪新緑北日向≫はトロピカルな自然が好く、≪室戸奇巌≫の白浪も好かった。 さらに≪忍冬に尾長≫がとても素晴らしい!羽毛のふわっふわな感触が伝わり、尾長の柔らかさがなんとも絶妙で。 50歳にしてして奄美へ渡った一村。彼は69でなくなるまで南方の地で日本画の新領域を切り拓きました。 奄美へ発つ為の資金作りのための描いた大作襖絵≪四季花譜図(裏面:白梅図)≫・≪四季花譜図(裏面:松図)≫の花のレッドからライトイエローへのグラデーション。≪白梅図(裏面:四季花譜図)≫・≪松図(裏面:四季花譜図)≫の枝ぶりの良さ。≪紅梅図≫が苔が翡翠色で良く、≪百合と草花図≫の斑が好かった。 ≪山中の雨≫の農村の湿度に≪鬼ヘゴと谷渡り≫のシダの影。≪林間夕照~峠の花≫も素敵で≪山路の花≫は蝶が描かれて。 ≪パパイヤとゴムの木≫のオレンジに灰の果実もいいし、≪白梅高麗鶯図≫の綺麗なイエローも鮮やか。 ≪紅梅丹頂図≫はタンチョウの後ろの梅が羽根のように広がって。≪漁樵対問≫はガジュマルに奄美の民が南画調に描かれて。≪百合と岩上の赤髭≫の小鳥が上に鳴く姿。≪クロトン≫はウォーホル的ですらあって、≪クロトンとカヤツリグサ≫の深緑に黄色の透ける耀きがまたいい。 そして≪初夏の海に赤翡翠≫が大胆に描かれたビロウの影にミツバハマゴウ、ハマユウ、アカミズキにオレンジの差し色がなんとも熱帯林の美があって。≪枇榔樹の森に崑崙花≫の彫り塗りで描かれたグレーの美。 ≪奄美風景≫は海岩の影、もう一つの≪奄美風景≫は海草木の影。一村は影を印象的に使いこなす画家だなぁと想います。≪孤枩≫も奇岩の影。 参考資料にあった彼の品々も好かった。でかい≪木魚≫。≪帯留(おしどり)≫のカオ。≪帯留(みみずく)≫は夜な感じ。≪帯留(リンドウ)≫はカッコよかった。≪帯(菊図)≫はパステルでカラフルで。≪帯(竹図)≫はしみじみと良くて、≪花草文日傘≫のピンクに薄い植物模様。≪草花文角皿(絵付)≫と≪漢詩書角皿(絵付)≫も好かったし、≪粗画御礼(書)≫には彼はこんな字を書いていたのかと。≪根付(木魚)≫もでかかったし≪葉盆≫なんてのも。 そして最後のスペースに複製でおかれていたのは彼の代表作≪アダンの海辺≫。南国の果実であるアダンが印象的なこの作品は今は箱根の岡田美術館に展示され、収蔵は千葉市美術館だとか。いつかみてみたいなぁ。 ≪クロトンと熱帯魚≫の黒赤なサカナがまた好くて。≪アカショウビン≫もトロピカルでいい。≪奄美冬彩≫は淡い奄美。≪奄美の海≫はいい藍色。≪奄美風景≫は曇天が多い奄美では珍しい水色の空。カラフルな≪与論島追想≫もいいし、サカナとイセエビが描かれた≪海の幸≫なんて作品も。そして若き日にも描いたモチーフの≪富貴昌図≫で円環を描き田中一村展は幕を下ろしました。いつか彼が画いた奄美にも来訪したい気持ちに成りました。 けれど佐川美術館はこれだけでは終わりません。 樂焼の当代当主樂吉左衛門館では≪巖≫という焼き物がまさに岩で、≪涔雲に浮かんでⅠ≫という作品はまるで宇宙の舟のよう。≪巌上に濡光あり I≫はアブストラクトな山水画、≪行行水窮處≫はカラフルな竹林で。 また佐藤忠良さんの彫刻作品が館内には展示されていて。≪チコ帽子≫という作品と≪帽子・夏≫という作品が好かった。 ”これだけみれて入館料千円とはいいなぁ、なんと堅田駅までシャトルバスも出てるとは。佐川男子に感謝”だと想って外へ出ようとしたらなんと平山郁夫の展覧スペースも!仏像を描いた作品やサマルカンド等の外地を描いた作品などかなりたっぷりな展示を駆け足で観て、シャトルバスに補助席で滑り込みました。3h満喫!素晴らしかったなぁ。 せっかく守山市まで来たしピエリ守山にでも行ってみようかとか等の気持ちにも駆られましたが、湖西線で京都へ。その旅模様はまた明日に描けたら◎
by wavesll
| 2018-09-14 05:29
| 展覧会
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